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剣道少女が異世界に精霊として召喚されました  作者: 武壱
第四章 軍国編
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異世界うるるん滞在記~密着!子連れJK48時!!~(15)

 ――カチャッ、きぃ…


 扉の前に立つなり、戸を押し開けて外の様子を伺う。そして、人の目を気にしながら外に出ると、そのまま隣接するアジトへ向かう。


 途中、再び呼吸を整え過集中を発動。


 ――ブゥンッ!


 からの、手を翳し精霊界に建物を取り込む。その結果、リンダが尋問してきた通り、地下室が無い事が判明。


 建物内に何人居るかは、やっぱり一瞬過ぎて解らない。けど、二階建ての各階に、まんべんなく人の気配が感じられた。


 その事を小声で伝えたら、潜入作戦スタートです。


 インビジブルを発動させたリンダ。彼女の気配が建物へと向かっていき、不意に感じられなくなったと同時にカウントスタート。


 周囲を警戒しながら、正確に時間を計らないといけない為、過集中は維持したまま。相も変わらず頭痛がするけど、今回ばかりはしょうが無いわよね。


 え?あぁ…


 流石にこの状態で、ながら筋トレは無理ッス。筋肉キレる前に血管切れちゃうz


 そんなこんなで、あっという間に五分経過。作戦通り、サイレントの魔法を建物を覆う様にして展開。


 範囲絞って展開するのって、結構神経使うのよね。なので、やっぱり過集中は維持したまま。


 頭痛も当然継続中。我慢出来ない痛みじゃ無いとは言え、長引くと流石につらたん…


 弱音はこの位にして、現在の状況だけど。ぶっちゃけ、外からじゃ中の様子は全然わかんない。


 魔法の影響で物音は勿論、僅かな振動や気配すら遮断されちゃってるんだから当然よね。


 なもんだから、魔法の範囲調整以外でそっちに意識は向けてない。それよりも警戒すべきは通りの方。


 ここに着いた直後は、そんなに人通りが無い通路だった。けど今は、明らかに人通りが増えていた。


 多分そう言う時間帯なんでしょうね。商店の類いは無いけど、この道の両端は大通りと繋がってるのよ。


 表だって目立たず、且つそれなりに人通りもある裏道って感じね。だから闇奴隷店が店を構えたのかしらね。


 とまぁ、分析はこの位にして。


 人通りが増えたので、どうしても意識をそっちに向けなくちゃならない。この人達の中に、犯罪組織の連中が居ないとも限らないし。


 或いは、ここをそう言う店と知って訪れる客か…


 どっちしろ即対処しないとなので、注意深く人通りをチェック。するも、たまたま近づいたって人ばかり。


 だからって、チェックを疎かにする訳にもいかないから気が抜けない。かと言って、そっちにばかり集中しちゃうと、今度はサイレンスの方が疎かになりそう。


 正直、結構しんどい。まぁ、自分から言い出した手前、頑張りますが…


 ――そんなこんなで、踏ん張る事十分経過。


『ママ、リンダに呼ばれたよ!ぜんぶ終わったって。』


 待ちに待った風華からの連絡に、ホッと胸をなで下ろしつつサイレンスの効果を解除。続けて過集中を解除し、額に浮かんだ脂汗を服の裾で拭い取る。


『今サイレンスを解除したわ。あたしはまだ外で声出せないから、リンダからみんなに報告するよう伝えてくれる?』

『はぁい!』


 その返事が返ってきた直後――


『あたいだよ。大将、終わったぜ。』

『了解しました。お疲れ様ですわ。』


 通信リング越しで行われるやり取り。


 それを聞きながら、商品として連れてこられた人達の保護も兼ね、先に制圧した方の拠点内へ移動。


「こちら優姫。リンダ、そっちに敵の構成員は何人居たの?」


 周囲の目を気にしつつ、建物内に入るなりインビジブルも解除。続け様に、通信リングに魔力を送り込み、開口一番そう問い質した。


『おう、優姫。安心おしよ、きっちり六人居たさね。』

「了解、念の為に尋問よろしく。」

『あいよ。』

「シフォン、銀星、手短にこっちの状況を報告するわね。」

『解りました。』

『お願い致しますわ。』

「まず敵の拠点だけど、一箇所は地下室在りの二階建てで、もう一方が地上階のみで二階建て。シフォンの読み通り、店舗と倉庫に分けてたみたい。」

『やはりそうでしたか…では、連れてこられた方々は、地下室の方に?』

「えぇ。リンダ、地下には何人くらい居たの?」

『時間なかったし数えちゃいないよ。ただ、結構な人数が居た筈さね。』

「了解。なら今から下行って確認してくるわ。」

『酷く怯えておりますでしょうから、十分に気を付けてくださいましね。』

「えぇ、解ってるわ。」


 そう告げると共に奥の部屋へと向かう。扉を開け中に這入ると、隅の床板が一部外されている様だった。


 その一角に近寄り中を確認。すると其処には、剥き出しの地面にぽっかりと大きな穴が空いており、底の方から僅かな明かりが見て取れる。


 ここから地下に降りるのか…成る程、何か在ったら直ぐ床板を被せられる様にしてあるのね。


 ってかこれ、どう見ても手彫りよね。よくもまぁこんな手の込んだ事を…


 穴の大きさは、大の大人が余裕を持って降りられる程度。深さは大体二~三メートルって所かしら。


 木材なんかで補強されてるけど、一目で素人仕事だと解る。下に降りる手段が縄ばしごといい、何ともお粗末な地下牢ね。


 そんな感想を抱きつつ、意を決し縄ばしごに足を掛ける。ギチギチと、耳障りな音を立てながら、慎重に地の底を目指す。


 すると次の瞬間、地下の空気が一瞬ざわめく。捕まってる人達が、あたしの気配に気付いて驚いたのね。


 気配隠そうとしてなかったので、それは別に良い。ってか、むしろ好都合だったり。


「驚かせてごめんなさい!あたしは、あなた達をここに連れてきた連中の仲間じゃ無いの。信じられないと思うけど、保護しに来たのよ。」


 こちらの存在が知れるや降りる手を止め、地下に向かけて言い放つ。直後、再びざわめきだす空気。


 そのほとんどは、不安と怯えからくるものだった。けどその中に混じって、僅かな期待も感じられる。


 よしよし。いきなり降りてって、不審者が助けに来ましたなんて言ったって、情報量多くて混乱させちゃうだろうからね。


 最初は声かけから初めて、様子を見ながら進めてかないと。


「良い?今から降りていくからね。悪党共はあたしの仲間がやっつけたから、多少騒がしくしても平気よ。けど、出来たら静かにしてくれると助かるわ。」


 続け様にそう言い放ち、返事を待たず移動を再開。相手を刺激せず、且つ状況を把握する猶予を与える為、敢えてゆっくり降りていく。


 十分に時間を掛けて地の底に到着。其処で目にした光景に、思わずあたしは顔を顰めた。


 地の底、一メートル程の横穴を進んだ先には鉄格子。その奥に設えられた空間に、何人もの人が閉じ込められていた。


 年齢も、性別も、種族もバラバラ。唯一共通している点は、皆一様に怯えた表情をしている事。


 想像していた以上に、酷いわね…


「あ、あの…」


 不意に、鉄格子の向こう側から声が掛けられる。その事に気が付いたあたしは、無理矢理笑みを貼り付ける。


「さっき…私達を保護しに来たって…」


 続け様にもう一声。それを聞き、誰が話し掛けてきたのかようやく判明。


 そちらに向き直り、小柄な彼女を真っ直ぐに見据える。ガイアースに似た外見からして、恐らくドワーフだと思われる女性。


 十分な水分を与えられていないのだろう。酷く掠れた声で、弱々しくそう問い掛けてきた。


「えぇ。」


 その問い掛けにあたしは、頷きながらハッキリと応える。するとそれを皮切りに、牢屋の至る所から次々と声が…


「おれ達…助かるのか?」

「えぇ、その為に来ました。」

「おうち…帰れるの?」

「うん、帰れるよ。」

「嘘は止してくれ…ここはバージナルだろう?逃げられる訳無いじゃないか…」

「本当です。あなた達全員、国外に逃がす算段があります。」

「本当に?本当なんですか?」

「えぇ。」


 その全てに対し、問い掛けをした相手と真っ直ぐに向かい合い、しっかり頷き答えしていく。同じ質問が何度くり返されようと、面倒がらずその度に何度も頷く。


 相手が信用してくれるまで、不安から解放されるまで。何度も、何度も…


 やがて問いかけは無くなり、静寂が地下空間に広がる。


 そんな中で、不意に聞こえた誰かのすすり泣く声。それはまるで、水面に広がる波紋の様に、一人また一人と増えていく。


 緊張の糸が切れたのね。無理も無いわ…


 そんな事を考えていた所でハタと気が付く。自分が無意識の内に、胸の上で拳を握りしめていた事に。


 直後に湧き上がる実感。


 あぁ、そうか。あたし達は、間に合ったんだ…


 作戦はまだ途中。気が早いと言われれば、その通りだ。


 けど今は…今ぐらいは、その実感に浸っていても良いわよね――


 その後、彼等が落ち着いたのを見計らって、こちらの状況を可能な範囲で説明。あたし達の指示に従う事を約束させ、地下牢から解放。


 地下に捕らわれていた人達の数だけど、総勢何と十四名。そのほとんどが、つい先日連れてこられたばかりだそうだ。


 そしてどうやら、リンダが捕らえた構成員の中に、彼等を運んだ運び屋も居たらしい。奇しくも、一網打尽に出来たって訳ね。


 それはさておき。ここで一個、問題が発生。


 何かというと食料問題。エイミー班が救出した人達と併せて、総勢十七名にもなるからね。


 これは、当初あたし達が想定していた数の約二倍。これだけの人数の食事を、こっちの事情をぼかしたまま、提供するのは流石に無理あるからね。


 ましてや、メアリーにそれだけの食事を、すぐに用意しろってのも現実的で無いし。


 話し合った結果予定変更。全員一旦、精霊界で保護する事に。


 そうとなると、こちらの正体をある程度教える必要が出てくる。ってなったら、もういっそ目的とかも説明して、協力して貰った方が良いんじゃね?って提案。


 本来なら避けるべきなんでしょうけど、事態が事態だし。背に腹は代えられないわよね。


 とは言え、ほんのさっきまで捕らわれていた人達だ。連れてこられる際に抵抗して、怪我をしている人や、衰弱が激しい人も中には居たわ。


 なので、協力って言っても出来る事は限られてる。内訳としては、以下の通りね。


 ある程度動ける人で、料理出来る人がざっと三人。その人達には、メアリーと一緒に炊き出しをお願いした。


 それ以外の人達には、怪我や衰弱している人の面倒や、諸々の雑用をお願いしてある。それが総勢で十二人。


 残る二人だけど、なんとメアリさんと同じ境遇で連れてこられた冒険者だった。なので彼等には、この後に控えた作戦内容も伝え助力を要請。


 それで同じ境遇の冒険者が、もう一人助けられるのならと言って、快く快諾して貰えた。ついでだからと、眷属の設置にも協力して貰ったり。


 思いも寄らない所から、貴重な人材ゲットだぜ!


 その後も、なんやかんやと慌ただしく時間が過ぎていき、この日の昼食食べ損ねました…


 その甲斐あってか、日が沈む前に全ての準備が整ったのだった――


………

……


 っと、作戦前に腹ごなししよ~っと。


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