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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第1章

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18/303

18.ピンチは必ずやってくる

「ミヤビ様っお願いします! どうか…っこのままではあの人が…っ」


額を地面につけ、必死で言い募る金髪の青年はよく見ると急いで来たのであろう、枝に引っ掻けたのか服が所々破け、靴は土で汚れて先の方には穴が空いている。


しかも頬が痩け、顔色も悪い。目の下には隈も出来ており、眠れていない事がわかる。


ロードもそうだったが、この国の人は身に付ける物があまり綺麗ではないらしい。

靴も服も古着を使用しているようだ。

物価が高いのだろうか?


『ミヤビ様、いかがいたしましょうか?』


ヴェリウスが青年を警戒しつつこちらを見てくるが、

どうすると言われても…私の名を知ってるって事はロードの関係者だろうし…何か切羽詰まってる様子だけど絶対厄介事だよなぁ。


ロードの奴…何巻き込んでくれてんだか。


「ミヤビ様! どうか師団長だけでもお助け下さいっお願い致します…っ」



師団長を助ける?

どういう事……?


『ミヤビ様?』


ヴェリウスの横を通り窓に手をかければ、何故という表情でヴェリウスが首を傾げる。


「このままでは師団長が…! ロード様が死んでしまう…っ」


は…?

死ぬ?

誰が?


『ミヤビ様っ人間に近付いてはなりませんっ』


今、ロードが死ぬって言った?


窓を開けて外に飛び出す。結界を通り抜け青年の前へ姿を現すと、青年からは突然現れたように見える私に、やはり驚いて目を見開いた。


土下座状態のまま私を見上げる青年の前で先程の事を問う。


「ロードが何だって?」


「み…ミヤビ、さま…?」


呆然と呟いた声に、つい急かしてしまう。


あれだけぴんぴんしていたオッサンが死んでしまいそうとかあり得ないだろう。一体あのゴリラに何があったんだ…。


『ミヤビ様!』


私を守ろうと、元の大きさに戻ったヴェリウスが青年と私の間に入るが構わず話を促した。


「何があったの?」

「っ…る、ルマンド王国が…いえ、世界が滅亡の危機に瀕している事はご存知だと思いますが…」


え゛…初耳なんですケド。


ちょ、この世界滅びそうなの? 世紀末なの?

ロードの前に聞き捨てならない事話されたんですけど。



突然現れた巨大な黒犬に戸惑いながらも、恐る恐る話し始める意外と肝の据わった青年に、ヴェリウスも少し目を見開いて様子をうかがっている。


私が話を聞く態勢に入った事もあるのだろう。


「世界の魔素が尽き、人々に病気が蔓延し…っ我が国の王も遂に病に倒れてしまわれたのです」


苦しそうに話してる所申し訳ないが、“マソ”が何かわからないし、ロードは一体どうなったんだ。

病気が蔓延って、世界中でって事?

あのオッサン、もしかして病気になった…とか?


そんな事をつらつら考えていたが、勿論私の頭の中が覗けるわけもない青年は、そのまま話を続けている。


「そんな時に行方不明だった師団長がひょっこり現れて、王の病気をどこからか手に入れた薬で治してしまったのです」


あ~私が作った薬、勝手に持って帰ってたよな。あのゴリラ。

ヴェリウスの視線が痛い。

そんな目でこっちを見るんじゃありません。


「そこまでは良かったのですが、一部の貴族共がどこからかその噂を聞き付けて、それを寄越せと…

師団長も王もそのような薬は無いと言ったのです。

薬自体、王の病気を治す時に全て使っていましたし、その存在が広まれば戦争も起きかねませんから。

けれども納得しないバカ共はそういう時だけ共謀し、師団長を在りもしない罪で捕らえ拷問して口を割らせようとしました」


拷問!?


「ロードは、勿論ここの事を話したんだよね?」


だって私の事が知られても、結界内に入ってくる事も、ましてここにたどり着くことだって難しいのだから。

ロードだってそれは知ってるはずだ。


しかし、金髪の青年は悲しそうな、悔しそうな顔をして首を横に振った。


「あの人は貴女の事は勿論、薬の事もこの場所の事だって、一言も漏らしていません」


何、で…?

拷問、されたんだよね?


指先が冷たくなって、身体が震えだす。

それに気付いたヴェリウスが寄り添ってくれるが、震えは止まらない。


もう話は止めて家に戻ろうというヴェリウスに首を振り、青年を見据えた。


「…拷問されても何も言わない師団長に業を煮やした貴族共は、今度は師団長の家族を盾に迫りました」


ヒュッと喉がなった。

青年が強く拳を握りしめているのが目に入り、息苦しくなる。



「あの人はそれでも本当の事を話さなかった。貴族共に嘘を教え、私にミヤビ様の事を密かに伝えて……貴女が…っ いつかここに来るかもしれない貴族共に騙されないよう、教えてやってほしいと…っ ミヤビは、人が良いから騙されやすいんだ。と…! あの人はそう言って、」


「っ…」


青年の話が終わらない内に、ロードの元へと繋がる扉を能力で出し、取っ手をぎゅっと握った。


心臓が、まるで耳の横にでも移動したんじゃないかという位ドクドクいっている。


思いっきり息を吸い込んで扉を開く。


その先にあったのは、薄汚れた暗い場所で…………錆びた鉄のような匂いが充満していた。

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