異世界うるるん滞在記~密着!子連れJK48時!!~(2)
「監禁場所の捜索を打ち切るってのは解ったよ。ならさ、軍施設内で行われるって言う、奴隷魔術の試行場所の特定はどうするんだい。そっちも中止するのかい?」
「それでよろしいかと。遅くとも今日お昼の報告会迄には、お二人の居場所を吐かせてみせます。そそこから救出作戦迄速やかに移行出来れば、成功率は高くなりますからね。」
「逆に、時間が経てば経つ程、別の場所に移されたり等、不測の事態が起きる可能性も出てきて、成功率も下がっていく。情報は、鮮度が命ですからね」
「するってぇと、こっから先は時間との勝負って訳かい。」
「そう言う事ね。んじゃ、軍施設内への潜入は中止って事で、みんな良い?」
そう言って、全員の反応を確認する為、視線を巡らせる。特に不満や反論は上がらない。
「決まりね。」
「或いは、捕虜が場所を知っているかもしれませんわね。監禁場所と併せて、聞き出してみましょう。」
「あぁ、うん。正確な位置じゃ無くても、漠然と何階に在るとかだけでも頭に在れば、いざって時に役に立つものね。」
「そうですね。お手数ですが、お願いしますね、シフォン。」
「任されましたわ。」
そんなこんなで話は纏まり、議題は次の懸案事項へ。
と、その前に朝食朝食~
「あたいもそっちに加わるってのは良いけどさ。三箇所のアジトを、どう襲撃するつもりだい?」
「That`s True.同時に攻める?それとも潰して回る?」
もぐもぐ、ごっくん。
「みんなで潰して回ってたら目立つし、そこは同時進行が妥当よね。」
「そうですわね。襲撃するにしても、そこが本当にアジトだと確定してからでないといけませんし。」
「ってなってくると、エイミー達が掴んできた情報もある、左上ブロックに在るアジトを何人かで制圧。その間に、襲撃に加わらなかったメンバーで、残り二箇所の調査に向かう。その調査の結果次第によっては、そのまま制圧に移れば良いし、難しそうなら左上ブロックの制圧を終えたメンバーを待つ。って所じゃ無い?」
「妥当ですね。メンバー分けはどうしますか?」
「ほぼ確定の左上は、当初からの予定で在ったエイミーとジョンさん。それから、万全を期してミリアさんの布陣でいきましょう。」
「わかりました。」
「はい!」
「Ok All Right!」
呼ばれた順に、返事を返していく仲間達。想定してた状況より悪くなってるってのに、何とも頼もしい限りね。
「って事は、こっちの二つはあたいと優姫か。」
そんな事を思っていた所で、不意に聞こえたリンダの呟き。何とはなしにそちらに視線を移すと同時、あたしに向かってニヤリと笑う。
「どっちが先にアジトを制圧するか、勝負しないかい?」
「一人で乗り込む気満々ですか、そうですか。」
「貴女、私達の話聞いてました??」
予想通りというか、何と言うか。これまた自信たっぷりなその提案に、あたしとシフォンが直ぐさま反応。
んま、それはそれでリンダらしく、頼もしいから良いんだけどさ。
「冗談さね、冗談…半分位。」
そんなあたし達の反応を、まるで愉しんでるかの様に笑いながら彼女が続ける。一見からかって居る様に見えて、しかし目の奥は真剣そのものだ。
それにいち早く気付いたシフォンが、目付きを鋭くしてリンダを見据える。
「貴女、ちゃんと状況解ってますの?」
「流石に解ってんよ、大将。潰さにゃ成らん悪党の巣窟が、三つに増えたってこったろう?つまりは、連中の頭数も三等分って訳さね。ってなったら、一つ一つの拠点に居る連中の数は、そう大した事無いとあたいは思うけどねぇ。」
「な、成る程!そう言う考え方も在るんですね。」
得意げに持論を語って聞かせるリンダ。それに感銘を受けたらしいジョンが、尊敬の眼差しを彼女に向ける。
う~む、なんて素直な子なんだろう。まぁそれは一旦置いといて。
リンダの発言にも一理ある。拠点が三箇所も在るって事は、逆を言えば三箇所全てに、人員を割り振らなくちゃ成らないって事よね。
この国に潜伏している、犯罪組織のメンバーがどの位居るか、解らない以上油断は出来ない。けど、取引先の一つに過ぎない国に、数十人単位で構成員を常駐させるとは考え難い。
人数が増えれば、その分お金だって掛かるだろう。お金に汚そうな犯罪組織が、今まで取り締まりが厳しくなかったこの国に、人員をそんなに割くかね?
それを踏まえて考えてみよう。拠点一つを運営するのに必要な最低人員は、さて何人?
接客要員と奴隷の人達を見張る人員。なんと二人居たら、少なくともお店は回せちゃうのよね~
勿論、この人数は相手を舐め腐った上で出した数字なので、あまりにも現実的じゃ無い。実際には交代要員だって居るだろうし。
けど、ブラック企業以上にブラックな犯罪組織だもん。交代要員が居たとしたって一人二人。
それを三拠点で共有なんて事も在りうる。これ等の考察から、敵の規模を割り出すと、楽観視して十人弱。
多く見積もって十五人程度。多分リンダも、この位を予想してるんだと思う。
それが一箇所に集中してる訳じゃ無いんだからね。彼女からしたら、冗談半分で提案したくもなるだろう。
とは言えこれは、先述した通り舐めに舐め腐って、更に楽観視して出した数字。この通り行くとは思っていないし、それに――
「貴女にしては、考えた上での発言の様ですわね。しかし…それは前提として、この三箇所が一つの組織に管理されていればの話しですわよ。」
――そもそもの前提が違えば、後の全てが違ってくる。而してその可能性を、真っ先にシフォンが示した。
「なんだい。まかさ別の組織が絡んでるってのかい?」
「あくまでも可能性の一つですわよ。元々、拠点が複数箇所在る可能性は考慮しておりました。ですがそれでも、在って二拠点。人員の配置や利便性を考慮し、拠点同士が隣接しているのが理想。」
そう言って、正しくその条件に当てはまる左ブロック軍門付近の印を、手にしたフォークで――
「シフォン、お行儀が悪いですよ。」
「…こほん、失礼致しましたわ。」
――指そうとした瞬間、エイミーに指摘されるシフォン。慌ててフォークを皿に置き、頬を染めながら咳払い一つ。
うっかりですか、そうですか。反応が可愛いな!
それはさておき。今度こそ、指でその箇所を指し示され、何事もなく会話が再開。
「複数箇所の運用方法としては、片方が店舗兼事務所としての役割。もう片方が、在庫管理としてでしょうか。いずれにせよ、数十名もの人を管理するでも無い限り、二つも拠点があれば十分過ぎる規模の筈ですわ。」
そう言って彼女は、地図上の指を滑らせ別の地点を指し示す。其処は左上ブロック、一つだけ離れた位置にある三箇所目。
「しかし実際には、離れた場所にもう一箇所拠点が存在しており、こちらの方はほぼ間違いなく稼働しているという。二つも存在していれば、十分で在る筈なのに、ですわ。であれば、他勢力の可能性も視野に入れて然るべきでしょう。」
「そうですね。実際の所がどうなのかはさておき、最悪の事態を想定して、慎重に行動するのは良い事ですものね。」
「同感。慎重に慎重を期した結果、杞憂で済めばそれで良いし。」
シフォンとエイミー。二人に対しそう言ってから、リンダへと視線を向ける。
「って訳よ、リンダ。」
「わ~ったよ。ったく、心配性だねぇ。まぁ、元より言ってみただけだし、これ以上やんや言わんさね。」
「そうして頂戴。慎重になるってのは勿論だけど、別にあたし達だけで動くなって訳じゃ無いんだしさ。状況次第じゃ、即行動に移るわよ。」
「わ~ってるよ。けどねぇ…犯罪組織の構成員なんて言えば聞こえは良いが、果ても果てのこの国で拠点を任されてる連中だよ?末端も末端、ごろつき以下のチンピラさね。そんなのが十人以上束になったって、あたいも優姫も一人で負ける気がしねぇだろう?」
そう言って、同意を求めてくる彼女。やんや言わないとか言って、未練たらたらじゃ無いのよ、もう…
「制圧するだけなら、そりゃそうだろうけどさ。作戦の都合上、騒ぎになったら面倒なんだし、そう考えたら一人は危険よ。稼働してるなら、人の出入りがあって当然。制圧中に外部から人が入ってきたら、一発で騒ぎになるわよ?」
「そりゃまぁそうだ。」
仕方ないと言った様子で、ため息交じりにそう言うリンダ。そろそろシフォンが、キレやしないか心配だったけど、その前に納得してくれたらしい。
良かった。って事で、次の話題に移る前に、途中だった朝食を食べ進めよっかな。
スクランブルエッグを、フォークで切り分けて口に運んで、パクッ!もぐもぐもぐ…
「意見が纏まったのなら、この後のメンバー分けについては、以上で宜しいですわね。では次に、私から幾つかご相談が。」
ごっくん。
「相談?」
「どうしたのシフォン?そんなに改まって…」
あたし達の問い返しに対し、応えるよりも先に軽くと息を漏らす彼女。続けて、ポタージュを一口啜ると、一拍置いて一言。
「監視役の人数が致命的に足りませんわ。」




