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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第3章

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127.潜入。バイリン国の王宮へ!


さて、バイリン国に来た目的を忘れてはならない。

私達の目的は観光でも戦争を止める為でもない。

そう、100年前に奴隷にされたエルフの生存確認と、奪還である。

え? 生きてたら奪還するのかって? エルフ達の所へ連れて帰ったら、喜んで浮島に来てくれるかもしれないでしょ。


「というわけで、トモコ君。風魔法を駆使して王宮の内部の話を盗み聞きしてエルフが居るのか確認してくれたまえ」

「アイサー!!」


トモコの話では、多少の距離であっても盗聴が出来るらしいので、王宮が見える場所まで移動してそれを頼んだのだ。


「何しろ100年も前の事らしいから、仮に生きていたとしてもおじいちゃんかおばあちゃんになってるかもだし、外見が若くても飽きられて捨てられてる可能性もあるから……」


あまり考えたくはないが、やはり100年は長い。

奴隷としてエルフを手に入れた者は、その容姿を気に入って奴隷にしたのだろうから、飽きたり、外見が変わったりしてしまえば捨てられるか最悪殺されるという事も有り得るだろう。他の者の手に渡った可能性もある。


「う~ん……誰もエルフについては話してないなぁ」


トモコが難しい顔をして腕を組み、天を仰いだ。

さすがにそう簡単にはいかないかと王宮を見て嘆息する。


「なら、王宮内に潜入するしかなさそうだね~。ついでにバイリンとフォルプロームが繋がっている証拠も見つけて帰ろう!」

「そだね~。それが一番手っ取り早いもんね!」


私の案に賛成してくれるトモコと、よしっ行くぞ~! 等と気合いを入れていたら、ロードに抱き上げられた。せっかく地に足をつけていたのにだ。


「オメェら、ショッピングに行くみてぇに簡単に他国の王宮に潜入しようとするんじゃねぇよ」


呆れたように説教されるが、潜入は難しい事ではない。むしろ私が願えば戦争は終わるのだ。

それをしないのは、ロードやヴェリウスが人間の問題は人間の手で解決させろと望むからなのだが、証拠位は手に入れてもいいだろう。と、ロードをうかがい見る。


「っ…可愛すぎんだろ!! クソッ 俺のつがいが可愛すぎて何でも許しちまいそうになるんだが!?」

『やかましいぞ馬鹿者』


ロードの暴走にヴェリウスの氷点下のツッコミが炸裂する。冷たすぎる表情と声に凍るしかない。


「声も姿も見えないように結界張るから大丈夫だよ?」


何を心配しているのか知らないが、見つかるようなヘマはしない。


「……分かったよ。行きゃいいんだろっ だからそんな可愛い顔して見るんじゃねぇよ! 色々我慢出来なくなんだろうがッ」


一番大丈夫じゃないのはロードである。


『ミヤビ様、結界はロードが張りますので、ミヤビ様は何もせず、はぐれぬようになさって下さい。トモコもうろちょろするでないぞ』


ヴェリーちゃんに釘をさされて、大人しく1人と1匹について行く事になった私とトモコだが、当然のように私はロードに抱えられたままだ。

どうやら信用出来ないらしい。トモコの方がうろちょろしそうなのに。


『ロードよ、皆に結界を張れ』

「はいよ」


神になったからか、力が増しただけでなく安定したロードは、少し前まで苦労していた結界をいとも簡単に張れるようになっていた。

これならマカロンにも何時間でも乗っていられるだろう。


『ふむ。なかなかの出来だな。まぁ私の方が上手いが』


等と負けず嫌いな事を言いながら王宮へと踏み入るヴェリウスは可愛らしい。その後にウキウキしながらトモコが続く。こっちは不安でたまらない。


「はいはい。ミヤビ、余計な事するんじゃねぇぞ」

「それはフリ…「フリじゃねぇよ!!」」


言葉を遮られた挙げ句に怒られたんだが。



こうして、私達はバイリン国の王宮へと踏み込んだのだ。



バイリン国の石造りの王宮は、コンウィ城という、13世紀に、イングランドの王様…エドワード1世だったかが築いた城によく似ている。繊細な城とは違い、大雑把な造りがそれっぽいのだ。

華美というよりは無骨というか堅牢というか、とにかく美しくはない城ではある。が、嫌いではない造りだとキョロキョロしながら門を潜る。


門番は上から見下ろすように見張り台のような場所へ立っている。


「何か雰囲気がルマンド王国の王宮とは全然違うね」

「ルマンドの方がきらびやかな感じだよね~。いかにもなお城って感じで」


同じ事を思っていたのか、トモコがそう返してきたので頷いた。


「フォルプロームのお城とも違うし、やっぱり種族によって建物の雰囲気って変わるものなんだね~」


うんうんと首を縦に振っていると、竜人らしき人間達が歩いているのが見えた。


「門番もあそこで歩いている人も皆竜人っぽいね」

「やっぱりバイリン第一主義なだけあって、王宮に入れるのは竜人だけなのかな~?」

「まだ分からないけど、今の所竜人らしき人にしか会ってないもんね」


廊下の真ん中を堂々と闊歩しながらそんな会話をトモコと2人でしていれば、何だか高そうなローブを羽織った男性が歩いているのが見えた。


「あの人位が高そう~」


トモコも気付いたのか、何故かついていこうとしているので焦る。


「ちょ、トモコ? 何ついて行こうとしてるの!?」


ヴェリウスとロードもトモコに呆れた目を向けているが、ドヤ顔でこう返してきた。


「あの人について行ったら、王様の居場所が分かるかもだよ!」


えー…。


「もしあの男が便所に行く途中だったらどうすんだ」

「……トイレから出てくるのを待って、またついていく?」


えぇー…。


ロードの“便所に行く途中”のチョイスもどうかと思うが、トイレの出待ちもどうかと思う。


『馬鹿者。王の居場所など大概決まっておるわ』


ヴェリウスのキツイ一言にトモコは不満気に呻いた。


「え~楽しくなぁい。ああいう人についていって、やっと見つけるのが醍醐味なのに~」


分からなくはないが、今は止めなさい。

ヴェリーさんの形相が恐ろしい事になっているから。


『はぐれるなと注意したはずだぞ。うろちょろせずについて来んか』

「は~い」


歩き出したヴェリウスに渋々ついていくトモコは、やはりキョロキョロと城の内部を興味深そうに見ていて落ち着きがない。

こいつははぐれるな。と遠い目になったのは私だけではないはずだ。


「ミヤビ、オメェは離さねぇからな」


端から聞けば情熱的な言葉だが、意味は、勝手な事をしないように手綱を握っているぜ。という事である。全然嬉しくない。


「……どうせ地面に降ろされてもあまり歩けないし…」


ボソッと呟けば、ロードは蕩けるような笑顔を向けてきた。

そう。昨夜から朝方まで、この男は私に無体をはたらいたのだ。それにより足腰に力が入らず、長時間歩く事もままならないのである。


「仕方ねぇって。“蜜月”ってなぁそんなもんなんだよ。本当はひと月家に閉じ籠るってのが“蜜月”の過ごし方なんだからな」

「人族仕事しろ」


ひと月も仕事しないで、いかがわしい事を引き籠ってやってる人族にドン引きだよ。


「“蜜月休暇”が取れるからいいんだって言ったろ」

「ロードはそんな休暇が取れなかったからバイリン国(ココ)に居るんでしょ」

「う゛……こ、これが終わりゃあ“蜜月休暇”を取るから、それまで我慢してくれ」

「“蜜月休暇”なんぞいらんわ!! むしろひと月の監禁に恐怖しか感じない」

「ミヤビぃそんな照れんなよ。可愛いやつだなぁおい」


言葉の通じぬゴリラはもはやただのゴリラである。

飛べない豚と同じなのだ。


「みーちゃん達! イチャイチャしてないでさっさと行くよー!」


さっきの高そうなローブを羽織った男性について行けなかったのがそんなに不満なのか、八つ当たりしてきたトモコに急かされ先を急ぐハメになった私達は、あっという間に国王の私室へとやって来たのだった。

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