女子のあるあるネタですね!(それに付き合うのが甲斐性です(1)
浩太さんの期待を一身に受けつつ、お腹減るんカーもといジープを預かったあたし達は、お腹空いて起きた妖怪食っちゃ寝を連れて、帝都のマーケットにやって来ていた。
「うわ~っ!!
「へぇ~、流石帝都って言うだけあって凄いわね
「ね!凄いね!!
「フフッ、そうね。」
あたしの右肩で、身を乗り出すようにして感嘆の声を上げるオヒメに倣うように、あたしも素直に感嘆の感想を口にすると、それが嬉しいのか興奮気味にはしゃぎながら、彼女はニコニコと太陽のような笑顔をあたしに向けてくる。そんなオヒメがとても愛くるしくて、見ていてとても癒される気分になって、自然と笑みを浮かべて返していた。
「ここは、帝都の中に3つ在る大きな目抜き通りの中でも、1番大きな通りなんですよ
「そうなんだ?あたしはてっきり、この街に着いた時に馬車が通った、王城に続いてるメインストリートに行くのかと思ってたわ
「あそこも商店はありますけど、メインは宿屋や飲食店ばかりですし、なにより馬車もよく通る道なので、露店は出せない決まりなんですよ。まぁ、以前来た時と変わっていなければですが。」
そう言われて、この通りを一望するように、ぐるりと視線を巡らせてみる。言われてみれば確かに、様々な商店がひしめき合う店舗型の建物の前に、これでもかって言う位の露店型の商店が軒を連ねていた。
いやこれ、冷静に見たら店舗型の店の営業妨害になるんちゃうん?って思う位、建物の前に露店が出てるのよね。けどよくよく見たら、露店の店は生の野菜や果物と言った食料品、あとは夜店なんかで定番の、串に刺したお肉を始めとしたご飯物屋さんがほとんどの様だった。
一方の店舗型は、食堂の様な店もあるんだろうけど、見える範囲にあるのは服屋とか雑貨屋さんとかみたいね。店舗型と露店型で、ちゃんと住み分けが出来てるから、こういう通りが出来上がったんでしょうね~
こういう時、よくテレビの旅行番組とかで見る、海外の露店市場や台湾なんかの夜市を連想しがちだけど、あたし的にはどっちかって言うと、浅草寺の仲見世通りを思い出したわ。あの仲見世通りの連結されてる小さな店舗を、テント型にして連ねた感じ?
そのテントの裏側に、店舗型の店がちゃんとあるみたいな。あそこのメロンパン、また食べたいな~
「ここなら食事をしながら、他のお店も見られますし、お洋服屋さんもたくさんあった筈です。旅に必要そうな物は、全てここで揃えられる筈ですよ
「うん、良いわねここ。こういう雰囲気好きよあたし
「姫華も!
「フフッ、喜んでくれて何よりです
「けど、あたしは向こうでも食べ歩きとか頻繁にしてたけどさ、エルフ的には良いの?エイミーからは想像出来ないんだけど
「まぁ!私だって食べ歩き位しますよ!」
あたしの質問に、心外と言わんばかりに反論してくる。それがちょっと子供っぽく見えて、思わず頬が緩んでしまった。
まぁ、勝手なイメージだけどさ、エイミーもそうだしシフォンもだけど、2人とも上品な感じだから全然想像出来ないのよね~食事の時は2人とも、背筋伸ばしてナイフとフォークで、宮廷作法かって位音を立てないようにして食事してたから。
「…ぷっ!」
試しに、エイミーとシフォンが並んで、肉まんとかアメリカンドックとか、コンビニホットスナックの定番商品を、歩きながら食べている姿を想像して、なんだか可愛いやら可笑しいやらで、思わず吹き出してしまった。想像の中で、うちの学校の制服着せたのがいけなかったのかしら?
「…優姫、今失礼な事想像しませんでしたか?
「フフッ、ごめんごめんって。むくれないでよエイミー
「もう…」
あたしの反応を見て、ジト目で頬を膨らませて批難の声を上げるエイミー。その反応がまた可愛くて、むくれっ面の彼女とは対照的な笑顔を浮かべた。
「ママ!ママ!!お腹空いた!!
「おっとそうね。いい加減あたしもお腹空いてきたわ
「ですね。オヒメちゃん何か食べたい物は在りますか?
「う~ん…あっ!アレ!!」
そう言って、オヒメが指差した方角に視線を向けると、そこにはヤツが…
「マジか~アレか~」
例によってこの世界のポピュラー食材、ガザ虫君の姿。やぁ久しぶり!と言っても、夕飯の席には大抵並んでるから、昨日の夕飯振りなんだけどね~
そのお店は、小さめのガザ虫を素揚げにした食べ物を販売しているお店の様で、素揚げされたガザ虫が5個位串に刺されて、店先に飾られるように立てられていた。う~ん…大きいサイズのはいい加減見慣れたから良いけど、小さいとまんま芋虫にしか見えないわね。
「優姫はまだ慣れませんか?
「うん、そーね。あたしの分は要らないわ
「解りました。すみません、1ついただけますか?
「あいよ!」
問題の屋体に近づいていき、商品を受け取って代金を払ったエイミーが、あたしと言うか、あたしの肩に居るオヒメにそれを差し出した。オヒメは目をキラキラさせながら、串から1匹取り外そうとして手を伸ばし、予想以上に熱かったのかすぐに手を引っ込めた。
「あ、まだ熱かったみたいですね。ごめんなさいオヒメちゃん
「うぅん、大丈夫!
「仕方ないわね、ふぅーふぅー…ほら
「わ~い!!」
オヒメの変わりに、ガザ虫を1匹串から取り外して、それを口元に持ってきて息を吹きかけて冷ます。それを彼女に差し出すと、あたしの指に両手を着いて直接食べ始めた。
いやあんた、直食いしないで受け取りなさいよ。あなたが見えない周りの人達からしたら、あたしが変な恰好してるようにしか見えないんだから。
なんて、心の中で一応ぶー垂れてみるけど、美味しそうに食べるその姿を見たら、口に出すなんて無粋な真似が出来なくなってしまった。
「フフッ、すっかり親子が板に着いてきましたね。」
エイミーにそう言われて振り返り、否定も肯定もせずに苦笑を浮かべながら肩を透かして見せた。
その後、美味しそうな物を見繕いながら、食べ歩きを満喫しつつ冷やかし半分で露店を見て回っていく。そして、お腹も落ち着いたところで、いよいよ待ちに待っていた衣服屋巡りの開始です!
と言う訳で、早速見つけた1軒目に突撃なう!
「う~ん、ここはエイミー向けかな?
「え、そうですか?優姫もこう言うの似合うと思いますけど。」
所狭しと飾られていた、元の世界の知識を当てはめて敢えて言うなら、いわゆるフェミニン系を多く取り扱っている店だった。その中から、薄い桜色の服をチョイスして、服を広げあたしの肩に合わせて、サイズを測っているエイミー
「あたしも着るけど、どっちかって言うと妹がよく着るタイプだから、あたしは借りるだけかな~
「ならちょっとチャレンジしてみましょうよ!これなんて色合いも素敵ですし、きっと似合いますよ
「そう?試着って出来るのかしら
「出来ますよ~」
あたし達の会話を聞いていたのか、店員らしき女性の声が聞こえてくる。流石、例え異世界でも、この手の店の店員は耳聡いわね…
「じゃぁちょっと試着してこようかしら。折角エイミーが選んでくれたんだし
「えぇ、是非是非
「あたしもエイミーに服選んで良い?
「え?えぇ、もちろん
「ママ!姫華にも!姫華にも~!!
「はいはい。エイミーもこの子に着せるつもりで、ちょっと選んでみて
「あ、はい。良いですよ。」
そんな感じで1軒目からファッションショー開始。1軒目で軽く1時間居座って、2人してオヒメに似合いそうな服を選んでそれだけ購入。
早速眷属化して、オヒメ用にサイズを調整したレプリカを作成。当然、その場で着替え始めるオヒメに対して、もうちょっとこう、恥じらいを覚えなさいよと思う次第です。
あたしが言うなって?デスヨネー
そこから更に、2軒目3軒目と見て回り、日が暮れて5軒目を出る頃には、3人合わせて上下12着くらい購入していました。いや~服飾関係になると、何でか財布のひもが緩くなっちゃうから不思議だね!!
おまけに、これが経費で落とせるって思ったら、尚更歯止めが効かないって言う罠発動。世のオシャンティ女子の同志諸君、ほんとサーセン。
そして結局、こんな時間になるまで服関係の店しか回っていないもんだから、今更やばいやばいで道具屋を回って、旅に必要な物を慌てて揃えてるアホな女子2人がここに居ます。テヘペロ☆
「いや~買い込んじゃったわね~
「そ、そうですね。ちょっと調子に乗りすぎてしまったかもですね
「良いじゃない。何せあたし達は被害者なんだし、この位は慰謝料として受け取る権利くらい、当然在って然るべきよ
「そうでしょうか…
「エイミーったらほんと真面目ね~
「優姫が緩いんです!
「あっはは~」
両手いっぱいに荷物を抱えながら、目抜き通り並んで歩く。服屋巡るのに6時間はゆうに掛けたって言うのに、道具屋関係は30分位って言うね。
まぁ、そっちの方は何を買うかって、前もって決めてたからって言うのもあるんだけど。それにしてもお座なり過ぎよね、反省。
辺りは既に、夜の萱がすっかり落ちた後だって言うのに、露店の方は昼と変わらず賑やかに営業している。だって言うのに、店舗の方は閉まるのが早いんだって、最後に立ち寄った服屋で教えて貰ったので、それも慌ててた理由なのよね~
正直言うと、思いがけず車を入手する事が出来たから、内装デコりたいなと思ってて雑貨屋にも立ち寄りたかったんだけど、閉店時間が予想以上に早くて、道具屋出た後に見たらもう閉まってたわ。だからって明日の出発を延期するのかって言うと、流石にそれは駄目人間の発想だから、今回は泣く泣く諦める事にした。
え?人の車だしお金も使い込み過ぎだって?そんな事知らんがな!!
古来より伝わる、偉大なこの言葉の前には、大抵の事象は些事よ些事。全ての人にこの言葉を贈りたいわ…可愛いは正義!!(•̀ᴗ•́)و ̑̑ぐっ
真面目に働く人の非難の声なんて聞こえな~い。あたしJKだし~バイト経験も無いし~
「それよりどうします?宿に戻って食事を摂るか、それか休憩がてら食事して戻るか
「そうね~
「ママお腹空いた~
「あんたそればっかりねぇ…
「フフッ」
不意に振られた話題に答えながら、今後の予定を考える。正直荷物が多いから、宿に戻ってゆっくりしたい気持ちもあるけど、歩き疲れたし小腹も空いてきたから、どこか腰を落ち着かせられる場所で、少しお腹に入れるのも悪く無いわね。
まぁ、オヒメもお腹空いたって言うし…うん?
-キイイイィィィーン…
考えながら歩いていると、不意に耳鳴りのような感覚を覚えて立ち止まり、その場で振り返ってある一角を凝視する。
「?どうしたんですか?
「ねぇエイミー、あそこって武器屋?」
そう言ってあたしは、両手が塞がっていたので顎で、店舗型のお店を指して聞いてみる。
「え?えぇ、そうみたいですね。それが?
「何か呼ばれた気がしたのよね…
「…寄ってみますか?」
その言葉にあたしは頷いて、無言のまま武器屋へと向かっていった。
カランカラン…「…いらっしゃい。」
ドアを押して入店すると、椅子に座った強面な店主の出迎えの言葉が出迎えてくれた。ただし、歓迎はされていなさそうで、入店したあたし達を一瞥したら、それだけで興味を失ったみたいで、そっぽを向いてしまった。
いかにも気難しいですよって感じの人ね。まぁ入店したのが、いかにも買い物帰りの小娘って感じじゃ、それも仕方ないか。
とりあえず、そんな店主の対応は放っておくとして、あたしは店内を見回してから、迷わずその一角へと足を向けた。その先にあったのは、抜き身で壁に十字にクロスされて飾られている2対の剣だった。
「…これね。」
目の前まで来て、あたしは思わず口に出して呟いた。片方は黒い刀身で両刃の剣、刀身の長さは短く一尺位…大体30cm位だった。
そしてもう片方は目映い銀色の刀身をした、片刃のいわゆる直刀だった。こちらは黒い剣よりも刀身の長さは少し長く、大体45cm位で短刀以上脇差し以下って感じだった。
それらは一見、全く別々の作品に見えるけれど、柄の造りや雰囲気から、同じ作者の手によって産み落とされた、姉妹双剣なんじゃないかって感じがあたしにはした。