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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第3章

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115.世界創造


「それはすぐにでも移動しないとダメだね。ただ、その前にドラゴン達の生態に合わせた浮島を創った方が良いと思うんだけど……」


今の浮島は遊び場を中心としているので、ドラゴンが暮らすのは難しいかもしれないと1人と1匹を見る。


『そうですね。天空神殿はミヤビ様のもうひとつの神域ですから、魔素は十分でしょう。他は普通の森、普通の火山、普通の海や湖、河川などの水場があればよろしいかと。そこに兎や猪、魚等の普通にその環境にいる生物が存在すればドラゴン達にとっては楽園となります』


ヴェリウスさん、やけに普通を強調してないですか?


「ならかなり大きな浮島になるから、地上が浮島の影で覆われないように結界を張って、火山や森等のエリアを分けた方がいいかな? 」

「ドラゴンちゃん達にも種類がありますので、住み分けが出来るようにしていただければ嬉しいですわ」


今回はドラゴンの子供の為にも急ぐので、“世界創造”の能力を使い、頭の中で言われた通りに浮島を創っていく。

後はエリアごとに四季を創り、さらに細かくその四季ごとにエリアを分けた方が良いかもしれない。火竜は火山があるから良いが、氷竜とかいたら寒い所でないと暮らせないかもしれないし、水竜はどの季節が住みやすいのかもわからない。



この“世界創造”は世界と生命を創り出す能力だ。

勿論動物も創れてしまう。そして人間や神までも。

……まぁそこまで創る気はないのだが。


「浮島は出来たから、後はドラゴンしか出入り出来ないように設定して…はい。出来ました」


頭の中で創った浮島が天空神殿のそばに浮かんだ光景を確認すれば、ランタンさんはキョトンとこちらを見ているので首を傾げる。


「ランタンさん?」

「いえ、あの……“出来た”とは?」

「? ドラゴン達の為の浮島が出来たんだけど、何か変な事言ったかな?」


何故か口をパクパクさせているランタンにヴェリウスが話しかけた。


『ランタンよ、ミヤビ様は神王様だ。この世界のどこからでも創造は出来る』

「そ、そうだわよね…」


動揺して言葉が乱れているランタンさんにヴェリウスが嘆息する。


「し、仕方ないでしょう!? アタクシ貴女のように常に神王様のおそばに居たわけではないのだし、“前”よりもパワーアップしているじゃないの!!」

『確かにお力は“前”よりも増しているな。さすがミヤビ様だ』


確かに2年前に比べると、力の使い方が分かってきた気がする。と1人と1匹の会話に思う。しかし今はそれどころではないはずだ。


「ランタンさん、もうドラゴン達の移動が出来ますけど、急に移動させると驚いてしまうから伝えてもらってもいいですか?」

「え!? あ、はいっ神王様!!」


慌てて手鏡を手に取ると、手鏡に向かって「ドラゴンちゃん達…」と語りかけ始めた。

この手鏡はランタンさんにとってはスマホみたいなものらしい。録画機能に通信機能も付いているのだから。


「神王様、ドラゴンちゃん達には伝えましたのでいつでも大丈夫ですわ!」


なら、とドラゴン達を浮島に移動させた。


『ミヤビ様、今回はランタンの神域に住まうドラゴンのみの移動でお願いします』


え?


『……まさかとは思いますが、世界中に散らばっているドラゴン全部を浮島に移動させたり…してませんよね?』


げっ ……してる。指定なんてしてない。

“ドラゴンを浮島に移動”って願っちゃった。


ヴェリウスの言葉に目をそらせば、『全個体を移動させたのですね』と溜め息を吐かれた。

ランタンさんもそれにはぎょっとしてこちらを見ている。


「ごめんなさい……」


ヴェリウスの冷たい目に耐えられなくなって頭を下げれば、「し、神王様ぁ!?」とランタンさんが慌てだした。そして何故か下げた頭よりも低い体勢になり、「頭をお上げ下さいぃ!!」と土下座されたので怖くなって頭を上げた。


何とも気まずい雰囲気がこの場を支配する。


『やってしまったものは仕方ありません。ミヤビ様のお創りになった楽園を嫌がるドラゴンなどおりませんから放っておきましょう』


フォローが面倒になったんだね。


投げやりに話すウチのワンちゃんに半笑いをしながら頷き、土下座をやっと止めてくれたランタンさんを見る。

やや取り乱していた彼女(?)はようやく落ち着いたのか、紅茶を飲み干すとふぅっと息を吐き、真っ直ぐに私の目を見て微笑んだのだ。


「神王様、ドラゴン達を救って頂き感謝致します」


迫力美女はまな板になっても迫力美女のままだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ドラゴン視点



俺は自由を愛する竜。

光に愛され、光を愛した珍しい白竜なんだぜ。


白竜ってのは、光さえあれば生きていけるんだ。

それが太陽や月の光でも、火の光(明かり)でも関係なくな。逞しいだろ。

でもな、月の出ない夜や雨の日はどうしても力が出ないから、火竜の居る火山口のそばに巣を作って眠ってるんだ。いわゆる間借りってやつね。

けど、火竜の奴らいつも俺を追い出そうとしやがって、うぜぇうぜぇ。

俺だって好き好んで硫黄臭ぇ場所に居るわけじゃねぇから!! 光ってるからいるだけだから!!


何なら宝石の光でも良いんだが、以前会った事のある緑竜の子供に「何か光物に目がない鳥みたいだね~」とへらへら笑いながら言われたので、宝石は俺にとって鬼門なのだ。

あのクソガキ、次に会った時は俺の尻尾で絞め殺してやる。


でもな、こんな自由な生活が出来るようになったのも、神王様がこの世に顕現されたからなんだよな。

それまでは俺達ドラゴンは竜神(ランタン)様の神域で眠りについていたんだ。


だからこそ俺は自由を謳歌したい。

この広い空の下で気ままに太陽の光を浴びて、世界中を回っていたいんだ。




そんな事を思っていた時期もありました。




ヒャッッハーーー!!!!

ここは何て素晴らしい地なんだ!! 白竜の為の地は常に光に照らされて、ムカツク火竜共もいねぇし、独特な硫黄の臭いもしねぇ!!

この大きな島には色々な環境の場所が沢山存在していて飽きもこねぇ。

しかも、空に浮いてるから変な奴らも来ない上に、近くの浮島は遊び場が沢山あるときた。


突然この浮島に転移した時はさすがにパニックになったが、俺と同じ白竜の可愛子ちゃんが教えてくれたんだ。

俺達ドラゴンを保護する目的で、神王様がドラゴンの為にこの浮島を創ってくれたって。


環境は抜群、浮島もかなりでかくて珍しいもの、見た事ねぇものも沢山ある。魔素も溢れているし、可愛子ちゃんも沢山いる。そして出入りは自由ときたらもうっ 住まねぇわけねぇじゃん!!



《あれ~? さっきまで天空神殿に居たんだけどなぁ~ここどこだろう? あ、あのはっちゃけてるお兄さんなら知ってるかなぁ? ねぇ、そこのヒャッハーって叫んで飛んでるお兄さーん、恥ずかしくないの~?》


忘れもしねぇこの声は……以前俺に「何か光物に目がない鳥みたいだね~」って言い放った緑竜のガキじゃねぇか!! ここで会ったが百年目! この恨み、晴らさでおくべきか!!


《あ、降りてきた。こんにちわ~》


俺の尻尾で絞め殺す!!

そう思いながら格好良くガキの前に降り立った…んだが……え?


《あ、思ってたより小さいドラゴンだったんだ~》


相変わらずへらへら笑いながらそう言う緑竜のガキは、以前会った時よりもふた回りデカく、緑竜の特徴である緑はより深い緑に、そして……尋常じゃねぇ魔力を持って俺の前に現れたのだ。

コイツ、よく見りゃ黒が混じってやがる…っ 黒竜とのハーフかよッ


こんな強そうなドラゴンを尻尾で絞め殺せるわけがねぇ。


一歩、二歩と後退りすれば、ブワッと冷や汗が出てきた。


《白竜さん、ここはどこでしょうか~?》


バサバサと緑竜の紫のマントがはためく。


“竜王”だ。

間違いねぇ。このドラゴンは敵に回しちゃならねぇっ


俺の本能がそう告げ、足を折る。


《ここは神王様の創られた浮島の一つにございます》

《あれ~やっぱりここ浮島なんだ~。ミヤビ様ってば間違えて僕も転移させちゃったのかなぁ~?》

《ミヤビ、様?》

《あ、うん。神王様のお名前だよ~。あ、僕はマカロン。神王様のつがいのロード様の契約竜なんだ~》


!? やっぱりコイツ……このお方は竜王だ!! 神王様をこんなフレンドリーに呼べるバカ…ドラゴンはいない!!


「マカロン!!?」


竜王と対峙していると、足元から声が聞こえて驚いた。


《あ、ショコたんだ~!! ショコたんもミヤビ様に転移されちゃったんだね~》

「ミヤビ様に転移!? どうしてショコラ達がここにいるのか、アンタ何か知ってるの!?」


な、何でここに人間がいるんだ!?


《あのね~、このヒャッハーーーッて空を飛んでいた恥ずかしいお兄さんに聞いたんだけどね~、ここはミヤビ様の創った浮島の一つなんだって~》

「ひゃっはー? 何それ」


このクソガキ……やっぱり絞め殺…って、何だ!? この人間、竜王の上をいく魔力をっ!? まさか、違う……っコイツは人間じゃねぇ!?


「浮島なら仕様がないわ。天空神殿までは飛んで帰りましょう」


そう言うやいなや、人間の娘は光りだしそれは美しいドラゴンへと変わったのだ。


《早く戻らないと》

《ショコたんのドラゴン化、久しぶりだね~》


薄い水色のドラゴンに可愛い可愛いとまとわりついていく竜王。どうやら竜王のつがいらしい…が、人化する竜なんて聞いた事ねぇよ!!


《マカロンが迷惑かけたみたいでごめんなさい。ショコラ達は急ぐから、これで失礼します》

《白竜さんまたね~》


そう言って飛んで行った2匹を、俺は呆然と眺めていたのだ。

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