白と青
会話文ですが、「」表記の会話が通常のいわゆる白チャ、『』表記がパーティ会話などのグループ系です。
「」の会話は回りも内容は聞こえてますが、『』の会話は念話のように口に出さずとも対象者のみに聴こえるようになります。
ようやくの友人登場。
13.白と青
冒険者登録も終わったところで、フィローネの方からフレンド申請が届いた。住人ともフレンドになれることに驚きつつも承認すると
<ヘルプに『住人とのフレンド登録について』が追加されました>
とのアナウンスが。早速確認して分かったことを要約すると
・フレンド登録するためには好感度が一定以上必要
・フレンド登録出来るのはギルド登録した住人のみ
・フレンド状態の住人と優先的にパーティを組める
・ギルドの端末を利用することで電話のようにやり取り出来る(有料)
ということらしい。これは便利な機能だね。プレイヤー間で出来る事を限定的にだけど再現してるなんて。フィローネを手伝うって言ってから連絡手段をどうすればいいのか考えてたからありがたい。
お礼を言って二人でギルドから出る。クエストを受けるか迷ったけど今回は街を回ってみることにする。街に入ったばっかりだし他のみんなもログインはしていそうだしね。
外に出たところで結構なプレイヤーが露店を出していたことに気付いた。予定を決めてるわけでもないし見て回るのも良いかもね。何か面白いものないかな?
そんな気分で眺めていたところで不意に背後から小さな手が現れて抱きつかれた。
………というよりは胸を鷲掴みの状態である。いきなりな事に硬直してしまっていると真後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
あぁ、この犯人身内だったよ…………。ついに揉みだしたので慌てて腕をつかんで阻止しつつ前方に引っ張り出す。ついでで周りの鼻の下伸ばしてた男たちを睨み付けておく。
出てきたのは群青色のくノ一装束を着た青髪の少女プレイヤー。現実よりは少し背が低いけどこの顔は間違いなく青羽だ。個人会話に切り換えて話し掛ける。
『この手は何かな、青羽?』
『違うよ!これは手が勝手に!』
『じゃあ悪いのはこの手?』
『痛い痛いっ!冗談だからやめて!手が取れちゃうっ!!』
『全く、いい加減懲りてほしいのだけど……。それで何の用?』
『たまたま見かけたからさ。こっちで会うのは初じゃん?』
『この街にはさっき着いたからね。』
『あー、そういや人外で始めたんだっけ。ところでお隣のNPCは紹介してくれないの?』
隣の彼女……?あっ、フィローネの事忘れてた。
「すまない、フィローネ。こいつは私の友人なんだが会えばいつもこうなのだ。あまり気にしないでくれ。」
「もしや“不死身”のフィローネ殿でござるか?拙者はシアンという者にござる。以後よろしくでござるよ。」
格好で予想はついてたけど青羽はいつも通りその口調なんだね。
軽く三人で会話したあとフィローネは用があるらしく別れることになった。フィローネの姿が見えなくなってから青羽が話し掛けてきた。
『この後ってなんか予定あった?』
『特にないかな?ギルドに登録したから街の散策しようかなって思ってたとこ。』
『なら丁度良いや。今から露店行くつもりだったから一緒に行こうよ。』
特に断る理由もないし了承してついていく。この近くの露店には目もくれず南通りに入っていくと大きな剣が刺さるかなり目立つ露店が見えた。どうやら目的地はあの辺りらしい。
露店前にくるとシアンが早速着流しの男性に声を掛けている。
「ヒューゴ殿~!拙者の武器は出来ているでござるか?」
「ん?おう青色か、出来てんぞ。こいつでどうだ?」
「流石仕事が早いでござるな。」
「素材の関係で貧弱だからつって今刀使ってんのお前位だからなぁ。刀とそれ以外じゃやる気が違うっての。」
「ははは、相変わらずでござるなぁヒューゴ殿は。―――」
「あれ?シアンちゃん来てたんだ?」
隣で露店をしている薄紫髪の女性が会話に交ざってきた。耳が長いから種族はエルフかな?
「おお、フィオレ殿。ヒューゴ殿に拙者の武器を頼んでいたのでござるよ。」
「あなたひたすら連戦するから消耗激しいものね。ところで隣の娘は初めて見るけど知り合い?」
「紹介するでごさるよ。拙者の友人でノワールでござる。」
「ノワールだ。よろしく頼む。」
紹介されたので挨拶する。
「私はフィオレ。木工専門の生産職よ。よろしくね、ノワールちゃん。」
「おう、俺はヒューゴってんだ。鍛治をやってる。なんかあれば安くしとくぜ?」
「ヒューゴ殿とフィオレ殿はトップ生産職の有名人なのでござるよ。」
「よく言うぜ。お前こそ結構な有名人なくせによ。」
やいのやいのと言い合う2人。トップ生産職なんて大物と知り合いになれるとはツイてるなぁとか思っているとヒューゴさんが話を振ってきた。
「そういえばよ、ノワールってアナウンスで出てきた名前じゃねえか?確か山賊潰しただかってよ?」
「む?確かに山賊の根城は潰したな。それがどうかしたのか?」
「戦利品とかでなんか売れるもん無いか?今素材が足りなくってな、少しなら色つけてやれるぜ?」
「アタシの方は珍しいのが欲しいかな?ある程度は西で採れるお陰でちょっと余り気味なのよね。」
まだ余裕あるけどアイテム覧圧迫してたしちょうど良かった。いらない武器類を見せると全部買ってくれた。意外なことに素材判定されてた短剣類はフィオレさんの方が乗り気だった。特殊な矢を作るのにちょうど良さそうなんだとか。
「鉄が手に入ったのはありがてえな。これで少しはマシなのが作れそうだ。」
「ほんとにね。ところでノワールちゃんは武器は何を使ってるの?良ければ私達で作るわよ?」
「その申し出は有り難いのだが今のところ攻撃面は間に合っていてな。先に服装の方をなんとかしておきたいのだ。」
トップ層からの武器作成の提案はとても有り難いことだけども断っておく。ロールプレイをしている身としては見た目を整えるのが最優先だしね。
「そうかい。必要になったらいつでも来な。それはそうとエニーのことだが今日はあいつは来れないぜ?」
「そういえば用事が出来たとか言ってたのを忘れてたでごさるよ。」
どうやら【裁縫】専門の人は今日はログイン出来ない様子。いないものはしょうがないからまた今度かな。そうなると次はどうしようかな。売るもの売ったけど欲しいもの揃えるには全然足りないし金策?そんなことを考えてたら
「ノワール殿はこのあと何かあるでござるか?」
「む?特には考えてないな。せいぜいクエストかレベル上げかってところか?」
「ならばちょっと付き合って欲しいでござる。」
青羽からお誘いが来た。
Tips:街中での仕様について
街中ではイベントなど一部の例外を除きダメージを与えることは出来ません。
また、違反行為を行って衛兵に捕まると特殊フィールドの監獄に送られる場合もあります。
~裏話~
ファンタジーRPGで人気な刀系ですが、このゲームでは高火力・低耐久でコツが必用などちらかと言えば扱いにくいタイプの武器です。
2次スキルの【刀】まで行けばアシスト効果で楽になりますが1次スキルの【刀剣】ではそれがありません。
また、序盤の青銅では普通の長剣と攻撃力の差がほぼないので今の段階では余計使い辛さの目立つ武器になっています。
これらはβで検証済みのため掲示板では【刀剣】→【刀】と取ってから乗り換えるのが主流です。
この辺りが現在使い手が少ないとヒューゴがぼやいていた主な原因です。




