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剣道少女が異世界に精霊として召喚されました  作者: 武壱
第四章 軍国編
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異世界うるるん滞在記~潜入!子連れJK51時!!ラストミッションのお時間です~(8)

「マリー、街の状況はどうなってるの?」

『あ、はい!今も爆発のあった建物を中心に、兵士の人達が集まってますよ。あちこち動き回っていますけど、お城に近づこうとする人は今の所見当たりませんね。』

「そう…」


 って事は、まだ居もしない逃走者達を探してくれてるのね。ご苦労な事だわ。


「解ったわ、ありがとう。そのまま監視を続けて、何か変化が起きたらこっちの状況に関わらず連絡を頂戴。」

『はい!解りました!!』

「…優姫。」


 通信中。不意の呼び掛けに反応して、先行するリンダの背後から、その先へと意識を向ける。


 直後、眉間に皺を寄せながら、行く手に現れた石造りの壁を睨み付けた。


 アレね…


「…銀星。」

『はい。』

「目的の場所に着いた。周辺の警戒は、もうミリアだけで大丈夫だから、銀星も街の監視に回ってくれる?」

『了解しました。』

「って訳でミリア、後は任せたからね?」

『OK!任されたね!』

『ご武運を。』

『気を付けてくださいね。』

「えぇ。」


 そう答え通信を切ると同時、件の石壁に到着。一旦その場で立ち止まると、すかさず石壁に沿って視線を巡らせる。


 すると程なく、右手に少し行った先に入り口を発見。夜陰の中でも直ぐにそうと解ったのは、開き戸が開け放たれた状態で、其処から明かりが漏れて見えたからだ。


 どちらからともなく、顔を見合わせ頷き合う。そしてそのまま、壁伝いに入り口へと忍び足で移動。


 そこから漏れる明かりの揺らめきが、ハッキリと見て取れる距離まで近づくと――


「――」

「――」


 ――その向こう側から、僅かに感じた人の気配と話し声。


 …この位近づけば十分かな。


 そう判断したあたしは、不意に立ち止まり視線で合図を送る。すると、その視線に気付いたリンダが、その場で停止し僅かに頷く。


 それに頷き返すと同時、彼女から視線を逸らした。そして、自然体となり両目を閉ざすと、ゆっくり大きく深呼吸。


 感覚を研ぎ澄ませ、背中越しに向こう側の様子を探る。


 …ミリアからの情報通り、見張りは二人で間違いないみたいね。距離は…大体十メートル前後か…


 あたしん家の本家筋、武神流の初伝で修めさせられる気配察知法。家一棟は流石に無理だけど、壁一枚越しならお手の物だ。


 まぁ、明陽さん達と比べたら立つ瀬が無いけどね~


 さておき。必要最低限の情報を読み取ったあたしは、最後に大きく息を吐き出し瞳を開いた。


「ここから見張りまでの距離は約十メートル。障害物になりそうな物は感じなかったわ。」


 続け様、読み取った情報をリンダと共有すべく、そちらに向かって顔を近づけると、周囲に気を配りながら小声で話し掛けた。


「十メートルか。その位なら、距離を詰めるのに二秒と掛からんが…」

「騒がれずに制圧出来るか運次第ね。」

「だねぇ。どうするよ、それでも構わず強行突破するかい?」

「ん~…流石にそれは早計かな。建物内に他の兵士が居ないって保証が無いし、出来れば穏便にすませたいわね。」

「けど、居たとしてせいぜい数人だろう?大した脅威にゃならんさね。」

「脅威は無くても救助者が居るでしょ。中の状況が解らない以上、騒ぎを起こすのは得策じゃ無いわ。」

「ならどうするってのさね。よ。」

「そうね…」


 そう呟くと同時、思考を巡らせる。


 安全策を取るのなら、死角になる場所まで移動して、塀を乗り越えるのが無難だろう。けどその場合、移動と安全確認に時間を掛けなくてはならない。


 仲間達のサポートが在るとは言え、何時まで潜伏していられるか解らない以上、無駄に時間を掛けるのは好ましくない。


 となれば、困った時の眷属器。またぞろ透明化して、近づくってのも手ではある。


 けど、それこそさっきの話。監視されてる可能性のある今、接近する為だけに手の内を晒すような真似は避けたい。


 って、なったら…


「…なんだい?」


 考えが纏まり、横目でリンダの姿を確認。その視線に気付いた彼女が、怪訝そうな声を上げる。


 そんな、()()()()()()姿()()()()|に対し、あたしはニヤリと人の悪い笑みを浮かべる。


「その様子からして、どうやら良い案が浮かんだようだねぇ。」

「どうかしら?シフォンやエイミーだったら、きっと呆れられると思うけど。」

「って事は、碌でもない作戦ってこったね。上等だよ、乗ったろうじゃないか。」


 そう言って、一人勝手に盛り上がりを見せる彼女。作戦を聞く前だってのに、何とも頼もしい限りだわ。

 

 ってか、碌でもないとか言い過ぎちゃうん?


「んで、あたいはどうしたら良いんだい?」

「色々考えたんだけどさ、リンダには正面から乗り込んでもらおうかなって。」

「正面から?」

「うん。それが一番手っ取り早いし、面倒も少ないでしょ?」

「そりゃそうだがよ…って事は結局、強攻手段かい?」


 順序立てて説明していた途中、勝手にそう結論付け落胆する彼女に思わず苦笑。同時に拳を振り上げて、そのまま眷属越しに彼女の胸板を軽く小突いた。


「そんな単純な訳無いでしょ。自分の格好忘れてんの?」

「格好って…おい、まさか。」

「そのまさかよ。今のリンダなら、正面から堂々と敷地内に入っても、直ぐに侵入者とは思われないでしょ?」

「そら、あたいはそれで良いかしんねぇけどよ。優姫はどうするつもりさね?」

「勿論、一緒に着いて行くわよ。リンダの背後に隠れてね。」

「背後に?流石にバレやしないかねぇ。」

「日の昇ってる時間ならね。けど今は夜で視界も悪くなってるし、ピッタリ張り付いてけば十分いける筈よ。」


 そう語った直後、兜越しに鼻を鳴らす彼女。そして――


「まぁ、あたいはガタイがデカいからね。」


 何処まで本気なのか解らないその言葉に、思わずあたしは肩を竦める。


 提案した時点で、その台詞は織り込み済み。だってこれは、あたしとリンダの体格差在っての作戦だからね。


「言っとくけど、他意は無いわよ?」

「んな事は解ってんよ。それはそれとして、遠慮の無さに容赦が無いなと、改めて感じただけさね。」

「あら、ご挨拶。背中を預ける者同士、この位当然だと思うけど…傷付いちゃった?」

「ったく、言ってろってんだよ。」


 こちらの軽口に対し、うんざりしたような口調で返す彼女。その様子にあたしは、悪戯っぽく笑いながら、再びその胸板を軽く小突くと…


「ハリウッド女優張りの名演技、期待してるわね。」


 しれっとそう言ってリンダに道を譲る。これに彼女は、諦めた様子でため息を吐き出すと、入り口に向かってゆっくりと歩き出した。

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