189.影響
「2メートルだろうが5メートルだろうが今なら大丈夫だ!! お前らっ狩って狩って狩りまくれェェ!!」
アフィラートさん急にどうしたァァァ!!!?
「狩りまくれって言われてもあんなデケェの全員でかかって2匹狩れりゃ良い方だっての!!」
ベンジャミンがアフィラートさんの雄叫びに大声でツッコみ、空からの攻撃を避ける。
カカカカッ と地面に突き刺さる幾つもの羽根。ベンジャミンの爪先ギリギリにも突き刺さっている。
そう、ヤコウ鳥は攻撃を仕掛けると羽根の一枚一枚を刃物のように硬く鋭くして飛ばしてくる。
まるで刃の雨のようにだ!
オーズさんとベンジャミンは雨のように降ってくる羽根の刃を剣で叩き落としている。
彼らの周りには無数の羽が地面に深々と刺さり鈍く光っていた。
転んでしまうと串刺しになり命取りだろう。
「あの野郎、マジックバッグの作製に成功したからって調子に乗りやがって…そのせいで魔力が空っぽで狩りの役にも立ちゃしねぇっ」
マジックバッグぅぅぅ!? いやいやいや、あれは魔力30以上ないと作れないよ!? アフィラートさんの魔力は昨日の時点でMAX28
だったでしょ!? どうなってるの!?
ヒューズさんの逃げまどいながらのボヤきに、サンショー兄さんの上で呆けているとこちらにまでヤコウ鳥の羽根の刃が飛んできた。
しかしサンショー兄さんに当たった羽根はぷにっと軽く跳ね返り、ぽろぽろと落下していく。
サンショー兄さんは少しくすぐったかったのか身をよじった後、私に当たらないようにその場から離れたのだ。
「サンショー兄さん、私は当たっても結界があるから大丈夫だよ?」
「クルルゥ…」
等と会話している間にティラー姉さんが「ギャオォォ!!!」と咆哮をあげ、5匹居るヤコウ鳥のうちこっちに羽根を飛ばしてきた1匹をバクリッと食べたのだ。
ティラノサウルスの補食シーンを生で見てしまい、あまりの事に目を見開いた。
ティラー姉さんの口の端からふわふわの羽根が舞い、刃化した羽根はジャラジャラと地面に音をたてて落ちる。
「「「「…………」」」」
一瞬の静寂が訪れるが、次の瞬間にはヤコウ鳥達が一斉に逃げ出した。
「っ逃がすかよ!!」
ヒューズさんが矢にロープを付けて放ち、ヤコウ鳥の体の上を少し通り過ぎた所でロープを少し引けば胴体に上手い具合にぐるぐると巻き付いた。そこを思いっきりオーズさんと共に引っ張り地面へ落としたのだ。
大きな音と共に土埃が舞ったが、それを物ともせずベンジャミンが首を切り落とした。
「よしっ」
何もしてないアフィラートさんがテンションの上がった声を出す。
「アフィラート!! 解体頼むっ」
土埃が晴れ、ベンジャミンがアフィラートさんを呼んだ。他の二人は地面に突き刺さった羽根を拾い集めている。
「オーズさん、その羽根集めてどうするんですか?」
「ヤコウ鳥の羽刃は剣やナイフの原料になるからな。良い値で売れる」
「だからわざと怒らせて攻撃させんだよ」
良い値で売れるだと!?
それは良いことを聞いた。
冒険者ならではの知識を聞きながらハッとする。
「ティラー姉さん、もしかして私がヤコウ鳥に攻撃されたから怒って食べちゃったの?」
ティラー姉さんがおっさん達の狩りの邪魔をしてしまった事を思い出して、先程の行動の理由を聞く。
「ギャォ…」
怒られていると思ったのか、力無く鳴いたティラー姉さんに手を伸ばす。すると顔を近付けてくれるので鼻先を撫でる。
ゴツゴツしているイメージのティラノサウルスだが、肌は思ったよりは柔らかい気がする。
「怒ってないよ。私の心配してくれたんだよね?」
「ギャウゥ…」
「次からはもう少し離れて見学するね。オーズさん達もごめんなさい」
ヤコウ鳥の流れ羽根にあったのも、近くで見学していた私が悪かったのだと謝れば、「分かってんならもういい」と責められる事はなかった。
暫く、落ち込んでいるティラー姉さんを慰めていたら「よしっ コイツらマジックバッグに入れるぜ」とアフィラートさんの声が聞こえてきて、そういえば魔力量!! とアフィラートさんのステータスを見た。
昨日はMP: MAX28と表示されていたはずが、今見るとMP: 1/MAX31に変わっていた。
一日で3アップって一体何が起きたの!?
と思ったら、
※深淵の森で魔力が尽きた場合に限り1アップされる。神王のそばでのみ更に2アップ
と注意書きがあった。
て事は、今回また深淵の森で魔力が尽きて、私がそばに居るからさらに3アップするって事…?
これ、まずくない?




