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剣道少女が異世界に精霊として召喚されました  作者: 武壱
第一章 召喚編
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異世界召喚ってそんなお手軽なものでしたっけ?(2)

「つまり、あたしは分体じゃなく、そもそもが本体だから、その帰還させる術式が発動しないって事かしら?

「理屈で言うとそうなんですが…ちょっと困った事にですね、どうも私と優姫さんの間に、未だにパスが通った状態で、微弱ながらマナが流れているようなのです

「は?

「確認ですが、人間種であって精霊種じゃないんですよね?

「はい?」


 はい、言ってた側から無視出来ない問題発生。メーデーメーデー!種族詐称の嫌疑を晴らせる方、どなたかいらっりませんかー⁉︎


 もうね、年齢不詳とか国籍不詳とかは、あっちの世界のニュースでよく聞いたけどもね、人種飛び越えて種族不詳とか意味わかんな〜い!


「…つまり、どう言う事でせう。」


 あまりの意味不明さに、軽く頭を抱えて聞き返す。口調が素になっちゃう位には、自分でも動揺しているのがわかった。


 だって、種族云々はこの際置いておくとして、かなり聞き捨てならない事も、彼女は口にしたんだから。パスがまだあたし達の間に存在してる、未だにそのパスからマナが流れてきてる…それらの事実から導き出される答えを、フルスロットルで回転数を上げている脳細胞が、最悪な答えから順番に導き出していく。


「ええとですね…あくまでも可能性の話なんですけど

「あたしがこの世界で、現状精霊として認識されてるって事は、この際良いのよ。それよりパスが通ってるとか、マナが流れてるって辺り、放って置いたらどうなるの?

「は、はい!ええと結論から言うと、まず問題はないです。そもそも異世界の方は、マナを感知する方法を、ほとんどの人が知らないんですけど、この世界ではマナは普通に存在する物ですし、私のマナが優姫さんに流れて、身体に何かしらの異変が起こる事は無いと思います

「本当に?

「えぇ、そもそも優姫さんの世界にも、マナは存在しているはずなんです。希にですが、異世界人の冒険者にも、キャスタークラスの職に付いて居る方が居ます。これは自然に存在するマナと、自分の内のマナを感知出来なければなれませんから。それに、向こうの世界にマナが存在しないのであれば、こちらに来た瞬間に、何かしらの異常が出るはずですし。」


 そう言われて、自分でもその会話の内容を精査して納得し、軽く安堵のため息をついた。どうやら想像していた一番最悪な状況、マナが送られなくなったらアボーンと言う事態はないらしい。


 健康第一があたしん家の家訓なのよね〜


「それで、ちょっと確認なんですが…優姫さんのその武器、ちょっと鞘から出してみてくれませんか?

「は?」


 そう言われて、あたしは視線をテーブルに立て掛けていた刀へと向ける。


 思えばこれも不思議だったのよね〜あたしのここに来る前の最後の記憶は、自宅に併設された道場内で、模造刀を持って居合の稽古をしていた…というものだ。それがこっちに飛ばされて来たら、手にしていた模造刀が家宝の真剣、和泉守(いずみのかみ)九字兼定(くじかねさだ)、銘『戦鬼』を手にしていたんだから。


 『戦鬼』なんて御大層な銘がついているけれど、この刀自体が戦で人を斬った事は一度も無い。それどころか、今日あたしがこの世界に来るまで、居合の演舞でさえ使われた事がないはずだった。


 つまり、この子の始めてを、あたしが奪ったと言っても過言じゃない訳ですよね、キリッ!


 最近は刀の擬人化ブームと言う事もあって、和泉守兼定と聞いてピンと来る人も多いと思う。初代は室町(むろまち)時代の人で、和泉守という称号を受けたのは2代目、だから和泉守兼定というと、基本的には2代目の作品の事を指すの。


 そして九字兼定という、裏名(うらめい)に九字を最初に刻んだ人もこの人。九字とは元は道教の教えで、呪力を持つ9つの漢字の事で、破邪の力があるとされていたのよ。


 そして我が家の家宝は、この和泉守兼定の流れをくむ会津兼定(あいずかねさだ)11代目にして、2人目の和泉守兼定の最後の作品だと言われているの。なんでも、明治に入ってから打たれた作品で、武人一刀居合術をご先祖様が立ち上げる際に、なんと本人と交流があったからお祝いとして、直々に打ってもらえたんだって。


 ちなみに銘の由来は、ご先祖様の二つ名なんだそうだ、おっかな~い。


 そして、この戦鬼にも裏銘に九字が刻まれているらしい。まぁ、あたしは見た事が無いからね~11代目兼定が、武人一刀居合術の繁栄を願って、破邪の力があるとされた九字兼定にあやかったとかなんとか。


 あたしは、エイミーの言葉に従って、戦鬼を鞘から一気に抜き放つ。刃渡り70㎝位はあって、一般的な刀よりは少し長めだ。さっき付いた血のりは、しっかり拭ってあるので、その刀身は新品のように美しい。


 まぁ、今まで使われた事ないからね~抜き身の所を見たのは、実家で何度かじいちゃんが手入れをしている時くらいだけど、その時と変わらない煌めくような刀身に、くっきりと表れた波紋が美しい所は全く変わらない。


「…ん?なんぞこれ

「やっぱり。」


 あたしの無意識に漏らした呟きと、エイミーの確信めいた呟きは、ほぼ同時だった。一見何の変哲もないと思っていた刀身に、いきなり変化が現れ、その銀色に輝く刀身から、こぼれ漏れるような青みがかった光が現れたのだ。


 刀身から発せられていると思う光は、そのまま柄を伝うように広がっていき、やがてあたしの体全体を、薄い膜のように覆う。それと同時に、あたしの体の中にも変化が起きていた。


 お腹の内側辺りがじんわりと温かくなり、外からあたしの物ではない、何か別の力が流れ込んでくるような感覚。


「ちょ!?何よこれ!」


 自分の異変に流石に慌てふためいて、体のあちこちを見回す。あばばばば!


「落ち着いてください!気付いてなかったと思いますが、優姫さんがこちらの世界に来られた時、今と同じ状態だったんですよ

「へ?」


 エイミーの言葉に、あたしは自分でも間抜けだと思う位、気の抜けた返事を返していた。一応これでも気を張り詰めていたのに、これは流石に予想の斜め上だわ。


 多分だけど、今あたしが感じている、お腹の辺り…丹田が温かくなっているのは、説明にあったマナの所為だろう。そして、そこに直接流しこまれてくるような入り口の先に、エイミーの存在を感じる。


 なるほどね、これがパスってやつで間違いないみたいね。つまり、さっきエイミーが言っていた召喚された状態が、未だに続いているという事が、これで証明されたわけだけども、これってあたしが刀を抜いたからだよね?って事は…どういうことだ?


「ねぇ、これって?

「おそらくですが、優姫さんはその武器を抜いた状態で、はじめて精霊として認識されるんだと思います

「それって何かまずい事とかある?

「すぐにどうこうという事はないと思いますが、そうですね…少しその剣を見せていただいても?

「えぇ

「重!?」


 少し考え込んでいたエイミーにそう言われて、あたしは二つ返事で刀を彼女に差し出した。すると、エイミーが手にして素っ頓狂な声をあげて驚いて、あたしの手から離れた瞬間、あたしの身体を覆っていた光も、お腹に感じていた温かさも消えて、刀の発光現象も嘘のように消え去った。


「…どうやら優姫さんの手から離れた時点で、精霊状態が解除されるみたいですが、すごい重いですね。よくこんな重い武器を軽々と、さすが異世界人ですね…ふむ…」


 手渡された刀を、エイミーが興味深げに調べ始める。その様子は本当に重そうで、落として怪我をしそうで見ていられないくらいだった。まぁ、多少長めの刃渡りだし、使ってる鉄の量だって多いから、見た目以上に重いのは分かる。


 だけど、言っても2Kgも無いはずだし、いくら何でも大げさじゃないかしら?


 さっきエイミーが言っていたけど、彼女は冒険者をしていた筈だ。それならいくら魔術系の職だったとしても、同じ刃渡りの剣位手にする機会だってあったはずだと思うんだけどね~まぁ、あたしの勝手なイメージだけどさ。


 そう思いながら、ここに通された直後に出されたお茶を、今更ながら手に取って口を付けて顔をしかめた。何故かって?そりゃ香りがハーブ系の紅茶なのに、味が渋めの緑茶だからですよ。


 香りに騙されて、少し多めに口に含んだら、渋みが舌の上で一気に広がったのよ、にっが~い。


 そんな些細な情報から、改めてここが元居た世界とは、別の世界なのだと再認識させられた。まぁ、正直まだ夢の中なんじゃないかとか、思ってるんだけどね~


 けど、そろそろ腹を括って認めないといけないのかもね、少なくとも今飲んだお茶の味は、紛れもない現実だし。それに、感覚は薄かったと言っても、この手には人の肉を斬り裂いた感覚と、耳には悲痛な叫びが、こびり付いているんだし。


 だけど、なんて言うか情報量が少ないのよね、この世界。身体にかかる負荷が少ないというか…


「…ねぇ、さすがとか言ってたけど、異世界人って力持ちな人が多いの?

「えぇ、まさにその通りです。異世界からやって来た人間族と思われる方々は、この世界の人間族や亜人族よりも力が強く。中には魔族や獣人族を超えた力を持っている方も居る位です。」


 あたしの質問にエイミーは、戦鬼を調べつつそう答えてきた。その返答を聞いてあたしは、ふむと俯き気味に少し考えて、ある仮説を思い浮かべる。もちろんその仮説とは、異世界ラノベでよくあるチート能力!とかそういうものじゃないわよ?


 暫く考えてみたけど、これ以上は仮説の域を出ないので、すぐに顔を上げてエイミーに視線を戻した。


「ふぅ、ありがとうございます。お返ししますね。

「何か分かった?」


 するとちょうど、刀を調べ終えたエイミーが、疲れた様なため息を吐いて、戦鬼をあたしに返してくる。それを受け取ると、またあたしの身体が発光し始めるけど、すぐに鞘に納めたので、元の状態に戻った。


 そして少し遅れて、あたしの問いかけに、エイミーは顔を伏せて首を横に振った。


「…残念ですが。ただ、この剣と私の間にパスは通っていないので、精霊としての優姫さんの一部と考えるのが妥当かと。その剣を抜いたら、優姫さんが精霊化した事からも、その剣が優姫さんがこちらの世界に召喚された、原因かもしれません

「そっか〜」


 そう言われて兼定に視線を落とす。あくまでも推測の域を出ない可能性の話だけど、原因はキミか〜だとしたら、色々腑に落ちないんだけど、今はこれ以上考えても仕方ないのよね、推測の域出ないから答えでないし。


「…異世界人の事について、知っている事だけでいいから教えてくれる?

「えぇ、もちろん。」


 さっきも言ったけど、答えの出ない事をいつまでも考えても仕方ない。そんな問題は、早々にポーンと放り投げて、思考を切り替えるに限るわ。


「そうですね、まず異世界の方が、こちらに渡ってくる方法は2つ。次元の穴と呼ばれるものの発生に、巻き込まれてしまう場合と、優姫さんの様に召喚術で召喚される場合です

「それは、あたしの様な原因不明の失敗じゃなくて?

「はい。異世界人を召喚する為に作られた召喚術です。」


 あたしの質問に、即答で彼女は答えてきた。それにあたしは、今解っている事実を元に、考えを巡らせて、いくつかの可能性を思い浮かべた。


「…何の為にそんな術があるの?って、なんとなくわかってるけど、一応聞いて良いかしら?

「優姫さんは勘が鋭いみたいですね…はい。先程も言いましたが、異世界人の方は、この世界の住民よりも身体能力が高いので、戦力増強として千年程前に編み出されたそうです。」


 身体能力が高い…ね。多分実際は違うんでしょうけど、やっぱり戦いの戦力としてって訳ね。

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