表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣道少女が異世界に精霊として召喚されました  作者: 武壱
第二章 訪問編
36/398

いちはじ!(は~ど?)(1)

 はい!と言う訳で、カタンに到着しました。道中何も起きなくてつまんな~い、なんて思っちゃったあたしはいけない子。


 まぁ、実際何も起きなかったのよね~もしかしたら、夜盗(やとう)に襲われたりするんじゃ無いかとも思っていたんだけど、全く拍子抜(ひょうしぬ)けする位順調(じゅんちょう)な道のりでした。


 道すがら、暇で手持ち無沙汰(ぶさた)だったから聞いてみたんだけど、今あたし達が居るダリア大陸は、3大大陸と呼ばれる中では、一番治安(ちあん)が良い大陸で、主要都市(しゅようとし)を結ぶ街道は綺麗(きれい)舗装(ほそう)もされているし、要所毎(ようしょごと)に兵士の詰め所が設置されている位には、平和な場所らしい。


 この世界の人達は、邪神と呼ばれる存在と、その軍勢(ぐんぜい)と戦争を続けている事から考えれば、持て遊ばせておける兵力(へいりょく)があるって言う事は、まぁそう言う箏なんでしょうね~この大陸の国々の軍隊も、必要なら出兵だってするんだろうから、単純に豊かで国力が高いって事でもあるんでしょうけれど。


 まぁそれはともかく、街道が整備されているのは、あくまでも街クラスの都市を結ぶ物だから、周辺の村々や、ましてあたし達が出立(しゅったつ)したエルフの隠れ里の近くに、街道が敷かれてなんてないから、この街に着くのに結構時間掛かったのよね~


 リンダとシフォンは、この街からエルフの里まで、途中で夜になっちゃったから、一泊野宿したみたいだけど、大体半日位で踏破(とうは)したらしい。まぁ、2人は旅慣れもしてるだろうしね~


 んで、今回はと言うと、ふん縛った犯罪者数名と、旅慣れしてないあたしとジョンが、見事に足引っ張っちゃったもんだから、1日半も掛かっちゃって、街の入り口に着いた今は見事に夕暮れ時。ん~やっぱ体力に自信があるって言うのと、単純に歩き続けるって言うのとじゃ、全然違うわ~もう足が棒よ。


 話が逸れたけど、しっかりと街道が整備されている方が、その分交通量も安定していて、見通しも効くから、盗賊やらなんやらが出るとしたら、逆に街道沿いの方が多いんだって。まぁ考えてみればそうよね~村々を行き来してる人なんて、それこそ地元の人達位だから、襲ったって金目の物なんて持ってるわけ無いもんね。


 金品持ってそうな商人なんかは、商売の為にも大きめな街を行き来するだろうし、いくら兵士が詰めてる場所があるって言っても、50m間隔(かんかく)で配備されてる訳でもないでしょうしね~


 そして、そういった街道沿いに出没する盗賊は、大抵人数も少なくて、せいぜいが10人程度の小規模な集団らしい。逆に、あたし達が討伐したような、大規模な盗賊団みたいなのは、小規模な村を襲ったり、人攫(ひとさら)いを目的にしている連中が多いから、辺境の街道も無いような場所を根城にする奴等が多いとの事。


 『まぁそれも、あたい達が潰したから、暫くは()いてこないから平和なものさね。』とは、リンダの言葉だ。暫くしたらボウフラみたいに湧いてくるのかしらね~嫌だわ、ほんと。


「ほんじゃ、あたいは先に行って、コイツ等をギルドに突き出してくるさね。あんた等は、暫く休んでから来ると良いさね。」


 カタンの入り口に着いて、一息吐いていた、主にあたしとジョンに向かって、リンダはそう告げると、同じく一息吐こうとしていた犯罪者達を、無理矢理引きずるようにして歩き出した。う~む、容赦ないわね~


 いくら犯罪者達とは言っても、たった1日半とは言え、寝食(しんしょく)を共にしたんだから、多少可哀想にも思う…なんて殊勝(しゅしょう)な事、毛ほども思わないんだけどね、アハッ☆


「エイミー、この街のギルドの場所は、覚えていますわよね?

「えぇ、それはもちろんです

「では、お二人の事は貴女にお任せいたしますわ。リンダ、お待ちなさい。(わたくし)も行きますわよ。」


 そんな短いやり取りの後、シフォンもあたし達に背中を向けて、先に歩き出したリンダを、小走りで追いかけていった。それを見送りながら、なんとなくカタンの街並みに視線を向ける。


 ん~街って言うよりかは、あたしの感覚で言うと町なのよね、これ。まぁ、辺境都市(へんきょうとし)って言うなら、こんな物なのかもしれないわね。


 そんな失礼な事を考えながら、見える範囲(はんい)の街並みを、ぐるっと見渡してみる。まず、あたし達は街の門をくぐった、すぐ側に陣取(じんど)っているんだけど、その門の両端から街を取り囲むように伸びているのは、人の丈程に積み上げられた石の壁だった。


 しっかり組まれた石垣だけど、レンガじゃ無いのね~まぁ、木製の柵じゃないだけマシなのかしらね。そうだったら、もう町ですら無くて、ちょっと規模の大きい村と言っても良い位なのよね。


 そう思ってしまう理由が、見える範囲の建物が全て、ログハウスと言っても良い雰囲気(ふんいき)の、味のある建物ばかりだったからだ。それも、ほとんど1階だけの物ばかりで、2階建ての建物は、見える範囲に1件のみだった。


 その変わり、一軒一軒の大きさはあって、中は広そうだけどね。なんか、勝手に中世ヨーロッパ風の世界をイメージしてたんだけど、どっちかって言うと、西部劇(せいぶげき)とかの開拓時代(かいたくじだい)の映画とかで、出てきそうな雰囲気なのよね~


「やはり珍しいですか?

「ん?そりゃ~ね~エルフの里の方が珍しかったけどさ。」


 辺りを観察していたあたしに、エイミーのそんな言葉が投げかけられて振り返る。すると、ニコニコしている彼女の姿があったので、思わず苦笑しながらそう返した。


「街の囲いは石造りなのに、建物は木造なのね?

「えぇ、この辺りはあまり大きな石が採れませんし。辺境ですので、中央からレンガを取り寄せると、それだけで高くつきますから

「へぇ~なら、レンガ職人になれば良い稼ぎになりそうね

「うふふ、そうですわね。」


 そんな会話をしながら、全然反応の無いジョンキュンに視線を向ける。そこには、この街に着いてからずっと、地面にへたり込んで静かにしていた、見た目子供のエルフの姿があった。


「ねぇ、大丈夫?

「だ、大丈夫です…

「ジョン、あなたはもう少し、体力をつけないといけませんね…

「は、はい…すみません…」


 この街に着いてから、10分位は経ったと思うんだけど、未だ息を整えている彼に、あたし達はそれぞれ言葉を投げかける。さすがのエイミーも、ちょっと呆れてるわね。


 まぁ、それもそうよね~自分で着いてくるって決めて、これから冒険者になろうって言うのに、これじゃさすがに先行きが不安だもんね。


 う~ん、ちょっと体力なさ過ぎだぞ、チミ~リンダみたいな体力お化けは別にしても、旅慣れしてないあたしだって、さすがにそこまで情けなくないわよ。


 え?あたしも十分体力お化けの部類ですって?ほほ~う、そんな事思った人、ちょっとそこに並びなさいな。ひっぱたいてあげるわ(ポキポキ


「す、すみません。もう大丈夫です。」


 そんなやり取りの後、暫くしてようやく息が整ったのか、額に浮かんだ汗を拭いながら、ジョンは立ち上がって見せた。


 まぁ、見るからに疲弊(ひへい)が感じられるけど、目的地にはもう着いてるんだし、あとちょっとしたら、座って休めるだろうから、彼にはもう一踏ん張りしてもらわないとね。それに、道の真ん中で座り込んでたら、正直通行の邪魔だしね。


 馬車とか来たら、それこそ抱っこしてでも、移動させなきゃって思ってたんだけど、それもさすがにね~男の子のプライド傷つけちゃいそうだし。まぁそうならなくって良かったわ。


 …理由を付けて思いっきり抱きしめようとか、(たくら)んで無いわよ?ホントダヨ?


「では、私たちも移動しましょうか

「おっけ~

「は、はい!」


 そんな短いやり取りの後、エイミーを先頭にあたし達も移動を開始した。行き先は、さっきシフォンとやり取りしていたように、まずはギルドに向かわないといけないのよ。


 正直に言えば、今すぐにでも宿屋に向かって、散々歩いた今日の疲れを、お風呂にでも入って癒したいんだけどね~色々とやる事があるのよ。


 疲労の他に緊張した表情をしている、ジョンキュンを見てくれれば、色々察してくれると思うんだけど、まず真っ先にやらないといけない事は、彼とあたしのギルド証を、発行しないといけないのよね。


 ジョンキュンは、まぁ冒険者志望だから解るけど、なんであたしまで?って思うわよね。けどその理由は、すんごく単純なのよね~


 ギルド証って、基本的に誰でも発行できる、元の世界で言う所の身分証(みぶんしょう)みたいなのよね。だから、基本的に大きな街の出入りには、それを提示する必要があるみたい。


 必ずって訳じゃ無いみたいだけど、それでも身分を証明する何かが無いと、基本的には駄目らしい。考えれば当然よね~あたし達の世界でだって、不法入国は重罪だし。


 今こうしてこの街に入ってるけど、カタンに着いた時にも、見張りの人に止められたしね~まぁ、金銀の冒険者様が、あたし達の身元を保証(ほしょう)してくれたから、すんなり入れたけどね。


 だから、他の街を行き来する冒険者や商人は、必ずギルドから認められた、ギルド証を携帯(けいたい)してないといけないって訳ね。それに、あたしのような異世界人は、自分の身元を証明する物が、基本的には何にも無いから、異世界人を保護した場合は、必ずギルドに案内して、特別なギルド証を発行させるようにって、御触(おふ)れも出てるみたいなのよ。


 随分お優しい法律もあったものよねって思ったけど、そういう法令があるのは、このダリア大陸内だけの話らしいから、そうでもないのかも?だとしたら、あたしはラッキーな方だったって訳ね。


 そうは言っても、異世界人を保護したら、ギルドに連れて行くって言うのは、暗黙(あんもく)了解(りょうかい)みたいに成ってるそうだから、よっぽど運が悪く無ければ、そうそう酷い目には遭わないそうだけどね~


 そして、あたし達以外にも、ギルド証が必要な人がもう1人。何を隠そうエイミーさんも、ギルド証が現在手元にありません。


 ちなみに、無くしたとか、うっかり里に置いてきたとかじゃないからね?中堅(ちゅうけん)以上の冒険者の場合、引退や活動休止する場合は、ギルドに届け出てギルド証を預けないといけないそうなのよね~


 要するに、落として誰かに拾われたり、盗まれたりした場合、それを悪用されたりする可能性だってある訳だしね。エイミーみたいな、金等級の冒険者だったら、国の重要機関にも入れたりするそうだから、それも当然の処置よね。


 そんな訳で、何をするにしても、まずはギルドに行って、3人分の身分証もとい、ギルド証を作らないといけないって訳。


 エイミーを先頭に、カタンの入り口から伸びる広い通りを、間にジョンを挟んで歩く。相変わらず疲れた表情をしてるけど、よっぽど物珍しいのか、辺りをキョロキョロせわしなく見回しながら、ふらふら危なっかしく歩いてるもんだから、心配で自然とあたしが後ろに下がった形だった。


 もしこれで、足がもつれて倒れそうになったら、いつでもハグして抱きしめ…もとい、支えらるようにしてるんですよ?まぁ危なっかしい前に、田舎者雰囲気(いなかものふんいき)全開だから、もう少し落ち着いてほしいものだけどね~


 しっかしまぁ…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ