いちはじ!(はーど!)(1)
ダリア大陸、カザンウェル地方の今日の天気を、あたくし鶴巻優姫がお届けしたいと思います~す☆
今日のカザンウェル地方のお天気は~降り注ぐような、日差しがまぶしい位のピーカン晴れ!時々、黒煙雲から火の粉が舞うでしょう!!
気温は体感で50℃越え☆湿度は10%以下と、カラッとしたすがすがしい暑さで、料理される食材の気持ちが解るでしょう!
「いやぁ~無いわ~…」
山道の入り口から、噴煙どころか赤い水が噴き上げている御山を、焦燥感を漂わせつつ、遠い瞳で眺めながら呟いた。カザンウェル山が活火山だなんて、あたし聞いてない。
まぁ、活火山だって言うのは、百歩譲って良いとしても、マグマ吹き出てんのは、さすがにまずいでしょう…どうすんのこれ?
「『クーリッシュ』…何か忘れ物ですか?」
あたしの呟きに、魔法を唱え終わったエイミーが、首を傾げて不思議そうに聞いてくる。何を忘れたかと問われれば、さし当たっては『覚悟』か『度胸』かしらね。
いやぁ~、暑いからと言われるがまま、露出の高い格好で来たんだけどさ~これ、『暑い』じゃなくて『熱い』よね。
ちなみに、どんな格好かというと、ここでも出ましたエルフの民族衣装~里であたしも借りて履いてた、緑がかった麻っぽい生地の短パンと、同じ生地で作られている、ほぼブラジャーみたいなトップス。
これ下着じゃ無いの?って着たら、夏場は上これ一枚なんだって。エイミー含む何割かは、恥ずかしいから、上に何か羽織るらしいけどね~
う~ん…あたしの中で、エルフって清楚な感じのイメージがあったんだけど、これじゃ正直エロフじゃね?まぁ、単純に夏場になると、凄く蒸し暑くなるのかもしんないけどさ。
今は夏場じゃ無いけど、目的地がここだからって言うことで、エイミーが最初から用意してくれていたんだけどね~夏場じゃ無いのに、こんな格好で村の中から、てくてく歩いてくるのは、さすがに恥ずかしかったわ。
あたしが異世界人だから、物珍しくてジロジロ見られるのは、カタンでもそうだったしもう慣れたんだけど、こんな格好でうろついてる時に、ジロジロ見られると、違う意味で恥ずかしいわ~リンダが普段からこういう格好してたし、女冒険者じゃ割とよく見るのかも知んないけどさ、あたしはこれでも一般的なJKなのよ。
けどまぁ、場所が場所だけに、この格好は正解よね~エイミーが掛けてくれた魔法のおかげで、体感温度がぐっと下がったんだけど、それでも真夏の暑い日くらいの温度は、きっとあるでしょうね。
まぁ、さっきまで吹き出た側から乾いてった汗が、今はダラダラ滝のようにしたたってるのだけは、ちょっとどうにかしたいかな~あたし代謝が良いからさ、夏場とか割と地獄なのよね。
「独り言よ、気にしないで。それより、大丈夫なの?
「なにがですか?
「いや、マグマ吹き出てるじゃない?
「あぁ、大丈夫ですよ。」
さっきの問いかけは適当にはぐらかして、エイミーにさし当たっての問題を聞いてみる。けど、あたしの心配をよそに、事も無げに答えてきた。
その様子からして、今の状態がこのカザンウェル山の、通常運転で間違いないんでしょうね。ごめん、もう一回言わせて、無いわ~
まぁでも今更か~昨日この山から1番近いって村に着いた時、遠くから見えたこの山から、黒煙吹いてるのは見えてたんだし。
「サラマンダー達の住処は、だいたい中腹位ですし。火の河は、昔イフリータ様が開けたという大穴を通じて、地下に戻るようになっているので、山道に流れてくる事はありませんので
「あぁ、そう…」
ニコニコ説明してくるエイミーとは対照的に、あたしは引きつった笑みを浮かべて、ただ一言そう呟くだけだった。
怖!サラッとそんなこと言うけど、山に大穴開ける様な化物に、これから会いに行かないといけないのよね?しかも話によると、イフリータって眷属の住む洞窟の、更に奥地に陣取ってるそうなのよね~
どの程度進むのかわかんないけど、活火山の内部に入るって事じゃない?マグマ吹き出てるような、火山の内部に…
ごめん…もう一回だけ言わせて下さい。無いわぁ~…
う~ん、事前にある程度は聞いてたんだけど、元の世界でのあたしの常識と、こっちの世界の常識が、大分違うからなぁ~おまけに、割とエイミーの説明って、ちょいちょい不足気味な部分もあるのよね。
まぁでも、エイミーが大丈夫だって言うんだったら、きっと大丈夫なんでしょうね~だって、イフリータと契約している彼女は、少なくとも一度は会ってるって訳だしね。
「うっし!んじゃ行きましょうか
「はい。」
覚悟と気合いを入れる為にも、先にあたしがそう言って歩き出した。暑くて汗が止めどなく流れてるけど、ホットヨガでシェイプアップしてると思えば、気も紛れるしね。
体脂肪率平均以下のあたしにとって、シェイプアップする部分と言えば、胸しか無いという事実は、この際目をつぶるしか無いわね(泣
しっかし、これだけ熱いって言うのに、意外と植物も生えてる物なのね~さすがに緑が生い茂ってるとまで言わないけれど、背の低い草木が転々と生えていた。
まぁ、普通に考えて、植物も生えないような場所じゃ、誰も住めないか。火の粉も降ってくるし、燃えないのかしらね?
なんて、歩きながら思い浮かぶ疑問に思考を巡らせる。元の世界の常識が通じないって言うことは、見方を変えれば、目新しい発見ばかりって事だからね~
さっき、エイミーの説明が不足気味だって言ったけど、それだって仕方のない事なのよね。何が解らないのかさえ解ってない人に、自分の常識説明するなんて、子供に呼吸の仕方や歩き方を、改めて説明するような物じゃ無い。
そんなの、説明しなくても解ることだから、改めて説明しても通じる話だけど、そもそもの前提が違うんだから、服のボタンを1つずつ掛け間違えたみたいに、かみ合わないのは仕方ないことなのよね~
「そのサラマンダーって種族はさ、こんな所に住んで何を主食に生活しているの?」
辺りを観察していて、再び思い浮かんだ疑問を、隣に並ぶエイミーに投げかける。ここに来る前、彼女から色々なことを教わってたけど、まだまだ解らないことは色々あるからね~
例えば、炎の精霊・イフリータだけど、彼女は元々サラマンダーの1人だったそうだ。そして、彼女と言うだけあって、性別は女性なんだって。
しかも、イフリータだけじゃ無く、他の精霊達も性別は基本的に女性。なんでも上位精霊は、その巨大な魔力を元に、微精霊を産み出すらしいのよね~だから母性じゃないと駄目なんですって。
そして、炎の精霊イフリータが、元サラマンダーと同じように、他の精霊達もそれぞれの眷属と同じ元個人だったそうなのよ。
風の精霊シルフィードは、元風精族のフェアリー。
水の精霊ウィンディーネは、元水精族のマーメイド。
地の精霊ガイアースは、元地精族のドワーフ。
雷の精霊トールは、元雷精族のヴァジュラ。
光の精霊レイと闇の精霊カースは、少し特殊らしいんだけど、元々の種族はなんと、エイミーと同じ元森精族のエルフと、シフォンと同じダークエルフだったそうなのよ。
彼女達精霊は、遠い昔にあった邪神とその眷属達との、世界を二分した古代戦争の際に、それぞれの氏族を纏めていた有力な長達が、精霊神イリナスの加護と力の一端を授けられて、精霊として昇華した姿なんだって。
ちなみに、エルフとダークエルフの違いを、前にチラッとジョンに聞いてたんだけど、あれって正確にはちょっと違うらしいのよね。
ダークエルフは、魔神デモニアを奉るようになって、エルフとダークエルフに別れたって話だったけど、それ以前から肌の色は黒く、髪の色は銀色だったらしい。まぁ考えてみれば当然よね、信仰変えたからって、いきなり肌と髪の色が変わるんだったら、こんがり小麦肌なスポーティー美少女目指して、あたしだって信仰しちゃうわよ。
でも実際には、魔神教を信仰しているのは、ダークエルフの中でも一部だけで、大半はエイミー達エルフや、その他の精霊種と同じく精霊教を信仰しているそうだ。それに、その他の精霊種達の中にも、精霊教以外を信仰している氏族は、公にはしないそうだけど居るんだって。
まぁその辺りは、あたし達の世界でも一緒よね。じゃぁなんで肌の色が違うの?って事になるんだけど、そこで登場してくるのが、魔族領域って場所なのよ。
この世界には、大きく分けて3つの大陸が存在するの。今あたし達の居るダリア大陸は、菱形を斜めに2つずらして、横にずらしたような形の大陸で、この星の大体15%を占めていて、位置的には地球で言う所の南半球にあたるの。
そして、邪神兵がよく出現するというルアナ大陸は、地球で言うオーストラリア大陸に似ていて、大体面積はこの星の約10%を占めていて、北半球側に存在している。そして、その2つの大陸を両断するように、地球で言う赤道に対して、斜めに傾いた形で一本状に走る、世界最大の大陸がライン大陸。
この世界の、大体20%以上を占めるこの大陸は、まるで指輪みたいな形なのよね~一部が膨らんでて、まるで宝石がはめ込まれているみたいでさ。
その大陸を宝石に見立てて見た時、ちょうど下にあたる部分が切れて、陸が分断されている場所があるんだけど、そこは遠い昔は繋がっていたそうだ。そしてその近い場所に、ルアナ大陸の北東寄りの一部が、削れるようになっている部分があるの。
その二カ所はまるで、コンパスで正確に円を描いたら、スッポリ収まるような状態で、綺麗に削れているの。何故ならその場所は、太古の昔に起きたという古代戦争で、邪神と魔神デモニアが、直接激突した古戦場痕なんだそうだ。
邪神は当時、ルアナ大陸を支配していたと言われているから、今でも邪神兵が多く出現するって言うのが、一般的な認識なんだそうよ。それと同じように、古戦場痕の残るライン大陸側の辺りが、魔神デモニアにとっての聖地とされていたの。
その理由は、その地域が他の場所に比べて、魔力濃度が濃厚だった為なんだって。ここまで来ればもう解ると思うけど、その魔力濃度の濃厚な地域一帯が、魔族領域と呼ばれていて、その地域で暮らす人々のことを魔族と呼ぶの。




