268.核
「神王様!?」
ランタンさんの驚いたような声に転移場所を間違えたのかと周りを見る。
大学の講義室のような場所に神々が座っており、この光景は見たことがあるなと思い出す。
転移した場所はどうやら天空神殿の会議室のようだ。
「あれ? もしかしてお邪魔しちゃった…よね?」
ヤバイと会議室から出て行こうとすれば、とんでもないですわ!! とランタンさんに止められた。
「神王様の方こそ何か用事があったのではないのですか?」
「あ、うん…ジュリアス君かトモコに聞きたい事が「オレに!?」」
食い気味にジュリアス君が声を上げる。
彼はすぐ立ち上がってこちらへやってきたので廊下に連れ出す事にしたのだ。
「みーちゃんどうしたの~?」
とついでにトモコもやって来たが、どちらか一人で良かったんだけどなぁと思いながらも3人で廊下へ出た。勿論「会議中にごめんね」と謝罪はしておいた。
他の神々が羨ましそうに見ていたが、こうやって会議している所を見ると、私一人何も仕事してないなぁと少し罪悪感がわいた。
「あのね、かなり小さめの魔石を探してるんだけど…」
魔石の事を切り出すと、二人はきょとんとしてこちらを見てくる。
「何で小さい魔石が必要なの? 」
首を傾げたトモコが理由を聞いてくるので、研磨した魔石にヴェリウスの神力を注いだら綺麗だったのでアクセサリーを作りたいのだと伝えれば、目を丸くして固まってしまった二人。
何か変な事を言っただろうかと今度はこちらが首を傾げる。
トモコならノリノリで手伝ってくれると想像していただけに予想外の反応であった。
「みーちゃん、その研磨した魔石って何処にあるの!?」
「神王様!! オレも見たい!! です!!」
瞳を爛々と輝かせて水晶を見たいと言う二人に押しきられ、ルマンドの魔法研究所にある事を伝えると、今すぐ連れて行けと言われ仕方なく転移したのだ。
魔法研究室の前に転移し、ここに研磨した水晶があると伝えた瞬間、トモコとジュリアス君は無遠慮に扉を開けて中へと飛び込んだ。
「何じゃおぬしら!?」
「不審者!?」
と声が上がったので慌てて私も部屋に入ると、トモコ達は水晶を見て目を輝かせているではないか。
「あの、すみません。彼らは人族と魔族の神でして、その水晶に興味があるらしく…突然申し訳ありません」
おじいちゃんに声を掛ければ、ぎょっとして慌てて膝をついていた。
「人族と魔族の神様がそちらの水晶を!?」などと仰天しているジョナサンさんはほぼ白目を剥いており、しかしそんな事はどうでもいいと水晶にしか興味ないトモコ達は興奮していた。
「研磨か!! なるほど、石自体を加工するという発想はなかった!!」
「研磨した石と加工してない石だとどう違うのか実験しなきゃ!!」
等とキャッキャ言ってるので、取り敢えず案内したし、小さめの石を貰おうと恐る恐る声を掛ける。
「あの…案内したし、小さめの魔石貰えないかなぁ?」
「あっ そうだったね!! 何個位渡せばいい~?」
「今回は4個で良いよ」
とトモコから魔石を貰っていたら、今度はおじいちゃんがそれに飛び付いてしまったのだ。
「精霊様!! そ、その石はもしや……っ」
「え? あ、そう。これがあの水晶の原石だよ」
言えばこちらも興奮したように、「お願いします!! その石をお譲り下さい!!」と言い出したのだ。
「これは使うから、トモコに貰って下サイ」
と研究オタクしかいないこの空間から急いで逃げ出したのだが、その後これがロードの怒りに触れるとは思いもしなかった。
◇◇◇
「ヴェリウスお待たせ!!」
『ミヤビ様!!』
尻尾をパタパタさせて駆け寄ってきたヴェリウスを撫で、貰ってきた魔石を見せれば、嬉しそうに『早く加工しましょう!!』と急かしてくる。
「イヤーカフやピアスにするから、かなり小さくしないとね」
魔石を握りしめると大吟醸を作る時に使用するお米の粒をイメージする。
確か大吟醸酒はお米の精米歩合といえば良いのか、それが50%以下でないと大吟醸とは名乗れないらしい。そんなイメージで魔石も研磨すれば良いだろうと研磨を願う。
すると思った通り綺麗な水晶が…………
「ん? なんかこの石異様に綺麗じゃない?」
『どういう事でしょうか?』
魔法研究所にある水晶より透明度も高く、瑞々しいというか、そう、ダイヤモンドに近い輝きがあるのだ。
「何でだろう?」
『……これは、もしや魔石の“核”では…』
魔石の“核”とは一体?




