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剣道少女が異世界に精霊として召喚されました  作者: 武壱
第四章 軍国編
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異世界うるるん滞在記~潜入!子連れJK51時!!ラストミッションのお時間です~(1)

 ――バージナル城城内


 正面から堂々と侵入したあたし達。周囲を警戒しながら、バァートンさんが捕らわれている筈の地下牢をまず目指す。


「こっちさね。」


 通路の先に現れた分かれ道。先頭を行くリンダが、迷わず右の通路を選び進む。


「このまま真っ直ぐ行った突き当たりに、地下へと降りる扉があるさね。」


 肩越しにこちらを一瞥し、そう告げる彼女。この時点で、王城に潜入してから、まだ五分と経っていなかった。


「今の所順調ね。」

「だねぇ。」

「それもこれも、リンダの下調べが在ってよね。」

「それもあるんだろうけどよ?ここまで警備が手薄になりゃ、急ぎ足で最短ルートを進める、ってなもんだろうさね。」

「まぁね。こう成るよう、入念に計画を練った甲斐があったわね。」

「全くだねぇ。最初は、アジトを破壊して騒ぎを起こすだけで、十分だろって思ってたんだが…実際に目の当たりにして納得したよ。奴隷が逃げ出したって触れ回ったら、血相変えて兵士共が出て行ったからねぇ。」

「それだけ、この国が奴隷制に依存してるって事よ。自力で逃げ出すかもなんて考え、まるっきり頭に無かったんでしょうね。」

「だから敢えて、見つかるよう演出したって訳かい。大将の考えも乗っかってるとは言え、風華の姉ちゃんにゃ恐れ入ったさね。」

「銀星だけじゃ無いわよ?うちの子ちゃん達、みんな優秀なんだから。」

「ったく、親馬鹿だねぇ。」

「最高の褒め言葉ですが?」


 なんて会話を交わしながら、通路を歩く事暫く。通路の突き当たりに、鉄製の扉が見えてきた。


「あれね。」

「あぁ。」


 そう確認し合うと同時、小走りで一気に距離を詰める。程なくして、通路の終わりに差し掛かると、その先がT字路になって居る事が解った。


 その手前で立ち止まったあたし達。示し合わせていた訳でも無いのに、すかさず左右に分かれ壁に背を預け、肩越しに気配を探る。


 …異常無し。


 そう判断して、視線をリンダへと向ける。その視線に気が付いた彼女が無言で頷く。


 それに頷き返すと同時、通路から飛び出し鉄扉へ向かう。


 ――…ガッ、ゴン…ギィギィギィッ…


 扉の前に立ったあたし達。鉄輪を掴んで手前に引くと、鉄と石の擦れる音を響かせながら、すんなりと開いた。


 人一人分通れる位に、扉が開いた所で手を止める。そこから中を覗き込んだ途端、カビと湿気で淀んだ空気が頬を撫でる。


 それに思わず顔を顰めながらも中を確認。すると其処には、情報通り地下へ向かう階段があった。


 段差が確認出来たのは、扉から差し込んで見えた手前の部分のみ。その先は光源が無く真っ暗だ。


 けど、よくよく目を凝らして伺うと、視線の奥にぼんやり明かりが灯っているのに気が付く。どうやらその先が、問題の地下牢なんだろう。


 途中が真っ暗だから、正確な距離感はわからない。十メートルか、或いはもっと深いかも。


 それだけ深ければ、流石に地下の様子を伺うのは難しい。けど…


「どう思う?」


 それまで階下に向けていた視線を一転。横で同じ様に、地下の様子を伺っていたリンダにそう問い掛ける。


「さて。明かりが灯ってるって事は、人の出入りがあるって証拠なんだろうが…にしては、嫌に静かなんだよねぇ。」

「やっぱりそう思う?」

「あぁ。情報通り、バァートンってのがこの下に居るってんなら、見張りの一人も居ると思うんだがねぇ…」

「そうなのよね。地下だし、扉を開く音が反響したら、何かしら反応が在ると思ったんだけど…」


 そう言いながら、再び暗闇へと視線を向ける。相も変わらず、視界の奥でぼんやりと灯る、小さな明かり。


「あたい等の目的が、この下に在るってのぁバレちまってるんだろう?とっくに、別の場所に移しちまったって事も、あり得るんじゃ無いのかい?」

「無きにしも非ずだけれど…余り考えられないわね。こっちがどう動くかも判らないのに、取引を反故にする程短慮な人には見えなかったし。」

「存外、軽く見られてたかも知れんさね?」

「柄にも無く、結構気合い入れて脅したのよ?まぁ、それで軽く見られたってんなら、逆に清々しいけどさ。」

「優姫が其処まで言うってんなら相当さね。ならあんたは、どう見るってんだい?」

「そうね…無用な被害を減らす為に、見張りを引き上げさせたって方に掛けたいわね。」

「大分希望込みの見方だねぇ。まぁ、それも無くは無いかもか…」


 地下の様子を伺いながら、軽口混じりに意見を交換。この間も、階下の様子に変化無し。


 これだけ様子を見ても変化が無いなら、流石にこれ以上は時間の無駄ね…


「んで、結局どうするさね?」


 どうやら彼女も、そう考えていたらしい。不意に、真剣味を帯びた口調で、そう問い掛けてくるリンダ。


「どうもこうも、地下の牢屋にバァートンさんが居るかどうか、確認する以外に無いでしょ。」

「まっ、そらそうだ。」


 そう言って、苦笑してみせる彼女。徐に扉の隙間に身体を滑り込ませ、地下に続く階段に足を踏み入れる。


 遅れる事一瞬。その後を追って、あたしもまた階段へと踏み入った。


 ――コッコッコッ…


「サイレント使う?」

「必要無いさね。見張りが居りゃ、この足音に反応するだろうからねぇ。それで騒がれたって、上の様子じゃそう簡単にゃ伝わらんさね。」

「確かに。っと、足下気を付けてね。」

「解ってるさね。」


 狭く薄暗く階段を、壁に手を着きながら注意深く降りていく。


 暗闇に反響する、あたし達の足音と話し声。こんなにも、あからさまに響かせているというのに、それでも階下の様子に変わリは無かった。


 となると、やっぱ下には誰も居ないのかも。でも、リンダも言ってた通り、明かりが灯ってるって事は、最近まで使われていたのは確かよね…


 段差を一歩、また一歩と降りる度。奥に見えていた階下の明かりが、段々と大きくなっていく。


 それに伴い明度が上がって、先の見通しも良くなる。残す段差もあと僅か。


 ここまで来れば、流石に気配の有無位解る。やっぱりこの先に、人の気配は感じられない。


 それを察した辺りから、自分の表情が自然と強張っていくのが解る。口数もすっかりと減り、祈るような思いで最後の段差を降り立った。


 そうして辿り着いた光の中。開けた空間であたし達が目にした光景は――

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