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剣道少女が異世界に精霊として召喚されました  作者: 武壱
第一章 召喚編
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異世界召喚ってそんなお手軽なものでしたっけ?(3)

「何でそんな術が出来たの?

「この世界では、古くから邪神と呼ばれる存在と、その邪神によって生み出された者達が居ます。その者達と、四神の神々によって生み出された我々との間で、古くから争いが絶えないのです。千年前にも大きな戦いが起きたのですが、その時に異世界人召喚の術が生まれたそうです

「随分手前勝手ね。いくら異世界人が身体能力が高いと言っても、全員が全員戦える訳でもないでしょ。」


 まぁ、千年前ならうちの世界もあちこちで戦争してただろうから、戦える人の方が多いかもだけどさ、少なくとも今の世界じゃ、戦えない人の方が圧倒的に多い。はっきり言って、あたしの様な人間は、きっと希な方だと思う。


「確かにそうですね。ただ、そんな事に気が付ける程の余裕が、あの頃は無かったと言う事でしょうね。当時私もその戦争に参加していたのですが、酷い戦いでしたから…

「…ごめん、あえて無視してたけど、エイミーさんっておいくつなの?

「え…と、確か1250歳位だったかと。向こうではエルフが居ないそうですね、やはり珍しいでしょう?ウフフ。」


 オゥ…まさかの12世紀越えで、それでこの美貌とかなんたる理不尽…あまりにも聞き捨てならない事に、さっき決めた決意を無視して、思わず聞き返していたわ、う〜む…あたしも存外意思が弱いわね。


「確かに理不尽な行為だと思います。実際、その戦争後100年もしないうちに、異世界人召喚術は賢人会議(けんじんかいぎ)禁忌(きんき)とされて、使用を禁止されました

「賢人会議ね~この世界に人権って認識があるのかは知らないけどさ、召喚された人の人権無視して、戦争の道具に使おうとしてる時点で、とんだ『賢い人』よねって感じなんだけど

「それを言われると耳が痛いです。ですが、誓ってこの世界の住人の総意で、行われた訳ではないのです。むしろ大多数の王達は最初から反対していたのですが、たった一国の王の強行で行われたことだったのです


 エイミーの説明を聞き、あたしは隠す事無く、嫌味を交えて感想を口にした。それを聞いた彼女は、本当に申し訳なさそうに、顔を伏してそう答えてきた。


 嫌味を言っておいてなんだけど、彼女は人が良いのかしらね~別に彼女が、その会議ってのに、参加してた訳でも無いんだろうし、その強硬派の王を止められなかったのだって、別に彼女の責任じゃ無いんだしね。


「ふ~ん、まぁこの世界のパワーバランスが判らないから、何とも言えないけどね。そんなに力のある王様だったんだ?

「はい。この世界で一番の国土と国力を持つ国、軍国バージナルの当時の王が、異世界召喚を主導で行っていたのです。かの国は、はるか昔から邪神との戦いが続く地で、世界の防波堤となっている国なのです

「なる。要するに最前線で一番頑張ってるんだから、おまえら全員口出しすんなって、そう言う事ね

「み、身も蓋も無いですが、そう言う事です。」


 話を聞いて、またもオブラートに一切包む気のない感想を率直に呟くと、困ったように苦笑を浮かべて、エイミーがそう答えてくる。困らせてごめんね、オブラート今切らしてるのよ。


 そんなしょうもない事を思いながら、今までの話を整理しつつ、次に聞くべき事を考える。さて何を聞くべきか…


 他の王達という位だし、この世界の国が軍国だけな筈もないから、この世界の情勢について聞くのもいいと思うし、異世界物のラノベにつきものの『実は邪神を倒す為に召喚されたのだよ。さぁ立ち上がれ勇者よ!』的展開を期待して、邪神について聞くのもいいけど、やっぱり異世界人召喚術について、もう少し突っ込んで聞いてみたい気がした。


 それが帰る方法に繋がるかもしれないしね~


「…ねぇ、聞いてる限りだと未だに邪神?とかいう一派との戦いは続いているの?

「はい、その通りです

「なら、実はその軍国っていうのがこの近くにあって、使用禁止の異世界人召喚術を、実は隠れて使っていて、それがエイミーさんの精霊召喚術と偶然同じタイミングで発動されて、何かの影響で混濁したって可能性はないかしら?」


 少し考えて、思い浮かんだ考えを聞いてみる。要するに、電波の混線のような現象が起きたとは考えられないだろうか?


 昔、兄がおもちゃのトランシーバーを買ってもらって、一緒に遊んだ事があるんだけれど、その時全く知らない人の会話の声が聞こえてきて、びっくりした事があったのを思い出したのよね。


 ざっくり解釈した限りでの素人考えだけれども、この世界の魔法はいくつものプログラムで構成された、パソコンソフトの様な感じなのよね。つまり、精霊召喚と異世界人召喚という別々のラベルのソフトがあるけれど、そのソフトの中のプログラムは、精霊を対象にしているか、異世界人を対象にしているかの違いだけで、他のプログラムは全くの同一で構成されていたら?


 同じパソコンで、同時に起動したらエラーの1つ位起きそうなものよね。それが別々のパソコンで、同時に発信された、電波だとしたらどうかしら?


 て、考えて聞いたんだけど残念。その道のエキスパートに、私の意見は首肯されなかったわ。


「…残念ですが。術同士が干渉しあうとなると、それこそ目の前で同じタイミングで行う位しないと、まず無いと思います。そもそも軍国も私たちの今居る所からだと、ちょうど真逆に位置する大陸にあるので

「そっか~まぁそんな都合よくないよね。そこから帰る手段のとっかかり位判ると思ったんだけど

「え?

「え?

「…帰れますけど…」


 〇タープラチナ・〇・ワールド!!


 帽子を被った誰かが、あたしの頭の中でバリトンボイスでそう叫んだ気がする。なんたる甘美なイケボでせぅ。


 冗談はさておき、あたし達の間の時間というか空気が、確かに止まった気がする。だけどそれも一瞬の事で、次の瞬間何かに気が付いたエイミーが、慌てふためいた様子で世話しなく動き始める。


 ふぅ、やれやれ…仕方ないわね~それじゃぁ決め台詞を言ってあげようかしらね。3・2・1『そして時は動き出す。』


「ハッ!?あっ!す、すみません!!そうですよね、先にお伝えするべきでしたよね

「ちょ、落ち着いて

「私ったら本当におっちょこちょいで、すみません

「いや!良いから気にしてないから!!だからまたテーブルに上ろうとしなくて良いから!!地味にダメージ受けんのよ土下座って!」


 そう言ってあたしは、のそのそとまたテーブルの上によじ登ろうとするエイミーを、押しとどめようとして立ち上がった。今時おっちょこちょいとか言う希少生物とか、本当にかわいいわね、この人…そろそろ抱きしめてチューしたいわ。


 そんなドタバタした雰囲気は置いておくとして、内心自分の迂闊さに苦笑するしかなかった。よくよく考えて検証してみれば、その可能性を思いついても良さそうなものなのに…


 ラノベのお決まり展開とか、エイミーの土下座とか、結構深刻そうな表情とかで、あたしの中で勝手に帰る方法を、彼女は知らないと解釈してしまっていた。彼女が最初に言うべきだったと言うのなら、そもそもあたしが、まず最初に聞くべき事だったのよね。


 そうしなかったのは、ん~…やっぱり浮かれてるのかしらね、あたしも。


「本当に私ったら…すみません

「いや良いってば、だから。あたしが真っ先に確認するべきだったのよ。それより、本当に帰れるの?


 そう聞いたあたしの言葉に、彼女はあたしを安心させるように微笑みながら、肯定の首肯をして見せた。


「はい。と言っても、今すぐという訳ではないですし、私には出来ませんが…帰還する方法はちゃんと確立されています。ですからご安心ください

「そこまで不安にも思ってないんだけどね

「え?


 彼女の言葉を聞いて、思わず出てしまった心の声に、あたしは苦笑を浮かべつつ誤魔化した。


「いえ、何でもないわ、こっちの話。それより詳しく聞かせてくれるかしら?

「あ、はい。まずですね、そもそも優姫さんは、不思議に思いませんでしたか?異世界の筈なのに、こうやって種族も人種も、文化や生態系までまるで違う世界の者と、簡単に意思疎通が出来るなんて

「そう言えばそうよね。」


 まぁ言われるまでもなく、最初から不思議には思っていた。ただ、この世界に来てからというもの、不思議ミステリーの連続で、すでにお腹いっぱいで胸焼け気味だったから、あえて無視してして、そういうもんだと割り切っていたんだけど…


「実はですね、偶然でも召喚でも、この世界にやってきた異世界人の方々には、言語理解の魔術が掛かるようにしてあるんです。異世界人の方が、こちらに来ても困らないように

「ずいぶん親切ね…って言うか、普通に大規模で非効率のような気がするんだけど。」


 彼女の答えに、少し考えてそう答えた。偶然って事は、召喚術に言語理解の魔術も、組み込まれているって事じゃ無い訳だからね。


「えぇ、この世界全体を膜で覆うようなものですから、莫大なマナが消費されます。ですが、数千年前に初めて現れた異世界人から、毎年どんどん増えていくようになってから、必要な措置だと考えたそうです

「考えたって…個人じゃないわよね?」


 私の言葉に、エイミーが口を隠すように手を添えて、可笑しそうに目を細めて笑い出す。


「その通りですよ。とてもとてもお優しい1人の女神様が、すべてお1人で行っているんです。この世界には2柱からなる神が4神おわすのですが、その中のお1神(おひとり)、精霊神イリナス・オリジン様の大魔術のおかげなのです

「へぇ~女神様ねぇ。で、その女神様がどう関係してくるわけ?

「えぇ、実はこの女神様は、空間を司る精霊でもあるのですが、すべての召喚術の基礎の部分に、このお方が編み出した空間魔術が組み込まれているのです

「あぁ、なるほど。じゃその女神様が、送り帰す魔術も組んだって事?」


 その答えに、相変わらずニコニコ可笑しそうに笑うエイミーに、なんぞ?と思いつつ首を傾げる。


「いえ、少し違いますね。異世界人を送り帰すのは、制御がとても難しいらしいのです。それに、一般には伝わってない魔術なので

「伝わってないって…じゃどうすんのよ?

「ですから送り帰してもらうのです

「は?

「女神様ご本人が、月に一度帰還希望の異世界人の方々を募っていらっしゃるんですよ

「はぁ??」


 数千年前にご降臨された女神様ご存命で、絶賛降臨中なうな件について。とんだ偶像崇拝ねそれも。


 待って待って。肩肘張って、もしかしたら帰れないかもとか、帰れるにしてもすごい苦労しないといけないんじゃないかとか、結構覚悟してたんですよ?ほんの数分位前まで。


 それをあっさり帰れるとか言われたり、月一程度でお手軽開催だったりって…なんかあたしの期待してた異世界ものと違うんですけど?


 とりあえず、その女神様はじゃらんかなんかで、異世界パックツアーでも企画すれば良いんだよ!って強く思いました。

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[気になる点] 会話文の閉じ括弧“」”が抜けている箇所がかなりあります エピソード7 だけではないですが…
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