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剣道少女が異世界に精霊として召喚されました  作者: 武壱
第四章 軍国編
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異世界うるるん滞在記~潜入!子連れJK51時!!ラストミッションのお時間です~(4)

「時間も惜しいだろうに、急に押し掛けてすまないね。」


 露骨に警戒するあたし達に対し、まるで世間話でもするような気軽さで、話し掛けてくる島津将軍。


「別に構いませんよ。無断でお邪魔しているのは、こちらの方ですし。ねぇ?」

「だねぇ。それなのに、わざわざ訪問の先触れなんて出させちまって。気を遣わせちまったみたいで、こちらこそ申し訳ないさね。」


 それに対し、皮肉交じりの軽口で応戦するあたし達。すると将軍は、少し戸惑った様子で肩を竦める。


「敵意が無い事を訴えたつもりだったんだが…余計に警戒させてしまったか。」


 しないでか。と、思わず言いそうになったけど我慢。


 警戒はそのままに、あたし達は将軍の次の言葉を待った。


「その様子だと、私が現れるのは予想済みだったようだね?」

「えぇ、まぁ。何処かで現れるとは思っていましたよ。」

「けど本音を言やぁ、もっと遅くに現れて欲しかったけどねぇ。」

「そうか…君達が向かうなら、まずここだろう思って来ただけだったからな。そこまで気が回らず、申し訳なかったね。」

「…将軍様って言う割に、随分腰が低いんだねぇ。」

「そうかね?礼儀の範疇だと思うんだが…」


 立ち位置はそのままに、二言三言と会話を続ける。警戒を解かないあたし達に対し、将軍はまったくの無警戒。


 それがそのまま、この場での力量差を物語っているのだから腹立たしい。


 だからだろう…


「そろそろ用件を伺っても良いですか?」


 次に切り出した言葉に、ついつい感情が籠もってしまった。瞬間、場の空気がピンと張り詰める。


「用向きか…」

「はい。まさか、ただ世間話をする為に、あたし達の前に現れた訳じゃ在りませんよね?」

「無論だ。」

「察するに、昨夜部下の方と取り交わした取引の、正式なお返事とお見受けしますがどうでしょう?」

「成る程。報告に在った通り、目端の利くお嬢さんの様だね。」


 そう言って、苦笑を浮かべる島津将軍。どんな報告か気になる所だけど、それには触れずに次の言葉を待った。


「…取引の件も勿論だが、それよりもまずは…」


 待つ事一瞬。真剣な面持ちとなった将軍が、姿勢を正してそう切り出したかと思うと――


「「ッ!」」


 ――次の瞬間、あたし達に向かって深々と頭を下げた。


「私が謝罪した所で、君達にとっては何の足しにもならぬだろう。しかし、謝らせて欲しい。申し訳なかった。」

「…それは、何に対しての謝罪ですか?」

「君達が救出に来た、二人の扱いについては勿論。一連の騒動で、君達が不快に感じた事全てに、だな。」

「随分と大きく出たねぇ…全部あんたが関与してたって言うのかい?」

「烏滸がましいのは百も承知だ。しかし、御そうと思えば出来た立場で、見て見ぬ振りを続けたのだ。事に及んだ者達よりも、むしろ罪深いだろう。」

「潔いんですね。だからこそ残念ですよ…なんで動こうとしなかったんですか?」

「それを話したからと言って、君達の気持ちは収まらぬだろう。であれば、言い訳など時間の無駄よ。」

「身勝手な言い草だねぇ…」

「そうだな。その通りだ…私は、君達に許して貰えるとは、露とも思っておらぬからな。」

「本当に、勝手ですね。」


 感情を込め、吐き捨てるように言い放ったその言葉。それを最後に、石室内を静寂が支配する。


 その間もずっと、謝罪の姿勢で微動だにしない将軍。その気がだったら、正しく攻撃のチャンスだっただろう。


 或いは、それを望んでいるのか…


「…解りました。」


 暫くの沈黙の後、ため息交じりにあたしが言う。すると、それを見計らっていたかの様に、将軍がゆっくりと頭を上げた。


「許せるかどうかは別として、その誠意は受け入れますよ。」


 更にそう続けたあたしは、袖口の眷属達を送還。将軍に見えるよう両手を晒して、警戒を解いた事をアピール。


「リンダも良いわよね?」

「…わぁ~ったよ。」


 あたしの言葉に従って、戦闘体勢のみ解除するリンダ。風華を縦に持ち直し、背中を伸ばして対峙する。


「すまんな、ありがとう。」


 そんなあたし達の態度に、申し訳なさそうにしながら謝辞の言葉を口にする島津将軍。


 その様子からして、やはり殴られるぐらいのつもりで居たんだろう…


「…さっきも言いましたけど、許せるかどうかは別の話です。だから謝罪もお礼も、言われる筋合いはありませんよ。」

「そうか。やれやれ、手厳しいな…」


 であれば、殴らなくって正解ね。それでスッキリするのは、あたし達よりむしろ向こうだろうからね。


 その思いから発した拒絶の言葉。将軍は、僅かに肩を落として、苦笑交じりにそう答える。


 そのまま、ため息を吐き出し顔を伏せる。けれどそれは一瞬で、次に表情を上げた時には、すっかり真顔に戻っていた。


「こちらの話に、付き合わせてすまなかったね。」

「まったくさね。」

「それよりも、取引の返事を伺いたいんですが。」

「そうだったな。私の権限が及ぶ範囲で、全面的に応じると約束しよう。」

「本当ですか?」

「二言は無いよ。具体的な内容について、摺り合わせを行いたいのだが…時間も限られてるだろうし、次の目的地までの案内がてら、歩きながら話し合わないかね?」


 そう問われ、どちらからともなく顔を見合わせる。直後、リンダから『任せる』とのジェスチャーが。


「解りました、それでお願いします。」

「承知した。では参ろうか。」


 こちらの返答に対し。言うが早いか、クルリとその場で翻り、地上に向かって移動を開始する島津将軍。


 再び、顔を見合わせたあたし達は頷き合い、その後を追って移動を開始。歩き始めると同時、通信リングに魔力を通わせる。


「こちら優姫。銀星、応答お願い。」

『どうされましたか?』

「思いの他早く、島津将軍から接触があったわ。これから、将軍の案内で次の目的地に向かうわ。」

『…解りました、お気を付けて。』

「えぇ。」


 こちらの状況を手短に伝え通信終了。速度を上げて、少し先を歩く将軍を追いかけた。

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