表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第5章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

250/303

248. 話は最後まで聞こう


眠りから覚め、天空神殿で存分にヴェリウスと戯れた翌日。朝からヴェリウスは見当たらず、他の神々も帰ったのか誰も居らず、私は一人深淵の森へと帰る事にしたのだ。


エルフ街へ行き、挨拶してから転移で戻って来た家が、久しぶりのようなそうでもないような不思議な感覚で首を傾げる。

ただいまと家に入ると、トモコもショコラも居ないようで静かだ。


「誰も居ないのかぁ…」


天空神殿のように広くもない我が家に、自分の声が響き消えていく様が何とも寂しい。


何となしにリビングやトイレ、お風呂、自分の部屋とうろうろしてみるが、何も起きるわけなくただただ静かだ。

リビングへと戻りソファへ座るが落ち着かず、ラグマットへ直接座ってテレビを付ける。

DVDをセットしなければ何も映らないテレビに溜息を吐いて消した。


ソワソワする。


今頃ロードはイアンさんを連れて王様に会っているかもしれない。ヴェリウスは教会の事でトモコ達と行動しているのだろうか。

そんな事を考えては頭を振る。

気になるが首を突っ込んではいけないという事は一応理解しているのだ。けれど気になる。


そんな風だから何にも集中出来ず、結局皆の様子をテレビに映し出して観る事にしたというわけだ。


テレビに映し出されたのは4等分された画面で、ロード、ヴェリウス、トモコ、ランタンさん達がそれぞれ何かしている様子だった。声は出ていない。


勿論願えば声も聞こえる。


そんなテレビでまず初めに注目したのはロードだ。

今はイアンさんとルーベンスさん、王様の3人が話しているようで、ロードはただ黙って聞いているだけらしい。よく見ると、話を聞き流しているようにも見えるが気のせいだろうか?


ロード達が映る画面を拡大すると、他の3つは小さく右横に並ぶ。そちらも気にしながら、声を聞こうとリモコンの音量ボタンを押したのだ。



「…神王像を破壊するなど愚の骨頂。今すぐにでも処罰しなければならないが、証拠がコフトル殿だけの証言ではあまりにも弱い」

「それではどうすれば…」


ルーベンスさんの言葉にイアンさんは眉を下げ、王様は顔色を悪くして2人を見ている。


「奴等が逃げ切れないような証拠はもっていないのかね」

「…私も逃げるのに精一杯で、持ち出した中でも物的証拠となるのはこの“手紙”だけでしょうか」

「手紙だと?」

「はい。…これは、反神王派の一人が私の父(・・・)に宛てた手紙です」

「貴殿の父親に…?」


ルーベンスさんの問いに真剣な顔で、はい。と頷いたイアンさんはこう言ったのだ。


「手紙には反神王派の活動報告と、父を称える内容が記されていました…つまり、」



“私の父こそが、反神王派の主犯なのです”



昔、ロードに暴力をふるい虐待していた司祭が、反神王派とかいうよく分からないグループのリーダーだったのだ。


衝撃の事実を聞かされたルーベンスさんと王様は驚きすぎて声が出ないようだ。

話を聞き流していたロードでさえ動きが止まっている。


「…テメェ、そりゃどういう事だ」


さっきはそんな話をしていなかっただろうと詰め寄るロードに、イアンさんは神王様を前にして言えなかったのだと話した。

反神王派などという話を聞かされ、ただでさえ傷付かれたのだと…これ以上あの場ではと言うイアンさんに、ロードも冷静になったのか距離をとり、続きを促した。



「元々父は打算的な人でした。何故聖職者になったのかも分からないような…自分より弱い立場の人間からは搾取し、強い者にはすり寄り権力を欲する。司祭となってからはそれがより一層顕著になり、私が聖魔法を使えると知ってからは自分は“聖人”の父親だと…それは増長していったのです」


イアンさんが自身の父親について語りだし、ロードは昔を思い出したのか眉間にシワを寄せて眼光が鋭くなっている。


「…私が旅に出ると言った時、父は反対しました。勿論私利私欲の為なのでしょう。酷い言葉を投げつけられましたが、私は振り切るように家を出ました。父とはそこで縁を切ったつもりでいたのです」


ですが…と続くイアンさんの話につい聞き入ってしまう。

王様もルーベンスさんも真剣な顔で耳を傾けているようだ。


「旅の途中…魔素が世界に満ちた時、ふと教会の様子が気になり実家のあるトレイクへと戻ったのです。しかし教会に父の姿はありませんでした」


どうやら父親とは別の人がトレイクの教会の司祭に就任していたようだ。しかしその司祭の評判も良くなく、イアンさんはこっそり司祭の使用している部屋へと忍び込んだらしい。

部屋の造りは昔と変わっておらず、父親が大切な物を隠す秘密の場所もそのままになっていたそうで、彼はそこを重点的に探り父親宛ての手紙を見つけたのだとか。


成る程と思いながら聞いていたが、右端の小さな画面から見えたトモコの居る場所が教会だとわかり、映像を切り替えたのだ。


「トモコ、何やってるの!?」


画面に叫ぶが勿論こちらの声は聞こえない。

彼女はまるでスパイ映画のような黒ずくめの格好で、コードネームは“爆乳”とふざけた事を言っているではないか。

更にショコラまでそんな遊びに付き合っており、エルフ族の新神、アルフォンス君まで巻き込まれている。

ちょっと楽しそうだ。


口ずさむのはミッションインポッシブ○のBGMで、人間達には結界か魔法で姿が見えていないのだろうに、隠れて様子をうかがっている。完全に遊んでいるようだ。

ちょっと混ざりたいと思い、つい転移してしまったのは仕方ない事だろう。




「トモコ、何楽しそうな事してるの」


突然転移で現れた私に、「うひょっ」と変な声を出して跳ね上がったトモコは、かなり驚いたらしい。


「みーちゃん!! 驚かさないでよ~!」


と抗議され、ゴメンと謝ると「もぉ~」と頬を膨らます。


「面白そうな事してたからつい」

「これは遊びじゃなくて仕事…「そこに居るのは誰だ!!」」


トモコの言葉を遮ってバタバタと人が集まってきた。


「みーちゃんっ 認識阻害魔法かけてないの!?」

「あ゛…」


すっかり忘れていた私は、教会内部で独り言を言う侵入者として連行されたのである。

トモコも心配して付いて来たが、こっちは姿が誰にも見えていない。


「怪しい奴めっ 何故あんな所に居たのだ!!」


連行された窓の無い個室で、教会関係者に尋問されているのだが、教会でそんな事をするって事はやましい事がありますよと言っているようなものではないのか。


「いやぁ、私極度の方向音痴でして、礼拝に来たのですが、迷いに迷ってこんな所に…皆様が来てくれて助かりました。出口はどちらでしょうか」


等と誤魔化してみる。しかし、そんなわけあるかと叱責されただけであった。


「みーちゃん、その言い訳はちょっと苦しいよ~」


とトモコにも言われたが、思い付かなかったのだから仕方ないだろう。


ぎゃーぎゃーと騒ぐ男達が面倒になり、転移させるか、記憶操作でもしてやろうかと物騒な事を考えていた時だ。

突然個室の扉が開き、前に王宮ですれ違った事があるあのおじいちゃんが入ってきたのだ。


「だ、大司教様!?」


平伏するように慌てて礼を取る男達を呆然と眺める。

と、大司教様と呼ばれたおじいちゃんが、私を見て優しげに微笑み、男達を見て言い放つ。


「うら若き女性を君達が連行していったと聞いたものでね。まさかこのような暴力的な場面に出くわすとは思いもよらなかったが」


男達に非難するような視線を向け、彼らが怯むと私に優しい口調で話しかけてきた。


「怖い思いをさせてしまったね。出口まで案内しよう」


手を差し出してきたので、その手を取ると紳士的にエスコートしてくれたのだ。

トモコはその後ろを黙って付いてきている。


薄暗い廊下を暫く歩くと、大司教は歩くのを止めて振り返り片膝を付いた。


「あの…」

「ご無礼をお許し下さい。精霊様」


そういえばこの人の前で転移した事があったなと思い出す。

王宮に居て転移が出来るのは噂の精霊しかいないと考えたのだろう。


「…いえ、こちらこそご迷惑をお掛けしてすみません」


一応謝罪すれば、「ここは教会です。貴女様が来てくださる事のどこに迷惑などありましょうか」と微笑まれる。好々爺たる笑みと紳士な態度は好感触だ。


と、この時はそう思っていた。



*****



「━━━…テメェの父親がトレイクの教会に居なかったってなら、何処に行きやがった」


「……父は、“聖人”を授かった聖職者として権威を持ち、様々な貴族や王族と懇意になった結果、現在は大司教(・・・)としてルマンド王国の王都にある教会におります」




ロード達のこの会話を聞き逃していたとも知らずに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ