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剣道少女が異世界に精霊として召喚されました  作者: 武壱
第四章 軍国編
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異世界うるるん滞在記~密着!子連れJK48時!!~(12)

 ワンチャン開いてればって思ってただけで、期待してなかったから肩透かしも良い所だけど…これはこれで、まぁ好都合か。


 そう思い直し、気を引き締めたあたしは、僅かに開いた扉の隙間から内部を窺う。前もって把握していた通り、其処に人の気配は無い。


 よし。と意を決し、扉の隙間を広げ建物内へ。


 ――ぎぃ………パタン


 音を立てぬよう、慎重に扉を閉めて潜入完了。ホッと息つく暇も無く、周囲をぐるりと見渡す。


 こぢんまりとした玄関ホール。入って直ぐ左手に、二階へと繋がる階段がある。


 そして正面に、奥へと続く扉がある。地下に通じる階段は、その扉の向こうにある筈だ。


 それ以外に、特にこれと言って目を引く物は、玄関ホールには無かった。生活感も無ければ、まるで飾り気もない寂しい玄関。


 空き家だと言われれば、成る程納得となる所だけど…


 人が居るのは間違いなく。それでコレなんだから、正直言って気味悪い。


 鍵が掛かって無いって所が、またね…いよいよ以て、当たり臭いわね~


 そうは思ったものの、だからって確認無しで動く訳にもいかない。まずは建物内のチェックから始めないと…


 そう思い立ち、リンダへと視線を向ける――


『あ、あのね、ママ!リンダがまだ動いちゃ駄目かって、言ってるんだけど…』


 ――と同時に、頭の中に伝わってきた、その申し訳なさそうな声。並びに、兜越しにこちらへ無言の圧力を向けている人物。


 辛抱溜まらんですか、そうですか…


『ったくもう…』

『ご、ごめんね、ママ…』

『風が謝る必要無いわ。まぁ、解らんでもないしね~』


 風にそう伝え、苦笑を漏らしつつ思わずため息。続け様、空いた手で拳を作り、親指を立てて建物内を指し示す。


 一目見て解る通りのGOサイン。それにリンダが頷いて応える。


 と同時に、徐々にその身体が透明化を始める。鎧に付与したインビジブルを発動したのね。


 そうと解ったあたしは、彼女の腕に回していた手を離し一歩退る。これでお互い、相手を視認出来なくなった。


 頼みの綱は、風を介したテレパシーのみ…


『んじゃ、あたしはここで外からの出入りを見張るから、探索の方は二人に任せるわね。』

『うん。』

『地下に降りる階段は、奥の部屋にあるみたい。幽閉するってなったら、定番はやっぱり地下だし、そっちを先に確認するようリンダに伝えて。』

『うん、早速伝えるね。』


 その返事が返ってきた直後、奥へと通じる扉がゆっくりと開く。


『伝えたよ、ママ!』

『ありがとう、風。』

『他に伝える事ってある?』

『他は…特に無いわね。』

『そう?』

『えぇ。あたしよりもリンダの方が、こういう事には長けてるだろうしね。これ以上は、余計なお世話ってなもんでしょ。』

『そっか…うん、そうだね。あた()、リンダの邪魔にならないで、お役に立てるよう頑張るね、ママ!』

『期待してるわ、風。それはそれとして、リンダが暴れ出さないよう、しっかり見張ってるのよ?』

『えっ!?え~っと…う、うん!!』


 冗談交じりの言葉さえ素直に受け止め、意を決した様子で返事を返す風華。リンダのパートナー兼お目付役として、なんとも頼もしい反応。


 本来なら喜ぶべきなんでしょうけど、正直ちょ~っと複雑。きっと、髪の毛が妙に軽く感じる所為ね。


『それじゃ、行ってくるね、ママ!』

『気を付けて。何か在ったら直ぐに連絡してね?』

『はぁい!』


 場違いな感傷はさておき。その返事を最後に、風華との繋がりが一旦途絶る。


 それを機に、さてと思考を切り替えたあたしは、全体を見渡せる位置へと移動開始。


 外に繋がる扉は勿論。奥の扉と階段とを視界に収め息を潜める。


 空気椅子の格好で(ぁ


 いやだって、ただジッと突っ立ってるだけってのも、芸が無いんだもの…


 同じジッとしてるんだったら、大臀筋・大腿四頭筋・ハムストリングスにアプローチしつつ、体幹まで鍛えられちゃう空気椅子して、見張りする方が効率的でしょ(脳筋理論


 さ・ら・に!両手をピンと前に張ったら、二の腕まで鍛えられちゃう!!


 特に道具も必要無いし、手軽に出来るトレーニング法としてマジオススメ!不慣れな内は、壁に背中を付けても大丈夫だから!!


 という訳で。みんな一緒に、Let's シェイプアップ♪


『マ、ママ!ママ!!』


 なんて事をしていた所に、不意に伝わってきた慌てふためく風華の声。早速何か在ったらしい。


『どうしたの、風?』

『見つけた!見つけたよ!!ママの言う通りだった!!』

『ッ!って事は…』

『うん!地下にね、閉じ込められてる人達が何人も居たよ!!みんな凄く怯えてるの…』

『そう、無理も無いわね…』


 見たままを、感情を込めて素直に伝えてくる風華。それに感化され、彼女の見た風景を想像して顔を顰めた。


 無理矢理連れ去られ、何時売り飛ばされるとも知れずに不安がる人達。それを前にして、あの子に同情するなって方が無理な話よね…


『…それで、リンダはなんて?』

『え、っと…捕まってる人達は、今はそのままにして…先に悪い人達をやっつけるって…』

『そう、まぁ妥当な判断ね。わかった、リンダに任せるって、伝えてくれる?』

『う、うん…』


 直ぐにそう返って来るも、納得がいっていない様子が、なんとなく伝わってくる。きっと、怯えてる人達をそのままにする事に、後ろめたさを感じているんでしょうね。


『心配しなくても大丈夫よ、風。』

『え?』

『今助けが来たって報せちゃうと、騒ぎが起きたりして返って危険なのよ。』

『そ、そうなの?』

『えぇ。気が張ってる分、疑心暗鬼になってて直ぐには信じて貰えないだろうし、仮に信じて貰えたとして、安堵から気が緩んで声が出ちゃったりしてね。いずれにしろ、多少の騒ぎは覚悟しないといけない。それを聞きつけて、悪い人達が駆け付けたら、捕まってる人達がパニックになって、怯えたりするでしょう?』

『う、うん…』

『だから、それを防ぐって点においては、リンダの下した判断は正しいのよ。』

『そっか、そうなんだ…』

『えぇ。んでも、だからって風の考えが間違ってる訳じゃ無いのよ?不安そうにしている人達を、早く安心させたいのよね?』

『うん…』

『あたしもリンダも、その部分は風と同じ…他のみんなもね。だから、一秒でも早く悪い人達を懲らしめて、捕まってる人達を安心させてあげましょう。』

『うん、うん!』


 頷く度に、風華の意志が高まっていくのが伝わってくる。と同時に、奥の扉から現れる気配。


 リンダが地下から戻ってきたのね。彼女の気配は、そのまま階段へと向かっていく。


『よぉ~し!頑張るぞぉ~!!』

『その意気その意気。んでも、やり過ぎないでね?』

『はぁい!』


 ――ギィ…ギィ…ギィ…


 勇ましい返事を感じ取った一方、階段を踏みしめる音を聞きながら、姿無き二人の事をその場で見送る。


 空気椅子の姿勢なのは言うまでも無い。何か?(圧


 しっかし、気を紛らわせる為とは言え、我ながら上手く丸め込んだわ。一番起こりうる可能性をぼかして、当たり障り無い事ばっか並べてさ~


 さっきのやり取りであたしは、捕まっている人達の前に姿を見せない理由について、敢えて伏せた事がある。風華にはまだ、刺激が強いと思ってね。


 だって『極限迄追い詰められた人間が、何をしでかすか解らないから、事が済むまでそのままにしとく』なんて言えないでしょ。


 正規のルートから外れて、無理矢理奴隷として連れてこられた人達は、例外なく被害者だ。でも、だからって全員が善人とは限らない。


 善人は言い過ぎにしても、利己的な人がそこに含まれていないとは限らない。ましてや、理不尽な理由で尊厳を奪われ、過度なストレスに晒されているのだ。


 本来そうで無い筈だった人も、助かるかもしれないと為れば、我先に助かりたいと思って然るべきだ。それが周囲に伝播されれば、我も我もとなるのは自然の理。


 そんな人達を相手に、後で助けに来るからとその場を後にしてみなさい。不満が爆発して、収拾が付かなくなり、最悪外にまで騒ぎが伝わるでしょうね。


 そう成ったら、今までの苦労が全部パア、な~んて事も十分にあり得る。故に、リンダの判断は間違いなく正しい。


 せめてもう一人居たら、こちらの正体明かして護衛に付ける、なんて事可能なんだけど…まぁ、この辺があたし達の限界よね。


 ――…ガタッ、ガタガタッ!な、なんだっ!?


 そんな事を考えていると、不意に二階から聞こえ始める物音。


 ――ヒュー…急に風が!?うわっ!!


 騒音とまではいかないその音を聞きながら、勇ましい風華の姿を思い描く。と同時に、モブ敵共に対し合掌。


 と見せかけて!大胸筋を鍛える、アイソメトリックス!!


 姿勢はそのまま空気椅子のポーズ!!


 二階を制圧するのが先か、あたしの筋肉が根を上げるのが先か勝負!(狂気

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