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剣道少女が異世界に精霊として召喚されました  作者: 武壱
第一章 召喚編
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目を開くとそこは異世界でした(2)

 剣術が剣道と名を変え、スポーツ競技として広まって随分経つけど、うちの門下生はスポーツマンとか、アスリートという単語から随分かけ離れた、そっち系の人達が多く在籍して居た。警察官とか自衛官とか、まぁそっち方面の職のおじさま達だ。


 あ、もちろん同年代の子とか、ちっちゃい子用のクラスとかもあったからね?そんなむさいおっさん達ばっかりじゃないから。ただ、うちの道場では希望者には実戦に近い剣道を教えるという話が、そっち方面の方々に広くひろまっているので、自然とそういう人達が集まってくるのよ。


 終戦直後なんか、リアルにポン刀所持してる、立派な絵画を背中に描いた人達も来てたとかなんとか…そんな人達と、警官達が一緒に剣道習ってたとか、若干カオスよね~


 で、うちの道場はそういう方針なので、実戦方式と言う事は、まぁ切った張ったな感じに自然となっちゃう訳ですよ。そんな道場の跡取り娘としては、自動的にGoToHELLな訳で…


 そんな環境で育ったもんだから、殺気だなんだと子供の頃から、ビシバシ感じてきましたとも。たまに任される、小さい子達とのキャッキャウフフな時間が、何よりの癒やしの時間でした…


 それ以外にも、中学校からは部活でも剣道部に所属していて、あたし自身全国区の常連で、中学剣道日本一に2回、去年は全国大会個人準優勝。そして今年は優勝と、輝かしい成績を残してきたけど、今までの経験上、全国区の優勝候補と言われる人達の中には、自分の意思で殺気を放てるまでのレベルの人達が、結構居たりするのだ。


 まぁ、うちのじいちゃんレベルの殺気出せる人や、そんな人に子供の頃から、バンバン殺気あてられてたレベルの人は、流石にそうそう居なかったけどね~


 そういう人達に囲まれ、ともに研鑽(けんさん)を積んできたからこそ、こんな現実離れした状況でも、殺気を受けて逆に冷静に対処出来るんだから、感謝感激雨あられだわ。普通のJKだったら、そんな事思いもしないんだろうけどね!


 まぁこの2つが、あたしが慌てふためく事なく、状況を冷静に分析出来た要因であり、この状況をそこまで混乱する事なく、沈着に受け止める事が出来た最大の要因だった。



 そしてズバリ!昨日遅くまで異世界物のラノベを一気読みしてのも、大きな原因だと思います、キリッ☆



 普段は剣道とかなんかで忙しいから、あんまり詳しくはないんだけどね~大体いつも友人のミハルのおすすめを借りては、読むばかりだったんだけど、昨日読んだ本は秀逸で、マジミハル神!と感謝したほどだ。ただ、奴は腐っているので、よく一緒にBL物も挟んで持ってくるけどね…


 まぁ、結構ソフトなやつだから、あたしもつい読んじゃうのよね~けど、アタシハマダクサッテナイヨ?


 ともかく、そんな理由から、あたしが普段通りに動くことが出来たのは、間違いなかった。まるで試合に挑む時のように、頭の中がクリアになっていくのが自分でもわかる。


 そしてあたしは、意識を全方位に展開して、その場にいる人物の動きを、まず把握する箏に徹する。


 まず後ろの2人は動く気配は無い。多分あたしの出方を、まず把握するつもりなんだろうけど、それはむしろこっちにとっても好都合だった。


 あたしにとってまず敵か味方かわからないし、それは向こうだってそうでしょうしね。男達の標的は間違いなく2人で、それを守る様にあたしが出現して、有無を言わさず1人斬りつけている時点で、当然男達にとってもあたしは敵認定。


 なので、敵の敵は味方の法則で、男達を迎え撃つ為に動くかもと懸念したけど、もう1人の子供の方を守る事を優先したみたいだった。その方が、実力の判らない人と共闘しないで済むので、こっちとしても動き易い。


 一方の男達は、早々に我に返った順に行動し始めているといった感じで、あまり統制(とうせい)が取れていないのか?と深読みしてしまった。と言うのも、放つ殺気の程度で、彼等の力量を察してしまったからだ。


 正直、こいつ等ゴロツキレベルの奴等で、我に返ったというよりも、むしろ半分勢いややけっぱちで、襲い掛かって来てると言った感じなのよね。


 ん〜、これはちょっと痛めつければ大人しくなるかな?


 ザッ!


 思うが早いか、あたしは刀を瞬時に納刀すると、姿勢をギリギリまで縮めながら、右脚に力を込めて地面を蹴る。両手を斬られた男の右側面から飛び出して、連中の中で真っ先に動き始めていた、甲冑男の正面に突っ込んで相手の出鼻を挫いた。


「な!なんだ貴」ガツンッ!


 男が何か叫ぶと同時に、慌てて剣を振りかぶる。それよりも一瞬早く、あたしは鞘に納めた刀を再び抜き放った。


 峰打ちに持ち替えての抜刀は、男の台詞を最後まで言い終わらせる前に、胴に吸い込まれていった。そしてそのまま、勢いよく男を吹き飛ばしたのでした。


 …あんれ~?いやいや、おかしいよね?あの人の体格、あたしのふた回りくらいあるのに、なしてそんな軽々吹き飛んでんの?


 いくら甲冑でも、単純に鉄の棒で遠心力を乗せた抜刀術なら、防具の上から鳩尾を強打しても、衝撃で暫く行動不能になるだろうと思ったんだけど…結果は交通事故に遭った、車のバンパーを思わせる様な、無残なひしゃげ方をしていた。あたしゃゴリラかウホッ。


 ちらっと視線を向けて、相手がピクピク痙攣しているのを見て、死んでないかと心配したけど、死んでたらその時はその時と割り切って、深く考えるのを止めた。そんな場合じゃ無いしね~とりあえず次、と視線を巡らせ動き出す。


「ひ、ひぃ!」


 情け無い声を上げるレザーアーマーを装備している男が一番手近に居たので、そいつに向かって行くと、男は怯んだ様に一歩下がる。まぁ仕方ないよね~ムッキムキのおっさんが、あたしみたいな小娘に吹っ飛ばされたの見たら、どんなゴリ子かって思って戦意だって無くしちゃうわよね、ウホッ!


 だからあたしは、後ずさる男の足を思い切り踏み付けて、逃げられない様にしてから、ゴッ!と手にした刀の柄頭で、彼の顎を殴打して意識を刈り取った。ここまでで、時間にして大体1分くらいの時間かな。


 意識を失った男が崩折れたのを確認して、あたしは残りの男達を順に見やった。僅か1分くらいの間に、仲間が3人もやられて、完全に戦意喪失してたからね。


 多分、何が起きたのかもわかっていないんだろうな~


「あああ…いてぇ、いてぇよぉ…」


 聞こえてきたのは、腕を切り落とされた男の声。それが他の男達の恐怖心を、更に増長させたのか、完全に腰が引けていた。


「ま、まさか異世界人か?

「とんだバケモンだ…退け!」


 言うが早いか、男達は踵を返して走り出した…て、ちょっ!


「誰がバケモンよ!失礼ね!!ちょっとー!仲間置いて行くとか、最低なんですけどー‼︎」


 死屍累々を指しながら、走り去っていく男達に向かって叫ぶ。無いわー、どうすんのよこれ。


 そんな男達の背中を、呆れながら腰に手を当てて見送る。今なら追いつけるし、無力化する事も出来るけど、これ以上はさすがに虐めになっちゃうからな〜


「…んで、ここはどこで、あなたはだ〜れ?って、聞いてもいいのかしらね?」


 そう言って、刀を納めながら振り返り、敵意が無いのをアピールしながら、後ろを振り返る。そこには、未だにあたしを警戒している、美人なエルフさんが居ましたとさ。

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