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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第4章

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214.神罰


「━━…ヒッ な、何だ貴様!? く、来るな!!」


腰を抜かし、その場にヘタリ込む男を追い詰める影。

男ははってでも逃げようと懸命に腕と足を動かすが、恐怖の為か思うように動かせない。


何だ……なんなのだ!? この異形(・・)は!!!


「ビル!! ビルは何処だ!!! は、早く余を助けろッ」


目の前のソレに恐れをなし、腹心の部下の名を叫ぶ。

しかし、とうとうそこへ助けが来る事はなかった。


「無駄ですよ。誰も助けになど来ません」

「ヒィ……ッ」


その言葉に息を飲んだ男は、ガクガクと足を震わせ、顔色を青く変えて口をハクハクと開閉させているが、声は一切出ていなかった。


「愚かな人間です。神に楯突こうとしなければ、少しは長生きできたかもしれないのに」


影はパキパキと、ガラスにヒビがはいるような音をたてながら徐々に姿を変えていく。

まるで感情のこもらない声は澆薄で、恐怖心が益々煽られる。


男が異形と称したソレは、躊躇いもなく鋭い爪(・・・)を振り下ろし、意識を刈り取ったのだ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



『━━…ミヤビ様、ショコラがフォルプローム国の現国王とその家庭教師をしていた者を捕らえました』


ロードが去ってからすぐ、ヴェリウスの耳がピクリと動きそう口にしたので瞠目する。


「それは…神域侵攻を指示してたから?」

『その通りです』


まさかフォルプローム国の王様がそんな馬鹿な事をしていたなんて…と顔を引きつらせていたら、トモコが引っ掛けも何もない結果だね~と若干つまらなそうに呟いた。

それが耳に届いたのか、ルーベンスさんはげんなりした様子で話を聞いている。


『フォルプローム国の現王はリンの腹違いの兄のようです。魔素も尽きかけ食糧難の中での即位だった為、ろくに人材もおらず帝王学を教える教師すらもまともな者は居なかったのでしょう。結果操り人形と化した愚鈍な王が誕生した、と』


食糧難で優秀な人材は亡くなるか城を出たのだろう。

フォルプロームの前国王であるリンの父親は、僅かな望みを託して自身の子供達を優秀な部下に預け逃がしたのかもしれない。

思い通りリンは生き残ったが、国王には城に残した長男が即位し、欲深く愚かな教師が実権を握ってしまったのだろう。


「ところで、捕らえたフォルプロームの国王と家庭教師はどうするの?」


私の質問に、ヴェリウスではなくルーベンスさんが答える。


「本来であれば人間が解決しなければならないが、今回に関しては神域の侵攻を指示した者の処分だ。神々が罰を下すと言われるのであれば、我々が口を出す事はない」


ルーベンスさんは教会にも話を通しておくと手紙を書き始めた。迅速な行動だ。


『これで人間の邪魔は入らず噛み殺…ゴホンッ 罰を与える事が出来ますね』


ヴェリウス、今噛み殺すって言ったよね? というかこの流れは私にやれと言ってるのかな?


手紙を書き終わったルーベンスさんは部下を呼び教会へ渡すようお願いしていた。

やはり教会は国とは別のややこしい宗教的権力のようなものを持っているのだろうか?

神が身近に居る世界だし、教皇的な人は案外王様より立場が上だったりするのかもしれない。


『ミヤビ様、捕らえた者達はこちらへ連行致しましょうか。それともフォルプローム国へ赴かれますか?』


やはり私が罰を下さなくてはならないらしい。

2択しかない選択肢を半眼で考えて見る。バイリン国の時は現地に行ってロクな事はなかった。かといってルマンド王国(ここ)に連れて来るというのは……


チラリとルーベンスさんを見るが、完全に「ここへ連れて来るのは止めたまえ」と表情が物語っている。


しかしロードを置いていくとまた面倒くさそうなのだ。連れて行くのも前回の事から何をするかわからないので怖い。


「ヴェリウス」


呼べば尻尾を振ってそばにやって来る可愛いペットに、今回はどちらの選択も選ばない事を伝える。

目を丸くしたのはヴェリウスだけではなかった。


「神罰なら態々赴く必要も、顔を見せる必要もないでしょう?」


何しろ願えば叶うのが私の能力なのだから。


『さすがミヤビ様です。確かにミヤビ様が人間などにお姿を晒す必要などございません。して、どのような罰を下しますか?』


ヴェリウスの言うとおり、そこが問題なのだ。

そもそも国民を奴隷として輸出したり、協定を結んだ他国をちゃっかり支配したり、さらには神域侵攻を指示する等と数々の悪行をやらかしているのである。

しかし、国民はリンのように何も知らない。どころか売買されている被害者である。国ごとの神罰となると国民が憐れでならないわけで、対象者は指示者、実行犯、共犯者等の関係者が妥当だ。


「ショコラとマカロンは共犯者らの関係者の身柄も拘束しているの?」

『ショコラとマカロンは指示者と実行犯の捕獲のみですが、その他は私の眷属がすでに捕らえております』


共犯者の中には、貴族の他にも教会関係者や商人なども居たらしい。


『神に仕える身でありながら、神域侵攻とは…この様子では他の教会もどうなっているのかわかりませんね』

「早急に教会を調査させます」


ヴェリウスの苛立ちにルーベンスさんは即空気を読んで慌てて部屋を出て行ったのだ。


「ねぇみーちゃん。神罰の内容は決まった?」

『魂の抹消でしょうか』


何気に恐ろしい事を口にするヴェリウスに口許が引きつるが、暫し思案し良い事を思い付いたのだ。


「甘いお仕置きだと調子に乗っちゃうからね。ここは命を奪う位の勢いでやっちゃわないと!」

『二度と神々に逆らえぬよう徹底的に潰してしまいましょう』


トモコとヴェリウスがまた不穏な事を言っているが、手を下すのは私なのだ。勘弁してほしい。


さて、神罰の為の材料を用意しないとね。


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