始まりの街と冒険者
お待たせしました。どーでもいいはずのところに悩みすぎでめちゃめちゃに遅れてしまいました。ごめんなさい。(この部分書くのは)そんな難しくないと思ったんだけどなー。
このゲームの対象年齢は15才以上です(今更)
R-18設定ならポロリ(物理)もあるよ!
山賊退治の戦利品確認は最終的にお金にしかなりません。冒頭は読み飛ばすつもりで結構です。
12.始まりの街と冒険者
さてと、1度戦利品を確認しておこうかな。
まずは最奥にいた六人の武器。
[武器] 古びた鉄の片手斧 レア度N+ 品質F
耐久力 100/100
長年使い込まれて所々錆び付いた鉄製の片手斧。あまり手入れされてないのかガタがきている。ずしりとして重いが斧としては扱いやすい方。
最初に突き飛ばした男の武器がこんな感じ。同じような性能の鉄製のロングソードが2本、ダガーが2本。何かの骨でできた骨弓がひとつ。
今の最高の装備は青銅装備らしいからこっちのが強いんだろうけど使い古しのせいか品質も耐久力も低い。
青羽から聞いた話だと同じ装備でもレア度が高い方が攻撃力が上がるらしく、叩き売られてたG品質青銅武器とC品質銅武器で比較したところ与えるダメージが大して変わらなかったんだとか。
更に耐久力が50を切ると攻撃力にマイナス補正が掛かるらしく、物によっては素手で殴った方が強かったりもしたとか。
ちなみに住人の店売りでは品質Cで耐久力200~300が基本になるらしい。
つまり現在最高の青銅装備よりは強いけどダメになりやすくて扱い辛いと……。
うーん、使わない武器だから売ってしまいたいけど売れるかなぁ?メイン武器には使えなさそうな性能っぽいし。
一番良さそうなドロップでこれだからあまり期待出来ないけど次はこれ
[素材] 刃こぼれした短剣 レア度N 品質G
耐久力 30/30
刃こぼれしてボロボロの短剣。何でできていたのかはもう分からない。一応は武器に使えるかもしれない。
入り口とかで倒した山賊の装備なんだけど……。武器ですらなかった。どっかのハンターの武器みたく最大強化で最強にならないかなぁ。……ならないよね。
あとはお金が50kくらいとHPとMPそれぞれのポーションが10本ずつ、それと村人の服って上下セットの装備。種族デメリットでポーションは使えないからこれは朱音達にあげよう。
最後に……捕まっていた人たち。この人たちはどうしたらいいだろう?掲示板とかに何か情報無いかな?
えーっと……。あ、あった。βではフィールド上で時々起こる突発的な護衛依頼のようなもので目的地まで連れてってあげるとお礼が貰えたと。
護衛対象も戦闘は出来ないけど意外に頑丈で、5回くらいならダメージを受けても平気らしい。敵のターゲットも基本的にプレイヤーを優先するようで囲まれるような事にならなければ特に問題は無いんだとか。
目的地を聞いてみると全員“シージャ”で良いと答える。フィローネさん、それってどこ?ここから一番近い街?つまりプレイヤーの言う始まりの街?
どうやら私たちの目的地と同じようなので一安心。護衛する対象の職業や性格で傾向があるらしいけど実装されている“名前のある場所”なら何処でも対象になるようで、樹海とか空飛ぶ城とかもはや何でもありだったらしい。
閑話休題
山を下ればあとは道なりで良いらしいので準備も終わったことだし早めに向かおう。今のゲーム内時間は午前3時。のんびりしすぎたせいで夜明けが近付いてる。
朝方ならまだ大丈夫だけど今の回復力では昼の日光浴は最大でも2時間ちょっとしか耐えられないのでそれまでには辿り着けるようにしないと。
下山を始めておよそ30分ほど。道のりとしては順調だけど戦闘の方はあんまり上手くいってない。
何故ならば私の今の基本的な戦闘スタイルはカミラさんの指導もあって【長柄】や【格闘】に種族スキルの【血液掌握】や【肉体変化】を絡めて自傷ダメージと引き換えで火力を上げて敵を殲滅する形なのだけど、フィローネが言うには街の近くでは人外バレを防ぐために種族スキルを使わないように気を付けた方が良いとの事で山中の内にサブとなる戦い方を模索してるから。
理由を聞けば納得で身バレして人間に脅威と思われると討伐隊が組まれてしつこく追われる事になるらしいのだとか。多分人外種族共通のデメリットの一つなんだと思う。私としては強い相手は大歓迎なんだけどしつこいのはゴメンだし、こんなので仲間内に迷惑が掛かるのは避けたいところ。ちなみになぜ伝聞系なのかと言えばフィローネの師匠が昔愚痴ってたのを聞いたからとか。国相手に喧嘩売ったとか自業自得だと思うけどその師匠何してるのさ。
色々試してみて普段は種族スキルの代わりに【闇魔法】などを近接戦闘に合わせて至近距離で撃ち込むことで火力不足を補うようにしつつ、それでも足りない分は『貫手』に『鋭爪』のような分かりにくいアーツの組み合わせを混ぜるのが一番いい感じになりそうだとわかった。
そしてここで発覚した問題がひとつ。近接攻撃に合わせての魔法発動が非常に難しい。詠唱完了から発動までの待機時間が短いから先に詠唱しておかなければならないのだけど、それ自体は秒数の把握だけでそこまで難しくないと思う。
一番の原因は詠唱から発動待機までアーツに意識を集中してなければいけないということ。これに失敗すると発動しないうえにMPはしっかり持ってかれてしまう。
更にアーツに集中するということはその間近接戦闘を意識しないようにこなすということで、まるで呼吸するように自然に身体が反応しての対応を求められる。カミラさんの特訓のお陰で直感的な対応は無意識にできるくらいにはなってるけど、動きはまだまだぎこちない。今の段階で無傷で相手に出来るのはウルフ2、3匹ってところ。実際さっき4匹来た時は何度か当たってしまったし。
防御面が紙なこの種族が浅いエリアで無視できない一撃貰ってるんだしもっと進んだ時に対策無しだと即死も十分ありえるからもっと鍛えないと。
そんな決意をして山の麓まで下りて来た時、
「ヌハハハッ!見つけたぞッ!!」
なんか変なのがやって来た。
「ヌ?貴殿はプレイヤーだと?ならばあのおなごは何処へ行ったというのだ!?」
誰か探してるっぽい?プレイヤーに驚いてるってことは探してるのはNPCかな?聞いてみよう
「いきなり現れて失礼なやつだな。誰か探しているようには見えるが、一体なんなのだ?」
「おおっ!これはすまなかった。小生は山に現れたという白い髪で赤眼のおなごを探しておるのだ。熊を瞬殺したというその力、まさに小生が対峙するにふさわしい!!」
ああ……、ただの戦闘狂かぁ………。それに探してるのって間違いなく私の事だね。今は戦いになると勝っても敗けても私にデメリットしかなさそうだし誤魔化さないと。
「ふむ、探してる者かは分からんが白い髪の者なら山を登って行くのを見たぞ?」
一応嘘は言ってない。山に登って山賊退治してたわけだし。……登ってたの夕方前だけど。
「なんとッ!それは真かッ!!こうしてはおれぬわッ!」
言うが速いか猛ダッシュで山を登っていってしまった。誤魔化した自分が言うのもなんだけど、目の前の怪しい人の言葉を鵜呑みにしちゃうのはどうかと思うんだ……。
そういえばあれがプレイヤーとの初遭遇だったんだね。できれば忘れてしまいたい………。
そんな遭遇からは特に変わった事もなく朝時間のうちに街の西門前まで到着した。
門番の前で犯罪者判別の水晶に触れて問題ないのを確認してもらい、街へ入る。山賊に捕まってたみんなとはここでお別れ。報酬は後で冒険者ギルドのカードに振り込まれる事になるということでカードを作るためにそのままフィローネと一緒に冒険者ギルドに行くことにした。
門から伸びる大通りをまっすぐ進んで15分ほど、南北の門からの大通りと交わる中央広場の南西部に冒険者ギルドがあった。街の中心部のためか目の前の通りも賑わいを見せている。2階建てで年代を感じる大きめな建物で、扉は西部劇でよく見るようなスイングドア。看板には盾の前で剣と杖が交差したマークが描かれている。まさに冒険者ギルドって感じ。
中へと入るとそこにいた人達が一斉にこちらへと視線を向ける。視線から感じる圧力に驚くと大半は興味をなくしたのか元の動きに戻ったけどまだ結構な人数が好奇と値踏みの混ざる目を向けている。
………一部の目が胸に向かってるのはいつもの事だけど。あ、隣の男性の視線の位置に気付いた女性が詰め寄ってる。
そんなやり取りを横目に見ながらフィローネの後についてカウンターに向かう。カウンターの向こうには5人ほど受付が立っていてそのうちひとりの女性が話しかけてきた。
「あら、フィローネじゃない。師匠の手掛かりは見つかったのかしら?」
「今回も全然だったよ。あの人はそう簡単に死ぬような人でもないし、気長にいくよ。ところで彼女を冒険者登録して欲しいのだけどいいかな?実力は保証するよ。」
「“不死身”のフィローネの御墨付きなんて将来有望ね。ようこそ冒険者ギルドへ。手続きするからまずはこれに手を置いてくれるかしら?」
そう言ってカウンターの上に白いボードのようなものを乗せる受付嬢。言われた通りにすると淡い光を放って文字が浮かび出した。
名前
ノワール
LV
15
スキル
【長柄】
【格闘】
【敏捷強化】
【跳躍】
【脚力強化】
【感知】
【料理】
【鑑定】
【魔力操作】
【小隊指揮】
【不意討ち】
【地形把握】
【見切り】
【闇魔法】
浮かび上がったのは私のステータスだった。種族スキルが無いのは一安心だけどコレ見られると問題では?
「どれどれ、ノワールって名前なのね。レベル15にスキルも充実してるしなかなかね。これなら試験は免除で問題なしね。言い忘れてたけどこの情報はこの3人にしか見えてないから安心して。」
ん?試験?3人ってフィローネも?確認してみると試験とは最低限戦う力があるかの確認で、最低ランクの冒険者でも討伐依頼は存在するために実力が無い者を排除する必要があるのだとか。一応死亡率を減らす意味もあるらしいけどこれについては気休め程度にしかなってないらしい。
そしてなぜフィローネもそのチェックに参加してるかというと推薦者だからと言われた。Bランク以上の冒険者は未登録の人を冒険者に推薦する権利があって、問題を起こした場合責任を持つ代わりにギルドからのサポートが受けられるというシステムなのだとか。
理由はわかったけど一緒に山賊退治してここまで来たってだけなのにそんな事をしてもらうと逆に申し訳なくなる。それを伝えると、目的のために利用しているようなものだから気にするなと返ってきた。
それでも貰いすぎに思うので目的に協力するということで話をつけた。
「そろそろ続きを話しても良いかしら?」
………おもいっきり話が逸れてた。脱線した事を謝って話を続けてもらう。
「説明の前にカードが完成してるから渡しておくわね。ギルドの施設を使うにはそれが必要になるし、再発行は一万Gと高めになってるから無くさないようにね。」
そう言って渡されたのは赤っぽい金属製の小さなカード……というよりはドッグタグ?名前の他はランクGと書かれただけに見える。
その後始まったクエスト関連の説明によると
・ギルドの出すクエストを受けるにはカードが必要
・ランクによって受けられるクエストに制限がある
・ランクアップの条件はランク相応のクエストの一定量以上消化。特定のランクには試験も存在する
・納品系のクエストは手持ちの物を出す形でも良い
・基本的にギルドからの干渉は無いが、場合によってはその限りではない
といった事らしい。
「あとは、サポートの一環でネットワークに登録したフリーの人達のパーティを組む手伝いなんて事もやってるわ。そこで確認なのだけど貴女もこのネットワークに登録して大丈夫かしら?」
要は野良パーティの斡旋らしい。スキル構成等は公開されないということで登録は許可しておく。
「ギルドに共通した機能はそんなところね。施設については場所によってあったり無かったりだからそれぞれで聞いてみて頂戴。これで説明はおしまい、貴女も冒険者の仲間入りよ。それでは改めまして………、ようこそ冒険者ギルドへ。これからよろしくね?」
その言葉を聞いて気分が高揚するのを感じた。
途中の魔法関係が少し解り難かったので魔法スキルに関する用語解説です。
詠唱…魔法アーツ使用から発動待機状態になるまでの時間。必要時間はアーツ毎に異なる。
発動…アーツを使用宣言して効果を発動させる事。広義的には詠唱開始から発動までの時間も指す。
再詠唱…リキャストタイムまたはクールタイムとも。発動からもう一度同じアーツを発動できるまでの待機時間。詠唱時間に詠唱可能になるまでの時間が加わるので基本的に詠唱時間よりは長め。
白は難易度が高い技を好み、それの習得と使いこなす事に悦びを覚えるタイプです。他のメンバーも特定のゲームに関しては変態(誉め言葉)になります。
~裏話~
護衛系クエストの対象のHPは基本的にストック制。踏み潰す・首狩りなどの即死攻撃を受けなければたとえ赤ん坊でもドラゴンの一撃に耐えます。逆に言えば最弱のゴブリンにも一定値削られる訳ですが。
魔法で攻撃する場合詠唱中は集中する必要があるのでその間に通常移動以外の行動をすると発動難易度が極端に跳ね上がります。普通は【行動詠唱】などの補助スキル前提ですが、それらが無くても不可能ではないためノワールのように気合で何とかしたりもできちゃいます。
始まりの街の名前は韓国語시작の発音から。意味は“始まり”。そのままです。




