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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第5章

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233/303

231.神王像


“教会”。

そこは神々に祈りを捧げる場所。


「━━…そう、神は仰いました……」


神父さん? が聖書の一説を読み終わり本を閉じると、今度は神の教え的なものを語り出す。

抑揚の無い声が眠気を誘い、気を抜くと頭がガクッと揺れて驚いて目を覚ます。さっきからその繰り返しだ。


気付けば全員が声に出して何かを読んでいた。よく分からないがとりあえず周りを真似てみる。

その後は何やかんやで献金としてお金を支払い、祝福とかなんとかで神父さん? に祈られ、皆退出していくのだ。


うーん…地球と同じような感じ…なのかな? 教会には結婚式以外で行った事はないのでよくわからないが。


「人族の神を祀る教会なんだから、さっきの祈りで何かを感じるとかないの?」


教会内の木で出来たベンチのような椅子に座り、隣で今にも寝てしまいそうなトモコに話し掛けるとハッとしたように顔を上げて、眠くなった!! と言ったのだ。

何か感じるのではと期待した私がバカだった。


「みーちゃん分かってない。そもそも本当に人族の神(ワタシ)に向けて熱心に祈っていれば、多少なりとも違和感のようなものがあるんだよ。なのに眠くなったって事は形ばかりの礼拝って事」

「成る程。まぁでも、問題ないと形ばかりの祈りになってくるんじゃないかな。だって毎週祈るんでしょ?」



それが普通だよとトモコと語っていれば、いつの間にか教会内に人は居なくなっていた。

それを良い事に私は祈りの間にある人族の神の像に近寄りマジマジと見る。


「何だか男性っぽい?」


石膏で出来た像は中性的ではあるが男性寄りである。しかもトモコには似ても似つかない。どちらかといえば前任者のアーディンに近いかもしれないと思っていると、トモコはアーディンなんじゃないの? と目を細めた。


「人間の前に神として顕現した事があるのかな?」

「そうかもね~。だからこの像も心なしか似ているのかも~」


さすがに神王像はないようだが、もし仮に神王像があればどんな感じなんだろうかと想像してしまう。

人間のイメージだと、アーディン像みたいに若い男性か、もしくは厳ついおじいちゃんみたいなイメージで作られていそうだと、段々興味が湧いてきたのだ。


「トモコ、神王像探しに行こう!」

「え~? なんで神王像?」

「だってどんなイメージで像をつくったのか面白そうだと思わない?」

「そう言われてみれば」


とトモコも興味が湧いてきたようなので、二人で探しに行く事にしたのだ。


神王像はどの教会にもあるそうだが、教会の奥にお寺のご本尊像のように大切に保管されているのだとか。

という事で今私達は教会の奥へと向かっている。勿論私達の事は認識できないようにして。




窓のない廊下はまだ昼前だというのに薄暗い。

壁に設置された燭台に灯る蝋燭の明かりが無ければ真っ暗だろう。


「何だか不気味な雰囲気だね~」

「明かりとりの窓がないから暗いし、蝋燭の明かりで余計雰囲気がでてるよね…」


何だか拷問部屋や何なら吸血鬼とか出てきそうである。

しかしよく考えれば吸血鬼は“鬼”なわけだから、鬼神であるロードの管轄になるのではないか。


取り留めのない事を考えて暫く、前方に大きな扉が見えたのだ。


「みーちゃん、あそこが神王像のある部屋だよ」


探索魔法と集音魔法を駆使して場所を突き止めたトモコは扉を指差し言った。


「何だか重厚感のある扉だね」

「教会の存在意義である神王様の像だからね!! お寺とかでも何十年に一回しかご本尊像を公開しないとかあるでしょ。あんな感じなんだよ~」


私と同じような事を考えていたトモコにやはり同類かと思いながらその重々しい扉を開けたのだ。


そこは輝かんばかりに天窓から降り注ぐ光で溢れた、真っ白な部屋だった。

アーディンの神殿もこんな感じだったなと思い出しながら部屋の奥へと進むトモコの後ろをついて行く。

すると今度は先程の扉よりも小さな、180センチ程の高さで人が一人通れる程度の扉が現れたのである。


「この扉の向こうに像が在るみたい」


トモコの言葉に頷きながら、中に入ろうとすると……トモコの動きがピタリと止まった。

何だろうか。


「トモコ? なんで進まないの?」


開いた扉の前で一向にそこから進まないトモコに話し掛けるが返答すらない。

もう一度名前を呼ぼうとした時、突然振り向き緊張した声音で私に言ったのだ。


「みーちゃん、帰ろう」

「唐突に何を言って……」


その時チラリと、トモコの足元に礼拝堂で見た人族の神の像と同じ素材の“欠片”が転がっているのが見えた。

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