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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第4章

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204.北の国の魔族


意味深風にステータスを思い出してしまったが、もう魔族の国は無くなってしまったのだからルーベンスさん達もルマンド王国にいるわけで、カルロさんもすでに王様ではないのだ。


今や元部下のルーベンスさんがカルロさんの上司にあたるわけだから働きにくそうではあるが、仲は悪くないのだろう。


悪いどころか、ルーベンスさんのステータスにもカルロさんに忠誠心があるような事が書いてあったし、なんならルマンド王国の王様よりカルロさんの方が大事かもしれない。


も、もしやこれは……ッ 腐臭!?

滅びた王国の宰相と王様はたった二人生き残ってしまった。

宰相を想いつづけていた王様は、国の滅びと共に自分の想いにも蓋をして…的な?


「…みーちゃん、」


宰相には沢山の妻がいるが、本当に愛しているのは実は王様だけ…みたいな?


「おーい、みーちゃ~ん?」


くぅーーっ なかなかに良い!! カルロさんは女遊びに興じてルーベンスさんへの想いを忘れようとしてるんだね。


「もしも~し、妄想に浸っている所悪いんだけどね、丈のお直しをお願いしたいんだけどな~?」


トモコの声にハッとして「あ、はーい」と返事をすれば、試着室でパンツを試着していた女の子がもう少し丈を短くして欲しいとお願いしてきたのだ。


「では少し折り曲げますね~」


と安全ピンを持って試着室の前で屈めば、女の子が「お願いします」と丁寧に返してくれた。

人族の子だろうか。鱗や耳、尻尾も見当たらないのでそう思いながら調節して安全ピンでとめると、「気を付けて脱いで下さいね」と伝えカーテンを閉めたのだ。


「あの女の子、魔族の子だったね~」


トモコがまたステータスを覗き見したらしい事に呆れる。

しかし、魔族の子と聞いて驚いた。


「魔族って人族と外見は変わらないよね」

「そうだね~。ルーベンスさんもカルロさんも魔族だけど人族との区別がつかないし」

「確かに」


頷いていると、トモコが意外な事実を教えてくれた。


「みーちゃん知ってる? ルマンド王国って北の国(・・・)の魔族が多く住んでるんだよ~」

「へぇ。何で?」

「なんでも、北の国にあった魔族の国で魔素の枯渇が原因の流行り病が広がったらしくてね、特に魔力が多かった王族や貴族が次々と死んでいったそうなの」


何となく気になった事もあり、お客様もまだ試着室から出てこないしと続きを聞く事にした。


「そんな時に当時の王様を、民の為に生かそうとした人達が、自分たちの魔力を王様に捧げて延命させようとしたんだって」

「延命って……。魔力を捧げて延命なんて出来ないよね? だって元々持ってる器の大きさは変わらないんだから、どんだけ魔力を与えられても意味ないんじゃ…」

「それを当時の人は知らなかったんだろうね~。だから王様に魔力を全部捧げちゃったの」


魔素が枯渇している時代に魔力を全て渡せば死んでしまう事は分かりきっていただろうに、意味が無い事とは知らず行動にうつしてしまったのか…。


「その時おかしな事やってるな~って、偶々その様子を伺ってた魔神(ジュリさん)が、あまりにも悲惨すぎる状況に救いの手を差し伸べたわけですよ」


いや、そこは止めようよ。

とツッコんだら、様子を見始めた時にはもう魔力を捧げていたそうだ。


「そこまでして無駄死にしたなんて、死んだ者もうかばれないだろうって事で、その国の魔族を保護したんだって」


へぇ~と相槌をうちながら、トモコは何故こんな話を知っているのかと不思議に思ったが話の腰を折るのもなんなので続けてもらった。


「ただ、北の国の環境はあまりにも過酷だったの。何しろ雪に埋もれて植物も育たない南極みたいな場所だから、そのせいで神の力を予想外に多く使っちゃって維持が難しくなったんだって」


あ、自分の神域で保護したわけじゃないんだ。

てっきり魔族皆を神域に転移させて保護したのかと思ったんだけど。


「あのね、みーちゃん。魔素が満ちても大人数を転移出来る神なんていないよ。そんな事が出来るのはみーちゃんだけ」


顔に出ていたのか、そんな風に言われてゴメンと謝るはめになった。


「まぁそんな状況だから、魔族達にまだマシな環境の場所へ移動してもらおうと思ったみたいでね。北の国の魔族はルマンド王国に大移動してきたらしいの」

「それでルマンド王国には北の国の魔族が多いってわけなんだね……ん? その話どこかで……?」



トモコの話に何かが引っ掛かったが、試着室のカーテンが開きお客様が出てきた事で思考は途切れたのだ。


「お疲れ様でした。ではそちらのパン…ズボン、お預かりしますね」


お客様からズボン(パンツはこちらの世界では下着の意味しかないらしい)をお預かりして安全ピンの位置を確かめつつ2階の仕事部屋へと向かう。

裾あげなら直ぐに出来るので、会計をしている間に作業をする為だ。


そうしてミシンをかけている時、ハッと思い出したのである。


「さっきの話…もしかしてカルロさんとルーベンスさんの?」

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