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剣道少女が異世界に精霊として召喚されました  作者: 武壱
第二章 訪問編
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いちはじ!(は~ど?)(4)

「…ノック位なさい。」


 リンダが扉を開くと同時に、中から聞き慣れた声で、そんな言葉が聞こえてきた。デスヨネー、あたしもそれ思ったわ。


 リンダがあたし達の前に立ち塞がっているから、ここからじゃ見えないけれど、まぁ間違いなくシフォンよね。きっと半ば呆れ気味な表情で、リンダに注意してたに違いないわ。


 いやホントビックリしたわよ。何の断りも無いし、あたし達にも何も告げずに、いきなりドア開けるんだもん、自分の部屋かっての。


「あぁ、すまないねぇ。育ちが悪いんでね

「育ちでは無く、礼儀の問題ですわ。どうやらお見えに成られたみたいですわね。」


 そんな2人のやり取りの後、リンダが身体を入れ替えて、ドアの入り口から退くと、あたし達に道を譲った。道が開けた事によって、まずエイミーが部屋へと入室し、それに続いてあたしとジョンも中へと入った。


「んじゃ、あたいはとりあえず、必要な書類を持ってくるから、あんた達はひとまず大将と一緒に、ギルマスの質問に答えてやんな。」バタン


 あたし達が部屋に入るや否や、後ろからリンダが一方的にそう告げると、ドアを開いた時と同じく、唐突にドアを閉めてしまった。


 う~ん…まぁ判ってたけど、リンダって良い意味でマイペースよね~悪く言っちゃえば、無骨って言うか、大雑把って言うか…


「全く、あの子ったら…申し訳ありませんわね、ギルマス殿

「ハッハッハッ、なんのなんの。女傑らしくて良いではありませんか。」


 聞こえてきたシフォンの苦言に対して、愉快そうに笑う男性の声を聞いて、視線をそちらへと向ける。見るとそこには、白ひげを携えた身なりの良い初老の男性が、実に愉しげな表情を浮かべていた。


 女傑って言うのは、きっとリンダの二つ名なんでしょうね、彼女らしい通り名だわ。


「ようこそおいで下さいました。(わたくし)、当ギルドの長を務めさせていただいております、ルカ=ルベリウスと申します。」


 そう言って、ルカと名乗った初老の男性は、それまで座っていたソファーから立ち上がって、あたし達に向き直ると、うやうやしく腰を折ってお辞儀して見せた。着ている服が、黒い燕尾服に似ているせいもあって、その振る舞いはまさに執事って感じね。


 受付のお姉さんもそうだったけど、ならず者なんかもやって来るような場所で働いてるなんて、ちょっと想像できない様な雰囲気ね。高級ホテルとかで働いてますって言われた方が、まだ信じられるわ。


 まぁでも、こんな丁寧な人だからこそ、受付のお姉さんの、丁寧な接客対応にも納得できるってものよね~プロ意識が、ヒシヒシ伝わってきたもの。


「はじめまして、ルカ=ルベリウス。先代はお元気ですか?

「えぇ、元気すぎて私共(わたくしども)も困っている位でございます。」


 そう言って、笑顔で彼に近づいていって、手を差し出したエイミーに対して、これまたにこやかな笑顔で、差し出された手を握り返すルカさん。2人ともさすが、大人の対応って感じの挨拶ね~


 あれがあたしだけに向けられていた物だったら、まずどうして良いかわかんなくなって、軽く会釈してただけだったでしょうね~


「…そちらが、エイミー殿のお弟子様のジョン・ミラー殿と、異世界者のユウキ・ツルマキ殿ですな?

「どうも

「あ、は、はい!」


 不意にルカさんの視線が、あたし達に向けられてそう問われ、反射的に会釈して返した。ほらね?言ってる側から、こんな返ししか出来無いのよあたし。


 目上の人に対して、余りにも無作法だと自分でも思うわ。まぁ、緊張のあまり背筋ピーンとなって、うわずった声で返事しちゃった、隣の子とどっちが良いかって聞かれたら、正直微妙な所だけどね~


「ようこそおいで下さいました。ささ、立ち話も何ですし、お三方ともお座り下さい。」


 そんなあたし達の態度を、全く気にした様子も無いルカさんは、笑顔でそう語ると、部屋の中央に据えられてある、それまで彼が座っていたソファを、あたし達に勧めてくる。


 それに素直に従って、あたし達3人並んでソファに座る。ちなみにシフォンは、テーブルを挟んで対面にある、同じ長さのソファに1人腰掛けていた。


 腰を落ち着けた所で、改めて室内を見回してみる。一見して、いかにも執務室って感じの、シンプルで余り飾り気の無い感じね。


 部屋としては、結構広いんでしょうね、10畳位はありそうな感じで、廊下に出る扉の対面には、大きめの窓と、その手前にはルカさんの仕事用なんだろう机と、その机に積まれた書類の山。


 そして、部屋の中央に大きな応接用のテーブルと、両サイドに今あたし達も座っているソファー。以上!


 いや、ほんとそれだけなのよね~観葉植物なり、本棚なり有っても良いと思うんだけど、そう言った類いの家具は一切無くて、いかにも仕事するだけの部屋って感じ。


 ん~、この街の建物とかでも感じたけどさ、なんて言うか飾り気が一切無いわね~この街の人達、実は全員『質実剛健』って背中に背負ってんじゃないかしら?


あたし達に席を勧めたルカさんは、あたし達の着席を見届けると、書類の山の積まれている机へと向かっていく。


「早速で申し訳ないのですが、今回の件について、お三方々からもお話を伺いたいのですが、よろしいかな?」


 そう言いながら、ルカさんも席について、あたし達3人に向かって、順番に視線を向けていく。その眼差しが、少し気になったあたしは、眉をひそめて彼を見返した。


 今回の件って言うのは、盗賊団のアジトを壊滅させたに至ったまでの事についてだとは、もちろん解っているんだけど、何かしらね…この人は、それについては余り興味が無くて、他に何かを聞き出したいんじゃないのかしら?


 あたしがそう思った理由は、まず彼の視線から感じた違和感からだ。結構上手く隠してる風だったけど、彼の視線からは、あたしが元の世界でよく感じていた、期待の眼差しのような物を、少しだけど感じ取れたのよね~


 あたしは、実家の居合や剣道以外にも、色々な習い事を見境無く習っていた。習うだけならそう難しい事じゃないけれど、そのどれもがある程度の結果を出せる位、精通出来る程には習得させてきた。


 その結果、当然だけど周りからは、それ一本に絞って、本気で取り組んでみないかって、説得された事は1回や2回じゃ済まないし、天才だ神童だなんて持て囃された事だってあった。そうやって、幼い頃からあたしは、周りの大人達から、期待の眼差しで見られたり、特別扱いされたりしてきたから、そういった視線には特に敏感なのよね~


 でもまぁ、あたしはこんな性格だから、期待されてもそれに応えない事の方が多かったのよね~物事に集中している最中は、周りの期待も頭にまでは入ってこなかったし。


 そんなんだったから、勝手に期待されて、勝手に絶望されちゃって、習い事を続けられなく成っちゃう、なんて事もたまにあったわ。アハハ~はぁ。


 要するに、あたしもリンダの事を言えない位、マイペースって事なのよね。人の事言えないわ~


「その前に1つ、よろしいですか?

「えぇ、どうぞ

「今回の件、依頼者は私です。依頼者への説明責任から、事の詳細をお聞きしたいというのであれば、それは必要ありません。まして、私はともかく2人は、未だギルド登録もしていない身。2人にはその説明責任さえ無いと思うのですが、この場に同席する必要はあるのでしょうか?」


 そう言ってエイミーは、丁寧だけど鋭い口調で、ルカさんに詰問する。彼女のその問いは、まさにあたしも思っていた事だった。


 だってそうでしょ?確かに、盗賊団のアジトを壊滅させたのは、事実上あたし達だけど、そもそもギルドの一番偉い人が、わざわざ事情聴取なんてするかしら?


 机の上に、あんなに書類が溜まっているのに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って、一体何なのかしらね?


 リンダから、あたし達を呼んでいるのが、ギルマスだって教えられた時から、エイミーもあたしも、その疑問に真っ先に気が付いていたのよね。だからあたしは、さっきエイミーが自然な感じで、違和感なく挨拶していた事に、心の底から感心してたのよね~


 あたしなんて、その疑惑があったもんだから、無意識に構えちゃってたからね~これが年の功…なんて言ったら、エイミーが怒りそうね…経験の差ってやつね。


 そんな彼女の、核心めいた一言に、部屋の中には妙な緊張感が走った。あたしは、そんな緊張感もお構いなしに、視線を巡らせて、全員の表情を確認していく。


 ほら、あたしマイペースだし~テヘペロ☆


 エイミーは、目の笑っていない微笑みを浮かべて、ルカさんの反応を伺っている。あれ、若干おこなのかしら?


 一方のルカさんは、人当たりの良さそうな笑みを浮かべて、エイミーを見据えている。笑って誤魔化そう、なんて事は思っていないんでしょうけれど、何考えてるんだか全然読めないわね。


 そして、あたし達の対面に座るシフォンは、そんな2人のやり取りを、全く意に介した様子も見せずに、ソファーに深く身体を沈めつつ、腕組みしながら何やら考え込んでいる様子だった。…寝てないわよね?


 そして、あたしの隣に座るジョンキュンは、不穏な空気が流れている事自体には、気が付いているけれど、なんでそうなっているのか、いまいち解ってませんって言うのが、ヒシヒシ伝わってくる位、顔に出して縮こまっていた。


「わっ!?な、なんです、急に…」


 そんな彼の頭を思わずなでなで。ジョンキュンの身体が一瞬ビクッとして、小声で抗議してくる。


 そんな彼に苦笑しながら応えて、その頭から手を退かした。ほら、あたしマイペースだからさ~とりあえずサーセン。


 時間にして、1分も経っていないでしょうね。どう返答しようか、考えが纏まったのか、不意にルカさんは、笑みを消して口を開いた。


「…そ」ドンドンッ!ガチャッ…


 それにまるで被せる様に、無遠慮にドアが叩かれたかと思いきや、次の瞬間にはドアが開かれる音が室内に響いた。


 さぁ!ここで問題です!!一体全体、誰が入室してきたでしょうか?え、簡単すぎるって?デスヨネー


「ん?なんだい?」


 A.女傑リンダさん


 それまで流れていた緊張感が嘘のように、その場に居た一同の視線が、無遠慮に入室してきたリンダへと注がれる。彼女は、一瞬その視線に首を傾げて、不審がったけど、次の瞬間には、ケロッとした様子で、ズカズカと歩き始めて、さも当然と言った感じで、シフォンの隣に勢いよく座り込んだ。


 その勢いが、思いのほか強くて、小柄なシフォンさんの身体が、一瞬大きく飛び跳ねたのはご愛敬。その表情が、苦虫噛みつぶしたみたいな表情じゃ無かったら、もっと良かったんだけどね~


「…貴女ね…

「なんだい、今度はちゃんとノックしたじゃないかい

「ノックすれば何でも良いって訳じゃ有りませんわ!」バシンッ!


 そう言ってシフォンは、思わず立ち上がって、リンダの頭を盛大に平手打ちする。結果…


「~ッ!!

「大将、大丈夫かい?」


 叩かれたはずのリンダは、全く意に介した素振りも見せず、逆に叩いた方のシフォンが、叩いた手を反対の手で押さえながら、苦悶の表情を浮かべましたとさ。


 解るわ~マジかっっったいのよ彼女。常時スキル全開の人に、思わず手を出したらああなるって言う、典型的な良い例ね…


「んで、話は進んだのかい?」


 そんな彼女達の漫才(?)に、完全に毒気を抜かれたあたし達に、それまでのやり取りを全く知らないリンダが、手にした紙片をあたし達に差し出しながら、軽い感じで聞いてくる。


「進んでたら、リンダが話の腰をへし折ってた所ね。」


 その問いに、あたしは苦笑を浮かべながら、そう答えつつ、差し出された紙片を受け取って、エイミーに手渡した。だって、あたしじゃこの世界の文字読めないも~ん。


「なんだい、とげのある言い方だね…ん?まさか全然進んでないのかい。」


 あたしの言葉の端に気が付いたリンダが、そう問い返して来たので、再び苦笑して見せた。

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[気になる点] 一話一話の内容が薄くて某週刊少年誌の某海賊漫画を見てる気分になる。のに会話が少ないので面白くない。ようは薄っぺらい 多分圧縮しようと思えば半分くらいまで圧縮できるなコレ これ漫画にした…
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