間章・とある妹のお姉ちゃん観察日記
○○年○月××日
ゆうちゃんは つよくてかっこいい!
れいも ゆうちゃんみたいになりたくて きょうからじーじに けんどうを おしえてもらえることになった
れいもゆうちゃんみたいに なれるかな?
○○年○月×□日
きょう じーじに れいきはすじがいいね ってほめられた
れいが ゆうちゃんみたいになれる? ってきいたら けんにいちゃんくらい つよくなれるよ だって
でもれいは ゆうちゃんといっしょがいいな~
○□年□月○×日
ゆうちゃんといっしょに、けんどうをじいちゃんに教えてもらうようになって、1年くらいがたった。
けっきょくまけちゃったけど、今日はじめてゆうちゃんから1本とれた!うれしい!
じいちゃんにもすごいねってほめられた!
○□年□月○○日
ゆうちゃんが、いつにもましてれんしゅうをがんばってる。
何かあったのかな?
○□年■月○日
さいきんゆうちゃんが、ならい事をふやした。
そのせいで、れいとあまり遊んでくれなくなって、つまんないな~
ママもじいちゃんも、ゆうちゃんの事しんぱいしてるし…
ゆうちゃん、だいじょうぶかな…
○□年■月□○日
今日は学校もおやすみなのに、ゆうちゃんは朝からおけいこと、れんしゅうばかり。
この間たおれたばかりなのに、またじいちゃんにおこられないかな…
○×年△月○日
今日はじいちゃんに連れられて、ゆうちゃんと一緒に、しんせきのお家に遊びにやってきた。
じいちゃんは毎年来てるみたいで、兄さんたちも何度か来た事があるらしいけど、ゆうちゃんと私は、今日が初めてだった。
じいちゃんが言うには、本家のお家なんだって。
すごい大きくて広いし、道場もうちより広いからビックリ!
じいちゃんがなんで私たちを連れてきたかって言うと、ゆうちゃんと同年代の子で、すっごい強い子がいるから、ゆうちゃんのきぶんてんかんがてら、良いライバルになるんじゃないかって、じいちゃんが思ったみたい。
それに私もついて来ちゃった☆
明日、ゆうちゃんはその子と手合わせする事になったけど、年上の子だって言うけど、ゆうちゃんならきっと勝てるよ!
○×年△月×日
ゆうちゃんが、手も足も出せずに負けちゃった!
ゆうちゃんの2才年上のお姉さんで、中学2年生の皇凛花さんは、私から見ても本当に強かった。
ゆうちゃんがストレートで負けた所なんて、今まで見た事無いよ…いつも大人の有段者の人にだって、かんたんには負けないのに…
だけどゆうちゃんは、悔しがるどころか、なんだか嬉しそうだったな。
凛花さんも、ゆうちゃんの事を、すごく感心してたし。
今年、剣道の全国大会で再戦しようって約束してたけど…大丈夫かな?
○×年△月○○日
思った通り、ゆうちゃんは家に帰ってから、また練習量が増えたみたい。
だけど、めいかくな目標ができたからか、なんだか嬉しそうで、止めるに止められないよ…
身体、壊さないと良いんだけど…
○×年×月□◇日
新学期を迎えて、私は4年生に、お姉ちゃんは中学生になりました。
中学生になったお姉ちゃんは、部活必須だって言う事に、ぶーぶー文句を言っていたけど、どこか嬉しそうだった。
それはきっと、お姉ちゃんと仲の良い、うちの門下生2人に誘わたって言うのと、本家の凛花さんと公式の試合で、再戦できるチャンスだからだと思う。
この調子で、お姉ちゃんも剣道や居合だけに、打ち込んでくれたら良いんだけど…きっと、他の格闘技や習い事も、これからも続けるんだろうな~
○×年◇月○○日
事件が起きた。
お姉ちゃんが剣道部に入部してから、先輩達とあまり上手く言っていないって、2人から聞いていたけど…
今日ついに、お姉ちゃんがその先輩達と喧嘩して、やり過ぎて怪我をさせてしまったらしい。
さっき、その親たちがうちに怒鳴り込んできて、ちょっと大騒ぎになっていた。
けど、その先輩達にも問題があったみたいで、パパもママもじいちゃんも、お姉ちゃんの事を信じて、かばってくれていた。
学校もその事は解ってくれていたみたいで、停学なんて事にならなくて済んだみたい。
だけど…なんの罰も無しって訳にはいかなくて、今年いっぱいの部活動禁止になっちゃった。
お姉ちゃんは、部活に出られない分、他の事に集中できるって言っていたけど…
凛花さんとの公式戦、あんなに楽しみにしていたのに…
○×年◇月○●日
あれから、お姉ちゃんの練習量がまた増えた。
何かを吹っ切るように、のめり込むお姉ちゃんの集中力は、今更だけど本当に凄いと思う。
今まで何度かお姉ちゃんと練習試合をしたけど、対峙しただけで、お姉ちゃんの集中力の凄さが伝わってくる。
じいちゃん曰く、お姉ちゃんの集中力の凄さは、剣や運動の才能なんかよりも、よっぽど希有で稀少な才能なんだって。
それは、小さい頃からずっと、お姉ちゃんの後を追っていた私にだって、簡単にわかった。
お姉ちゃんは、私や兄さん達より全然凄い才能の持ち主なんだって。
だけどお姉ちゃんは、そんな自分よりも、私や賢兄さんの剣の才能の方が、よっぽど凄いって思っている所があるんだよね…
私や賢兄さんだって、お姉ちゃんみたいな練習量や、いくつも掛け持ちで習い事なんて、絶対無理なんだけどなぁ…
△○年☆月○□日
今日はお姉ちゃんにとって、初めての公式戦での決勝戦。
県大会を苦も無く突破して、全国大会決勝まで一気に勝ち続け、あっさり優勝してしまった。
まぁ、お姉ちゃんの実力を考えたら、それも当然の結果なんだろうけどね~
ただ、残念なのはやっぱり、お姉ちゃんと凛花さんとの、公式での試合を見れないって事よね~
高校生の凛花さんと、公式の場で戦える機会は、再来年か~
△□年☆月○日
もうすぐ高校全国大会が始まる。
姉さんと凛花さんとの、3年越しの約束が、もうすぐ叶うのね。
あの頃に比べて、姉さんは本当に強くなったと思う。
相変わらず、練習量は凄い多いけれど、昔に比べてどこか余裕を感じるようになった。
その集中力の凄さにも、一層の磨きが掛かって、俗に言うゾーン体験に、自分の意思で入り込めるようになってる節さえある位だった。
けど、自分を過小評価する癖は、なかなか無くならなくて、姉さんは剣の才能では、私に敵わないって、考えているみたいだった。
純粋な剣の才能では、確かにそうかもしれない…それはじいちゃんも認めてる事で、それが悔しくて、子供の頃はムキになって、無茶な練習をしていたんだって、今なら私にだって解る。
だけどね、姉さん…いくら才能があったからって、それを磨かなかったら、開花する事なんて無いんだよ?
△□年☆月○○日
今日は、いよいよ全国大会決勝。
団体戦じゃ惜しくも2回戦で敗退しちゃったけど、個人で姉さんは順調に勝ち進み、決勝の相手はあの皇凛花さんだ。
結果は、残念だけど姉さんが一歩及ばず、負けてしまったけれど、剣道とは言え本家の人を相手に、互角以上に戦って見せて、本当に凄いと思う試合内容だった。
試合後、凛花さんとたまたま会って、話す機会があったんだけど、凛花さんもやっぱり、姉さんの進化している集中力に、寒気さえ覚えたって言っていた。
そんな姉さんの相手が出来る人なんて、私の知る限りじゃ数人くらいだし、同年代じゃほとんど居ないと思う。
このまま、孤高の人になっちゃわないか、私心配だよ…
△□年☆月○×日
今日、ずっと昔に疑問に思っていた事を、姉さんに聞いてみた。
なんでそんなに格闘技や習い事をたくさん覚えるのかって。
昨日凛花さんに同じ事を聞かれて、私も今更過ぎたから、聞きそびれて忘れていた事だった。
私の疑問に、姉さんは不思議そうな顔をして答えた。
『一芸に秀でた人は、万芸にも秀でるって言うじゃ無い?なら、その逆だってあり得るでしょうし、万芸に等しく秀でる事が出来たら、一芸を極める事だって出来そうじゃ無い?』って、事もなげに。
そんな考えが出来る人が、こんな身近に居るんだって、自分の姉ながら軽く畏怖した。
それを凛花さんにも伝えたら、それは武神流六芸が、生まれるきっかけになった思想と同じだって驚いてた。
そんな姉さんは、将来何に成りたいんだろう、やっぱりスポーツ選手かな?
妹はお姉ちゃんが大好きです




