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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第1章

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24/303

24.どの世界も王族と貴族はドロドロしている

“ダンジョー公爵”

彼は先代のルマンド王国国王の兄として産まれ、本来であれば国王になっていた男だったらしい。


しかし、彼には“つがい”がいつまで経っても現れなかった。当時30も半ばだったというのに。


反対に弟は10代前半で“つがい”が見つかり、そして子にも恵まれた。


お世継ぎ問題が表面化する中、先々代の国王…ダンジョー公爵の父が病に倒れてもまだ、“つがい”は現れずそれが理由で国王の座を弟に譲らなければならなくなったそうだ。


人族は“つがい”と出会わなければ子孫を残す事が出来ない。

つまり、“つがい”が現れなければお世継ぎが誕生しないわけで、国が深刻な事態に陥ってしまう。と、ロードが言っていた。


ダンジョー公爵の弟には既に“つがい”も子も居た為、主だった貴族達が支持をし国王の座についたそうだ。

ちなみに先代国王は5人の子宝に恵まれたが、次々と病で失った為、今代の王は末っ子であるらしい。


とにかく、ダンジョー公爵は今代の王が亡くならない限り王になる事は無かったのだ。

それが、ロードの持って帰って来た薬に目をつけ強行手段にでたというわけだ。


滅びそうな世界の、問題山積みな国の王様になっても何の得もないだろうに……。

むしろ大変なだけだ。

食料問題や労働力不足、流行り病等々考えただけでも嫌になる。あえて大変な目にあいたいなどドM以外に考えられない。


ロード曰く、私の薬が手に入れば何とかなると思い込んでいたのだとか。


公爵の頭の中では、

薬が手に入る→皆元気になる→働ける→食料問題、労働力問題解決

などという図式でも成り立っていたのだろうか…。

普通に考えれば魔素の増加なくして根本的な解決にはならないだろうに。


大体例え魔素が増えても一国の王様が大変でない時などあるのか?

ほぼ無休で働かなくてはならないし、プライベートは無い。ドMでないと務まらないのが王様だろう。


なんにしろ、ダンジョー公爵は反逆者の主犯として僻地に送られ、そこで犯罪奴隷として強制労働を生涯強いられるらしい。


この国には基本死刑は無く、それが一番重い罪だそうだ。まぁ、人が減少している中で死刑という選択は、貴重な労働力を減らすだけなので避けられているのだろう。


ダンジョー公爵に付き従った貴族や兵達も罪にはよるが、大体は公爵に準ずる処罰らしい。


滅びそうな世界で何故権力や地位を求めるのかまったく理解できない。私ならそんな面倒はせず家に引きこもりたいが。

むしろそんな世界で権力等を求めるということは、

《俺が皆を救わなくて誰が救うというのか!!》

と立ち上がった勇者なのではないだろうか。



「んなわけあるか。大方オメェの薬を独占しようとしただけだ。大体勇者が人に冤罪きせて拷問するか阿保」


話を聞いていたロードからはけちょんけちょんに反論された。


「ハイハイ。浅はかですみませんね。それよりもう森に帰りたいんですけど」

「あ゛?」


何度言ったかこの言葉。


歴史溢れる城と騎士達につい興味を惹かれて、1日だけ…と留まったのが悪かったのか…。


王様の国民へのスピーチが、ヴェリウスへの感謝と喜びに変わるのにはそう時間はかからなかった。


勿論スピーチの合間にも感謝の気持ちを綴っていたが、それが終わると早々にヴェリウスに面会を求めてきた。

というか結構強引に押し掛けてきて、再びお礼と喜びを伝えていたが、その時にウチのペットが余計な事を言ったのだ。


『私ではなく“主様”に礼を言うのが筋であろう』


そんな事を言ってしまったから大変だ。

方々から、「神獣様を従えるなど無礼な奴め!!」だとか、「こんな小娘に神獣様が仕えるわけがない」だのと批判があがるあがる。

しかもそんな悪口をヴェリウスの居ない時を見計らって言ってくるものだから、人間ってやっぱり怖いと猜疑心を強めた。


王様に関してはそんな怖い事は言ってこなかったが、やはり忙しい時にこんな平民を相手にしなければならない事が微妙だったのか、滞在用の部屋を城壁内の隊舎の中にある、ロードの部屋の隣に与えられてからはほぼ会う機会はない。

で、小市民の私が王様に与えられた部屋を断れるはずもなく、折角だからと使い出してから1週間が経った現在。

もう何度か帰りたいとロードに言っては凄まれているのだ。


一応こうして窺うのは、悪口を言ってくる人間から何度もロードに助けられたからで、そんな恩人に黙って、私が突然帰ったら王様に怒られるかもしれないと思ったからなのだが…。


正直もう城に居るのはうんざりだ。城にいる貴族もメイドも皆怖すぎる。



私は何度目かしれない溜め息を、ロードの腕の中で吐いたのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



王城内侍女視点


私の名はアン・ケイト・テンセス。

テンセス子爵家の次女で、5年前に侍女として召し上げられ、王城で働き始めた。


市井と同じように、城内でも人々が次々と病で倒れていく中、私も数ヵ月前に歩けなくなり死を覚悟した。


けれど、神々は人間を見捨てはしなかった。


奇跡のお力で神獣様に救われたこの国の者達は、生涯感謝と敬意を忘れないだろう。


だというのに、その神獣様に無礼を働く女が今、この城に滞在しているのだ。


「見て、あの子がそう(・・)よ」

「よりにもよって尊い神獣様をペット扱いしているらしいわ…」

「よくもまぁ堂々と城内を歩けるものですね」


ヒソヒソと声を潜めて話す侍女仲間達の視線の先には、件の女が居た。


厚顔無恥にも城に居座り、堂々と城内を闊歩する様子に虫酸が走る。


「そういえば、あの噂はお聞きになりました?」

「ええ。あれでしょう。ロヴィンゴッドウェル様の……」

「ねぇ、第3師団長様の“つがい”って本当なのかしら」


そう。私達があの女を遠巻きにし、何もできない理由がこれだ。

我が国の英雄とまで謂われる、ロード・ディーク・ロヴィンゴッドウェル第3師団長様。

信じがたい事だが、あの女はそんな御方の“つがい”だというのだ。


「嫌だわ……庶民があんな我が物顔で城内を闊歩して。第3師団長様の“つがい”だからって誰も何も言えないのでしょう」


そばにいた侍女仲間の一人に愚痴を溢せば、彼女も腹に据えかねたような表情で頷いた。


「本当に。神獣様のそばに偶々いたからと、陛下に取り入って…だから陛下も城内ではなく隊舎へ部屋をお与えになったというのに。何を勘違いされているのかしら」

「まったくだわ。早く何処へなりと行ってくださればよろしいのに」


波紋のように拡がっていくあの女への嫌悪と態度を、その後後悔する事になるなんて、今の私達には知るすべもなかったのだ。

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