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異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ  作者: トール
第3章

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101.スキル習得


ロード視点



ミヤビの力の残滓を感じながら、チョコレートフォンデュを美味そうに食うガキ共を見て脱力していると、王妃付きの護衛騎士が話し掛けてきた。


「ロヴィンゴッドウェル第3師団長。王妃様がお呼びです」


ミヤビを追いかけて行きたいが、王妃からの呼び出しを無下にするわけにもいかず、仕方なく護衛騎士の後に続いた。


ガキ共が群がっている場所より少し離れた場所に王妃用の席が別に用意されていた。

そこへ通された俺は、侍女に持って来させたチョコレートフォンデュを美味しそうに頬張る王妃の食事風景を見せられる事となった。

話があるなら早くしてほしいんだが。と目の前の子供に大人げなくイラつく。


俺が来たことに気付いた王妃は、「あっ」と声をだし、真っ赤になって俯いた。侍女がナプキンで口の周りを拭う最中も耳まで真っ赤にしていた。


「しゅうたいをさらしてしまい申し訳ありません。精霊様のプレゼントして下さったお菓子がとても美味しくて、ついわれを忘れて食しておりましたわ」


それはそうだろう。何せミヤビの出してくれたものだからな。美味いに決まっている。


「お茶会を楽しまれている途中に乱入するような無粋な真似をしてしまい申し訳ありません。つがいの行方を追っていますので失礼致します」


とりあえずガキ共の茶会に突然やって来た事を詫びておく。


「お待ち下さい。ロヴィンゴッドウェル第3しだんちょう様」


すぐに立ち去りたかったが、王妃に止められつい舌打ちしそうになった。が、ぐっとこらえる。


「わたくし、精霊様にお菓子のお礼をさせていただきたいの」


勘弁してくれ。ただでさえミヤビは人間不信気味なんだ。王族や貴族と関わる事も嫌だろうに、王妃から菓子の礼なんぞと、逃げ出すんじゃないか?


「せっかくですが、私のつがいは恥ずかしがり屋ですので、御礼はそのお気持ちだけで十分です。では御前を失礼致します」

「あっロヴィンゴッドウェル第3師団長様っ」


王妃が声をかけてくるが、もういいだろう。

よく話に付き合った方だ。


師団長という立場ゆえに、王妃に対してこうした失礼な態度をとることがあっても許されるが、普通は不敬だとして牢に入れられる事もある。

まぁ、王妃付きの侍女や護衛騎士からすれば、俺の態度もいただけないようで非難めいた視線は送られるがな。


それよりミヤビを探さねぇと。


しっかし、アイツは一体何をやってんだ? 普段ならすぐ深淵の森に帰るだろうに。



「あっロード様だ!!」

「うわぁ格好良い~っ」

「おっきぃーっ」


俺に気付いたガキ共が遠巻きにこっちを見ながらはしゃいでいる。普段なら構ってやる所だが、今はミヤビだ。


“王妃の庭園”を駆け抜け、静かな場所でミヤビの力を探るが何故かいつものように力を感じる事が出来ない。

いつもなら強大過ぎるあの力は、どこにいようと感じる事が出来るにもかかわらずだ。


となると、ミヤビが力を抑えているのか?

何の為に……?



「あーっ ロードさん!! みーちゃんみなかった!?」


ミヤビの事を聞ける奴が来やがった。



◇◇◇



「はぁ? “かくれんぼ”だぁ? 一体何でそんな事してやがる」


トモコいわく、ヴェリウスの提案で神力のコントロールの訓練だとかいうふざけた理由で、この王宮を遊び場にしているらしい。

鬼のトモコから隠れる為に、ミヤビは力を最小限に抑えて移動しているんだとか。

それで力が感じにくいのかと納得するが、ヴェリウスが訓練とはいえ、王宮を神々の遊び場にするとは思えない。

何か裏がありそうだ。



「ロードさんはみーちゃん見てないのかぁ…」

「…オメェ、訓練だって言われてんのに人に聞いてどうすんだ」

「あ、そっか! 力を感じないといけないんだよね……ムムッ どういう事だ!? 奴の力がどんどん上がっているだと!?」


トモコがおかしな事を言い出した。

ミヤビが力を使ってんのか?


「何があった?」

「あ、いや、何となく言ってみたくなって」


おい、コイツの頭ん中どうなってんだ。


「オメェより俺の方がコントロールはマシだからな……悪ぃがミヤビは先に俺が見つける」

「!? みーちゃんを先に見つけるのは私ですぅ!! 私のスキルよっ今こそその真髄を見せつけるのだぁ!!」


やっぱりバカな事をしているトモコを置いて、俺はミヤビが行きそうな所へと急いだ。

近くに行けば多少は力を感じられるかもしれないと思って。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ミヤビ視点



トモコ来ないなぁ……。


日も暮れて、カラス…のような黒い鳥がお家へと帰って行く。カー、カーではなく、ゴホホッ、ゴホッ ブホォッ と風邪を引いたおっさんの咳みたいな鳴き声だが、大丈夫か? 風邪を引いた鳥じゃないのか?


隠れてから1時間30分。今、切実に思っている事がある。


制限時間2時間って、長過ぎじゃね?


誰も来ない上に日も暮れて、忘れられてないか? 忘れられて皆帰ったんじゃないか?


『ミヤビ様』


お腹空いたなぁ……何かこの部屋埃っぽいし。


隠れ場所に良さそうと思って飛び込んだ小さな部屋の、閉じられたカーテンの向こう側。窓の前に体育座りして隠れているのだが、見つけてもらえるのかなぁ。


『ミヤビ様、聞こえていますか?』


ハッ 今ヴェリウスの声がしなかった!?


キョロキョロと周りを見るが、カーテンの裏側と窓と窓の外に茂っている木しか見えない。


『ミヤビ様、とりあえず閉じられたカーテンを開けて頂けますか?』


あ…と気付いてカーテンを開くが、誰も居ない部屋に、夕日に照らされた私の影がのびただけだった。


「あれ? 幻聴?」

『ミヤビ様、こちらです』


ニョキっと床から生えたヴェリウスの顔にぎょっとする。


「ヴェリウスの生首……」

『違います。“影移動”が出来るようになりました』

「“影移動”!?」


水の波紋のように床……いや、私の影が揺れ、その中から出てきたヴェリウスは、私のそばにやって来てちょこんとお座りした。


『先程ミヤビ様に見せていただいたetc.の中に、“かくれんぼ”という名の訓練中、日が傾く頃に“影移動”が使用出来るようになるというのを見つけまして、試してみたのですが、問題なく習得出来ました』


ヴェリウスが尻尾を左右に揺らしながら嬉しそうに報告してくれた。

何でいきなりとは思っていたが、そのために“かくれんぼ”をしようと言い出したのかと脱力する。


「未来予知の確認とスキル取得の為にかぁ」

『明日のランタンとの予定まで待つより、今日の出来事から検証した方が効率的ですので』


まぁそうだよね……。


『ミヤビ様、とりあえずここから出ましょう。何やら埃と雄の臭いと食べ物の臭いが充満した部屋ですので、鼻が曲がりそうです』

「雄の臭いって……」


じゃあここは男性の使ってる部屋だったのか。良かった。途中帰って来ないで。見つかったら痴女扱いされる所だった。


『何人もの雄の匂いがします』

「何だって!?」


まさかのBL部屋!? これはもう薄い本をベッドの下に置いておかなければならないだろう。

その前に浄化して、と。よし、綺麗になったから薄い本(BL)を置いておくとしよう。


そっとベッドの下に薄い本を潜らせ、部屋を出た。


「お腹空いたね~」

『まったく、トモコめ。このようにミヤビ様を待たせるとはっ 一体何をやっているのか』

「きっと珍しいものがあって、道草をくってるんじゃないかなぁ」


王宮の廊下を歩きながら1人と1匹で目的もなく歩いていると、料理している匂いが漂ってきた。


「ヴェリウス、こっち行ってみよ?」


もしかして王宮の厨房が見れるかもしれない! と思いながらヴェリウスを連れてその匂いを辿る。


やって来たのは王宮の端にある外に面した場所。

石畳が剥き出しの床は、赤い絨毯が敷いてあった場所とは違い、デカイ壺や絵画などもなく質素だ。


怒号が飛び交い、白い服を着た男達がバタバタと忙しそうに動いている。

ガシャガシャガンガンと調理器具が鳴り、ジュウジュウと何かが焼ける音が聞こえる。

スパイスの香りだろうか? 何やら独特な匂いも漂っていた。


『ミヤビ様、鼻が曲がりそうです』

「うん。何か独特な匂いがするね」


決して美味しそうな匂いではない。

ここが王宮の厨房か。



「ミヤビ!!」


突然フワリと身体が浮き、硬いものに包まれて、私の嗅覚は厨房の独特な匂いからロードの匂いへと変化した。


「ったく、何処に隠れてやがった。力を抑えているから、探すのに手間取ったじゃねぇか!」

「ロード?」


何故探されていたのだろうか?


「ミヤビ」


子供のように抱き締められ、頬擦りされる。

夕方という事もあり、伸びてきた髭がじょりじょりと肌を削ってくる感じがして痛い。


『ミヤビ様、この匂いに耐えられません。早くここを離れましょう』


ロードに抱っこされブラブラしている私の足に、冷たい鼻をちょんちょんとくっ付けて離れようと促すヴェリウスが可愛い。


「ロード、ヴェリウスが離れたいって言うから移動しよ」

「分かった」


やっと頬擦りから解放され、横抱きにされてから移動し始めたその時。


「見つけたぞ!!」


の声にやっとかくれんぼが終わるのか、と思ったら数人の騎士に囲まれた。


「さすがはロヴィンゴッドウェル第3師団長であります!! その女を捕まえて下さったのですね!!」


嬉しそうに声を上げたのは、ルーベンスさんの所で追いかけてきたあの騎士だった。


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