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剣道少女が異世界に精霊として召喚されました  作者: 武壱
第四章 軍国編
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間章・ただ、『ありがとう』って伝えたくて。それだけが、どうしても伝えたくて…(1)

あなぁ〜た〜を〜見つぅ〜めるぅ〜けどぉ〜


サブタイこれに決めてから、ずっと脳内再生されんのよ、この曲z

 バージナル内にて、優姫達が懸命な思いで作戦に当たっているちょうどその時。何千キロと離れた場所で、彼女達とは違う形で作戦に貢献する者達が居た。


 ――トン、トン、トン…


「お野菜の皮剥き終わりました〜」

「あっ、ありがとうございます!」


 ――グツグツ…


「このまま切っちゃっても平気ですか?」

「勿論です、お願いします!」

「こっちも下処理終わりました。」

「あ、じゃあそのまま調理に入ってください!」



 観光都市リリに在るセーフハウス。そこのキッチンで、慌ただしく炊き出しの準備を進める女性陣――


「――わかりました、()()()()さん!」


 その中には当然、メアリーの姿もあった。


「出来上がったら、どんどん夜天ちゃんに渡してください。」

「わかりました。」

「あ、夜天ちゃん!こっちもうすぐ出来るから、お皿の用意お願いしてもいい?」

「ほいほ〜い!」

「食器の片付け終わりました!」

「あ、はーい!ありがとうございます。そうしたら、こっちに来て切菜のお手伝いしていただけますか?」

「わかりました、今行きますね。」

「お願いします!」


 自ら腕を奮い、同時に他の女性達への指示出しも行うメアリー。その堂に入った態度からは、以前までの不安さや心許なさ等はまるで感じられない。


 何故この様な事になったか。きっかけは、数時間ほど前まで遡る。


 救出した被害者達の中から三名。メアリーと共に炊き出しをする事となった訳だが、そこは勝手知らない他人の家。


 キッチンの何処に何があるか解らない上、さして広くもないキッチン内で、複数人が作業を行うなんて邪魔でしかない。となれば、指示役が必要となるのは自然の流れ。


 その指示役に、一日の長たるメアリーが選ばれるのもまた、自然な流れだった。


 とは言え、引っ込み思案な彼女の性格。最初の内は、酷いものだった。


 指示出しはいちいち遠慮がちだし。かと思えば、指示出しばかりに気が向いて、自身の作業で火傷や切り傷を作る始末。


 それでもメアリーは、泣き言も口に出さず懸命に、自らの役割を全うしようと心掛けた。その結果、今の様な状態へとなった。


 その姿を、誰よりも彼女の側で過ごした夜天は、嬉しそうに眺めていた。


「夜天ちゃん!出来上がったからそっちに持っていくね。」

「ほいほ〜い。んじゃ、盛り付けはわたしがやるよぉ〜」

「あ、うん。ありがとう、じゃぁお願いするね。」

「うぃ〜」

「お野菜切り終わりました〜」

「あっ、は〜い!そしたら調理もお願いします。」

「わかりました〜」

「こっち手空きますけど、盛り付けのお手伝いに加わりますか?」

「えっと…」

「わたしはどっちでも良いよぉ〜」

「じゃぁお願いします。」

「はい。」

「夜天ちゃん。ある程度終わったら盛り付け任せちゃって、提供する方に回ってほしいな。」

「ほぉ〜い、りょうか〜い。」


………

……


「こっち調理終わりました。」

「あっ、ありがとうございます!」

「したらこっち持ってきて〜一緒に盛り付けちゃう〜」

「うん、わかった。」

「じゃぁ私は、コレの処理に入って良いですか?」

「えっ、どれです?」

「コレですよ、コレ。ガザ虫(活)です。」


 ――うぞうぞ…


「ひっ…」

「うわぁっ!なんで買ってないのに在るのソレ⁉︎しかも生きてるし‼︎」

「え?表に居たの捕まえたんですけど…」

「だ、だめだめ!そんなのメアリーに見せちゃ――」


 ――バタンッ!


「うわぁっ⁉︎メアリーが倒れた‼︎」

「えぇっ⁉︎」

「だ、大丈夫ですか⁉︎」


 ――ドタ、バタッ!ドタバタ…



 戦場の様な慌ただしさから数十分。一区切りつけたメアリー達は、休憩を取る為にキッチンからリビングへと移動してきていた。


「ふぅ…」


 ふかふかのソファーに身体を預けながら、思わずため息。このまま目を瞑ればきっと、あっという間に眠りに落ちるだろう。


 そんな心地よい疲労感を感じながら、空中をふよふよと泳ぐ様に近づいてくる存在に視線を向ける。


「お疲れ〜メアリー」

「うん。夜天ちゃんもお疲れ様。」

「大丈夫〜疲れてんじゃない〜?」

「それはまぁ…でも、少し休めば平気だよ。」

「そぉ〜?無理はしちゃダメだよ〜?」

「うん、ありがとう。」


 心配する夜天を他所に、穏やかに微笑みながら答えるメアリー。その笑みの、なんと自然な事か…


 以前までなら、きっと愛想笑いで返していただろう。そう考えると、随分性格が明るくなった。


 いや…在るべき姿に戻ったと言うべきか。


 年相応の、この世界に飛ばされる以前の、何処にでも居る様な普通の女の子の姿に――


「…ねぇ、夜天ちゃん。」


 そんな彼女が、ふと見せた暗い表情。


 もう見たくないと。どうしたらそんな表情をさせなくて済むのかと、考えずにはいられない、そんな顔…


「うん?な〜に〜」


 そんな思いをお首にも出さず、何時もの脳天気な調子で問い返した。

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