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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第5章

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258. 平凡な神王は美貌の老人に変身しました


王都に住むAさん視点



あれは何だ。と誰かが言った。


その声に幾人かが空を見上げる。

つられて上を見ると……なんという事だ!


神々が宙に浮いたまま跪いているではないか!!


一体何事だと隣を見れば、目が合い訝しげに見られたので上だ、上っ と合図する。勿論隣も同じように空を見上げてギョッとしてまた視線が交わる。

頷き再度顔を上に向けると、今度はその中心が白…いや、白っぽいが虹色だ…淡い虹色に光っているのが見てとれた。

まるで奇跡のようなその光景に目を奪われる。


するとそれに気付いた人々が次々と上を向き、同じように目を奪われていく。


目を凝らしてその光の中心を見れば、白く長い髪をふわりと揺らし、深いシワの刻まれた肌など気にならない程の美貌をたたえた老人が、女性のドレスのように腰から裾にかけて拡がった白のローブを身につけ佇んでいた。


近寄りがたい程の神々しさは、確かに跪きたくなる程で…。


我を忘れ呆然とその光景に見惚れていたその時、突然空に階段が現れたのだ。

天国に続くのではないかというような幻想的な情景に、ほぅと溜息を吐いた者は多く居ただろう。


そして、淡い虹色の光を帯びたその老人は、一歩一歩、その階段を下り始めた。


ああ……この御方こそ“神王様”だ。


そこに居る誰もがそう思ったに違いない━━…



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



雅視点



長いローブに引っ掛かって転ばないようゆっくり階段を下って行く。

地上では人間達が息を呑み、こちらを呆然と見上げていた。

中には口を開けたままの者もおり、間の抜けた表情に笑いそうになって表情を引き締める。



いつの間にか階段下に移動していたロードが、片膝を付いて待っているではないか。その姿はまるで騎士のようだ。(←※本物の騎士です)

後2、3段残っている所から片手を差し出せば、立ち上がりその手を取ってエスコートしてくれる介護っぷりである。

どうやら騎士ではなく介護士だったらしい。(←※騎士です)


ロードに手を引かれゆっくり歩みを進めれば、モーセの十戒のごとく人々の群れが割れていく。これはこれで集団に避けられている感があってちょっと傷付く。

しかしロードは堂々と手を引くものだから、恐れをなしたのか手前から奥にかけてウェーブのように跪いていく人々。それにこちらの方が恐れをなして足を止めそうになったのは秘密だ。


途中リンと目が合ったが、え? 誰?? 雰囲気的に神王様?! 何で師団長と!? という顔をしていたので微笑んでおいた。

ちなみにルーベンスさんは、姿を変えて現れるとは、考えたな。という様子でこちらを見ていた。

トリミーさんにいたっては、神王様はミヤビちゃんじゃなかったのかい!? と困惑した表情である。


知り合いの様々な反応に笑いそうになるが、雰囲気はいたってシリアスなわけで、空気を読まないわけにはいかない。跪いている神々の面子にかけても。



「…何者だ」



大司教との二度目の対峙をはたすと、そうだろうなという反応が返ってきた。


睨み付け、警戒を露にする大司教に「額を地に擦り付け、跪いて詫びろ」とロードの冷えきった声が耳に届きぞっとする。正直顔は怖くて見る事ができないが、声と同じように瞳も冷えきっているのだろう。


「ロードや、今のこやつは多すぎる犠牲の上で力を手に入れ、そして己の限界を越えた為に壊れてしまった人間じゃ。何を言っても無駄じゃろう」

「けどよ…っ」

「ここはわしの為にも少し引いてくれんか?」

「……わかった」


渋々引き下がってくれたロードだが、納得は出来ていないのか、私を大司教の視線から遠ざけてくれる事はやめなかったのだ。




「さて、哀れで愚かな男よ。おぬしが奪った“力”は人間には耐えられるものではない。その証拠に、おぬしの器…いや、核(魂)そのものが壊れかけておる」


ロードの瘴気で未だ拘束されている大司教を見据えてそう伝えれば、水を打ったような静寂の中で一人わめく男の姿。


「貴様は何なのだ!! 私は神王だぞっ 跪かれるのは私のはずだろう!!」


会話も成り立つ事なく、わめき続けるその様子に周りにいる人々は息を飲んで見守っている。


「…例えわしがその力をおぬしから取り除いたとしても、一度傷付いた 核は元には戻らぬ」

「ッ貴様、私の力を奪って神王に成り代わるつもりだな!!」


それはお前だろうと誰もが思ったが、正気ではないこの男に言っても無駄だろうと誰も口にはしなかった。


「しかし、これ以上核に負担がかかれば生まれ変わる事も難しかろうて…」


嘆息し、男に手をかざす。

刹那、男が発光し始め、その光が徐々に強くなっていく。

それは塊となって空へ舞い上がると花が咲くように弾けて消えたのだ。


その光景はまるで花火のようで、人々はその光を呆然と眺めていた。


「おぬしが数千もの人々から奪った力は世界に還った」


大司教は茫然自失といった体で空を見上げたまま震えている。


「これでおぬしが身勝手に命を奪った者達も、問題なく“巡る”じゃろう」

「あ、あの…“巡る”とは…?」


恐る恐る、しかし代表者として勇気を出したのか、ひっくり返ったような声で話し掛けてきたのはルマンド国王だった。


「ふむ、おぬしら人間にはあまり知られておらぬようだから教えておこうか」


王都の人々へと振り返ると、彼らは幾分か緊張したように表情を引き締め、頭を垂れたのだ。


「そのように緊張せんでもよい。顔を上げて少しこの爺の話を聞いておくれ」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ロリーオ・ルマンド視点



神々しさを超越したようなその存在感で、なのに僕達をまるで孫でも見るかのように優しい瞳で見つめてくるこの御方は、まさしく神王様なのだろう。

ミヤビ殿はどうしたのだろうかと混乱はしているが、今は神王様のお話に耳を傾けなければと集中する。


民も同じ思いなのか、子供までもが声を出す事なく固唾を飲んで目の前の御方に注目していた。


「━━…この世界のありとあらゆる生物は、命が尽きると同時にその魂は世界に還る。それは人も精霊も、神とて変わらぬ事。それが“世界の理”じゃからのぅ」


人の命が尽きれば世界に還るという事は、王都の教会と王宮に保存されている創世記にも載っている有名な事項だ。まさか神や精霊まで同じとは思わなかったが、その辺りは理解している。しかし、“巡る”とはどういう事なのかが分からない。


「そしてその魂は、洗浄されてピッカピカに磨かれてのぅ」


うんうん。ピッカピカに磨…ん?


「前の記憶も綺麗さっぱり洗い流されてすっきりした所で新たな“器”が与えられるのじゃ」


記憶をさっぱり洗い流す?? え、ちょっとどういう事なの? この重々しくも神々しい雰囲気をぶち壊すような言葉のチョイス。もしかしてこの神王様、ミヤビ殿??


「所謂“生まれ変わり”というやつじゃな」


神王様と思わしき御方の爆弾発言に、ざわつく民達。しかしそれも一瞬の事で、


「神王様の御前で騒ぐとは何事か」


と声がした事で静寂が戻ってきたのだ。

男性とも女性ともとれない凛とした声が上から聞こえてきたのは間違いない。


という事は、声の主はあの数百と居た神々の一人のものと思われ一瞬で緊張が走った。


「ランタンや、そのように言うでない。今わしがこの子らに話を聞かせておるんじゃから、お前も一緒に聞いておいで」


空に向かって子供に語りかけるように話す御方に、やはり神王様で間違いないのだと皆がまた頭を下げた。



まさかお伽噺の幻の存在に会う事ができるなんて!! と正直興奮している。

なんというか、お姿は想像通りというか、それよりも美しいというか、多分他の人もそんな風に思ってるんじゃないかなって、今更ながらに神王様にお会い出来た実感がわいてきた。


「あー…どこからじゃったか…そう、生まれ変わりからじゃな。まぁそれが“巡る”という事なんじゃが、わしがおらなんだ間にちぃっとばかしそれが滞っておってなぁ…」


やっぱり神王様はこの世界から居なくなっていたようだ。何か理由があったんだろうけど…。


「何万年と昔は、人も魂は“巡る”事を知っておったから、子を亡くした親も、親を亡くした子も、つがいを亡くした人族ですらここまで暴走する事は無かったんじゃが」


チラリと大司教と、教会関係者を見る神王様。

確かに生まれ変わると知っていたら…考えるのも嫌だけど、仮に僕がもしつがいを喪ったとして、それを知っていたら、また会えるかもしれないって少しは希望を持てたかもしれない。

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