242.創造主達の宴会
いかに“創造主”といえど、異世界へ渡るには“器”ごとというわけにはいかない。
中身…“魂”とでも言えばいいのか。それだけとなり世界を渡るのだ。
仮に“器”ごと移動した場合、何故か“器”は別の世界に拒否され消滅する。
“器”が無い魂だけの、いわゆる“抜き身”の時は我々にとって最も危険な状態である。その為、他の創造主と協力して各々の世界を繋げた“道”を使用するのだ。
“道”から出なければ“抜き身”であっても危険はない。
定期的に行われる情報交換という名の“宴会”に出席する為、私は慣れたように“器を脱ぎ”それを別空間へと保管した。
各世界へ繋がった“道”へと入り、地球のある世界を目指す。
『久しぶり~』
地球のある世界…ここからは地球の創造主と呼ぼうか、彼は当然自身の世界であるので“器”を脱いではいない。
彼の今の器は、キラキラとした金髪に空のような青の瞳、白磁のような肌という端正な顔をした青年であった。
『久しぶりじゃのぅ。地球の』
『元気してた~? その喋り方、君は今も老人の器なの?』
『そうじゃ。気に入っておるよ』
『最近はロリや平凡系も人気が出てるみたいだよ』
『ほぅ…ろり? というのはよく分からんが、平凡系は一度試してみたいのぅ』
等と下らない話に花を咲かせながら他の世界の創造主が待つ空間へと移動する。
『皆待たせたのぅ』
『おっ 来た来た! 待っていたぞ“魔法の”!!』
“魔法の”というのは私の事だ。魔法のある世界を創ったので皆からは“魔法の”と呼ばれている。
地球の世界の創造主は“地球の”、今話し掛けて来た世界はロボットの世界なので“ロボの”という具合にそれぞれの世界の特徴を通り名としている。
因みに“地球の”は、色々混ざりすぎているから総合的に“地球の”に決定した。
『遅れてすまぬな。何せ動くのが億劫でのぅ』
私は昔からズボラであった。
『“魔法の”は相変わらずズボラだね』
『“動物の”。お主は相も変わらず毒舌じゃのぅ』
“ロボの”も“動物の”も魂だけなので今はどのような器かは分からないが、この変人達の事だ。着ぐるみだったりアンドロイドだったりするのだろう。
『そんな挨拶なんていいじゃねぇか!! 早く酒飲もうぜ!!』
『“調味料の”はまた二日酔いになっても知らんぞ。お主は創造主の割に想像力がないからのぅ…二日酔いに効く薬も創り出せんじゃろう』
『うっせぇ!! オレは好きな物しか創らねぇ主義なの!! 大体この中じゃ“魔法の”と“地球の”の能力が高過ぎんだよ』
“調味料の”は“地球の”が考えた調味料が人間のように生活する世界を創ったのだが、調味料に手足が生えて喋り出すというなんとも奇妙な世界なのだ。
『想像力、妄想力では“地球の”には劣るがのぅ』
『けど、何でも創り出す能力は“魔法の”が一番だよね。大雑把に想像しても出来ちゃうんだもん。あれは卑怯だよ』
『そんな事より酒!! じゃんじゃん飲むぜ!!』
“調味料の”はお酒を大きな盃にトクトクと流し入れて一気に飲み干した。
魂だけでどうやって飲むのか原理は分からないが、ああしたいこうしたいと思えば私達は出来るのだから聞かないで欲しい。
『全く…酔っぱらって“道”から落ちても知らんからな』
用意されたつまみを主に食べながらほんの少しお酒を口にする。私はお酒には弱いのだ。
こうして、皆で飲んで食べて楽しく情報交換と各々の世界の上映会をしながら騒ぎ、あっという間に帰る時間となった。
丁度食べ物もお酒も尽き、“調味料の”がベロベロに酔っ払った時であったのだが……。
『まだ飲みたりね~よぉ~っ』
真っ赤な顔の千鳥足(魂がふわふわ蛇行しながら飛んでいる)状態でそんな事を言う“調味料の”を“ロボの”が支えている。しかしアホな“調味料の”は“ロボの”から離れふわふわと私に近寄って来たのだ。
『“魔法の”~~っ』
『何じゃ。“調味料の”、』
この時、抱き付いて(?)きた“調味料の”を避けようとしたのだが、予想外の事にドンッと互いの魂がぶつかってしまい、私の方がポンッとボールのように跳ねてしまった。
『ちょっと、“抜き身”の状態でふらふらしてたら危ないよっ』
『っおい!! “魔法の”!! そっちは“道”が途切れてる!!』
『え?』
皆が血相変えて叫んだ瞬間、ラップを破ってしまったような感覚が魂に伝わり、ぐぐっと重力のようなものがかかって地球へ向かって落下したのである。
『“魔法の”!!』
最後に聞こえたのは、“地球の”の叫び声だった。




