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剣道少女が異世界に精霊として召喚されました  作者: 武壱
第三章 精霊編
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シルフィードに会いに行こう!(風の谷の~…マジサーセン(3)

「そう言えば、話には聞いてたけど、フェアリー達の大きさってあんなに小さいのね~あれで成人なんでしょ?

「えぇ、そうですよ。」


 シルフィーを先頭にして歩き出してすぐ、思い付いた疑問をそのまま口にすると、横に歩くエイミーがそれに答えてくる。


「それに比べてシルフィーは、随分大きいのね。本当はあのくらいのサイズで、今は魔法で大きく見せてるとか?

「うん?いやいや違うよ。まぁ魔法で大きく無理矢理成長したのは事実だけどね~」


 あたしの問い掛けに対しシルフィーは、身体毎ぐるんとこちらに向けて、空中であぐらをかいて頭の後ろで両手を組むと、後ろ向きで器用に先導しながら質問に答えてくる。


 彼女らしい気さくなその格好は良いんだけど、着てるのがワンピースなんだから、もうちょっと気をつけて欲しいわね。女ばっかだから良いけど、スカート部分がたくし上げられて、あられもない恰好になっちゃてるのよね~


「ボクが、元フェアリークイーンだって言うのは、当然知ってるんでしょ?

「えぇ

「フェアリークィーンの役割って言うのは、主なのが種の代表としての顔だからね~各種の代表が集まるような場所には、当然だけど参加しないといけないから、それなりに目立つ姿をしていないといけないのさ

「それに、争いを好まないフェアリー達を、護る役目も負っていますからね。話し合いで全て解決出来るのであれば、それに越した事は無いのでしょうが、やはり武力を持って害悪を退ける力も、時には必要ですから…

「そっか、成る程ね~」


 2人から説明を受けながら、ササッとシルフィーに近寄ってスカート部分を摘まんで直すと、自分の姿に今更ながらに気が付いたのか、ほんのり頬を染めて組んでいた足を解いた。恥じらっているその姿が、やたら可愛らしくて思わずトゥクンときちゃう。


「…機会があれば、フェアリーガーデンにも寄ってみてよ。今代のフェアリークィーンは、一見の価値ありだからさ!

「へぇ、そうなの?

「フフッ、そうですね。とても美しい方ですし、フェアリー唯一の魔術師で、恐らく世界随一でしょうから

「それだけじゃ無いよ!ディーネに負けない位、ボンッ!キュッ!ボンッ!!ってしてて、おまけにあのおばさんと違って器量よしなんだからね!!

「な~に~!?そいつぁ聞き捨てならねぇなぁ!!

「だろう!?」


 興奮気味に、身振り手振りを交えて説明するシルフィーに、思わずそのノリに乗っかってそう答える。そして、お互い熱い眼差しで通じ合い、ガシッと強く拳を握り合い頷き合った。


「我が儘バディで器量良しだなんて、最強ね!!

「良かった、キミならきっとノってくれると思ったんだ!

「え、え~っと…」


 互いの友情(?)を確かめ合うあたし達とは対照的に、エイミーが全く付いて来れていないと言うか、完全に引いてしまっているのが気配で伝わってくる。それを余所に、シルフィーと交わした拳に更に力を込めて、笑顔のままエイミーに顔を向けると、彼女は引きつった表情を浮かべていた。


 そんな彼女に対してあたしは、真顔に戻って口を開く。


「さて、ココで問題です

「え?

「あ、あれ?なんで優姫ちゃん力を強くしたのかな?ちょ、ちょっと痛いんだけど…」


 あたしの呟きと行動にエイミーは、困惑気味に首を傾げて聞き返してくる。更に視線を外した側からも、困惑した様子のシルフィーの呟きが聞こえてくる。


 困惑している2人の反応を無視して、あたしは更に続ける。


「どうして彼女は、あたしがウィンディーネのナイスバディを見て、羨ま~って反応をした事を知ってるんでしょうか?

「ギクッ!

「え?あ…

「どうして彼女は、今日初めて会った筈のあたしの性格を、知った風だったんでしょうか?更にもういっちょ。どうしてあたし達が、今日中にここへ着く事を、事前に彼女は知っていたんでしょうか?

「ギクギクッ!!

「ま、まさかシルフィード様…」


 あたしの言葉に、あからさまな反応を示すシルフィーと、信じられないと言った様子で、彼女を見つめ言葉に詰まるエイミー。


 最初からおかしいと思ったのよね~あたし達が彼女に会う事自体は、イリナスから聞いていたとしても、移動手段として車を使っているって言う情報までは、きっと伝えられていない筈だった。


 その事実は、ウィンディーネの反応で確認済みだし、もし仮に彼女から伝え聞いていたとしても、あたし達が到着した瞬間に、狙い澄ましたかのように現れた説明が付かない。仮にスピード自慢なんだから、住処からあたし達の元まで、一瞬で飛んできたんだとしても、その場合『()()()()()()()』の一言と驚きの反応位あっても良いはずだ。


 なのに彼女は、驚くどころかそれが当たり前のような反応だった。この世界の主流な交通手段が乗合馬車なのに、この反応は明らかに車の性能を知っていないとおかしいのよね。


 それに加えて、さっきの言動なんかを考えると、導き出される答えはと言えば…


「私達の事…尾行して…?

「そ、それは~…」


 エイミーの問い掛けと共に視線を彼女に戻すと、しどろもどろになりながら、視線を泳がせてなにやら思案している様子だった。恐らくは、何か良い言い訳でも考えて居るんでしょうね。


 そんな彼女に対して、あたしはニッコリ笑顔を向けて…


「してたのよね?

「…えへ☆

「笑って誤魔化してんじゃ無いわよ!ったく…何時から見てたのよ

「え、え~っと…キミ達がカタンに入ってから…ヒッ?!

「ん?」ポンッ


 追求するとあっけなく自白した被疑者が、急に顔を引きつらせて言葉に詰まったのを見て、疑問に思っていた所で肩を叩かれ振り向く。すると視線の先には、冷笑を浮かべているエイミーの姿があった。


 あ、完全にオコだこれ…


「優姫、少し時間をいただきますね

「は、はい。どうぞ

「シルフィード様、少しお話ししましょうか?

「は、はい!」


 彼女の迫力に押されて、あたしは道を開けてシルフィーの手を離す。一瞬逃げるかもと思ったんだけど、逃げた所で逆効果だと悟ったんだろうシルフィーは、大人しくその場で気をつけの姿勢を取った。


 そこから、エイミーのお説教タイムが始まる。曰く『精霊とはかく在るべきだ』とか『恥じぬ行動』がどうたらだとか、そんな内容で正直あたしも耳が痛い。


 普段怒らない分、怒った時の反動が怖いなんてよく言ったもので、普段のからは想像出来ない程、今のエイミーからは有無を言わせない凄みを感じた。


 あたしも性格がパッパラパーだから、何時かこんな風にエイミーに説教される日が、きっと来るんでしょうね~そうならない様に、自分を律するなんて出来そうも無いし。それにしても…


 少し離れた場所から、2人のやり取りを苦笑しながら眺める。エイミーにガミガミと小言を言われて、しゅんとなって小さくなっている彼女こそ、この世界の最高戦力の1人だとは、とてもじゃないけれど思えない。


 まぁ、それだけ平和って事なんでしょうけれどね。


 妙に面白いその光景を、苦笑しながら温かく見守り、エイミーの説教が終わるのを気長に待つ事にした。お説教タイムは、大体20分に渡って続いてようやく終了し、解放されたシルフィーが涙目になっていたのは言うまでも無い。


「うぅ~…ひ、酷い目に合ったよぉ~

「自業自得でしょう。あたしも流石に、カタンから見張られてたとは思わなかったわよ

「あ、あはは~イリナスちゃんにキミの事聞いたら、居ても立っても居られなくなっちゃってさ~ついね

「『つい』ではありませんよ、全く。」


 再びシルフィーを先頭に、歩きながら会話をしていく。まだ言い足りないのか、未だにプリプリしているエイミーが珍しいやら可愛いやら。


 何時までも見ていたい気もするけれど、流石にこれ以上はシルフィーも可哀想だと思い、話題を変え様と口を開く。


「それで、その武器って言うのは一体どう言うものなの?

「あぁ、うん。えっとね、伝説の武器だとか、曰く付きとかじゃ無い普通の武器だよ

「普通の?

「そ!何の変哲も無い、その辺で買えるような物ばかりさ!!まぁ、ボクに武具の善し悪しが解る訳じゃ無いから、中にはお値打ち物も在るかも知れないけれどね~

「なんでそんなのが、ここにあるのよ?

「それは多分、盗掘者が身に付けていた物ですよね?

「盗掘者?」


 エイミーの言葉に振り返り聞き返すと、彼女は真面目な表情で頷いて、先を続ける為に口を開いた。


「精霊王が住む地には、精霊石が出来ますよね?あれは、魔力の塊その物ですから、魔道具の材料や燃料として使われたりするのです。純度や大きさによって値段が違いますが、それなりの金額で市場で取引されています

「あ~、やっぱり取引とかされてるんだ。綺麗だし宝石としての価値なんかもありそうだもんね

「うん。まぁ少し位なら、持って行かれても問題ないんだけれどね~キミもちゃんと知っておいた方が良いけど、精霊石は子供達のゴハンの代わりにも成るからさ

「そうなの?」


 補足するようにシルフィーにそう言われて、先頭を歩く彼女に視線を戻して聞き返す。


「うん。ボクの側に居る限りなら、ボク達精霊王から放出された微精霊を取り込んでいられるから良いけれど、例えば今のアクアちゃんみたいに、ディーネから離れて行動している子は?別に取り込まないと生きていけないとか、魔力が回復しないとか、そういう訳じゃ無いんだけれど、力を蓄えて位階を高める事は出来ないんだよね~

「成る程ね~んじゃ、精霊達にとって精霊石は、お弁当ってポジションなのね

「アハハッ!まぁそうだね~とは言っても、自然に増えていったりする物だからさ、許可さえ取ってくれたら、少し位なら持ってって貰っても問題ないんだよ

「ふ~ん。じゃぁ、その武具の持ち主達は、許可を得ずに持ち出そうとした、不届き者達の物って事か…」


 説明を聞いて納得したあたしは、歩きながら腕を組んで1人頷く。その不埒者達の末路については、聞く気も無いし考えるつもりも無い、どうせ碌な末路じゃ無いだろうしね。


「そう言う事そう言う事!精霊石の採取権については、イリナスちゃんが取り仕切っててね、専門の機関が年に2回位、取らせてくれ~って来るんだよね

「なら、その機関に見回りでもさせたら良いんじゃ無いの?

「アハハッ!それも良いかもね~けど、四六時中厳つい恰好して見回りされたら、フェアリー達がストレスで参っちゃうよ

「あぁ、それもそうかもね。あの子達見るからに臆病そうだしね?

「フフッ、そうですね。」


 隣を歩くエイミーに同意を求めると、彼女は何時もの困った表情で苦笑しながら同意する。そしてすぐに顔を引き締めたかと思うと、シルフィーへと視線を移した。


「ですが、盗掘者が多いようでしたら、1度イリナス様に相談された方がよろしいのではないですか?フェアリー達に何かあってからでは、やはり遅いですし…

「そうだよね~やっぱり、フェアリー達が多く住んでるからって、舐められちゃってる所もあるみたいだし、それに…

「それに?」


 訝しがりながら聞き返すと、シルフィーは右手で崖の上の方を指で差した。その先に緑色の精霊石が、あちこちに点在して生えている光景が目に映った。


「ボクが住処でジッとしてらんないってのもあるんだけど、昔っからフェアリー達の相手をしたりして、谷中を飛び回ったりしているからさ。その影響で谷全域に精霊石が生えちゃってたりしてるんだよね~海風の影響で微精霊が流されちゃうって事もあるらしくてさ、下手したらさっきキミ達が抜けてきた林の中とかにも、昔生えてた事があるんだよね~それに味占めちゃって、入り口付近なら平気だろうって、軽い感じで来ちゃうみたいなんだよ。」


 本当に困ったと言った様子で、身振り手振りを交えて現状を語るシルフィー。どうにかしてあげたいとは思うけれど、こういう時に限って、良い案が浮かばないのよね~


「シルフィーの子達が見回りとかしているの?

「うん。フェアリー達の相手もしながらね~今もあっちこっちに散ってる筈だよ。長女はこの真上でボク達の事、見てるみたいだけど

「「え?」」


 そう言われ、エイミーと一緒になって空を見上げる。するとかなり上空の方に、ギリギリ見えるか見えないかって位、小さな人影があるのを確認出来た。


 あたし達がここに着く前から、あんな所に居たのかしらね?つまり、さっきのお説教タイムも、あそこで観察されてたって事か…


 そんな事を考え視線を横にずらすと、同じ事を考えていたのか、エイミーの表情がちょっと暗くなっていた。やっちゃったって心境なんでしょうけど、止めに入らなかったって言う事は、大事には成っていないと思うからきっと大丈夫だと思う。


 むしろ、良識人だったらもっと叱って下さいって、そう思ってたかも知れないわよね。言動がアレだから忘れがちだけど、一応世界最高戦力の1人なんだし、自由奔放過ぎなシルフィーの事、叱るに叱れない人とか絶対居そう。


 ポジティブにそんな事を考えつつ、視線を戻して口を開く。


「ありきたりだけど、柵と立て看板でも作ってみたら?気休め程度にはなるんじゃ無いかしら

「う~ん、柵作る位だったらいっそ結界張っちゃうかな~けど、立て看板は良いかもね

「でしょ?『この先に進む者は、一切の希望を捨てよ』とか書いて、動物の骨でも飾っておけば

「何それ!格好いい!!

「そ、そう?」


 世界的に有名な銘文をもじって、冗談混じりに言って聞かせたると、予想外な程勢いよく食い付いて来て若干焦る。こんな中二な台詞に飛び付くなんて、見た目以上に中身は子供なのかも知れない。


 チラリと横を見てみると、珍しく渋い顔してるエイミーの姿があった。その反応は、シルフィーの余りにも子供っぽい反応に引いてるって判断で、きっと良いのよね?

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