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1.上手くいかない時はとことん上手くいかないものだ

チョコレートが食べたいなぁと思えば目の前に現れる大量のチョコレート。

寝袋が欲しいなぁと思えば目の前に現れるカラフルな寝袋。


会社帰り、駅までの道程をいつも通り歩いていたはずが何故か森の中に居た私。北野(キタノ) (ミヤビ)36才独身女性。仕事は派遣。の現状がコレだ。


夜の森にデンと建つ実家を模した一軒家。ファンシーなランプでライトアップされた、私から玄関までの道程。道端に落ちている大量の板チョコとカラフルな寝袋。肩にかかっているお気に入りのコート(会社帰りは夏だった)。

全てさっきから私が望んでいたものだった。


景色が突然夜の森に変わった事で灯りを望み、周りがランプでライトアップされた。

家に帰りたい。そう望んだ事で実家を模した家が現れ、寒さを感じた事でコートが。空腹を感じ、甘いチョコを望めばチョコが現れた。

ならばそれは私がやった事なのだと結論づけたわけだが…。

とりあえす家の中へ移動しよう。このまま外に居るのは怖い。



家の中は住み慣れた実家と変わらなかった。

唯一違う点は家族が居ない事だろう。といっても、父は他界しているし、母は宗教に狂って家にほとんど帰って来ない。姉も結婚して別で暮らしているからあまり変わらないか。

どういう原理かは知らないが、水もお湯も出るし電気も通っている。冷蔵庫もキッチンも使用出来るようだしお風呂にも入れるみたいだ。


よし。お風呂に入ってご飯を食べたら寝よう。そうしよう。朝起きたら夢だったというのが希望だ。




私はとにかく面倒臭がりやである。

仕事時は頭が切り替わるのか普段のズボラさが嘘のように働けるのだが、一旦家に帰るともうダメだ。一切動きたくない。ご飯も冷蔵庫に何もなければ食べなくてもいいやという位ズボラだ。

ただ綺麗好きではあるので掃除はちゃんとするしお風呂にも毎日入る。決して汚部屋でも汚人間でもない。休日は一日中パジャマで過ごす程度のズボラなのだ。

そんな私なので仮令(たとえ)森に迷いこんだ事が夢でなくても、トリップだぁと浮かれたり、人里!!と慌てて森を出ようとは思わない。むしろここから動きたくないし、人に遭えなくても構わない。というより遭いたくない。

勿論元の世界に帰りたいが、ぶっちゃけ帰る方法を探すのも面倒だし人間関係も面倒。夢ではなかった場合、ここは家も食料もあるしこのまま生きて行けそうなので、とりあえずここで暮らそうか……。


なんて事を考えながら、その日は眠りについたのだ。




━━…父が他界してから一年。母は宗教にのめり込みほとんど家に帰って来なくなった。

姉は二年前に結婚し家を出て行ったので4LDKのこの家に私が独り暮らしているようなものだ。

まぁもういい大人なので家族がバラバラになっても元通りになって! なんて泣いて叫ぶような事はない。

大体姉は結婚というおめでたい事で家を出たのだから喜びこそすれ、悲しむという感情は一切ない。母にしたって信仰は自由だし、父も亡くなったわけだから一人の大人として自由にすればいいと思っている。

字面は悪いが、家族がバラバラになった事はそこまで私にダメージを与えてはいなかった。


私が崩れ落ちたのはその後である。

一年後、アパレルショップを経営する為正社員にはならず、今までコツコツお金を貯めていた。

仕入れる店も決まり、簿記の資格も取り、店を出す場所まで決めていた。

夢の実現まで後一年だった。



一緒に店を出そうと約束していた親友に裏切られるまでは。



「私彼氏出来たんだぁ」


そう嬉しそうに話す親友にそうなんだと相づちをうっていたあの日。


「あんたより彼氏の方が大事だから、店の話はなかった事にして」


冗談なんか一ミリも感じられない声音で語られた日。



終わった、そう思った。


何がって、親友との関係も、夢も。


その日は部屋に閉じ籠って泣いた。

今までの努力も全てが水の泡だった。自分一人で店をやるには私にはセンスが無かった。

そりゃあ周りにセンス良いねっていわれる程度のものはあったけど、元親友程に飛び抜けてなかった。元親友は天才的なセンスの持ち主だった。だからこその店だったのに…。


35才を過ぎて正社員の経験もないおばさんを雇ってくれる会社なんてありはしない。

結局夢も親友も失った私がすがるのは派遣会社だけで、それでも仕事があるだけいいと思ってやってきた。しかし追い討ちをかけるように我が家の愛犬が死んだ。

10年共に居た我が子同然の犬だった。


そりゃ引きこもるでしょ。引きこもらせてよ。仕事はちゃんとするからさ。

人間を信用できなくなって、もう犬しかいないってなったら死んだんだよ!?

崩れ落ちるわ!


で、更に異世界へトリップって…どうなってるんだか。


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