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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第4章

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211.次の狙いは深淵の森!?


「竜人達がジュリアス君の神域に侵攻するといっても、結界張ってあるんだよね?」


そうジュリアス君を見れば、目をそっとそらされた。

いやいやまさかね…と思い精霊さんに目を移すと困ったような顔で私を見てくる。


「結界は張っています。しかし、ジュリアス様は神域から神の力が漏れないように張っているだけで…その、どんな人間であろうと神域内に入ってくる事は可能なのです。あっ勿論神殿にはきちんとした結界は張っていますが」


精霊さんの微妙なフォローだが、それにしても何故神域に不可侵の結界を張っていなかったのだとヴェリウスが問うと、ジュリアス君曰く、神聖な場所という認識や神への畏れの為か、人間が神域に入ってくる事はほぼ無く、神力の節約も兼ねて複雑な結界を張らなかったのだとか。

魔素が満ちてから神力の節約もしなくて良いのではないかと思ったが、最近は色々忙しくそんな事は頭の片隅にもなかったらしい。


『馬鹿者が! 聞いて呆れる。それでも創生神の一柱を担う神なのか』


ヴェリウスは信じられないと言わんばかりの態度でジュリアス君を叱る。

情けないと嘆きながらふさふさの尻尾を床にバシンバシンぶつけているのだ。


「まぁまぁ。結界ならすぐに強化出来るだろうし、神域内に入れないと分かれば竜人達も諦めるでしょう」


楽観視していると、ルーベンスさんとロードがそれに渋い顔をしていたので小首を傾げる。


「え? 結界強化出来ないの?」


何なら私がやりますよと二人を見るが、眉間にシワが寄っていて不安になってきた。


「すぐに結界を強化するにしても、神域に侵攻するという愚かで短絡的な思考しか備えていない者が諦めるとは思えないが……」

「十中八九、深淵の森をターゲットに変えて侵攻してくるだろうな」


何で深淵の森(ウチ)がターゲット!?


「ロヴィンゴッドウェル第3師団長の考えは十分に有り得る事だろう」


ロードの言葉にルーベンスさんまで納得している。

普段仲が悪いくせにこういう時には意見が合うのだなと感心する。


『ふむ、深淵の森は現に人間も入った事のある地。条件すら分かっておらぬ様子だ。魔神の神域に入れぬのならばと深淵の森に鞍替えしてもおかしくはない』


成る程、そういう…って、それはあまりにもお粗末すぎやしませんかね。それに、バイリン国は確か……


「そもそもバイリン国は今、神の怒りを買ったとして王族は処刑されフォルプローム国に支配されたはずでしょ? にもかかわらず神域侵攻を行おうとするのはおかしくないかな? 前の二の舞じゃない?」

「だからこそだろ。フォルプローム国は自分達の手を汚さずバイリン国の者に神域へ侵攻させる。失敗しても罰を受けるのは侵攻した竜人達だけだと思っている」


何それ。指示しているのはフォルプローム国だけど、動くのはバイリン国の人だから無茶苦茶するって?

自分の国の民を人身売買するだけじゃあきたらず、人族の国に戦争をしかけようとするわ神域を侵攻しようとするわ、フォルプロームの指導者は腐りきってるの?


ロードの話にムカムカしてきた。


『ミヤビ様、ご安心下さい。フォルプローム国には現在ショコラとマカロンを監視にあてております。神を恐れぬ痴れ者を炙り出す事にそう時間はかかりません』


ヴェリウス有能過ぎる!!

最近ショコラとマカロンに会わないと思ったら、フォルプローム国に出張していたのか。


「神王様、オレは直ぐにでも神域の結界強化に戻らせてもらっても良いでしょうか?」


ジュリアス君が私の前に跪いてそう伺いをたててくるので頷いて応える。

今はここに居ても仕方ないし、すでに侵攻されてるとかだとシャレにならないからね。

精霊さんにもジュリアス君に付いていくよう伝えたら、深々とお辞儀をされた。

そして二人は急いで帰っていったのだ。



「……神王、さま…?」


ジュリアス君が私の事を神王様と呼ぶのはいつもの事だったので大して気にしてもいなかった為、私はルーベンスさんの小さな呟きにも、顔色の悪さにも、この時気付かなかった。





『ミヤビ様、お耳に入れておきたい事が一つ…』


たった今精霊から情報が入りましたと、ヴェリウスから声がかかる。

ヴェリウスの精霊が未だにどういう姿をしているのか知らないが、この部屋に私達以外の姿がないという事は念話があったのだろうか。


『リンがフォルプローム国の王子であるという事が、第1師団長を務めている竜人の男の耳に入ったようで、拘束されたと…』

「リンが!? 何で拘束されるの!?」


ロードを振り返り聞けば、そういやぁレンメイの野郎バイリンとフォルプロームについて調べていたな…などと呑気にのたまうので呆れるしかない。


「とにかく、手荒な真似は駄目だと思うけど!?」

「仮にも王子だぜぇ? 手荒な真似はしねぇだろ」


落ち着き払った様子に、もしかして予測していたのか? と疑いの眼差しで見つめる。


「可愛すぎるからそんなに見つめんなよ」


デレッと表情を崩し頬擦りしてくるが、剃り残しなのか時間が経って生えてきたのか髭がやすりのようにジャリジャリして痛い。


「レンメイもムキになってたからなぁ。自分なりに情報を集めてたのかもしれねぇが、まさかリンがフォルプローム国の王子だった事を嗅ぎ付けるとはな~」


軽い。自分の部下が拘束されたというのにこの軽さ。


「自分の部下が拘束されたんだよ!? 抗議しに行かないとっ」

「いや、今城の外に出すのは危険だ。レンメイが調べて分かったぐれぇなら、フォルプローム国もリンの事を知っちまったはずだしな。それならレンメイに拘束されてこの城に居る方が安全だろ」


ま、アイツもそう思って拘束したんだろうがな。とあのロードがまともな事を言っているので度肝を抜かれた。

しかし一つ分からない事がある。


「リンが危険って、フォルプローム国に何で狙われてるの?」


リンは王子と言ってももう一般人として育ってきているし、本人も自身が王子という事を知らないわけだ。なのに今更リンが王子だからといって狙われるという事に結びつかない。


「あのな、いくら本人が一般人だと思っていても王子という事実に変わりはねぇだろ」


ロードの言葉に頷けば、今回神域侵攻を指示した馬鹿はフォルプローム国の中枢に巣くっているのは間違いない。ソイツが王子(リン)の存在を知ったとしてそばにおいておけば、何かあった時に責任を押し付ける事が出来るだろう。と難しい話を噛み砕いて説明してくれるので、成る程。とうんうん首を縦に振る。

それに、と一旦言葉を切るとうんざりしたような顔でもって私を抱き締めた。


「そういう奴にゃあ反抗勢力が必ず居る」


生き残りの王族ってなぁ馬鹿共に狙われるもんなんだよ。と教えてくれたロードの頭を撫でておいた。


『リンには眷属の一人を付けますのでご安心下さい。それよりミヤビ様、今回の事の発端は貴女様の軽はずみな行動からだという事をお忘れではありませんか?』


ヴェリウスの周りの温度が下がった気がした。

マズイ。これはお説教ママモードのヴェリウスだ。


「アハハ。みーちゃん観念しないとね~」


人(神)の不幸を笑うトモコを恨めしく見れば、一緒に居れば問題しか起こさんので研修を理由に離せば、結局問題を起こされる始末。しかも両方で。2倍になるなど聞いていないとブツブツ言い出したヴェリウスに、トモコも問題起こしたんだ…と初めて知ったのである。


申し訳ないとは思うが後悔はしていない。ちょっと後始末にルマンド王国を巻き込んでしまったが、ルーベンスさんも怒ってはなさそうだし? と心の中で言い訳を並べてみる。


ルーベンスさんといえば、さっきから随分静かだな。と彼に視線を移すと、何故かこちらを凝視しているではないか。しかも青白い顔で。


「ルーベンスさん? 体調が悪いんですか?」


言えば皆がルーベンスさんに注目するわけで…しかし彼は口をハクハクさせたが言葉が出てこないのか何も聞こえない。


「ッ……」

「ルーベンスさん?」


もう一度名前を呼べば、絞り出したような声で恐る恐る言ったのだ。


「ミヤビ殿は……“神王様”なのかね?」

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