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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第4章

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196/303

194.開店です!!


さて、私達の服屋だがどうなったかといえば━━…




狭い間口には大きな透明なガラスがはめられ、真ん中の入り口もガラスでできている為、一階は入り口側が全面のガラス張りで室内が通りからでもはっきり見える。

ガラスの周りは黒褐色の木材で出来ており、二階から上は真っ白で統一されて何ともスタイリッシュである。


ガラス自体には割れないよう魔法が付与されており、盗みに入ろうものなら即珍獣村に通報される仕組みだ。アルソッ○やセ○ムのように。

とはいえ、犯罪者が店に侵入する事は不可能といえよう。

何故ならば、やましい気持ちのある者は店自体認識しにくいように結界が張られているからだ。


と、このように外観と防犯面は素晴らしい仕上がりになっている。

サンショー兄さん率いる大工集団は良い仕事をしてくれた。


「みーちゃん!! 外観はばっちり写真に収めたから、次は中を見ようよ!!」


スマホでパシャパシャと写真を撮りまくっていたトモコが、私の手を引いて早く中に入ろうと急かしてくる。

その輝く瞳に負けて、わかったわかったとガラスで出来た扉を開けた。

入り口の取手はガラスの周りと同じ黒褐色の木材で出来ており、さわり心地が良い。


「うわぁ~!!」


白い壁に白っぽい木材を使ったヘリンボーンのフローリングの床と、まだ商品を何も置いていない空間とが相俟って意外と広く感じる。

棚を設置する為にも耐震強化の為にも必要だった壁側の柱は、黒褐色系の暗いトーンのレンガで装飾されて、真っ白な空間のアクセントとなりお洒落だ。


ヘリンボーンのフローリングが可愛くて顔が緩む。


「良いね~。入り口のサイドにトルソーを置いてディスプレイすれば目を引くし、この棚にはブラウス系を置いて、こっちにはワンピースやスカートを掛けて~」


とスマホで写真を撮りながらニヤニヤするトモコの言葉に頷きつつ、今までコツコツ縫い上げてきた服をディスプレイした様子を思い浮かべる。


ああ、最高だ。


「異世界だから服のニュアンスがそっちになっちゃったけど、とうとう夢が叶うんだねぇ」


スマホをポケットにしまったトモコは、ぐるりと店を見渡してふにゃりと微笑んだ。

その蕩けたような笑顔は万人を魅了してやまないだろうな。と頭の隅に浮かんだが、それを独占している私は贅沢者だと思うと、どうにもおかしくなって吹き出してしまった。


「みーちゃん?」と驚かれたが、今日から準備で忙しくなるよ!! と誤魔化し、奥へと進んだのだ。


奥には試着室と、柱と同じレンガの装飾がされたカウンターがあり、その後ろが壁になっていた。黒褐色の木の扉があるのでそこからバックヤードとして使用する部屋や階段へと行けるのだろう。


その扉を潜り、バックヤード用の部屋を覗いて階段を上がる。

二階には大きな作業台と業務用ミシンにアイロン、トルソーが置いてある私の作業部屋と、数々の生地が棚に並べられた生地置き場、そしてトモコのデザインルームの3部屋があり、そこからさらに階段を上ると机、ソファなどが置いてある休憩室、給湯室等の部屋がある。


それらを一通り見終わってからまた一階へと降りたのだ。


外に出ると、この店舗作りに携わってくれたサンショー兄さん率いる珍獣大工のお兄さん達が待っていた。


「どこの部屋も可愛くてとっても素敵!! 皆ありがと~!!」


キャーキャー言いながら珍獣大工達と握手するトモコに、珍獣大工達も照れ笑いを浮かべながら対応している。


「本当に最高だよ!! 素敵なお店を作ってくれてありがとう!!」


私もトモコに続いてお礼を言えば、珍獣達は皆感激して泣きだした。

ご近所の人におかしな集団だと思われるから泣くのは勘弁していただきたい。


トモコはそんな珍獣達におしぼりを配って一人一人に声をかけ余計泣かしている。


そんな皆の様子を眺めながら、完成した私達の城を見上げにんまりと目を細める。


その先に透けて見える空は青く青く広がって、まるで世界が祝福してくれているようにも見えたのだ。



さあ、開店は一週間後だ。

これから慌ただしくなるぞ━━!!



◇◇◇



棚よーし、トルソーよーし、ディスプレイよーし!

カウンターの準備もよーし!!


値札も付けたし、お釣りも用意したし、品数もバッチリだ。

一枚作れば後はいくらでもコピー出来るから在庫も十分である。


新築の匂いのする室内には、トモコがデザインして私が作った服が所狭しと並んでいる。

この世界仕様のデザインとサイズで作った色とりどりの洋服達は絶対受け入れられると自信を持ち挑む。


「トモコ~準備はいいかー!!」

「おぉ~!!」


隣でそわそわしているトモコに声を掛け、二人で気合いを入れる。

さぁ、“この世界初の既製洋服店”。開店だ!!



入り口扉にはオープンクローズの札がぶら下がり、今はクローズになっているそれを、オープンにする為に外へ出れば、一階と二階の間の壁に大きく掲げられた看板が目に入った。


“ミヤビとトモコの服屋さん”


まんまやーん!! と思ったアナタ!! この世界はね、お隣の“トリミーの茶葉専門店”という看板からも分かるように、自分の名前と何屋さんかを看板に掲げるのがルールなのだ。決して面倒がったり、安直な名前しか考えつかなかったわけではない!


「ミヤビちゃんおはよう!! とうとう開店だね!!」


同時刻に開店するトリミーさんも、10時の鐘がなって外に出て来て声を掛けてくれる。


「おはようございます! とうとうですっ いや~いい天気で良かったですよ~」

「そうだねぇ、本当に雲ひとつない青空だよ! あ、私も休憩に入ったら買いに行かせてもらうからね!」

「ありがとうございまーーす!!」


トリミーさんが買いに来てくれると聞きかなり嬉しい。

なんて良い人なんだと心の中で感激していると、


「古着でもないのにその場で新品の服が安価で買えるなんて、こんなに嬉しい事はないよ!!」


そう言われてにんまりしてしまった。


「はい! それがウチの特徴なのでっ」


そう、この世界のファッションは、貴族はオートクチュールのドレス。商人や裕福な家は貴族のお古かオートクチュールのワンピースやブラウス、スカートなどで、庶民はそういった人達が使いふるした古着なのだ。

つまり、庶民に新品の服は買えない。

決して着てはいけないわけではないが、オートクチュールになる為、値段が高く手が出ないのが現状だ。


初めて会った頃のロードも、買えないわけではないだろうに、古着を着ていた事を思い出す。


お針子の数が足りないというのもあるだろうが。


というわけで私達はそこに目を付け、庶民専門の既製服屋を開店するわけだ。


「…ところでね、ミヤビちゃん」

「はい?」


声を潜めて私に何か伝えようとするトリミーさんに小首を傾げる。


「あそこの角……一つ前の鐘が鳴ってる時からずっとあそこに立ってる怪しい人影があってね…」

「え!?」


驚いて言われた場所を見ようとしてトリミーさんに止められた。


「しっダメだよ。目を合わせたらこっちに来るかもしれないだろう? 洗濯物干してる時に気付いてね……頭から顔を隠すようにローブを被った大男だよ」

「大男!?」


何それ。怖い。


「ありゃ男で間違いない。肩幅も背も大きいしがっちりしてる。どうやらミヤビちゃんとこの店を伺ってるみたいだから気を付けな。なんなら騎士様呼んでこようか?」


ウチが狙われてるのォォ!?


「あわわッと、とりあえずトモコにこの事を伝えてきますゥゥ!!」

「そうだね!! 何かあったら私に言うんだよ!!」

「何もない事を祈っててくださいィィーッ」


トリミーさんの話を聞いて慌てふためきながら駆け込んだ店内では、トモコがお釣りの貨幣を数えていた。


「あれ? どうしたのみーちゃん。そんなに慌てて…」

「ふ、不審者ァァ!! 不審者が居るゥゥ!!」

「不審者~?」



二人、店内の物陰に隠れながらトモコにトリミーさんに言われた角を見るよう促す。


「あそこ……ローブ被った人が一つ前の鐘からずっとこっちの様子を伺ってるって」

「どれどれ~…。あ、本当だ……ん? ……みーちゃん、」

「な、何!? 何か動きあった!?」

「違う違う。あの人さ、ロードさんだよ」

「ロードサンダヨ??」

「いや、みーちゃんの旦那さんのロードさん。第3師団長で鬼神のロードさん」

「は…?」


……ええェェェ!!!?


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