208.訳もわからぬ間に
ジュリアス君も美女も土下座したまま動かないんだけど。
どうしよう。私もおなじように正座してみたらいいんだろうか。というかこの世界に来てから土下座をよく見る気がする。
「ジュリアス君? 精霊さん? 顔を上げて立って欲しいんだけど…」
「オレはっ 神王様に顔向けができませんから!!」
えーー!?
頑なにジュリアス君はそう言って額を床に擦りつけている。
「ちょ、止めよう? もう十分謝罪はもらったから」
少年マンガの主人公のようなジュリアス君は、潔いのだが猪突猛進過ぎて融通が利かないところがあるようだ。
「ジュリさん、話が進まないから顔を上げてソファに座った方が良いよ~。神王様困ってるから」
そうトモコの助けが入り、ジュリアス君と美女はやっと顔を上げてソファに座ってくれたのだ。
「えー…と、」
何を話したら良いのかわからず考えを巡らせていると、トモコがまた助けを出してくれた。
「みーちゃん、とりあえず二人で話してもらった方がいいかも~」
「そうだね。二人での話し合いは必要かもね。私は謝罪もしてもらったし、何の問題もないから二人でじっくりお話して下さい。あ、ジュリアス君は神域に人間が侵攻してきてるって事だからその対策も話し合ってね」
そう伝えてトモコと、執事のように入り口に立っていた長老と共に一度深淵の森へ戻る事にした。
「長老、ジュリアス君への連絡ありがとう」
転移扉を開けて待っていてくれる長老にお礼を言えば、眦を赤く染めて嬉しそうに「私は神王様の執事で御座います故、当然の事をしたまでです」と言われた。
執事とか初耳なんですけど。
「長老もしかして図書館に寄付した執事マンガ読んだ?」
「勿論、神王様からの物は全てに目を通しております」
マンガに感化されてるーー!?
「無論村の皆も目を通しておりますので、執事、メイドの育成は完璧でございますよ」
と良い笑顔で言われたのだった。
◇◇◇
2時間が経った頃、ジュリアス君だけが転移扉をくぐって深淵の森へとやって来た。
どうやら精霊さんは店に置いてきたようだ。
「ジュリアス君」
「神王様、ありがとうございましたっ」
頭を下げるジュリアス君に小首をかしげれば、お互いにじっくり話す事が出来たと感謝された。
「そっか。……あの、今更なんだけどさ、何でこんな大事になってるのかな~って。色々急展開すぎてついていけてないんだけど」
「みーちゃん、終盤に差し掛かってそれ!?」
トモコがツッコむがよく考えてほしい。
私は不審者が現れてアラームが鳴り店に行ったら、急に不審者から怒鳴られた。で、謝罪された。それだけである。
トモコは何故か訳知り顔で話しているが、私にはさっぱり分からない。
いつの間にか流されるようにジュリアス君を呼んで土下座されて今に至るのだ。
誰か詳しく説明してほしい。
『ミヤビ様、ここは私めがご説明致します』
私の影からにょきっと生えた…現れたのは、説明上手で博識な我が家のペット、ヴェリウスだった。
『しかしここでは詳しく説明しようにも役者が揃っておりませんので王宮へ移動致しましょう』
何故王宮に? と頭の上にハテナマークを浮かべながらも皆で転移する。その際ヴェリウスに、あの精霊もお忘れないようにと言われたので精霊さんも一緒に王宮へとやって来た。
「!? こ、ここは…っ」
突然の転移に驚いたのか、精霊さんは周りをキョロキョロ見て焦っていたが、私達の姿を見つけて慌てて跪いている。
『ミヤビ様、こちらへお願い致します』
ヴェリウスが移動し始めたので、他の皆と目を合わせて頷き合いヴェリウスの後について歩き始めた。
誰も居ない廊下を暫く歩いているとヴェリウスはある扉の前でピタリと止まったのだ。
何処かで見た覚えのある扉だと思ったが、王宮の扉は全部似たようなものかと思いヴェリウスに注目していた。
すると中から扉が開き、誰かが出てきたのである。
「お待ちしておりました。神獣様、魔神様、ミヤビ殿、そして精霊様」
出てきたのは、
「ルーベンスさん?」




