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剣道少女が異世界に精霊として召喚されました  作者: 武壱
軍国編、最終章群『善悪の彼岸』
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意地《リンダ》と信念《島津》(2)

 さておき…


「…ふむ、そこまで言われては仕方ない。それにどうやら、向こうも私に用がある様だしな。」


 そうつげると同時。徐に歩き出し、そのまま敷地内へと侵入してくる島津将軍。


 すると、それを目にした周りの兵士達から、再び安堵の歓声が上がる。


「喜ぶのは勝手だがね。何時迄もそこに居ては、最悪戦闘になった時君達も巻き込まれかねんよ?」


 そこへ水を差すかの様に、将軍からのその忠告。歓声から一転、どよめきが広がる。


「私としても、君達が側に居てはやり辛い。すまないが、もっと離れてくれんかね?」

「そ、それが…出来ないんです。」


 更に続いた将軍からの忠告。それに、一人の兵士がそう応えた瞬間、島津将軍はその場でピタリと立ち止まり、肩越しに振り返った。


「はて、出来ないとは?」

「先ほども申し上げたじゃないですか!」

「隊長を倒した女の能力だと思うのですが、我々全員身体を動かす事が出来ず…」

「あぁ、そうだったな…」


 そう漏らしつつ。顔を正面に向き直すと、徐にあたしへ視線を向ける島津将軍。


 その、訴えかける様な瞳に思わず苦笑。そして…


「その所為で、隊長がやられているのを見て居るしか出来ず…」

「今も、かね?」

「…は?」

「今もまだ動かせないのかね?」

「あ、あれ?動く…」

「いつの間に…」

「これで何の問題もあるまい?」


 何の前触れもなく、身体が自由になった事に唖然とする兵士達。その様子を確認する事なく、再び島津将軍は歩き出した。


「あ、ありがとうございます!将軍‼︎」

「将軍!」

「シマズ将軍!」

「礼には及ばないから、早く離れなさい。戦闘になっても、私が君達を護るとは限らないのだからね。」

「は、はい!」

「それと、シュタイナー」

「はい。チェコロビッチ隊長ですね。」

「あぁ。あのままと言う訳にもいかんからな。頼めるかね?」

「承知しました。」


 そんなこんなで話は進み。次いで、慌ただしく場が整っていった。


 邪魔なヘボの肢体が運び出され。塀にたむろしていた兵士達も、将軍の忠告を受け、その場から更に離れた位置へと移動。


 唯一、シュタイナーだけがその場に留まった。かくして、この場に残されたのは、あたし達四人のみ――


「…随分と、待たせてしまって悪かったね。」

「別に、気にしちゃいないよ。待合せの約束をしてた訳でもないからねぇ…」

「ハハッ、確かに。」


 広場の中央。対峙する二人の語らいは、穏やかな雰囲気から始まった。


「私としては、最後まで姿を見せるつもりも無かったのだがね。」

「そうなのかい?なのにどうして、姿を表す気になったんさね。」

「城内からずっと、闘志を向け続けられた上で、居座ろうとされたら出ざるを得まいよ。」

「あたいからの熱烈なラブコールを、涼しい顔して受け流してっからだよ。」

「枯れた老人相手に、些か執拗ではないかね?」

「そんくらいしねぇと、相手として見てくんねぇだろう?」


 そう告げると同時、リンダは杖の様に構えていた風華を、両手持ちへと切り替える。そして両足を軽く開き半身に構え、その矛先を目の前の相手へと向けた。


 これに、島津将軍は…


「…やれやれ、せっかちなお嬢さんだ。」


 ため息混じりにその台詞。身構えるどころか、よく見れば腰に佩いた刀の柄が、鞘の下緒で封印されたままだった。


 戦いに赴くつもりで現れたのなら、その封は予め解いておく筈。そうしていないと言う事は、その気が無いと言う意思の表れ…


「私が姿を現したのは、お嬢さんにハッキリ伝える為だ。私に、戦いの意思は無いよ。」

「そっちに無くっとも、こっちにゃ大有りさね。早いとこ、抜く物抜いて相手しておくれよ。」

「気が進まんな。交渉の余地は無いのかね?」

「無いね。」

「結論は、既に決まっていると言う事か…」

「あぁ。けど、勘違いしないでおくれよ?別にあんたが憎い訳でも、まして恨めしい訳でも無い。こりゃ、あたいの意地の問題さね。」

「意地、か…」

「そうさ。洒落臭いガキみたいな意地の問題さね。馬鹿げてると思うかい?」

「いやまさか。その意地を、張らせる様な真似をさせてしまったのは、私が原因だろうからな…」


 そう語った後。島津将軍は不意に居住まいを正すと、リンダに対し頭を下げた。


「…またそれかい。そんな事したって、あたいの気が変わる事は無いさね。」

「解っている。だが、あまりにも一方的過ぎやしないかね?」

「それに関しちゃ、すまねぇって心底思ってるよ。」

「であれば、謝意位受け取ってくれても良いだろう?でなければ、お嬢さんの意地とやらは、子供の癇癪と大差ない事になってしまうぞ。」


 頭を下げた状態で、将軍にそう言われた瞬間。リンダの両肩が僅かに震え…


「嫌味だねぇ…背後の奴とドッコイだ。」


 …うん?それって、あたしの事?


「なんだかんだ言いくるめられてたし。故郷がおんなじだと、性格も似てくんのかい?」


 あたしの事だね。うん…


 ここ最近、ずっとシリアスな展開で肩凝ってたのよね〜ちょうどいいし、肩慣らしに石投げちゃえ〜⭐︎


 なんて、しませんよ?しませんので、本編に戻します――

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