王太子は従者に馬鹿にされる
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「うわぁ、最低ですね」
「うるさい」
「強引にいって最初から舌入れるとかなんなんですか。あなた様は盛りの付いたガキですか。最低ですね」
「2回も最低と言うな。一応落ち込んでるんだ」
「いやぁあなた様が落ち込んでいようと、どうでもいいですけど。でもアルテア様、ビンタとは流石ですね。はぁ……私もビンタされたい、あの白い、か細い手で」
「カストロ……お前は本当に安定の変態だな」
「お褒めの言葉をどうも」
仲の良い者同士の会話かと思ったら、なんと王太子ジュストとその従者カストロの会話である。カストロは王太子相手とは思えないほど不敬のオンパレードだが、ジュストは大して気にしていない。
「で、まとめますと、うちの国の王太子殿下は昨日、婚約者に無理矢理迫って盛った挙句ビンタされたまま会議に出て八つ当たりのように処罰を決めた、と。そして本日は頬を腫らしたまま公爵邸に謝罪に行って追い返されたと。ざまぁみろでございますね」
「処罰に関しては少し厳しかったが他への見せしめになっただろう……。公爵邸ではノンナとかいう侍女に追い返された……」
ざまぁみろとまで言われたジュストはもう突っ込みを入れる気力もないというように机に突っ伏す。
「あぁ、アルテア様の乳母であり侍女の方ですね。彼女は手ごわいですよ。ところで、なぜあなた様があのような行動に出られたのですか?あなた様らしくもない」
「…………これに書いてあったんだ……」
ジュストがやや言葉に詰まりながら本棚に隠してあった薄い本をカストロに差し出す。
「えーと、『女性への愛の囁き方 どS強引編』ですか……。こんなものを一体どこからあなた様は手に入れたのでしょうかねぇ」
「巷で流行っているとお前が渡してきた本の中にあった」
「あ、さようでございましたか。私の部屋になかったのでおかしいと思いました。これは私が参考程度に買ったものです。まぎれていたようですね。それにしても、アルテア様にこのやり方ではよろしくないでしょう。はぁ……行動の前に私にご相談いただければよかったのに」
カストロはわざとらしくため息を吐く。
「じゃあどうすればよかったと言うんだ……一応、本よりはソフトな内容にしたんだぞ……壁ドンとかいうものはしなかったし……服の中に手も入れなかったし……胸も触っていない。むしろ口付けして腰しか触っていないのは褒められるべきだろう……」
「いえいえいえ、まずはねぇ、愛の告白からでございますよ。それをすっ飛ばして無理矢理キスなんかしたら……はぁ……アルテア様、おいたわしい……あの脳内お花畑王子の次は全く女心の分かっていない王太子なんて……いくら眼中に入れてもらえないからと言ってドS強引に走るなんて……」
カストロは泣き真似をする。眼中に入れてもらえないのセリフ辺りでジュストはまた呻きながら机に突っ伏した。
「まぁ、この件に関しては私よりも適任がいらっしゃいます。アルテア様と仲が良く、女心の分かる方が」
「そ、そうなのか?」
ジュストはがばっと顔を上げて目を輝かせる。
「えぇ。もうそろそろ……」
カストロが言いかけると同時に扉を叩く音がする。
「王妃様がお呼びでございます。アルテア様のことに関してです」
入ってきた王妃付きの侍女の言葉にジュストの笑顔は凍り付いた。