山賊狩りと不死種の住人-前編-
今回もホラー?あります。
そういったファンには怒られそうですが。
10.山賊狩りと不死種の住-前編-
疲れたぁ~。なんとあれからゲーム内で6日間ぶっ続けで特訓である。流石にご飯とかリアルの方の用事には配慮してもらったけど。ハード過ぎて死ぬかと思った、というか何度か死んだ。
実力に差がありすぎて手加減が手加減じゃないんだもの。具体的には直撃するとその部分が吹き飛ぶほど。掠っただけでもがっつり持ってかれてた。
だいたいが即死からの復活だったせいで目当ての【HP自動回復】がなかなか育たないという本末転倒な事にはなってたけど動体視力とスキルがかなり鍛えられたし有用そうなスキルもいくつか解放されたからまあ良いかなって。
そのスキルがこちら
【再生】…あなたの体は欠損してももとに戻る。満腹度を消費して部位欠損を回復する。消費SP2。
【見切り】…あなたの目は攻撃を的確に見極める。敵の攻撃の瞬間攻撃範囲が見えるようになる。回避率アップ。消費SP6。
【血液掌握】…あなたは自分の血液を自在に操る。HPを消費して血を扱う事ができる。消費SP6。
【再生】は何度も手足を吹き飛ばされてたらいつの間にか解放されてた。残りはそれぞれ【攻撃予測】と【血液操作】の上位スキルだった。これらを取得して残りSPは34。他にも色々解放されてたけどそこまで魅力的なものはなかったのでとりあえず保留。取っても【刀剣】くらいかな?といった感じ。
そんな特訓のお陰?で直接日に焼かれなければ昼間でも問題なく歩けるようになったので最後の仕上げとして近くの山にいる山賊を潰してこいと言われ、現在絶賛ハイキング中というわけ。
それを指示した彼女はどうしたかというと
「そろそろお腹が空いてきたから何処かで食べてくるわね。ついでにかつての仲間を探してみるつもりだから暫くお別れかしら?」
だそうで。ドラゴンなんて良いかしらとか言いつつ出ていった。彼女にとってはファンタジー最強生物もただのご飯らしい。
そんな具合で彼女はいないのだけどだからといって課題をやらないつもりはない。というか未だに服は血塗れなままでこのまま街に行っても投獄待ったなしな訳で、そこに望みをかけるしかない。
と、そんなことを考えて歩いていると感知に反応が。数は……3。ウルフかな。物陰から正面と左右を狙うように動いている。チュートリアル以来だしあれから色々成長してるからどれくらい戦えるか楽しみだったり。特訓で習得した新アーツも試したいしね。
さて、飛びかかってきたので実験を始めましょう。まずは正面から来たのを振り上げ『スマッシュ』で真上に高く打ち上げ、少し遅れて右から跳んで来る動きに合わせて『ステップ』。
からの【格闘】アーツの『回し蹴り』に特訓で習得した【肉体変化】のExアーツ『部分変化』で足先に『鋭爪』を展開して打ち込み頭と体をさようなら。
そこから直ぐに飛び上がって左からの攻撃を躱し、下向きの『空中ジャンプ』で勢いをつけて【格闘】アーツの『貫手』をこれも『鋭爪』を乗せて文字通りに手で貫く。
最後に打ち上げた一匹の下に『ブラッドウェポン』で槍を置いて串刺してひとまず実験終了。
うん、私の攻撃強すぎない?最初の一発以外全て一撃。その一発もほぼ瀕死までダメージを与えてた。事前情報では素早いくせになかなかタフで始まりの街近辺の強敵だったはずなんだけど………。
サクサクと行けるのは良いことなので深く考えるのは止めにしてご飯の時間だ。【吸血】スキルも地味に強化されて戦闘中でなければ死体からでも満腹度を上げられるようになっていた。その代わりにドロップが無くなるのだけど。
では、いただきま………なんか熊が涎垂らしてこっちを見てるんですが。そして後ろ側から足音。こっちは人っぽい。君たち、邪魔なんだけど。
仕方がないのでささっと熊は倒して人の方は見られると恥ずかしいし追い払おう。さっき使った『貫手』&『鋭爪』コンボの突き出す動作中に【肉体変化】の『部分変化』で『霧化』を右腕にプラス。すると……、なんと勢いよく手だけが飛んでいくロケットパンチ風に!
そしてハートキャッチ(物理)!から即座に腕を戻して心臓を抜き取って撃破。失敗して返り血を頭から浴びちゃったけど。後ろの人が後退った音がする。これなら追い払うのは楽かな?
クルリと振り返ってニッコリ笑う。そこにいたのはいかにも冒険者って格好の男の人だった。素材は分からないけど皮鎧に金属剣と私なんかよりよっぽどいい装備してる。逃げの姿勢でいるのでこのままハッタリで強そうに見せていよう。お前もご飯にしてやろうか~!
……なんとか逃げてくれた。昼時間は【吸血】しか回復手段が無いから。さっきのでHPの4割ぐらい削れててこの状態で対人戦は不安だったから戦闘回避できて助かった。
ご飯も食べたし回復も済んだ。山の中腹にアジトがあるみたいなことも言っていたので夕方前には見つけておきたいところ。HPが不安だけどあれ使おうかな?【肉体変化】の『蝙蝠化』を『部分変化』で使って……HP消費は……5割あれば良いかな?
左腕を蝙蝠に変えて飛ばす。ここからは時間が許す限り本体と蝙蝠の一人二役で探していこう。
前から思ってたけど『部分変化』が便利すぎる。【肉体変化】で変える部分を身体全体から一部に変えたり、変化させる部分を別に変えたりと色々使える。制約があったりコストが増えたりはするけど。
因みにこの『部分蝙蝠化』は身体の一部にHPを設定して変化させるスキルで、コストに腕などの“身体の一部”と“HP消費”、更に“消費する分の最大HP”まで要求される。流石に最大HPは解除すれば戻ってくるけど身体は近くで解除しないと欠損扱いになって戻らないし、消費HPはそのまま。蝙蝠自体には攻撃手段も耐久力も無いけど身体の一部だから自由に動かせるし偵察や捜索には最適だったり。
うーん、ちょっと蝙蝠の受けてる日光ダメージが強いかな?これだと使い潰しても一時間持つかどうかって感じ。もう少し蝙蝠増やせれば探索範囲拡がるんだけど贅沢は言えない。早く見つかると良いな。
とか言ってたらあっさり見付かった。山肌にできた洞窟の前にいかにもな山賊スタイルの男達がいる。もはや隠す気ないレベルで大声出してたりする。賢くても困るからいいけど準備整えて狙っていきますか。
って訳で夕方になりました。HPも満タン、山だからかもう夕闇が辺りを包み始めてる。見張りは二人、洞窟を背にして立っている。ミッションを開始しよう。近くの木の上で『蝙蝠化』をして頭上から片方の背後を取り、口を押さえつつ『鋭爪』でグサッと一撃。もう一人も気付かれない内に『ブラッドウェポン』で槍を作って首筋狙ってブスリとやって終了。
入り口の掃除は完了。中の方は遭遇戦なるだろうしアドリブでやるしかないかな?警戒しつついこう。
洞窟内の道は掘って広げたのか人が2人は並べそうな幅で伸びている。高さもそれなりで頭上から奇襲なんてのも出来そう。特に何もなく最初の部屋までやって来た。
部屋は広く、灯りとしてランタンのようなものが壁に掛けられており、いくつかの通路がその側に見える。人はいないのだけどこれは………。
その部屋の壁にあったのは四肢を切断され、腹部に剣が刺さっている女性の死体だった。破れた服から覗く無数の古傷で彼女が戦う人間だった事が分かる。
山賊に挑んで返り討ちにされたのだろうけど……この所業は赦せない。全員見つけ出して殺そう。皆殺しだ。改めてそう決意する。
彼女はこのままだと可哀想なので剣を抜いて入り口近くの壁にもたれさせ、目を閉じる。せめて安らかに眠れるように少し祈っておいた。
ここでやることはやった。次はどっちに進もうか?入り口から見て正面、右、右奥と通路が3つある。とりあえずでそれぞれの先を覗いてみるけど別々の部屋へと続いている位しか分からない。
悩んでいると微かに声が聞こえた気がした。まずい、ここは隠れる場所がない。せめて不意討ちを受けないように通路全てを見える位置で武器を構えて待つ。
……いつまで待っても誰も来ない。結構近くだったはずなんだけどおかしいな?耳を澄ませて声の方向を探る。
後ろから?そっちは壁しかないはず。
やっぱり後ろ……?まさか………。
恐る恐る後ろを振り返る。
死んでいたはずの彼女が目を開けてこちらに話し掛けていた。
Tips:時間経過について
このゲームでの1日は24時間になっており、現実の1日に6日経過します。また、朝時間・昼時間・夕時間・夜時間と4つに区切られており、特定の種族が影響を受けます。
Tips:Exアーツについて
スキルによってはレベルアップではなく特定の条件を満たすことで習得するアーツがあり、それをExアーツといいます。Exアーツの習得条件は多数ありますのでぜひ探してみましょう。
~裏話~
カミラ「さあどうしたの?まだ足がなくなっただけよ?再構築して立ち上がりなさい!武器をひろって反撃しなさい!!さあ戦闘はこれからよ!!!お楽しみはこれからよ!!!!」
特訓中こんなことがあったとかなかったとか。
部分霧化のコンボですが身体を霧化させて伸ばす様な使い方をするので実際はロケットパンチというよりは無限拳やズームパンチに近いです。
ノワール「チャンスをやろう!『向かうべき2つの道』を!」
掲示板のヤバいヤツ描写回収。もちろん彼女でした。余談ですが実は彼女も内心ビビってました。一部とはいえ手の内知られて装備は格上、更に消耗が大きめ。
不利な状態で闘う事になるし、なにより戦闘に入ったら例え勝ってもその後が問題ですからね。




