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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第5章

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238.尊い御方


「まさか……っ まさかこの地に顕現されておいでとは…ッ」


地に額をつけたままの土下座スタイルで、身体を震わせながら咽び泣く男性に唖然とする。

トリミーさんはギョッとした表情でこちらを見ているので苦虫を噛み潰したような顔になってしまうが男性は気付かない。


「いや、あの…」

「しかも私のような者にまで御声を掛けていただけるなど…っ 畏れ多くも、恐悦至極にございます!!」


何言ってるかちょっと分からない。


「ああっ 何と尊い……、もう、死んでもいい…ッ」


怖いんですけどーー!?


「とりあえず顔を上げてもらえませんか? 話が出来ないので…」

「そんなっ 神王様の御尊顔を拝ませていただけるなど、私の心臓が持ちません!! 幸せ過ぎて昇天してしまう!!」


昇天って、どこぞのアイドルの追っかけですか?


「み、ミヤビちゃん…あんた本当に…?」


トリミーさんが恐る恐る声を掛けてくるが、顔が引きつっている。今にも倒れそうだ。


「あー…えっと…」


んなわけないですよー!! とは言い辛い。何故なら、ガチな信者(ファン)が目の前で土下座して泣いてるからだ。

「ああ…神王様…っ」と感動と興奮を織り混ぜた声で呟いているからだ。


「あたしゃ、何て失礼を……ッッ」

「あーーー!! それはもう止めて下さいっ」


トリミーさんまでもが土下座しようとするので全力で止める。

土下座が二人に増えるなんて、私のライフがゼロになる。


「ホント、もう勘弁して……」



◇◇◇



「まさかミヤビちゃんが神王様だなんてねぇ…」


先程の男性…名前をイアンさんと言うらしい。は、足を怪我しているのに土下座をした為痛みでそのまま気絶してしまい、現在使い物にならない状態である。これで私が足を治してしまおうものなら昇天しかねないので放置している。


「いやぁ…アレです。成り行きでそう呼ばれてるといいますか…」


ハハハと乾いた笑いしか出てこないが、トリミーさんの表情は盛大に引きつっている。


「神王様にこんな態度で接するなんて許される事じゃないけど…本当に良いのかい?」

「勿論ですよ。良いも悪いもトリミーさんの態度に失礼な点なんて無いですし、私そんな跪かれるような偉い人じゃないし」


誰よりも偉い御方なんだけどねぇと呆れた声で呟かれたが、そんな声は聞こえない。


「しかし、どうしようかねぇ。あの人は…」

「もうその辺に放置しときましょうか」


至極まじめに言ったが、トリミーさんは困ったように笑うだけで、そうさねぇ~と考え込んでしまったのだ。


「…このまま女性一人の家に置いておくわけにはいかないですし、取り敢えず私が連れ帰ろうと思いますが」


多分この家に泊まろうものなら、トリミーさんの旦那さんに殺されるだろうからと引き取る事にした。

浮島のエルフ街にでも放り込んでおくしかないだろう。


「連れて帰るって、そんな事したらあの人師団長様に殺されてしまうんじゃないかい」


慌てたように忠告してくれるトリミーさんだが、教会の不正の証拠を握り追われている人をここには置いておけないし、ロードは騎士だから会わせた方が良いだろうと説得した。それに家に連れ帰るわけでもないのだ。


「…確かにミヤビちゃんに預けた方が師団長様に報告も出来るし、何より神王様のお傍が一番安全だものねぇ」


等とトリミーさんは納得してくれたので、イアンさんは浮島に運ぶ事にしたのだ。


「女の子一人で大の男は運べないからねぇ…師団長様に連絡して来てもらうしかないだろうね」


痛みで気絶した割には幸せそうな顔で眠っているイアンさんを眺めながら、腰に両手を当てて溜息を吐くトリミーさん。


「大丈夫ですよ。転移扉を出しますから」


エルフ街に扉を繋げれば、気づいたエルフ達が手伝ってくれるだろうし。

そう思いながら転移扉を出現させれば、トリミーさんは呆気に取られたようにその様子を見ていた。


「誰か手伝ってくれませんか~」


エルフ街の広場前に繋がった扉から顔を出し叫べば、通りを歩いていたエルフ達が「神様だ」と気付いてわらわらと集まってきたのだ。


「どうかなされたのですか?」


エルフ達は首を傾げて私を見、お困りの事があるならば何なりとおっしゃって下さいと言ってくれるので、イアンさんを運んでほしいのだと頼む。

トリミーさんはもう何に驚いて良いのか分からず固まって動かなくなってしまった。


「かしこまりました!!」


男性のエルフが2人扉を越えてやって来たので怪我人である事と痛みで気絶してしまっている旨を伝え、出来るだけ丁寧に運んでもらう。


「トリミーさん、念の為この家とトリミーさんに危険が及ばないよう結界を張っておきましたのでおかしな事は起きないと思います。それに何かあれば直ぐ駆けつけるので安心して下さい」

「っミヤビちゃん、何から何までありがとうね。けど、教会って事でアタシはミヤビちゃんの方に何かありゃしないかと心配だよ…」

「大丈夫ですよ。私にはトモコもロードもついてますから」


心配してくれるトリミーさんにそう言って笑ってみせると、そうだね。師団長様は伝説の騎士だし、トモコちゃんもしっかりしてるからねぇとおかしそうに笑ってくれたのだ。

少しは安心してくれたらしい。


「明日にでもまた顔を出しますから」


お邪魔しました。と転移扉を潜りエルフ街へと移ったのだ。



「……あの噂(・・・)が本当なら、一番心配なのはミヤビちゃんなんだよ……」


そう、トリミーさんが溢した言葉も知らずに。


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