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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第3章

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130.呪いの魔道具


やはりエルフだったのか。

とはいえ、ロードとヴェリウスの壁で全く見えないが。

見たい見たい、とトモコと共にピョンピョンするが一向に見せてくれないので段々腹がたってきた。

ここは某夢の国でも、US○でもないのだ。人の壁で目隠しするのは止めろ。


「ロード、ちょっと横にズレて。見えないから」


バシバシと背中をたたくが、一向にズレてくれない。

全く警戒を解かないロードとヴェリウスに、エルフが殺気でも放ってきているのかと心配になる。




「━━…この通り力を封印され、動く事もままならないのです……。無礼だとは思いますが、どうかお許し下さい」


しかし、エルフの言葉からは敵対しているようには思えない。

では何故、1人と1匹はこんなにもピリピリしているのだろうか?


『封印……フム、あれで力を封じられているとみえる』

「成る程なぁ。“禍々しい力”はアレから出てんのか」


禍々しい力? 封印??


「確かに気持ち悪い空気は感じるけど、何も見えないからよく分からないよ~」


トモコも首を傾げている。が、私はその禍々しい力すらよく分からない。一体何の事なのか。


「……力を封じられたおかげでこの通り長生きは出来ましたが、それに何の意味があるというのでしょう……仲間とも離され、辱しめを受けて生きるなど…っ」


おお…何だか悲しそうな声だ。

ちょっと、何とかしてあげないと。


『あの道具には近付きたくないが……』

「誰が作ったんだよあんな趣味の悪ぃもん。隷属と封印の呪いがかけてあんぞ」


ちょ、ヴェリウスが近付きたくないとか相当の代物って事?


「ねぇ、その呪いがかけてある物はエルフが身に付けてるの?」


ロードの服を引っ張り聞いてみる。


「ああ。足首に嵌めてある枷にその呪いがかけてある。近付くなよ。穢れるぞ」

『ミヤビ様、あれは神であっても……いえ、神を捕らえる為に作られた物です。触れれば穢れ、力を失い呪われるでしょう』


マジでか!?


『穢れは神にとって一番の弱み。

……遥か昔、愚かな人間が想いを寄せる女神を自分と同じ人間にする為に、穢れを集め“魔道具”を作り出した事がありました。結局女神はそれに気付き逃げ出したので人に堕とされる事はありませんでしたが、その時の負の遺産がアレら“呪いの魔道具”です』


ヴェリウスの説明に「“穢れ”って集められるの? そんな物理的な物なの?」と言っているトモコは放っておくとして、要はヴェリウス達はその魔道具に触れられないと、そういう事でいいかと問うと頷かれた。


「ちょっとその魔道具、私にも見せて欲しいんだけど」

「ダメだ。そんな危ねぇもん余計にミヤビにゃ見せられねぇ」


ひょっこり隙間から覗こうとしたがロードに止められる。


「見るだけでいいから。だって皆がいう禍々しさが私には感じられない」


そう言えば、皆に驚かれた。

何だか疎外感を感じる。


『まさか……ミヤビ様の圧倒的なお力は“穢れ”も凌ぐというのか……っ』

「神王であるミヤビなら有り得るのか?」

「指ツンで結界を破壊するだけあって、みーちゃん最強だね~」


それぞれから反応を示されるが、私の能力だと触れずに何とか出来るしとロードの前に出る。


「神よ、どうか私を殺してください……っ」


開けた視界に入ったのは、凸凹の石畳の上に力なくしゃがみこみ、うなだれて自分を殺して欲しいと願う…………超絶美人のエルフであった。


実はこの世界のエルフってゴリラだったり、エロフだったりしたらどうする? って思ってた人、ごめん。正統派エルフだった。目がつぶれそうな程美人の。


白銀のお尻まである長いサラサラストレートの髪に、澄んだ青い瞳、新雪のように白い肌、睫毛に何本爪楊枝が乗るんだと言わんばかりの毛量と長さ。瞳は切れ長で、すっと通った鼻と薄い唇はまさにゴールデンバランスである。男女ともつかない中性的な見た目はその声の通り美しい。


これは……ここにいるどの神よりも神々しいぞ。




「あの……エルフって性別とかあるの?」


後ろを振り向いて聞けば、ロードには訝しげに見られ、ヴェリウスには首を傾げられた。


「オメェ、まさかアイツに興味持ったんじゃねぇだろうなぁ」


浮気を疑われた。


「違うよ。あまりにも性別不明だから気になったんだよ」

「……」


疑いの目で見られ、突然腕の中に引き寄せられる。


「ロード?」

「別に心変わりを疑っちゃいねぇさ。ただ、面白くねぇだけだ」


ムッとした表情でそう言われるので、ちょっと可愛いと思ってしまった。

よしよしとつま先立ちをして頭を撫でれば、ムッとしていた顔はゆるみ、自ら頭を差し出して撫でやすくしてくれた。


『ミヤビ様、エルフにも勿論性別はあります。あの者は匂いからして雄のようですが』


ヴェリウスがそう教えてくれた瞬間、私の腐センサーが反応した。


男性!? さっきあのエルフは辱しめを受けてきたって言ってたよね!? まさか……ッ


トモコを見ると、コクンと頷かれた。


「ちょ、エルフさん!! お話を詳しく!!」


身を乗り出すとロードに拘束され、またもや腕の中に閉じ込められる。


「ちょっとロードさん、動けないんですケド」

「オメェが興奮してエルフの方へ行こうとするからだろうが」

「いや、ほらっ あの、そう! 呪いをですね、解いてあげないと!!」


チラリと上を見ると、立派な角を2本も生やしたロードと目があった。


「……角、生えてマスヨ?」

「鬼神だからな」

「今の今まで隠してましたよね? 人間として行動するような事言ってましたよね?」

「俺の可愛いつがいが、興奮して他の男の所へ行こうとしたからなぁ。人間とかなんとか言ってられねぇだろ」


薄ら笑いを浮かべた鬼神モードのロードは、ヤクザの凄みと、鬼のおどろおどろしさが合わさって怖さがレベルアップしていたのだ。


「アハ…アハハ…ロード以外の人に興味あるわけないデショ。何たってロードはつがいで伴侶だよ? 私達もうケッコンしてるんだよね? フウフだからね。浮気なんてとんでもナイ」

「そうだよな。愛してるぜぇミヤビ」


結局ガッチガチの、筋肉の檻に拘束されたまま呪いを解く事になった。

仕方ないのだ。人族と鬼神はつがいへの執着度が変わらないらしいので、種族が変わっても重すぎる愛は変わらないのである。




さて、エルフの彼にはめられている呪いの魔道具だが、よく見ると黒く塗られたラップが張り付いていた。さっきの結界といい、今日はラップばかりだなと思いながら心の中でラップよ消えろと願う。

黒く塗られたラップはあっという間に消えて無くなり、エルフは呆気にとられたように「え……?」と、足首に巻かれた鉄の枷を見ている。

鎖に繋がれた枷自体はまだ取れてはいないが、呪いや穢れは今ので無くなったはずだ。

ただし私にはロードの言う禍々しい力や、トモコの言う気持ち悪さ等は感じなかったので、本当に穢れや呪いが無くなっているのかは定かではない。黒塗りのラップが無くなっているのは確かだが。


「どうかな?」


確認の為に皆を見れば、一番に答えてくれたのはやはりヴェリウスで、


『さすがミヤビ様です。穢れどころか呪いまで綺麗さっぱり無くなっております』


と誉めてくれた。


「みーちゃんのお祓いで気持ち悪さが無くなったよ~」


人を神主か何かのように言ってくるトモコに冷たい目を向け、その後に上を向く。


「ああ。禍々しさが無くなってる。やっぱり俺のミヤビはすげぇなぁ」


とロードに愛し気に見つめられ、頭を撫でられたのだ。

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