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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第4章

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172/303

170.逮捕されました


死刑だ……死刑だ……死刑だ━━…




禿げ散らかしたおっさんの言葉が頭の中でリフレインする。



「いやいやいや!! ヤコウ鳥は深淵の森に入って狩って来たんじゃないので!! こう、バサバサッと森の外に飛んだ所をバンッと狩ったので法は犯していません!!」

「例えそうだとしても、神域に生息する動植物を狩る事ぁ法に反してるからな。俺だって嬢ちゃんみたいな子供を通報するのは辛ぇさ。でもよ、“ギルドマスター”の俺が規則を破るわけにゃいかねぇんだ……ッ」


本当に辛そうに語るハゲだが、え? ギルドマスター? この禿げ散らかしたおっさんが?


「そんな…っ だってこのままだと死刑になっちゃうんですよね!?」

「っ…嬢ちゃんは子供だし、森の中に入ってないなら死刑は免れるかもしれねぇが……とにかく、騎士様には自分は子供だという事と、森に入ってねぇ事をアピールしろ。そうすりゃ減刑されるかもしれねぇ」


そう言われ、ギルドマスターの部屋に連れて行かれたのだ。




マズイマズイマズイマズイ!!

こんな事がバレたらロードに怒られるだけの問題じゃなくなる!! 下手すればヴェリウスの逆鱗に触れてしまう……ッ


ハゲの部屋で恐怖に戦き震えていれば、いつの間にやって来ていたのか、騎士なのだろう5人がなだれ込んできた。


「深淵の森に侵入した者がいるとは本当か!?」


その中で一番偉そうな人がそう声を張り上げると、ハゲが沈痛な顏で私を見たのだ。


「!? まさか子供が!?」

「そんなっ」

「まだ子供ではないか!?」


騎士達が見るからに動揺し、ざわつき始める。


「拘束しろ」


しかし無情にも、偉そうな人のその一言で私は逮捕されたのだった。





両腕に手錠のようなものをつけられ、リードのように引っ張れる紐がついているそれを引かれながら、騎士達に周りを取り囲まれて歩く犯罪者。


私だ。


頭からは顔が見えないように布がかけられているが、暇をしていたのか寄ってきた野次馬達がこちらを見ながら、「ありゃあまだ子供じゃないかね?」「一体何をしたっていうの!?」等とざわついている。

ここにTVカメラがあったら完璧だろう。


何しろ死刑になるかもしれない犯罪を犯してしまったらしいのだから。



◇◇◇



「お嬢さんは森には足を踏み入れていないが、ヤコウ鳥を狩ってギルドに持ち込んだ、と……」

「はい…」


王宮のとなりにある騎士団の詰所の一角で取り調べを受けている私と、引きつった顔で私がした説明を繰り返す刑事さ…騎士。


「それはちょっと無理があるんじゃないかなぁ。お嬢さんのように華奢な女の子が、2メートル以上もあるヤコウ鳥を狩れるとは、とてもじゃないがお兄さんは信じられないよ?」


とてもじゃないがお兄さんとは思えない後退っぷりの頭に、ハゲ率高いなぁと思いつつ無言で騎士を見る。


「う~ん…お嬢さん、君の保護者を教えてもらえるかい? ちょっとね、今回の件は国を揺るがす事でね? お兄さん今すごーく困惑してるから、保護者の方ともお話しなきゃいけないんだ」


紳士的な対応をしてくれる騎士のお兄さん(?)に、仕方ないと観念して伝える事にした。


「ルーベンス・タッカード・ルーテルです」

「え……ええぇェェェ!!!?」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ルーベンス視点



「宰相閣下!! 大変です!!」


バタバタと足音をたててやって来る騎士に顔をしかめ、書類にはしらせていたペンを止める。


ノックというには乱暴なそれにうんざりしながら入室を促せば、勢いよく扉が開き転がるように入ってきた騎士に眉を寄せた。


「…騒がしいが一体どうしたというのかね」

「じ、実は、“深淵の森”へ侵入した者を捕らえたとの情報が入りまして……その、」


神域への侵入だと? それが真実ならば国を揺るがす事件だが……。


何かを言い淀む騎士に続きを促せば、彼は困惑したように口を動かしたのだ。


「よりによって神域に侵入した者が、保護者は“ルーベンス・タッカード・ルーテル”だ、と」

「……何だと?」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「━━…馬鹿なのかね君は」

「返す言葉もありません」


騎士のお兄さん(?)にルーベンスさんの名前を告げて暫く後、威風堂々と取調室にやって来た彼は、相変わらずの無表情なのにもかかわらず呆れたような雰囲気を漂わせ、キツイ一言を放った。


「神が犯罪者として人間に拘束されるなど前代未聞だ」

「仰る通りで…」


対面に座ったルーベンスさんは、理路整然と私がどれだけ愚かな事をしたのかを説いて聞かせると思っていた。だから殊勝な態度で聞いていたのだが……


「君は私を笑い殺す気かね」

「はぁ……ん? わら??」

「あり得ない事過ぎて腹が捩れる思いだ」


至極真面目な顔をして言っている事がおかしい。


先程宰相然とここに入ってきた人とは思えないような言葉に、驚いたのは私を取り調べていたお兄さん(?)であった。持っていた羽ペンをポトリと落としているではないか。


それにさっきから思っていたが、取調室の粗末な椅子に座っている宰相様は違和感が半端ないのだ。


「それで、君は一体何をやらかしたのかね」

「る、ルーベンス宰相閣下……ほ、本当にこのお嬢さんの保護者様で…?」


話を遮って確認してきたお兄さん(?)の気持ちは分かる。しかしそれに苛ついたのか、ルーベンスさんはお兄さん(?)を睨み付けこう言い放ったのだ。


「私がここにいるという事が答えではないのかね? まぁ、すでに嫁に出してはいるのだがね」

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