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剣道少女が異世界に精霊として召喚されました  作者: 武壱
第二章 訪問編
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いちはじ!(は~ど?)(2)

 あたしは視線だけを動かして、周りに行き交う人々を観察し始めた。そこには、国際色豊かどころか、ハロウィンのお祭りかと思わせるような格好の、様々な人達がせわしなく行き交っていた。


 猫耳犬耳というか、まんま猫顔犬顔をした獣人や、エイミーやジョンと同じエルフと、ちょっとずんぐりとした小柄な人。多分ドワーフ?


 他に目に着いたのだと、額から角を生やした人や翼のある人、一つ目や三つ目といった人達まで。多種多様な見た目の人達が、ごくごく自然な感じで行き交っているのは、あたしからしたら凄い不思議な光景に見えた。


 さすが異世界って、片付けたら良いんでしょうけどね。この辺りは辺境だって聞いてたけど、それでこんなにいろんな種族の人達が居るなら、都会は一体全体どうなってるって言うのかしらね~


 今でこそ、そこまで珍しくなくなったけど、元の世界のあたしの住んでいた所は、特にこれと言った観光名所も無い所だったから、外人さんが居るだけで結構目立ってたのよね~


 その位、肌の色や人種の違いって、元の世界じゃ目立つ事柄だったから、そんな事を全然気にしている風の無いこの世界の光景は、あたしからしたら結構カルチャーショックだったりする。だからまぁ、興奮気味に辺りを見回してる、ジョンの気持ちも解るっちゃ~解るのよね。


 …それに、周りの反応もね。


「…あまり驚かれていないようですね?

「うん?そんな事無いわよ?十分驚いてるって。なんて言うか、目の前で絵に描いたようなはしゃぎ方している子が居るから、逆に冷静になるって言うかね

「す、すみません!

「うふふ。」


 不意に、前を歩くエイミーに声を掛けられて、目の前の『はしゃいでいる子』を半眼で見下ろしながら答える。すると、当の『はしゃいでいる子』ことジョンキュンは、耳まで真っ赤にして俯いてしまった。


 ちくしょう、可愛いな…いちいち反応が可愛いのよ、この還暦越えのショタエルフは。反則よね?


「…気を悪くされたりしていませんか?

「別に平気よ。エルフの里でだって、まぁ最初はジロジロ見られてたしね。」


 次いで聞こえてきた、彼女の心配げな声に、あたしは苦笑を浮かべながら、肩をすかしつつ答えた。


 そうなのよね。周りが物珍しくて、辺りを見回していたあたし達のように、周りの人達からしても、あたし達の存在…と言うよりも、あたしの存在が珍しいみたいで、周囲の人達の視線が、あたしに注がれていたのだ。


 まぁね、軽く辺りを見回したけど、一見してあたしのような、東洋風の顔の作りの人は居ないみたいだし、何より袴姿って格好が、この世界じゃ珍しくて目立ち過ぎなのよね~


 まぁ袴姿なんて、元の世界でだって普段着で使わないから、街中で見かけたら目立つもんね~レイヤーさんと間違えられたって仕方ないわ。


 そんな、周囲の視線独り占め!って状況は、人見知りが激しい人なんかじゃ、きっと耐えられなかったでしょう。だからエイミーも、心配気味で声を掛けてくれたんでしょうけれど。


 でもまぁ、元の世界に居た頃から、あたしは良くも悪くも目立つ方だったからね、この位慣れたものですたい。それに、ジロジロ見てるのは、お互い様だしね。


 ただ、たまに値踏みするような、なめ回すような視線も感じて、それはさすがにイラッとくるけどさ。まぁだからって、こんな所で問題起こす訳にも行かないから、サラッと受け流すに限るわ。


「気にしなくて平気だから、さっさと行きましょう。ギルドはまだ着かないの?

「そろそろ見える筈です。あ、あれがそうですわ

「へぇ、結構あるのね…」


 心配してくれている事を、心の中で素直に感謝しつつ、話題を変える意味で、エイミーに疑問を投げかけた。その疑問に返ってきた返答に、指し示されたエイミーの手の先に見える、一際大きな建物に視線を向けた。


 大通りを進んだ先に見えたのは、街の門でも見たあの石造りの壁だった。彼女が指した方向は、その壁を越えた先、2階建ての建物を中心に立ち並んだエリアの一角。


 まだ大分距離があって、屋根の部分しか見えていないけれど、そのエリアの中で、他の建物と比べると、明らかに高さの違う建物が見えた。多分3階…もしかしたら4階建てかもしれない。


 今まで、1階建ての平屋ばかりだったし、遠くに見える2階建ての建物が建ち並ぶエリアでも、測って作られたんじゃ無いかって思う位、均一の高さが並んでいたのに、その建物だけ明らかに高くて、指し示されただけでも、あれがそうかってすぐに解ったわ。


 まぁ、だから高く作ってるんでしょうけど。もしかしたら、街を一望出来るようになってるのかもね。


「…思っていたよりも、随分大きい街なのね

「えぇ。今歩いている所は、開拓時代の頃に出来た地区ですから、規模も小さく見えていましたが、あの壁から先が新市街になっています。」


 そんなエイミーの説明を聞いて、さっき考えていた失礼な考えを、改めて反省したいと思います。そっか~ここ旧市街だったのね、本当に開拓時代の頃の街並みなのね。


 どおりで!見る物すべてが味が出ていて、良い雰囲気の街並みだと思いましたよ、素敵!この街並みバックに自撮りしたら、きっとインスタ映えするわ~(とりあえず褒めちぎって誤魔化してみるの図


 そんなこんなで、あたし達は新市街の入り口をくぐり、さらに進んでいく。エリアが切り替わったからって、特に何かあった訳じゃ無いけれど、気持ち人通りが増えたような気がするわね。


 それに立ち並ぶ建物も、1階建て中心から2階建て中心に変わって、圧迫感が増した気がする。建物の作りなんかは、余り変わらないみたいだけどね~


「…エイミーさんって、この街に来るのは100年位ぶりなの?

「いえ、そんな事無いですよ?たまにですが、買い物などで来たりも何度かあります。どうしてですか?

「いや、基本木造ばかりなのに、新市街(こっち)旧市街(あっち)とで、建て構えがどれも同じように見えるからさ~当時のままなのかなって

「あ~」


 あたしの素朴な疑問に、エイミーは周りの建物を見渡しながら、間延びした返事を返してきた。


 まぁ、どうでも良いとは思うんだけどね~旧市街と新市街の建物を見ていて、ふと思ったのよ。


 旧市街の建物は、お手入れはちゃんとされていたけど、それ相応の年期が感じられたから、当時のままですって言われても、納得出来るんだけどね。新市街の方の建物も、もちろんお手入れされてて、綺麗は綺麗なんだけどね、あまり見た目が変わってないって言うのかしらね。


 旧市街と新市街なんて言う位だから、当然旧市街が出来て、大分経ってから新市街の建築が始まったんでしょうけど、何年位間が空いたかわかんないけど、それにしちゃ建築様式が全然変わってないようなのよね~


 もちろんあたしは、専門家じゃ無いから、詳しい事なんてわかんないんだけどさ。あたしから見たら、この通りに並んでいる建物が、ほとんど同じようにしか見えないのよね。


 例えば、元の世界の木造住宅だって、瓦屋根だとかトタン屋根だとか、昔で言ったらかやぶき屋根だとか、色々種類があるし、その時代にあった流行や、建てた人のこだわりみたいなのもあるから、単に木造住宅って言っても、それこそ千差万別な外観があるのが当然よね。


 それに対して、この街の建物は、窓の形や扉の形なんかの差異はあるけど、それ以外の違いらしい違いが、ほとんど見当たらないのよね~まるで、買ってきた既製品を、そのままドカドカ並べただけって感じ。


 見える範囲には見当たらないけれど、ここに並んでいる建物だって、エイミーが冒険者として活動していた頃から、当時のまま使われている訳じゃ無いでしょう。改築なり立て直しなり、されている筈よね。


 それなのに、わざわざ周りに合わせて、立て直したりしたのかしらね?この街の最古の建物が、どれかは解らないけど、ここまで建築様式に発展が見当たらないのは、かえって不自然というか、逆に何らかの意図を感じるわね。


「この辺りは、今まで戦争も起きた事の無いような場所ですからね。中央なら、きらびやかな装飾の1つも施すのでしょうが、この辺りは、元々林業が盛んで発展した地方ですから。

「そう…」


 暫く待って返ってきたエイミーの返答に、気のない返事で答えて、再び辺りの風景に目を向けた。


 そう言う箏じゃ無いのよね…


 発展とはとどのつまり、『向上心』に他ならないのよね。やれ、生活水準を高めたい~だとか、仕事の効率を高めて楽したい~だとか、時間を節約しつつ、家事はきっちりこなしたい~だとかね。


 林業から発展した地方都市。なるほど、旧市街の規模から、今のこの街の規模まで成長したんなら、それは確かに『発展』と言って差し支えないでしょうね。


 人が増えれば、人手も増えて、切り出す材木の数も増えれば、加工出来る数も増えるわ。そう言った人達を支える為、食料の生産だって始まるだろうし、生活必需品の生産だって、始まるでしょう。


 そうなれば、そこで暮らす人達と取引する為に、商人だって行き来するようになるし、林業がお金になると話が広まれば、出稼ぎ労働者だって来るようになるでしょう。そうして村が町へ、そして街へ市へと発展していく…つまり、街の発展っていうのは、『人材』が必要不可欠て事なのよね。


 そうして集まった人達は、街の発展はもちろん嬉しいでしょうけど、タダで貢献しているはずも無い訳で。当然、自分たちの生活水準の向上が、まず第1の目標な訳よね~街の発展は、その結果でしか無い訳よ。


 じゃぁ、その生活水準の向上と言うと、まずどう言う事があるかって言えば、美味しい物が食べたいだとか、良い服を着たいだとか、要は人の暮らしに関係している事柄な訳よ。そして、衣食住って言う位だから、当然住居に関しても、元の世界じゃ色々な技術が、日進月歩で生まれてるわよね。


 人の発展っていうのは、つまり技術の発展が伴ってこそなのよね。なのに、それがこの街の建物には見受けられないのが、現代日本人JK代表としては、奇妙な感じがして仕方ないのよ。


 まぁ、向上心なんて聞こえは良いけど、要は最終的に楽したいって事なのよね~この街の住人全員が、住めればOKって、ストイックな考えなのかもしんないしね…それはそれで嫌だけどさ。


 けど、もしかしたら冗談抜きに、本当にそう思っているのかもしれないわね。結局そう言った流れって、心にある程度のゆとりが無いと、思いつきもしないんだろうし。


 こっちの世界じゃ、未だに戦争とかもあるみたいだし、生活に関する事よりも、戦闘に関した技術の方が、まず先なのかも。だけど、やっぱり変な感じね~こうも同じ外見の建物が並んでいると、おもちゃの世界の中を歩いている気分になるわ。


 あたしの問いに、エイミーの反応が薄かったのは、きっとエルフの住居も基本、自然の樹木をそのまま利用しているから、住まいの違い=樹木の個体差だから、ピンとこなかったんでしょうね。


 けど、こうも似たり寄ったりじゃ、困らないのかしらね?そりゃ看板っぽいのはあるけどさ、外観からじゃよくわからないんだけど…


 なんて箏を考えながら、視線を彷徨わせて辺りをうかがう。色々気になった事だけど、きっとこの街の住人達にとっては、きっっと取るに足らない事なんでしょうね~


 見る限りじゃ、人の往来もそれなりにあって活気もあるし、戦渦が及んだ事が無いって、エイミーが言ってたけど、その程度には平和だったんだろうし。


 あたしって、妹なんかにもよく目ざといって言われるのよね~細かい事が、いちいち気になるのよね、テへ☆

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