山賊狩りと不死種の住人-後編-
遅刻してしまいました。
前編の3つのあらすじ
さあ実験を始めよう
撫で斬りぞ 根切りぞ
キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!
11.山賊狩りと不死種の住人-後編-
恐る恐る後ろを振り返る。
死んでいたはずの彼女が目を開けてこちらに話し掛けていた。
「おーい、聞こえてる?」
おっと、いけない。あまりのインパクトにフリーズしてたみたいだ。とりあえず謝っておこう。
「すまないな。予想外すぎて固まっていた。」
「うわ、ひっどいなぁ。」
「さっきまで死体だっただろうに。貴様も人間ではないのだな?」
「人間だよ!死んでないもん!!」
ムキになって否定し始めた。さすがにあの状態から動きだして人間ですは無理があると思うのだけど。
このままだと人間だ人外だで話が進まないので警戒を解く意味を込めて人外アピールでもしてみよう。
「まあ落ち着け。私も人間ではないのだ。この通り………な?」
『部分霧化』を使って右手を霧に変えてみせる。彼女は物凄く驚いた顔をしていた。あれ?対応間違えたかな?
「ヴァンパイア……?ねえ、お願いがあるの!」
<クエストが発生しました>
クエスト:『私のカラダを探して』
私の手足が山賊に奪われてしまったの!
お願い!カラダを取り返して!!
達成条件:特定のアイテムの納品
現在 :女性の右腕 0/1
女性の左腕 0/1
女性の右脚 0/1
女性の左脚 0/1
<クエストを受注しますか? YES/NO>
彼女を見過ごせないので受注する。クエスト名が不穏なんですけど。絶対に倒せない敵とか出てこないよね?
それはともかくどうやって探そう?多分洞窟内にあるんだろうけど洞窟のマップはないし………。方向だけでも分からないかな?ダメ元で試してみよう。
【血液操作】スキルで取得してた『ブラッドマーキング』を彼女に発動する。
カミラさん曰く血を付けた相手の居場所をなんとなく把握するアーツなんだとか。彼女は使わないアーツだとかで知らないらしくそれくらいしか分からなかった。
おっ、やった。成功だ!現在地の彼女の他に4ヶ所から少し小さいけど同じような存在を感じる。多分これが手足なんだと思う。
早速と思ったけど彼女をどうしようか?このままだと万が一誰かきても戦えないだろうし………。抱えて歩くくらいは出来るかな?っと忘れてた。
「そういえば自己紹介がまだだったな。私はノワールだ。貴様は何と呼べば良いのだ?」
「アタシはフィローネっていうの。よろしくね、ノワール。」
「うむ、よろしく頼む。して、貴様はどうするつもりだ?このままでは何も出来ぬだろう?良ければ私が抱えて歩くくらいはするぞ?」
「ホント?いくら死なないとはいっても何度も痛い思いはしたくないから助かるよ。」
というわけでフィローネをぬいぐるみのように抱き抱えて手足らしき気配の方向へ歩いていく。彼女がなんか違うと言いたそうな顔をしてるけどこうじゃないと安定しないんだから仕方ない。
歩きながらお互いの事について話して分かったことは、彼女はやっぱり人間ではなくゾンビ系のユニーク種族で、NPCだけどスキル効果で擬似的に死なない特殊な存在だということと、彼女は冒険者として活動していて、斥候がメインで戦いは苦手という事だった。
こっちは戦闘は良いけど索敵ダメだしちょうどいいかもしれない。戦闘はこっちで請け負って索敵は彼女に丸投げすることで決まった。
もう少しで気配のところへたどり着く。彼女のお陰でほとんど苦もなく一撃で倒せてる。正確に場所と人数を特定してくれるので不意討ちが簡単に決まってくれる。
情報通りならこの部屋のなかなんだけど……。物影から中を覗く。確かに彼女のものっぽい腕を見つけた。そしてその腕を恋人の様に扱う山賊も……。
うへえ…。なにあの人。………ヘンタイさん?見てて気持ち悪くなってきた。サクッと殺ってダメージ軽減を図ろう。後頭部めがけたアーツのラッシュで倒して右腕を取り返す。
彼女に右腕を着けると直ぐに繋がったみたいだ。でも力はうまく入らないようで武器を握るのも難しいらしい。戦闘はやっぱり無理そうだね。
今の時間はゲーム内で深夜を回ったところ。洞窟が意外に大きくて結構な時間がかかってしまったけどなんとか彼女の身体を元に戻せた。肉体的な疲労は大したことないんだけど身体のパーツを持ってるのが変態しかいなくて精神的にどっと疲れた。
フィローネが身体を取り戻す度に魔法のようなものを使っていたので聞いてみたら【生活魔法】だそうでそういうものがあると知れたのが唯一の利点だったかもしれない。ついでに教えてもらえたことも。
そして今向かっているのは洞窟の最奥。人の反応はあとそこだけで、そこに親玉がいるらしいので挨拶しに行こう。どうせ最後だし派手にいってみようか。
入り口前に見張りがいたので最初の見張りのように片方をさっくりと、もう片方は中へと吹き飛ばしつつ登場する。お邪魔するよ~。
中に居たのは……7人か。中央の世紀末っぽい格好の男が話しかけてきた。
「少し騒がしいと思ったら何だぁ、お前らは?わざわざヤられにでも来たってか?」
そう言うと周りもギャハハと下品な声で笑う。それにイライラしていると一人だけ笑わなかった冷静そうな男が声をあげた。
「……ん?お前らは………。こいつは駄目だな。時間を稼げ!」
そう言って一人だけ奥に逃げようとし始めた。そのまま追いかけて倒すのは簡単だろうけどフィローネを置いていく事になるし、他が油断してくれているチャンスを潰す事になる。何より本調子じゃない今の彼女に1vs6は危険だ。まずは六人を何とかしないと。
その前に『ダッシュ』で急いで距離を詰めつつ『ブラッドバレット』を前に放つ。よしっ、逃げる男に命中した。そのまま『ブラッドマーキング』で位置を把握する。
前方三方向から同時に攻撃をかけてきた。目の前に来た男が斧を上段から振り下ろそうとしている。その左右からは短剣で突きが繰り出される。当たる前に『チャージ』を重ねて更に加速して突っ込んで吹き飛ばす。直ぐに上体を反らしてバク転の要領で突きを躱しつつ片方の男の首を挟みヘッドシザーズ・ホイップ!
もう片方の脳天へ落として即離脱。フィローネの状況は?なんとか持ってるけどかなり圧されてる。急がないとまずそうだ。
まだ生きてた二人を始末してから『ダークアロー』を撃って牽制しつつ突っ込む。弓持ちと長剣の二人の気を引けた!
弓との間に剣を置くようにして攻撃を躊躇わせて剣と対峙する。攻撃を誘って………今っ!!
【脚力強化】の『瞬歩』と『霧化』を組み合わせて剣をすり抜けて弓へと迫る。予想外の行動に固まった弓の顔面目掛けてグーパンチをお見舞いする。だめ押しに『部分変化』と『鋭爪』を混ぜて斬れ味マシマシにしておいた。
そのまま反転して剣持ちを狙う。最早戦意も無さそうだけど容赦はしない。【長柄】の『ラッシュ』で脚を砕いて倒れ込むところの頭目掛けて『回し蹴り』を打ち込んで首を折る。
最後はフィローネと挟み撃ちの形になったのであっさりと終わった。
逃げた奴の反応は?……ダメか。もう感知できない。どうやら逃げ切られたみたいだ。無理なものは諦めて、今度見つけたら必ず倒そう。
<<山賊団:『鬼牙山賊団』が討伐されました。該当地域の山賊出現率が低下します。>>
またワールドアナウンスが。この辺りの山賊が出なくなるっていうと西の森の方かな?第三勢力が邪魔だとか掲示板で騒がれてたし。
そういえば討伐してどうすればいいんだろう?ちょっとフィローネに聞いてみよう。
「さて、これで終いの様だがこの後はどうすれば良いのだ?」
「お宝探しかな?賊の溜め込んでたお宝は討伐した人のものだからね。」
「ふむ、ならば半々でいいか?」
「え?良いの?アタシほとんど何もしてないよ?」
「索敵に助けられたし色々と教わったからな。その礼ということでは駄目か?」
「えへへ、ありがとう。」
これはこれはたいへんいい笑顔で。思わずキュンとくるとこだった。
それから奥へと進んでみつけたのは多種多様なお宝と囚われていた六人の男女だった。
Tips:特殊スキルについて
スキルによっては装備枠を使用せずに装備可能なスキルがあります。これを特殊スキルと呼びます。
特殊スキルにはレベルやステータス補正が存在せず、そのため取得アーツも全てExアーツとなります。
~裏話~
Q.クエスト中『赤い人』出るの?
A.調整中。
フィローネの身体を集めるクエストの発生条件は
1.彼女の身体から剣を抜いて復活させる
2.復活後彼女の好感度を一定以上にする
この2つです。ちなみに彼女が人外なので人外アピールで一発の模様。チョロい。人間種でも受注は可能ですが街入場クエストの1つのため報酬の旨味はありません。
ノワールはフィローネを連れていきましたがクエスト中は彼女を置いていっても好感度は下がりますが問題はありませんでした。連れている場合の立ち位置としては一時加入型のお助けキャラ(レーダー役)になります。
山賊団の名前は人外種の初期位置ネタから引っ張って来ました。つまり全3回予定。次は海辺で対決ですかね?
ぶっちゃけますがラストの囚われていた人達は完全なモブです。街に到着後に再登場する予定は今のところありません。




