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特殊進化と廃墟の外側

ユニーク5000突破の感謝投稿。これで書き溜めなくなったぜハハハ。


今回一部に百合?描写あります。

苦手な方はご注意ください。

むしろ親子って感じにはなってますが。

9.特殊進化と廃墟の外側


階段の先の扉を開けた先の部屋にあったのは、部屋全体を覆うように広がる魔方陣と壁に磔にされている女性だった…。

女性は黒い目隠しをされ、全身には赤い鎖のようなものが絡み付いている。この部屋には他に誰もいないので多分彼女が聖女なんだろうね。

 よく見ると鎖は魔方陣の一部から伸びているみたい。長い間閉じ込められてもう死んでしまってるだろうけど鎖を外してあげよう。

 『鋭爪』を発動して鎖を斬りつける。硬いけど手応えはあった。何回か繰り返せば斬れそうかな。

 ……あれ?今何か吸い取ったような感じが……。自分にも周りにも特には変化はみられない。気のせいかな?

斬りつけ続けてようやく一本の鎖を切断できた。役目を終えた鎖が砕け散った……と思ったら魔方陣から鎖が伸びてまた絡み付いた。どうやら魔方陣からなんとかしないとダメならしい。根本にある文字だけ壊せばいけるかな?ちょうど足元にあるので試してみよう。

 『鋭爪』で床ごと魔方陣の文字を削り取ってみる。んん?削った魔方陣から伸びた鎖の色が少し黒っぽくなったような気がする。そのまま鎖を壊すと今度は鎖から蒼白い炎が広がって消滅した。新しく鎖が伸びる様子もない。今度は成功したみたい。


時々休憩を挟んでHPを回復させつつ鎖を壊していく。一気にやりたいところだけど1本壊すのにも時間がかかるからなかなか進まない。

ようやく最後の鎖を壊して倒れないように支える。鎖で見えなかったのだが彼女は青白く血の気がないが綺麗な肌をしていた。

あれ?弱々しいけどこの人から呼吸も脈も感じる。え?生きてる?

慌てて彼女の目隠しを外して横たえさせて身体に問題がないか確認する。

 素人判断だから断定出来ないけど問題は無さそうかな。あらためて彼女を見る。

身長は160㎝位で薄い赤紫色の髪のセミロング。たしか浅鳳(チェンフォン)仙紫(シェンツー)って色だったかな。顔はまるで人形のように整っている。白い修道服のようなものを着ていて、痩せた身体をしている。もう少し肉付き良ければかなりの美人さんって感じなんだけど長い間閉じ込められていたんだからそれはしょうがないかな。ん?言ってて何か違和感を感じたんだけどなんだろう?

 違和感の正体を考えていると彼女が身じろぎしたのが見えた。あっ、気がついたかな?

 聖女がゆっくりと目を開けた。そのルビーのように赤い瞳がこちらを見る。目があった瞬間思わず見とれてしまっていた。背中に衝撃が走り我にかえった時には聖女に押し倒され跨がられた状態になっていた。え?何この状況?

 振りほどこうにも金縛りにあったように身体が動かない。焦る私に向けて聖女が嗜虐的な笑みを浮かべる。その口許から覗く2本の牙……ってまさか!

ねぇ、ちょっと?嘘だよね?お願いやめっアッ――!!

首筋に噛みつかれ吸血された瞬間、全身から力が抜けていく。抵抗する気力どころか思考も纏まらなくなっていく……。あぁ………、意識が………。



 身体が重い……。頭がくらくらする………。私は…何をしてたんだっけ……。

あぁ、思い…出した……。聖女を解放したと思ったら彼女が吸血鬼で美味しく戴かれてしまったんだった……。

今までの状況をまだ朧気な意識で確認していると


「ああ、良かった。気がついたのね。」


そう頭の上から声がかけられた。目を開けると頭上から覗き込む女性の姿。どうやら彼女に膝枕された格好みたいだ。慌てて体を起こそうとすると


「まだ辛いはずよ。もう少し横になってなさい。」


 そう言いつつ肩を掴まれ元の体勢に戻された。実際辛かったのでお言葉に甘えておこう。

ところでどちら様で?多分というか間違いなく聖女なのだろうけど別人と言われれば信じられそうなくらい違っている。

まず痩せてた筈の身体に肉がついてかなり美しいというか正直エロいくらいになっている。胸とか私よりあるんじゃないかな?

瞳の色も赤から金色に変わっている。さらに服装も修道服ではなくなってゴシックパンクといった感じの少し派手なものになっている。聖職者がそんなもの着てて大丈夫なのと思うけど、それ以前にその服一体どこから持ってきたの?

 そんなことを考えていると彼女が話しかけてくる。


「私はカミラって言うの。さっきは襲ってしまってごめんなさいね。力の抑えが利かなくって。でもおかげで助かったわ。ええと……」

「ノワールだ。その言い方だと襲ったことで何とかなったととれるのだが?」

「その通りよ。貴女の血を吸ったことで力の制御を取り戻したの。それにあなたヴァンパイアでしょう?」

「む……。その通りだが………。それはそちらもであろう?」


ーあの牙と瞳の色はそういうことでは?


「ええ、そうよ。……どうやら何も知らないようね。ヴァンパイアの血を取り込んだヴァンパイア(同族)はその力を取り込む以上に力の制御力が高まるのよ。恥ずかしいことに私は空腹で弱ってもいたから魔物としての本能に支配されかかっていたの。」

「それで先ほどの礼か。気にしなくて良いさ。ところで腹具合はもう大丈夫なのか?」

「正直言えばまだ足りてないわね。それでも一週間くらいなら問題ないかしら?」


ー偶然とはいえ暴走は回避されたって事かな?もし暴走状態で放たれたらヤバそうだね。封印されてた訳だし下手すればラスボスより強いなんてこともあり得そう。


あれ?少し視界がぼやけてきた。目を擦ろうとしたけど腕が上がろうとしない。


「腹具合と言えば……ってあら?」


今、なんて言ったの?よく聞こえない…。

ふいに口の中に何か温かい液体のようなものが入った気がした。飲み込むと感覚がはっきりしてきた。視界の端でカミラさんが自身の手首を切って血を飲ませてくれているのが見える。一口毎に何か満たされる感じがして喉の動きが止まらない。


「全く。こんなになるまで放置しているなんて…。もう少し自分の体を大事にしなさい?私が言えることじゃないけど空腹で倒れるなんて恥ずかしい事よ?」


叱るような口調だけどその顔は微笑んでいて声色もどこか嬉しそうな感じがする。つられてこちらも笑顔になる。


<特殊な進化条件を満たしました>


えっ?えっ?どうなってるの?


「どうかしたの?」

私の慌てように気付いたカミラさんが尋ねてくる。でも今の私にはそれに応える余裕はない。


<進化を行いますか? YES/NO>


ーダメです


<進化を開始します>


ー選択の意味がない!

瞬間、力が抜けて視界が暗転する。意識が切り離される瞬間にカミラさんが慌てている声が聞こえた気がした。


<種族スキル【聖属性耐性】を取得しました>

<新しい種族スキルが解放されました>

<セイクリッドヴァンパイアへの進化を完了しました>


<<プレイヤー名:『ノワール』がユニーク種族へと進化しました。これによりヘルプ:『ユニーク種族について』が解放されました>>


 ユニーク種族!?早速詳細をヘルプで確認する。特定条件を満たすことで進化出来る特別な種族と……。ユニークNPCにひとりずつ居るから先ずは彼ら彼女らを探すこと………って。ええと、つまりはカミラさんはそういうこと?


「ノワール?聞いているの?」


 頭上から少し怒ってる声が聞こえる。

あ゛…。強制進化からのドタバタですっかり彼女を無視しまっていた………。


「済まない。いきなり進化してしまって混乱していた。」

「え……?進化………?」


 あれ?一転してカミラさんが気まずそうな感じの顔になっている。「これはまずいかしら……。」とか小声で独り言言ってるし進化に問題が?しばらくして何か決心した様子でこちらに話しかけてきた。


「何に進化したのか聞いても良いかしら?」

「うむ。セイクリッドヴァンパイアと言うのだが……。」


 そう答えるとカミラさんが頭を抱えて天を仰いだ。どことなく悲壮感漂ってて気が引けるけど、聞いておかないとマズそうなんだよね……。


「その反応からして、先程の血に関係が?」

「ええ、そうよ。私もセイクリッドヴァンパイアなのよ。普通は血を与えても何も問題が無いのだけど……。貴女が『流れ人(ウォーカー)』だったのは想定外だったわ。まさか進化することになるなんて………。」


 『流れ人』…。確かゲーム内の設定ではNPCから見たプレイヤーの通称だったはず。プレイヤーはここではない世界から渡ってきた者とかそんな設定だったかな?


「この種族に問題でもあるのか?」

「種族そのものというよりは関係性の方ね。この種族を一言で言ってしまうなら“吸血鬼殺しの吸血鬼”なのよ。」

「つまり、『種族がバレれば人間からも同族からも狙われる』と?」

「『同じ流れ人でなければ』と付くけどその通りよ。そこでなんだけど私と契約する気はない?」

「それはどういう意味だ?」

「貴女は『流れ人』ではあるけどまだまだ弱いわ。事故みたいなものだったけどこの状況は私の責任でもあるし、守る意味でも契約して私という存在が後ろ盾にいることを示してしまおうかとね。これでも私はどちらの立場でも有名なのよ?」


 どうやら彼女の好意らしい。色々と手助けしてくれるようなので話に乗っておこう。彼女の指示にしたがってお互いの指に傷をつけて手を合わせ【血の契約】のスキルを発動させる。

 お互いの血が混じり合って文字のようになって浮かび上がり、それぞれの胸に吸い込まれるようにして消えた。これぞファンタジーって感じでちょっと感動。


「さて、これで契約完了ね。といっても代償が重すぎてまだ私は喚べないわね。それでもヴァンパイア相手の牽制にはなるはずよ。」


 このスキル召喚コストとしてMP消費でなく召喚中は最大HPを削るという仕様なのだけど、カミラさんを召喚しようとすると今の5倍は必要っぽい。種族的にもHPは重要だから優先的に鍛えるつもりだけど喚べるようになるにはいったいいつになるやら。とりあえずお礼を返しておく。


「これから私は世界中を回ってみるつもりよ。長い間ここにいたから今はどうなっているのか知らないもの。それで、時々貴女に会いたいと思うのだけど良いかしら?」


 私としても召喚可能になるまで会えないのは寂しいので承諾する。このまま出発すると言うので私も出ることを伝えると最初の街まで一緒に行くことになった。そういえばまだ廃墟(ここ)から外に出たこと無かったね。ちょっと楽しみ。

 廃墟の街から外に出るとちょうど朝日が昇るところだった。朝焼けが景色に色をつけていく幻想的な光景に感動してつい見入ってしまう。

不意に後ろに引っ張られ街に戻される。振り向くとカミラさんが少し呆れた顔をしていた。


「ノワール、貴女【HP自動回復】のレベルが低いわね?朝の時点で日光に負けてるじゃない。」


 そういえば戦闘はダメージ受けないようにしてたせいかほとんどレベルが上がってない。別スキルでHPをガンガン削っているからそれだけが理由ではなさそうだけど……。


「予定変更ね。昼間でも問題なく歩けるようになるまで特訓するわよ!」


 この人、なんだかすごい気合いが入っちゃってる。特訓してくれるのは嬉しいけどこのままだと頑張り過ぎでやり過ぎる未来しか見えない。少し落ち着きましょう?え?無理?ははは、知ってた。


 こうして私はしばらくの間地獄の特訓を受けさせられるのだった。

~裏話~

磔状態のカミラの姿はエルピスを意識してるので『断罪ちゃん』で検索するととても分かりやすいかと。


魔方陣の破壊方法は“魔力を込めた攻撃”ですが、“部屋そのもの”に刻まれているためそれだけでなく“物理的攻撃”、鎖の破壊も考えるとそのなかでも“斬属性”の攻撃が有効になります。この条件を満たせるものは今のところノワールには『鋭爪』か『ブラッドウェポン』の刀剣生成しかありません。


解放直後のカミラは長い期間の拘束で空腹&弱っているので魔物としての能力が暴走してます。そんな状態で目の前に無防備で美味しそうな獲物が来れば当然戴かれちゃうよね?という。ちなみに

解放してからその場を離れる等して放置→カミラ死亡。

解放後の吸血に抵抗しない→HP1で残り強制気絶、理性を取り戻しカミラ復活。

解放後の吸血に抵抗→戦闘開始。勝った場合カミラ死亡。負けた場合カミラは特殊ボスとしてフィールドを動き回るようになる。この状態でも理性を取り戻す事は可能だが超高難度。

という仕様。


デフォルト習得のスキルは経験値にマイナス補正が入るためレベルアップは遅くなってます。

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