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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第3章

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131.光魔法ってやり方によってはエグい攻撃魔法になりかねないよ


「足枷を取ってあげないとね」


エルフの所へ行こうとすれば、筋肉の檻が強固に行く手を阻む。


「いや、動けないんですけど」

「オメェが行く必要はねぇ。トモコかヴェリウスがやってくれる」


ロードは何故か私をあのエルフに近づけたくないらしい。

別に綺麗な男の人が好きで興味を持っているわけではないのだが、疑われているのだろうか。


「言ってんだろ。オメェの心変わりは疑っちゃいねぇって。ただ、他の男につがいを近付けたくねぇんだよ。ま、人族…鬼神の本能だな」

「人族や鬼神って大変だね……」


嫉妬一つ取っても、相手を殺しちゃう位感情が振り切れてしまうって言ってたしな。


「まぁ、行き過ぎてるかもしれねぇが、他の種族だって大して変わんねぇだろ。どんな種族であれ、大なり小なり嫉妬はするしよぉ」

「まぁ確かに」


ロードの言い分に納得していると、鎖が大きく鳴ったのでエルフの彼の方へ目を移す。

トモコが一生懸命足枷を取ろうとしている姿が見えるが、手の平には小さな火球が浮かんでいた。


「トモコ、何やってるの??」

「この足枷をこれで焼き斬ろうと思って」

「そんなもんぶつけたら足枷どころか足そのものが炭に変わるわ!!」


明らかにやってはダメな事をやろうとしているトモコに叫び、止めに入った。


何をやっているんだこの子は。


「え~じゃあ、光魔法に切り換えてレーザーで足枷を切るよ~」


あ~光を増幅して発射したらレーザーだからね。光って電磁波らしいから、電子レンジとかも光魔法で出来るかも。波長を変えれば赤外線や紫外線にも……っておい!!


「レーザーも危なくないかな!? 足ごと切ったとかスプラッタな結果はいりませんよ!?」

『トモコよ、レーザーとは何なのだ? また新たな魔法か?』


今!? ヴェリウス今なの!?


「ああ…神よ…っ このような辱しめを受けてもなお、私に生き続けろと…、そう仰るのですね……」


呆然としていたエルフの彼が天を仰ぎ、涙を流しながらスポットライト(窓から差し込む光)を浴びて嘆いている。

皆好き勝手にやり過ぎてもうどうにも収まらない状態だ。


「何という試練…っ 楽にはさせぬと……っ」


悲劇的な1人芝居は、周りの個性的な神々のせいで喜劇の様相を見せている。

その美しい涙はトモコのレーザー発射を受けて、誰一人注目する事もなかったし、麗しい声で紡がれる台詞はヴェリウスの『おおっ』という感嘆の声にかき消されているのだ。


「可哀想すぎる」

「そうか? 俺ぁ自分に酔ってる滑稽な男に見えるが」


滑稽に見えるのは、滑稽な神々のせいであろう。

そしてあれは自分に酔っているんじゃない。神々に感謝の念を捧げているだけなのに、こっちの姿が見えないから、違う方向に向けて感謝を捧げるハメになっただけなのだ。

可哀想だからそんな穿った見方をしてはいけない。


「━━…だから光魔法は回復だけじゃなく攻撃面でも使い勝手の良い魔法なの」


光魔法の有用性についてヴェリウスに語っているトモコと、嬉しそうに聞き入っているヴェリウスを見ていると、エルフの彼に同情してしまうのも無理はないだろう。



「神の思し召し通り、私は生きることと致します。今後は私をお救い下さった神を奉り、一生を捧げるとお約束致します」


ちょっとぉぉ!? 何かおかしな事言い出してますけどぉ!?


「ロード、この結界を外してっ 何か変な事言い出してる!」


慌ててロードに姿が見えず声も聞こえなくなる結界を外してくれと頼むが、「あ゛?」と嫌そうな声を出してやる気のなさそうな表情をされた。


「私がここに来た目的は、エルフを救い出してエルフの村? に連れていく為!! それを邪魔するなら怒るからねっ」

「…チッ わーったよ。ヴェリウス、トモコ、エルフを拘束して北の国に連れて行くぜぇ」


未だ魔法談義に夢中な1人と1匹に声をかけると、ロードはトモコとヴェリウスの結界を解いた。


え? 私は?


自分とロードの周りの結界だけが解かれず動揺していると、突然姿を現した1人と1匹の姿に驚きを隠せず目を見開いた状態で固まったエルフが目に入った。


「な、んと…っ」


トモコとヴェリウスの姿に、2人よりも神々しいエルフは、ひきつる声を発したと思ったら、土下座をして平伏したのだ。


「ご無礼を、致しました…っ」


そんなエルフの姿に調子に乗ったのか、


「良い。面をあげなさい」


とトモコが発し、ヴェリウスがその美しい肢体を見せつけるようにゆったりと歩き、隣へと腰を下ろす。


「そなたを救ったのは我らを信仰して欲しいからでも、教会を建てて欲しいからでもない」


重々しい声でそんな事を言い出したトモコの様子を見守る事にする。


「は…っ そ、それでは一体私は……?」


平伏したまま少し顔を上げたエルフは、その言葉に動揺しているようだ。


「そなたは、一族の者が今どこに居るのか知っているか?」

「……私は、100年も前に竜人に捕らわれた身です。当時からすでに魔素は枯渇寸前で、仲間は次々と亡くなっていき、同時に狩られ殺される者も少なくはありませんでした。残り少ない一族が散り散りになるのも時間の問題で……」


と首を横に振るエルフは、悲しみを湛えた瞳を伏せると俯いた。


『お主の仲間は今、北の国に居ると聞く』

「!? まだ、生き残りが…っ」


希望の光が灯ったように、エルフの瞳にも光が浮かぶ。


「仲間の元に帰りたいか?」

「っ……帰り、たいです…っ しかし私は、穢れてしまった身。どの面下げて仲間の元へと帰れましょうか」


その言葉にトモコの顔が僅かに歪む。生まれ変わったとはいえ、トモコも同じような目に合ったのだ。聞いているだけでも思い出してしまって辛いだろう。

しかしトモコはそんな事を尾首にも出さず続けた。


「そなたの魂は決して穢されてはおらぬ」


その強い眼差しに、エルフは引き込まれ涙する。

その様子をただ黙って見守っていると、ロードに強く腰を引かれた。


「ミヤビ」


ロードの腰に回った腕をポンポンと叩くように撫でてトモコを見る。


「ああ…神よ…っ 女神よ…貴女様は…っ」

「私は人族の神。こちらに居るのが神獣である。そなたを仲間の元へ返す為に参ったのだ」


ノリノリだ。暇を持て余した神々の遊びごっこをしている。

エルフはというと、それを聞いて号泣していた。


盛り上がってる所悪いんだけど、足枷まだ付けたままですよ。そして今目の前で救いの神の如く喋ってるそいつ、貴方の足切断しようとしていましたから。


「さて、そなたの足枷だが…「はいっ呪いを解いていただければ、このような物は無いも同然でございます」」


エルフはそう言うやいなや、フンッと足首に力を入れ、足枷を粉砕した。


「「え?」」


待って。今、エルフさんの美しく細いおみ足が、ムキムキマッチョなおっさんの足に変化しませんでした? ロードの足とチェンジしませんでした?

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