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剣道少女が異世界に精霊として召喚されました  作者: 武壱
第四章 軍国編
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異世界うるるん滞在記~密着!子連れJK48時!!~(11)

 そうこうしていると…


『こちら、エイミーです。』


 不意に、リングに届いた定時連絡外の着信。それにあたし達は、兜越しに顔を見合わせると同時に沈黙する。


『銀星です。どうされました?』

『調査の結果、例の場所が犯罪組織のアジトであると確定しました。これより潜入を試みます。』

『了解しました。気を付けてくださいね、エイミー』

『えぇ。ありがとう、銀星ちゃん。』

『マリーです!エイミー、頑張ってください!!』

『フフッ、えぇ。マリーもありがとう。』


 続け様に聞こえてきたそのやり取り。別れて一時間位しか経ってないのに、もうそこまで準備が整うなんて、流石と言うより他に無いわね。


 それに、エイミーの口調や声のトーンから、はっきりと余裕が感じられた。彼女の性格からして、余程の自信が無いとこうはならない筈。


 それだけ順調って事よね。面子も面子だし、トントン拍子に事が運んでるようで何より…


「なぁオイ聞いたかい?こりゃ、あたい等も負けてらんないさね。」

「いやいや、別に競争とかしてないからね?」


 …やはり隣の芝生は青かったか(確信


 さておき。気を取り直して、通信リングに魔力を込める。


「こちら優姫。聞こえてたわ、エイミー。随分と順調みたいだけど、油断しないようにね。」

『フフッ、そうですね、気を付けます。優姫の方は順調ですか?』

「まぁ、ボチボチかしらね…銀星。」

『はい。』

「こっちも地図に記載された例の場所に着いたわ。確証はまだだけど、透明化して潜入してみる。」

『大丈夫ですか?』

「あたしとリンダだし、滅多な事にはならないわ。だし、穏便に制圧出来ないって解ったら、ちゃんと退かせるから安心して。」

「それあたいに言ってるのかい?」

「他に誰がいんのよ。」


 会話の途中、横から割り込んで声に思わずツッコみ。心外だと言いたげに、肩を竦めたリンダに対し、苦笑しながら口を開いた。


「ま、そういう訳だからさ。それに、あたしとリンダを組ませたのよ?多少の冒険は、大目に見てほしいってなもんよね。」

『解りました。そこまで仰るのでしたら、マスターの判断に任せます。』

「あんがと、銀星。その期待に、行動で応えるからね。」

『お願いします。』

『優姫、気を付けて下さいね。』

「ん、エイミーもね。」


 そう応えつつ、辺りを見渡し人目が無い事を確認。身に着けたバージナル兵の鎧を送還して、代わりにインビジブルマントの複製品(レプリカ)を装備。


 リンダの腕に手を伸ばし、触れると同時に効果を発動。これで第三者から、あたし達の姿は見えなくなった。


「これより優姫班も、敵アジトと思しき建物に潜入するわ。緊急でない限り、通信には応答しないからそのつもりでお願い。」

『ではこちらも。暫く通信に応えられないので、よろしくお願いします。お二人とも、行きましょう――』

『了解しました、両班の健闘を祈ります――』

『皆さん、頑張ってください――』


 その、それぞれの言葉を最後に、通信がプツリと途絶える。


 直後にあたしは、リンダへ不敵な笑みを向け、例の建物を顎で差し示す。


「んじゃま、ボチボチ行きましょうか。」

「あいよ、ボス。」


 続け様にそう言い合い、恋人さながら仲良く腕を組んで歩き出す。


 今から個別に透明化しちゃうと、お互いに認識出来なくなっちゃうので、仕方の無い処置です。特に下心はありません。


 流石のあたしも、中身が女子だからって、フルプレートに抱き着く趣味は在りませんぬz


 さておき。人通りの少ない路地を、周囲を警戒しながら目的地を目指す。


 姿が見えなくなっただけで、存在自体が無くなった訳じゃ無いからね。急いだらその分、違和感が生じてしまう。


 かと言って、慎重に為り過ぎる余り、動きを遅くすれば良いって話しでも無い。透明化時の一番の天敵って、実は人だからね~


 向こうからしたら、人が透明化して其処に居るなんて思いもしない。だから当然、躊躇無くぶつかってくる訳ですよ。


 幾ら人通り少ないからって、全く無い訳じゃないからね。その辺にも、気を着けないとなのですよ。


 そんなこんなで、周囲を警戒しながらゆっくり歩く事暫く。目指す二棟の建物が、目と鼻の先に迫った頃。


 不意に立ち止まると、隣のリンダを見上げながらハンドサイン。と同時に、其処に居る風華に意識を向ける。


『風、悪いんだけどリンダに、手前の建物から攻めようって伝えてくれる?』

『あ、うん。任せてママ。』


 その返事が伝わってきた直後、こちらに向かって頷くリンダ。


 同種の精霊間で行えるテレパシー。それを利用した、意思疎通方法。


 正直、制限があるし口答のが手っ取り早いから、今まで余り出番が無かったのよね。けど今回みたいな状況だと、思いの他便利よね。


『伝えたよ!』

『ありがとね。じゃぁ今度は、試したい事があるから少し待って。って、そう伝えてくれる?』

『試したい事?』

『えぇ。ほんとに思い付きだし、今の状態で出来るかも解んないから、自信ないんだけどね~んでも、成功したら手間が一気に省けるのよ。』

『ふ~ん…あた()には、難しい事はよくわかんないけど、なんだか凄そうだね。わかった、伝えるね!』

『えぇ、お願い。』


 そう伝え、待つ事一瞬。再びリンダが頷いた。


 理解が得られた所で、早速行動開始。まずは呼吸を整え、何時ものルーティーンを行い過集中を発動。


 直後に感じ始める鈍い頭痛。けどまぁ、この位なら我慢出来るかn…


 痛みが走ってる時点で、危険信号だなんて正論は聞こえないですから!(ぇ


 ほんと、直ぐ終わらせるんで大丈夫ですから!だからどうか、エイミーにはご内密に(ガクブル


 と、冗談はこの位にして。宣言通り、ちゃちゃっと終わらせる為、例の建物に向かって手を翳す。


 続けて意識を建物に向け、意を決した次の瞬間――


 ――ブゥンッ!


 目の前から建物が消失し、直後に出現。


『な、何したのママ?リンダもビックリしちゃってるよ!?』


 でしょうね。


 思わずそう呟きそうになるのを堪えながら、過集中を一旦解除。苦笑しながら、リンダへと向き直った。


『別に、そんな大した事してないわ。ただほんの一瞬、あの建物を精霊界に送っただけ。』

精霊界(おうち)に?』

『そう。シフォンが魔法を使って、建物の構造把握を行うって聞いた時、思い付いちゃったのよね。精霊界(あっち)に建物毎持ち込んじゃえば、あたしにも似たような事出来るんじゃ無いかってね。』

『はぁ~…』


 呆気に取られたような反応を示す風華。遅れて、彼女から事情を聞いたんだろうリンダが、わざわざ面頬を押し上げて、ジト目でこちらを見つめてくる。


 『思い付いたからって、普通やらないだろうそんな事。』と、言いたいんですよね、わかります。


 でもしょうが無いじゃん!検証してみたかったんだもん!!


 きっかけは、本当に些細な好奇心。建物の構造を空間魔法でどう把握するのか、興味本位で尋ねたのが発端だ。


 その時の説明曰く。建物を覆うように自身の魔力で満たし、魔力干渉の微妙な差異によって、空間内に存在する物体の大きさや形が判断出来るんだそう。


 要は、異世界版の3Dスキャナーみたいな感じかな。異世界版Ale〇aこと防犯魔具といい、意外とIT技術進んでんの何なん?


 まぁ、そんな感想はさておき。あたしが注目したのは、魔力で空間を満たして、その内部を判断するって点。


 それってさ、精霊王の権能である『精霊界』の副次的効果と一緒なのよね~


 って為ったら、試してみたくなっちゃうじゃん?


 『だからって、建物毎取り込むとか大それた事するかよ。』と言いたげな視線で、未だこちらを見てらっしゃるリンダさん。


 (ただの妄想だけど)デスヨネー


 んまぁでも、取り込んだの時間にしてコンマ数秒だし。リンダ達みたく、意識して注意深く見てない限り、誰にも気付かれないだろうから平気よ。


 それは勿論、()()()()()()()()()もね――


『それよりも風。入り口の向こうに人の気配は無かったから、今の内に侵入するわよって、リンダに伝えてくれる?』

『あ、うん!』

『それから、外からじゃまるでわからなかったけど、この建物には地下もあるみたい。人の気配は、二階部分と地下からしたわ。正確な人数までは解らなかったけど、って。』

『はぁい!』


 その返事の後。暫くしてから頷き、ようやく面頬を下げるリンダ。


 それを確認し、行動再開。今し方様子を確認した方の建物へ、慎重に歩を進める。


 程なくして、玄関前へと辿り着いたあたし達。周囲を警戒しつつ、ドアノブに手を掛ける。


 鍵掛かってないと良いなぁ~なんて淡い期待を胸に、ゆっくりとノブを捻ってみる。


 ――…カチャッ、きぃ


 …あっさり開いちゃったわよ。マジか…

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