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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第4章

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177.年末年始は神々の出番


魔素が再び世界に満ちてから半年以上。

私がこの世界に来てから3年が過ぎていた。


この世界も地球と同じ1年365日という周期で回っているようで、つい数時間前に年を越したらしい。

なぜ“らしい”なのか。


それは、私がその話をさっき聞かされたからだ。


この世界の年越しは、年末にそれぞれ信仰する神を祀る教会に皆が祈りに行き、年明けにも教会へ祈りに行くという日本の神社スタイルに近い。

唯一違うのは、祈りに行った教会で神の“存在”を身近に感じる(・・・・・・)という事か。


どうやらヴェリウスだけでなくトモコまでもが忙しくしていた原因がここにある。


実はこの世界の神々は、年末年始は自身を祀る教会へと赴き祈る人々に祝福を与えて回るらしい。

祝福といってもラッキー度がほんの一時だけ上昇する位のものらしいが、魔素が満ちた事により大昔からの習慣だった神々の仕事が出来るようになったんだとか。

なので年末年始の10日間程は神々も忙しく、未だその真っ只中であった。



「ロードは教会行かないの?」

「そりゃどっちの意味でだ」


二人しかいない深淵の森(ウチ)で、ロードのご飯を食べながら他愛もない話をする。

日本でいう元旦だけお休みを貰ったロードは、昨日の夜からさっきまで寝室にこもっていた。私を道連れにして。

そんな事もありお昼を大きく回った今、お昼ご飯を食べているというわけだ。


「うーん、どっちも?」

「適当だなぁ…ま、俺ぁ新米神だから、人間にゃ誰にも知られてねぇだろ。それに神王のつがい神だから祀られてもオメェとセットだろうし、教会に出向く必要はねぇかもな。後、俺が信仰してんのは“神王様”だから教会に行く必要はねぇんだよ」


ロードはニヤニヤ笑いながら膝の上の私を抱き締めた。


「じゃあ私はロードを祝福しないといけないのかな?」

「ばーか、俺ぁ十分オメェから幸せをもらってっからいいんだよ」


あっっッまぁぁぁぁぁい!!!!



◇◇◇



元旦は甘過ぎるロードに砂糖漬けにされたが、翌日の今日は仕事に行ってしまった旦那様を見送り、知り合いの所へ挨拶回りに行く事にする。

お土産は、ロードの作ってくれた一口大のきな粉餅、あんこ餅、ずんだ餅である。後は緑茶と準備は完璧だ。


まずはルーベンスさんの所にお邪魔する事にした。


いつも通り王宮の執務室に転移すれば、やはりワーカーホリック気味のルーベンスさんはお仕事中である。


「明けましておめでとうございまーす!!」

「……あけ?? それは一体何の挨拶だね? 何がおめでたい??」


お正月の挨拶は通じなかったらしい。


「ルーベンスさん年明け早々にお仕事ですか? 王都のお店も明日まではお休みなのに」

「王宮まで働かなくなれば誰が国を回していくというのだね。王宮は通常と変わらん」

「へぇ。あ、今年明けの挨拶に回ってまして、これお土産です」


と風呂敷に入れた重箱を掲げればルーベンスさんの目が光った。


「ふむ、年明けの挨拶とは感心だな。そろそろ休憩しようと思っていた所だ。お茶をいれよう」


いそいそと立ち上がるので「お茶も珍しいのを持ってきたんですよ~」と茶器と茶葉をいつもの机へ並べれば、興味を持ったようにやって来た。


「見た事がない茶器だな」


覗き込んでくるルーベンスさんに「珍しいでしょ」と笑いながらお湯も持参したものを出してお茶をいれていく。水は大事なのだ。緑茶には軟水が合い、口当たりもよくなる。

じっとその様子を見つめている姿は子供のようだ。


「緑とは、なかなか美しいな」


いれ終えた緑茶をルーベンスさんの前に置けば、まず見た目を楽しみ、香りを楽しんでから少し表情をゆるめて口に含む。分かってらっしゃると頷きながら見ていると、


「…紅茶よりも香りは主張せず、飲みやすい。甘味もある。口当たりも良く味わい深い茶だ」

「緑茶って言うんですけど、紅茶と同じ茶葉で作られているんですよ」


お重を開けながら私の浅い緑茶知識を披露する。


「同じ茶葉で色も風味もこれ程変わるとはな」


と素直に驚いてくれるルーベンスさんにドヤ顔だ。


「洋菓子には紅茶が合うんですけど、今日のお菓子はお餅なので緑茶にしてみました」

「オモチ…? 」

「はい。ロードに作って貰った美味しい食べ物です! 味付けは色々出来ますが、今回は甘めのお餅です」


ロードが作ったという所で嫌そうな顔をしたが、それはいつもの事なのでスルーした。


重箱から小皿へ、団子程の大きさのお餅を三種類取り、菓子楊枝を付けてルーベンスさんの前に出せば戸惑ったようにこっちを見るので、フォークやナイフの代わりに菓子楊枝を使って召し上がって下さいと見本を見せる。

すると面白そうな顔をして食べ始めたのだ。好奇心を押さえられないその様は、まるで少年のようだった。


最初は恐る恐るだったルーベンスさんだったが、お口に合ったようであっという間に取り分けた3つを食べきった。

彼が特に気に入ったのはあんこだったらしく何度もお代わりしていた。


「そういえば、ルーベンスさんは教会に行ったんですか?」

「? まだ行けてはいないが」

「今日を入れて後4日間の内に行けばラッキー度が少し上がりますよ。一時的にですけど」

「は?」


私の話に怪訝な顔をするので、ロードに聞いた事を教えてあげれば益々怪訝な顔をされる。


「あ、裏技で自分の種族の神様の神域前で祈れば教会より強い祝福が貰えるらしいんで、ルーベンスさんはバイリンまで行かないとですね~」


等と笑っていれば驚愕された。


「待てっ 何故バイリンになる!? 私は魔族だぞ。竜人族ではないのだが?」

「え? バイリンにある神域、魔神の神域と竜神の神域ですけど?」


この時の、ルーベンスさんの顔は今まで見たこともない位驚きに満ちた表情であった。


あれ? これ言っちゃダメだったっけ?

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