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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第5章

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218.大司教


〈神王創世記 一章の一節より〉


初めに神王は天と地を創造された。


地は形無く黒が拡がり、神王の御力がただ水の面を覆っていた。


神王は「光を」と言われた。すると白が在った。

神王はその白を見て良しとされた。神王はその白と映る黒を光と闇とし、分けられた。第一日である。


神王はまた言われた。「水の上に大空を」。すると水の上に大空が在った。

神王は大空とその下の水とを分けられた。第二日である━━…




ルマンド王国の王宮内にある図書室にて、比較的薄い聖書を手に取り読んでいたが、あくびをしながら閉じる。地球のキリスト教の聖書っぽいなと思いながら。


今まで教会や神々、神王についてすらあまり知らなかったが、先日のフォルプローム国とバイリン国の事件で教会の関与が疑われた為にどういうものかを調べにやって来たのだ。

しかし、ダメだこれ。

まず聖書の創世記一章からして本が分厚い。

そもそも本に使われている羊皮紙が0.5ミリ位ありそうだからだろう。

私が知るコピー用紙の厚さが0.08ミリ位で厚めのポストカードでも0.24ミリ程度である事からも、この羊皮紙の厚さがわかるだろう。

にしても何をこんなに書く事があるんだと言いたい。そして神王が世界を創った所を誰が見ていたのか、もしくは見てきたかのように伝えたのかを知りたい。

多分こうやって創ったんだろうと妄想したのなら、その妄想力と発想力が天才すぎると称賛したい位だ。


聖書の厚さに読む気も失せ、ぼーっと天井を見つめる。

きらびやか過ぎる図書室に落ち着く事も出来ず早々に出る事にした。

聖書を元在った場所へと転移させ足早に図書室を後にするのだった。


しかし図書室の歴史と仰々しさを感じる分厚い本、使い古された味のある梯子を見られただけでも得した気分にさせられる。

ああいう某魔法学校の図書室みたいな雰囲気に憧れてたんだよね。


そんな他愛もない事で気分を上げながら歩いていれば、前方から白いインパネスコートだろうか、ローマ法王が着てそうな服装をしたおじいちゃんが歩いて来たのだ。

その後ろには神父が着るような服装だが、黒ではなくグレーを纏った人が2人歩いている。

おじいちゃんは私を見つけると瞳を瞬き、ニッコリと微笑んだ。しかしその後ろのお付きの人達は顔を険しくさせると、


「貴様、大司教様を前に無礼だぞ!!」


と叫んできた。

無礼もなにも、この人達との距離はまだ5メートルは離れているし私は廊下の端を歩いているだけだ。一体どの辺が無礼だと言うのか。


「無礼なのは君達の方だろう。彼女は端を歩いているじゃないか」


おじいちゃんがそう言って後ろのお付きの人達を嗜めると彼らは、しかしやですがと言い募る。

面倒そうなのでロードの執務室へと転移したが、あれは多分教会関係者ではないだろうか。


「ミヤビ、会いに来てくれたのか!!」


むむ…と考えていれば、ぎゅうっと筋肉の檻へ閉じ込められたのだ。


「さっき教会関係者っぽい人と遭遇して、面倒そうだったから転移したんだけど…」

「教会関係者だぁ? あ~…そういや大司教が宰相と面会するみてぇな事言ってたか?」


私に聞かれても知らないが、成る程。ルーベンスさんのお客様だったのか。


「じゃあ、今日はルーベンスさんに会いに行かない方が良いね」

「お前なぁ、普通旦那の前で他の男に会いに行く話をするか?」


酷いと嘆きながら抱き潰してくるものだから結界を強化した。


「やましいことが無いから言えるんだよ。分かってるでしょ」

「そりゃ分かってるけどよぉ。たまには俺も構ってくれねぇと」

「毎日構ってるでしょうが」


ブーブー文句を言ってくるロードに、猫がするようにすり寄れば相好を崩しぎゅうぎゅうと抱き締めてきた。

暫くされるがままになっていると、ガンガン叩きつけるようなノックが響いたのだ。

驚いてそちらを見れば、ロードが返事をしたすぐ後に、乱暴に開け放たれた扉と共に知らない騎士が飛び込んできたではないか。

肩で息をしている所を見るとかなり急いで来た事が分かる。


「何があった?」


私が知らないだけで、部下だったのかロードは戸惑う事もなく話をしている。


「ッ大司教様が、精霊様に是非御会いしたいと…!」

「断れ」

「しかし師団長ッ 大司教様ですよ!?」

「テメェはたかが大司教と精霊様、どっちが偉いと思ってんだ」


ロードの威圧に部下らしき騎士は、そ、それは…っ とどもっているではないか。


「もしそれでも無礼な要求を続けるようなら、精霊様どころか神獣様までもが教会へは今後一切近付かないだろうと伝えておけ」


冷たく言い放ったロードは、もう話すことはないと言わんばかりに部下を追い出し扉を閉めたのだ。

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