表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣道少女が異世界に精霊として召喚されました  作者: 武壱
第三章 精霊編
71/398

異世界リサイクルショップ開店!(しませんよ?(3)

 コンコン「入りますよ?」ガチャ…


 そんな感じで女子トークをしていると、外に繋がる扉がノックされて、室外から浩太さんの声が聞こえた後、ティーセットを乗せたトレーを手にした彼が戻ってきた。


「ずいぶん楽しそうですが、一体何の話をしていたんですか?

「あら、女子トークの内容を知りたいだなんて、デリカシーに欠けますよ?

「あぁ、すいません。こちらに一緒に来た同僚にもよく言われたんですが、僕はそう言うのには鈍感で…」


トレーをテーブルに置いてから、あたしの言葉に照れたように頬をかく姿は、あどけなさの残る子供のように見えた。


「その同僚の方というのは、女性の方なんですか?

「えぇ。ミリアと言います

「その人もこちらに?

「いえ、彼女は元の世界でも行動的な女性でしたからね。今では冒険者をしていますよ。」


 喋りながら、浩太さんはポットのお茶をカップに注いで、あたし達の前に差し出した。そして自分の分をカップに注いだ後、あたし達と向き合う形で、対面の椅子に腰を落ち着かせる。


「浩太さんは、そのミリアさんと一緒に冒険者になるつもりは無かったんですか?

「ハハハッ、考えたこともありませんよ。基本、引きこもりがちなんですよ、僕

「そう言う割には、結構ガッシリした体格のように思うんだけど?

「フィールドワークとかで、森や山に入ったりする事もあったので、多少鍛えていた位ですよ。何かしらのスポーツをしていたとか、そう言う訳じゃありません。」


 あたしの指摘に、苦笑交じりにそう答えた後、彼は手にしたカップを口に運んでお茶を一口飲み込んだ。


「…一応、これで生物学を専攻している身なんですよ

「あぁ、だから生態調査で森や山に入ったりするって訳ね

「えぇ、そういう訳です

「けど、その学者先生がどうしてこちらに残って居るんですか?」


 エイミーのもっともな疑問に、浩太さんはまた苦笑を浮かべて肩を透かして見せた。


「1年ほど前に、同僚のミリアと山猫の生態調査に向かう途中で、こっちの世界に迷い込んだんですが、この世界がおとぎ話に出てくるような、剣と魔法の世界だと知って、ミリアはすっかり心を奪われてしまいましてね

「それに付き合ってズルズルと?

「まぁ、最初はですが…」


 そう呟いて、照れたように彼は笑った。けどすぐに大真面目な表情になって、身を乗り出さんばかりの勢いで口を開く。


「しかし、こちらの世界を知れば知る程、興味深い事がいくつも判明しましてね、生物学を専攻する者としては、興味が尽きないんですよ

「へぇ~面白そうね。例えばどんな事が興味深いの?

「それは勿論、この世界の人種の多さですよ。人種5種族、長寿の精霊種5種族、身体能力が非常に高い獣人種は10種以上も存在しているんですよ?それぞれの混血種も数えれば、更に増える事になります

「まぁ、それは確かに多いわよね~地球じゃ4とも5とも言われてるけど、大雑把には3大人種って言われてるし

「そうなんですか?」


 彼の説明に、あたしが同意しながら頷くと、驚いた様子でエイミーが口を開いた。まぁ、こっちの人からしたら、そう言う反応になるのかも知れないわね。


「人種の多さも勿論興味深いのですが、それ以上に興味深いことは、こちらの世界には『不老不死』が、当たり前のように存在していると言うことです

「それな!異世界理不尽クオリティの代表よね。」


 彼の興奮気味の説明に乗っかって、あたしも思わず興奮気味に返した。あたしみたいなオタクからすれば、何でもかんでも『異世界理不尽クオリティ』で片付けちゃうけど、彼のような専門的な学者からすれば、言ってしまえば永遠のテーマみたいなものなんだから、はしゃぐ位に興奮するのも無理ないわよね。


「例えばの話なのですが、鶴巻さんは癌という病気をどの位ご存じですか?

「え?え~っと…正常な細胞が遺伝子変異で異常な細胞に変わる…かな?

「正確には、人の身体は細胞分裂を繰り返している訳ですが、遺伝子変異とは細胞分裂の段階で、突然変異した細胞の事を言います。それが遺伝子の制御を離れて増殖し、周りの正常な細胞までを浸潤して大きくなっていくのです

「なんか知育漫画で読んだ気がするけど、うろ覚えなのよね。それで、それが何だって言うの?」


 なんか生物の授業を受けてる気分になりながら、彼の説明を聞きながら受け答えをしていく。心なしかなんか活き活きしてるように見える辺り、相当研究熱心な人のようね。


 ちなみにエイミーはと言えば、途中から着いて来られないみたいで、きょとんとしているのは内緒。


「えぇ。細胞分裂と言う事は、年を重ねる毎に回数が増え続ける訳ですから、年齢が上がるほどに発症率が上がるのが道理なんです。だから、仮に人間の寿命が200年に伸びたとしたら、確率的に言うと癌は『ほぼ必ず罹患する病気』なんて専門家の間では言われているんです

「…あ。」


 それを聞いて、在る事に気が付いたあたしの反応を見て、浩太さんは嬉しそうに微笑む。


「つまり、エルフみたいな長命な種族が、癌に掛からないのがおかしい?

「その通りなんですよ!ついでに言うと、こっちの世界の人間族の寿命も、平均で約150歳位なのに、ここ1年癌らしい患者さんを見た事が無いと言うのも興味深いんですよね!

「長っ!そうなの?

「え、えぇ。」


 あたしがその事に驚いて、エイミーに聞いて事実を確認する。それを見て、意味深な笑みを浮かべながら、浩太さんは黒縁眼鏡をクイッと押し上げた。


「驚くのはまだ早いんですよ、鶴巻さん。まだこちらに来て日も浅いようですが、この世界の1日が30時間なのはご存じですよね?

「えぇ、勿論。この帝都に着くまで、時差ぼけが酷くて大変だったからね

「そうでしょうね、僕も最初はそうでしたから。じゃ、この世界の1年が約430日だと言う事実は?

「…はぁ?」


 その事実に、今度こそあたしは目を丸くして、あっけにとられて絶句した。1日の時間が、地球と違う時点で、1年の長さも違うんだろうなって予想はしてたけど、そんなに違うの?


「ちょっと待って。え、じゃぁこっちの世界で150歳って言う事は、地球の年数で言うと…

「ざっくりですが約1.4931倍。つまり約223歳ですね。」


 暗算は得意じゃ無いから、ちまちま計算していたところに、ドヤ顔で答えを口にする浩太さん。当然、この場で直接計算した訳じゃ無くて、前もって出していた公式なんだろうけど…


 どうしよう、凄くムカつく。あの顔超引っぱたきたい。


「…成る程ね。そこまで聞いたら、全然専門じゃ無いあたしでも、凄く興味が湧いたわ

「そうでしょう、そうでしょう!」


 ムカつく気持ちを抑え込んで、なんとか平静を保ってそう言うと、浩太さんが胸を張ってうんうん頷き始めた。どうしよう、今度はあの眼鏡、すんごいたたき割りたいんだけど…


 そんなあたしの心の内を悟ったかのように、ポンポンとあたしの肩をエイミーが叩くので、そっちに視線を向けると、困った顔して苦笑しながら顔を横に振っていた。いや、流石のあたしだって実行に移さないよ?


 ただちょっと、最近の眼鏡の耐久度確認したくなって、ちょこ~っと『フンッ!』てしたいなって、思っただけだから大丈ビ!


 そんな事を思っていると、あたしの胸元でモゾモゾと動く気配を感じて、胸元を開いて確認する。


「ようやく起きたの?

「ん…ママ、お腹空いた

「お腹空いて目を覚ますって、あんたどこの妖怪食っちゃ寝よ

「フフッ」


 眠たそうに目を擦りながら、そんな事を訴えてくる困ったちゃんに、あたしは半眼になりながら呆れながらに呟いた。そんなあたし達のやり取りを、隣で優しい瞳で見守りながら、おかしそうに微笑むエイミーの声が重なる。


 まぁ、用事も済んで興味深い話も聞けたし、オヒメもこう言ってる事だし、そろそろお暇しようかしらね~


「面白い話をありがとうございました、浩太さん。あたし達そろそろ、旅支度もしたいので、この辺りで失礼させていただきます

「昨日の今日で、もう旅の支度されるんですか?

「えぇ。面倒事はサッサと終わらせたいタイプの人間なんです。夏休みの宿題とか、最初の一週間で大体片づけちゃうようなね。」


 そんな風に軽口を言いながら、あたしとエイミーは、どちらからとも無く立ち上がる。それにつられて、浩太さんも何故か申し訳なさそうな顔をしながら立ち上がった。


「それは僕も見習わないとですね。余計な話をして時間を取らせてしまいました

「いえ、興味深かったですよ。ではまた…

「あ、すみません!もう少しだけ僕に付き合って貰って良いですか?

「え?」


 話を切り上げて、部屋のドアへ向かおうとしていたあたし達を、慌てた様子で呼び止める浩太さんに、訝しがりながらその場で視線だけで振り返った。


「実は…鶴巻さんに眷属にして貰いたい物がもう1つ在るんです

「他に…ですか?

「えぇ。大きさが大きさなので、部屋に持ち込めるような代物では無いんですよ。少し休憩してから、改めてお願いしようと思っていたのですが…」


 そう彼に言われて、あたしはエイミーに視線を向ける。見ると彼女は、あたしに顔を向けていて、視線に気が付いて首肯して見せた。


「まぁ、良いですよ。ここまで来たら、あと1つも2つも大差ありませんし

「ホッ、良かった。ありがとうございます。」


 あたしの答えを聞いて、ホッと胸をなで下ろした彼は、笑顔でお礼を述べると、あたし達の元までやって来て、そのまま先頭にたって歩き出す。その後に続いて、あたし達も歩き出し、そのまま部屋を後にした。


「実はですね、以前よりヤマト王にお願いしていた件があったんです。」


 先頭を歩きながら、唐突にそう話を切り出す浩太さんの歩くペースは速かった。多分、あたし達の今後の予定を気にして、少しでも手短に済まそうと思っているんだろう。


「さっきお話ししたように、僕は同僚のミリアと一緒にこの世界にやって来たんですが、その時乗っていた乗り物も、こっちに来てしまっていまして

「え、それってもしかして、車って事ですか?

「えぇ、そうなんです。僕の愛車なんですが…」


 喋りながら廊下を抜けて表に出ると、そこから王宮の庭へと出て、建物の裏側へと回る。そこに目的の物が、シーツを被せられた状態で、その場に鎮座していた。


 その被せられたシーツを手に取って、浩太さんは一気にそれを外した。


 バサッ…「…ジープ?

「えぇ、どうです?かっこいいでしょう。」


 そこに鎮座していた車は、軽でもワゴンでもセダンでも無く、オフロードでもガンガン進めそうな大きなタイヤを履いた、最近流行の艶無し黒のカラーリングのジープだった。その横に立った彼は、まるでおもちゃでも自慢するように、ニコニコしながらあたしを見ていた。


「残念ながら、ガソリンがもうほとんど無いので動かせないんですが…僕としては、どうにかこれを動かせるようにして、また向こうに居た時のように、ミリアとライフワークをしたいと思っているんですよ。」


 そう熱く語る彼を余所に、あたしはそのジープに近づいて、そっと手を添える。先に言っておくと、あたしは勿論車に詳しい訳じゃ無い。


 けど、手を添えた瞬間、その車の正確な車種、それに運転した事ある訳無いのに、運転の仕方まで読み取る事が出来た。これはつまり…


「…眷属化は出来るみたいですね。けどなんでこれを眷属化させようと思ったんですか?

「さっきも言ったとおり、ガソリンがほとんど無くて動かせないんだよ。こっちの世界じゃ、きっと化石燃料も探せばあるんだろうけど、君も知っての通り、魔法ってエネルギー体系がある所為で、化石燃料なんて出回っていないから、まずは原油から探さないといけないし、見つけても精製する技術も僕には無いからね。それならいっそ、電気自動車に改造しようかとも考えていたんだけどね、この世界電気はあるからさ。」


 そこまで言って、苦笑しながらお手上げのポーズを取る浩太さん。


「けど、上手い具合に電気自動車が転がっていれば、中身をごっそりいじくる位なら出来るだろうけど、1から組み上げるとなったら僕じゃ専門外だ。なによりも、都合良く出来たとしても、今度は電圧の研究をしなくちゃだしね。だから、魔法的な技術に頼ろうと思って、この国で厄介になりながら色々調べていたんだよ。ヤマト王にも相談してあってね、そしたら君の事を教えて貰ったって訳さ

「それで、あたしのお目付役兼案内役を買って出たと?

「お目付役?あぁ、君の立場からしたら、そう思われても仕方ないか。ごめんね、誓って監視してた訳じゃ無いんだ。ただ話を聞いて興味深かったから、つい…ね。」


 あたしの嫌味に対して、彼は本当に申し訳なさそうな表情で、謝罪の言葉を口にした。まーね、そんな事だろうと、途中から思ってたんだけどね。


 接してて解ったけど、この人良くも悪くも研究者なのよね~自分の興味を引く事柄には、とことん真剣になるけど、それ以外の事にはてんで駄目で、抜けてる部分が多いのよ。


 まぁ、あたしも人の事言えない性格だけどね。


 正直、監視対象ほったらかしにして、自分でお茶の用意するとか、聞いても居ないのに自分の事色々喋るとか、挙げ句が自分の興味の対象に対する熱の入れようとかね。馬鹿正直意外に当てはめられる言葉が、見つからないっての。


 こんな人相手に、一応は警戒してなるべく情報を出さないようにしてたとか、正直小っ恥ずかしいっての。そもそも、嘘や悪意に敏感な下位精霊のオヒメが、いくら安心出来るあたしの服の中だからって、スヤスヤガン寝してたからね。


 そんなオヒメの感覚を欺きながら、あたしにそう思わせる為の演技をしてたって言うんなら、かのジェームズ・ボンドを超えるスパイにだってきっとなれるわよ、ほんと。


「もし眷属化出来るとしたら、燃料のガソリンも増やせるかも知れないだろう?どうかな鶴巻さん、お願い出来ないかな?」


 何より、こんなに真剣に懇願してくる人が、演技でしたって言うんなら、怒り通り越していっそ清々しい位よね~まぁ、間違いなく人間不信になってやるけどね。


「…解りました、やってみますよ

「本当かい?!やった!!」


 子供みたいにはしゃぐその姿に、あたしは苦笑を浮かべる。視線をエイミーに向けると、彼女もおかしそうにクスクスと笑っていた。


 けど、これは…


「…エイミー、ちょっと精霊化するわ

「え?あ、はい

「浩太さんもちょっと離れててくれますか?

「あ、あぁ。解ったよ。」


 2人にそう告げて、改めてジープに向き直る。やると決めた瞬間から、さっき武器を眷属化していた要領で、ジープも眷属化させようとしていた。


 けど、何故かは解らないけど、それが出来なかったのだ。前段階の対象の情報を読み取る事は出来たから、眷属化出来る筈なんだけど…


 考えられる可能性としては、眷属化させた物が、あたしが精霊化した時の様に、一瞬青白く光っていたから、眷属化させる為にも魔力ってのが必要なのかも。大きさとかで必要な魔力の量が違うんだとしたら、今のあたしだけの魔力量じゃ足らない…とか?


 ま、試してみれば解るわよね。


 あたしは意を決して、腰に下げた兼定を鞘から抜き放って精霊化する。そして車に乗る姿をイメージしながら、ゆっくりとジープに触れた。


 すると思った通り、あたしの身体を覆う膜のような青白い光が、触れた部分からジープに伝わっていき、車体全体を覆い尽くした。そして…


 キュルルルル…ドルゥン


「おっ!

「エンジン掛かったみたいね。」


 イグニッションキーが差し込まれていない上、回していないのに、勝手にエンジンが起動した。


「イィィヤッター!!!!」


 その光景を前にして、喜びに突然飛び上がりる浩太さん。よっぽど嬉しかったんでしょうね、なんせこの世界に来て、彼が立てた目標の1つが、ようやく叶ったんだから。


 でもね~…う~ん。そう上手く事が運ばないのが、世の常なのよね~


「やった!やった!

「良かったですね、浩太さん

「えぇ!ありがとうございますエイミーさん!!ありがとう、ありがとう!!鶴巻さん!!

「あ~…うん、喜んで貰えてあたしも嬉しいんだけど…

「?どうしたんですか?優姫

「実はさ、これ…燃料が増えて動いてる訳じゃないのよ

「「え?」」


 凄く言いにくい想いを感じながらも、意を決して伝えないといけない事を、浩太さんに伝えるべく口を開いた。


「動かす事であたしも解ったんだけど、眷属化させたら魔力を燃料にしてるみたいなのよ。その証拠にほら…」


 そう言ってあたしは、ジープのマフラーを指差した。エイミーはそこを見てもピンと来なかったみたいだけど、浩太さんはあたしが何を言いたいのか、すぐに解ったみたいだった。


「排気ガス、出てないでしょう?意図せず環境に優しいクリーンマシーンにエボリューションしたみたいなのよね~

「え、え?そ、それじゃ…

「うん。操縦者の魔力を動力に動く、究極のエコマシーンの爆誕です。浩太さん魔力量どの位?ちなみに、今の時点で結構ハイペースで魔力が消費されてるから、燃費は超…あ。」


 そこまで言ったところで、さっきまでのはしゃぎようが嘘のように、浩太さんが膝から崩れ落ちていった。あぁ、これがorzか…


「あ~…まぁ可能性の話なんだけどさ。」


 そんな彼を、申し訳なく思いながら声を掛けつつ、兼定を鞘に戻して精霊化を解くと、それに併せてジープのエンジンもピタリと止まる。


「ヤマト王から聞いてるなら、多少知ってると思うんだけど、あたし達これから他の精霊王達に、会って回らないといけないのよね。そこであたしの精霊としての力を、高めるんだけど…」


 本当は、最後までこっちの事情を話すつもりは無かったんだけど、彼が余りにも可哀想になってしまったので、ちょこっとだけ教える事にした。ギャン上げしといて、筋肉バスター並の急降下だったから、流石にちょっとね…


「それであたしの力が増大したら、当然眷属の能力だって強化されると思うのよ。そうなったら、きっと動かす魔力量も少なくなるかも…

「…本当ですか?

「や、可能性よ?あくまでも可能性の話。けど、あながちあり得ない話でもないでしょ?」


 一応念を押しながら、希望的観測を口にする。そして暫く経って、ようやく深いため息を吐きながら、浩太さんのorz状態が解除された。


「…そうですね。楽観的ですが、その可能性に掛けてみるしかありませんね。」


 元気なく項垂れながらも、なんとか立ち上がって、無理矢理笑みを作ってそう呟く浩太さん。そして、鬼気迫る勢いであたしの両手をガシッと握ってくる。


「是非、是非よろしくお願いします!期待していますんで!!

「え、えぇ…」


 あまりの鬼気迫るその勢いに、流石のあたしも気圧されて、顔を引きつらせながら頷いた。う~ん、ちょっと早まったかも?


「鶴巻さん、良かったらこの車を使ってください

「え、良いんですか?

「えぇ、今の僕では長く走らせられないでしょうし。それに、これを使えば各地を巡るのも楽になるでしょうし

「そりゃもちろんありがたいけど…」


 あたしが車の運転免許持ってるように見えるのかしら?まぁ異世界なんだし、交通法なんかガン無視で良いとは思うけど。


 車の運転方法についても、さっき解ったから問題ないと思うし、馬車を使うよりも早いだろうし快適だから、そりゃ勿論願ったり叶ったりなんだけどねぇ…


「…解りました。じゃぁ使わせていただきますね

「えぇ!だからどうか成るべき早く!!なる早で!!

「は、はい…わかりました。」


 こうなるから、正直あんま乗り気になれないんだけど、メリットの方が大きいんだから仕方ないか。まぁ、もしも宛てが外れたら、その時はごめんちゃいってすればいっか☆


 あたし頼まれてやっただけだしーあたしの所為じゃないしー


 こうしてあたし達は、移動手段として究極のエコカー『運転するとお腹へるんカー』を手に入れた。世のダイエッターの同志諸君、羨ましかろう?


 え、羨ましくない?デスヨネー


 はぁ…予想外に面倒くさい事態になったわね。調子こいて安請け合いするんじゃなかったわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ