異世界うるるん滞在記~密着!子連れJK48時!!~(9)
「どうしたの、オヒメちゃん?」
「何か提案事でしょうか。」
「はい!あのね、姫華もお姉ちゃん達と一緒に行きたいな~って。」
やっぱし…
「オヒメちゃんも?」
「うん!お買い物が終わって夜ちゃんに呼ばれたら、姫華がお迎えに行かなくちゃなんでしょ?」
「えぇ、そうね。」
「それだったら、最初っから一緒の方が良いかなって!ほら、銀ちゃんのお手伝いは、マリーがしてくれる事に成ったから、この後姫華する事無いし。」
「けど、あんたにゃあんたで、やる事があるから待機して無くっちゃなんだろう?」
「うん!でも、いつ呼ばれるか解んないし。それに呼ばれて行くだけなら、どこに居たって一緒だよ!」
「あぁ、そうなのかい。」
「うん!!それにねそれにね!お話聞いてたけどその魔道具が直ぐに必要なんでしょ?姫華が一緒だったら、わざわざ届けなくっても、その場でシフォンちゃんの元送ることも出来るよ!!」
「Oh!そんな事も出来るのね。」
「便利ですね。」
待ってましたとばかりに、笑顔で自分の主張していくオヒメ。他の人の意見に対する返しも抜かりなし。
寧ろ自分から能力アピールして、有用性を売り込む始末。しかもそれが概ね好意的に受け止められている。
ここまで聞く限り。自分の手が空いてるのが不満で、何かしらみんなの手伝いをしたいって風に聞こえる。
事実その通りだし、その気があるのだろう。でもあたしは知ってる――
「ねっ!ねっ!!お昼までに戻ってくるから、姫華も一緒に付いてって良いでしょ!?」
――この子、それ以上に寄り道する気満々だ!!
ずっと静かだと思ったらこの子、ついて行く口実ずっと考えてたわね…
「ねっ!?良いでしょ、ママ!!」
なんて思っていた所で話を振られ、思わず苦笑。直ぐに返事を返さず、シフォンに視線を向ける。
動機や腹の底の考えはさておき。二つ返事で了承してあげたいけど、話し合いの場である以上、あたしの一存で勝手に許可する訳にはいかない。
それに、オヒメがみんなに聞かせたメリットだけど、多分シフォンも解っていた筈。その証拠に彼女は、珍しく困ったような笑顔を浮かべている。
まるで、その気になってる小さな子供を相手に、機嫌を損ねず如何に断ろうかと、頭を悩ませているかのよう。
その反応からして、オヒメにはオヒメで、やって貰いたい事があったんだろう。だからメアリー達の班に、オヒメを組み込まなかった。
そう読み取ったんだけど…
「ママ?」
そんなこんなで勘繰っていると、返事がない事を気にして、怪訝そうにしながらあたしを呼ぶオヒメ。
「ダメ?」
「いや、駄目って訳じゃ無いんだけど、あたしの一存じゃ決められないからね。シフォンの意見も聞かないと。」
「シフォンちゃんの?」
「えぇ。多分だけど、オヒメにも何かやって貰いたいって思ってる筈よ。」
「えっ!ホント!?」
あたしの言葉に、まるで思いも寄らなかったと言った感じで驚くオヒメ。そのまま、親子仲良くシフォンへと向き直る。
「そうでしょう?」
「流石、鋭いですわね。魔道具の件が纏まりましたら、相談しようと思っていましたの。」
「何ナニ!?姫華何すれば良いの、シフォンちゃん!!」
自分の事が、話し合いの場に出る事がそんなに嬉しいのか。何時に無く、表情を輝かせ前のめりではしゃぐオヒメ。
メアリー達に着いて街に行くより、自分の力が必要とされてるって方が、よっぽど嬉しいんだろう。
なんとも可愛らしい反応だけど、それも多分今の内。オヒメにとっては、そんな喜ぶような相談内容じゃ無いってのが、あたしの予想なのよね~
「それなんですが…姫華さんには、敵アジトを破壊する為の眷属を、再び生産して頂きたいんですの。」
「えっ…」
「当初の想定では、多く見積もって二箇所と考えておりましたが…最大で三箇所ともなりますと、生産していただいた分では、少々心許ないかと思いますので…」
――えええぇぇぇーーーっっっ!!!???
期待に満ちた表情から一転。愕然とした表情からの絶叫が、精霊界内に響き渡る。
あたしに次ぐ序列の所為か、めっちゃ響いた。そのお陰で、みんなして仲良く両耳を塞ぐ羽目になりました。
やっぱね、そんな事だろうと思ったのよ。前にもそんな話ししてたもんね。
「オ、オヒメちゃん…」
「なんて馬鹿でかい声なんだい…」
「み、耳がキーンってします…」
「Yeah.,,」
「申し訳ありません。三箇所になると判明した時点で、相談すべきでしたわね。」
突然の絶叫に、みんなが苦悶の表情で呻く中。いち早くそれを察知し、耳を塞いでノーダメージだったシフォンが、申し訳なさそうにしながら謝罪する。
抜け目無いなぁ~まぁ、あたしもだけど。
「大変であることも重々承知しております。ですが魔法器を作成出来るのは、優姫さんと姫華さんのお二方のみ。どうかお願い出来ませんか?」
「うぅ~…」
真剣な表情で向き合い、そう説得するシフォン。しかし、オヒメの反応は一向に良くならない。
それもその筈。能力付きの複製品作るのって、本当にしんどいからね。
しかも、シフォンが作らせようとしている魔法器は、威力の微調整も行わないとなので更に大変。それを大量にってなったら、あたしだって躊躇うわ。
「マ、ママ~…」
不意に、服の裾を掴みながらあたしを呼ぶオヒメ。こちらもこちらで、凄く申し訳なさそうにしている。
更に言うと『快く受け入れたいけど、しんどいから躊躇われて。そんな自分が情けなくて、どうしたら良いの?』って、顔に書いてある様だわ。
しゃ~ないわね~
「あ~、シフォン?割り込んで申し訳ないんだけど、質問良い?」
「えぇ、勿論。なんでしょうか?」
「例の魔法器だけど、後どの位作って貰うつもりなの?」
「そうですわね…最低でも三十かと考えておりますわ。」
「そ、そんなに!?」
と、驚きの声を上げたのは、あたしでなくオヒメ。
「結構な数ね。元々何本作らせたの?」
「八十ですわ。一箇所につき、予備込みで四十と考えておりますの。」
「その数って、バージナルの一般的な家屋が、アジトだったと仮定して算出した数?」
「一応は。無論、測量して計算した訳では在りませんので、正確では在りませんが。」
その説明を受け、ふむと考え込む。
正確では無いとは言え、魔法器が三十も在れば十分足りる筈。となると、楽観視して十も作れば足りるんじゃないかしら?
そう上手く行かなかったとしても、あたしが直接現地に赴く事になった訳だしね。一箇所位なら、作成しながら設置すれば、なんとかなるんじゃね?
それはそれで大変だろうけど。手伝うって言っちゃった手前も在るしなぁ~
そこまで考えて、チラッとオヒメの事を見やる。相も変わらず、申し訳なさそうにしている彼女。
しゃ~ないわね~(二回目
「その位だったら、あたしが現地で作成するわ。」
「えっ!?」
「宜しいのですか?」
「えぇ。正確に計算して出した訳じゃ無いんでしょ?なら、予備分がまるっと余るかもだし。それに、今回っきりの代物なんだし、あまり多く作成しても仕方ないじゃない?」
「それは確かにそうですが…」
「勿論、正確に計算して足んないって場合も考えられるけど。三箇所全ての構造計算終わるのって、早くても昼以降でしょ?それまでには帰ってくるんだし、正確な数字が出てから、オヒメに手伝って貰っても十分間に合うわよ。」
難色を示すシフォンに対し、あたしの考えを言って聞かせる。すると、今度は彼女が考え込む仕草を見せる。
もう一押しかな。
「それに、折角プラーダに行くんなら、物資の補充とかもしておいた方が良くない?アジトが三箇所に増えたってんなら、単純に捕まってる人達の人数も増えるかもだし。食料ならまだしも、医薬品とかが不足したら後が面倒よ。」
「そうですわね…」
不意に彼女が、そう呟いたかと思うと、続けてため息。観念した様子でオヒメを見やる。
「承知致しましたわ。ではその様に致しましょう。」
「本当!?」
「えぇ。」
「わぁ~い!ありがとう、シフォンちゃん!!」
「良かったわね、オヒメ。」
「うん!ママもありがとう!!」
満面の笑みであたし達にお礼を告げたオヒメは、そのままメアリー達へと向き直る。
「夜ちゃん!お姉ちゃん!!姫華も一緒に行って良いって!!」
「良かったね~姫ちゃん。」
「えっと、よろしくね?」
「うん!!」
そして、楽しそうに和気藹々とするその姿を見て、思わずほっこり。この光景が見れただけでも、負担を買って出た甲斐はあったかな。
「甘いですわね。」
不意にそう言われ、顔を正位置へと戻す。見るとシフォンが、呆れた表情で苦笑しながらこちらを見ていた。
それに気が付くなり、あたしも彼女に対し苦笑で返す。
「否定はしないわ。んでも、甘いってんならそっちも一緒でしょ?結局折れてんだからさ。」
「えぇ、全く。その通りですわね。」
「フフッ、ちゃん付けで呼ばれるのを、許してましたものね。」
「あれは…まぁ、呼び方でいちいち目くじらを立てても、仕方在りませんでしょう?」
「よく言うぜ。あたいだったら絶対怒ってるだろうに。」
「当然ですわ。」
そう言って、途端に不機嫌そうになるシフォン。その反応を見て、他のみんなと顔を見合わせ肩を竦める。
余りにもナチュラルに、そう呼んでたからスルーしてたけど、やっぱ気にしてたのね~
『――こちら銀星。今良いですか?』
そうこうしていると、不意に通信リングから銀星の声が。気の抜けた雰囲気から一転、みんなの表情が引き締まった。
「シフォンです。勿論、宜しいですわ。」
「優姫よ。悪いわね銀星、あなた一人に見張りを押し付けちゃって。」
『いえ、そんな。夜中で特に動きもありませんでしたからね、そんな大変な事でもありませんでしたし。』
「んでも、暇だったでしょ?悪いわね。」
『暇は暇でしたけど、慣れていますから平気ですよ。何十年と壁に飾られてきましたし、夜天と二人きりの時だって一人で居るのと変わりませんからね。』
「そ~そ~」
聞こえてくる感じからして、本当に気にしていないんだろう。けど、逆にそれが拍車を掛けて、申し訳なさが一層増した。
おまけに、当人は冗談のつもりなんだろうけど、出した例えがブラックユーモアだったから余計にね。
誰に似たんだろう…
って、あたししか居ないか。気を付けようz
ってか夜天。さっきのあんたへの嫌味も籠もってそうだし、そんな風に相づちしてると、後でまた蹴られちゃうわよ…




